事例・やり方・デメリットetc. ストライキとは?

主に海外のニュースでたびたび話題になるストライキ。近年もパリや香港で大規模なストライキが発生しましたが、その実態を知らない人も多いのではないでしょうか。

この記事では、ストライキの意味だけではなく、日本や海外での事例や、実際にストライキを行う方法も紹介します。

ストライキとは?

企業側への要求のために、集団で仕事を放棄すること

ストライキとは、労働者が会社に対して労働条件の改善などを要求する手段として労働組合が主体となって集団で仕事を放棄すること。日本語では「同盟罷業(どうめいひぎょう)」とも呼ばれています。2018年8月、東北自動車道の佐野サービスエリアで起きた件が記憶に新しいでしょう。

通常、立場の弱い労働者が、賃金や契約期間、労働時間などの改善を個人で要求することはなかなか困難です。しかし、ストライキによって集団で会社に圧力をかけることで対等な立場での交渉が可能になります

ただし、ストライキはあくまで交渉の手段であるため、要求がそのまま通ることもあれば、条件を引き下げてまとまることもあります。

※詳しくは→労働組合とは?

「ストライキ」は労働者の権利の1つ

ストライキは「団体行動権」として、日本国憲法で認められている労働者の権利です。「団結権」「団体交渉権」とあわせて、労働三権と呼ばれています

■労働三権とは?

団結権

企業側と対等な立場で話し合うために団結する権利

団体交渉権

労働組合などの団体が企業側と労働条件などを交渉する権利

団体行動権

全員で仕事をしない(ストライキ)など、集団となって抗議する権利

また、ストライキは、労働関係調整法第7条に定められる「争議行為」にあたります。争議行為とは、労働者が労働条件の向上などのために企業側に要望を伝えるための行為のことで、ストライキのほかに「サボタージュ」「ボイコット」などが当てはまります。

コラム:サボタージュ・ボイコットとの違いは?

サボタージュ」はストライキと同様、労働者が会社に対して行うものですが、ストライキが業務を完全停止することを指すのに対し、あくまで業務の能率を落とすことをサボタージュといいます。仕事や勉強を怠けることを意味する「サボる」の語源と言われています。

一方「ボイコット」は、会社の従業員ではなく消費者が特定の企業や国に対して行う抗議行動のこと。集団的にその企業の商品を買わない不買運動などによって、売上に損害を与える行為です。2019年には韓国が、日本の「ホワイト国」から除外されたことを受けて、「ユニクロ」「無印良品」などの日本製品の不買運動を行いました。

日本と海外のストライキ事情【最新版】

日本と海外で行われたストライキの事例を、その結果とともに紹介します。

【日本】ストライキの事例5つ

事例1:佐野SA運営のケイセイ・フーズ労働組合

2019年8月14日、東北自動車道の佐野SAを運営するケイセイ・フーズの従業員が、不当解雇された部長の復職を求めてストライキを決行。お盆の帰省で賑わうサービスエリアで、売店やレストランの営業を突然休止しました。

翌月9月には経営陣の撤退を条件に、従業員が現場復帰したものの、新社長による部長の退職勧奨は続きました。また、経営者サイドが従業員に対して行った損害賠償請求も取り下げられなかったため、11月に再びストライキが決行されました

結果従業員は復帰、元部長と企業側は争議中

一度目のストライキでは、経営陣の撤退とともに約60人の従業員が現場復帰。不当解雇された部長の復職も認められました。しかし、12月には新社長による「普通解雇」で元部長が2度目の解雇に。また、企業側は従業員側に対して1日あたり800万円の損害賠償請求も行っており、2020年7月現在も解決に至っていません

一方で、高速道路のSAにある商業施設の管理・運営を行う「ネクセリア東日本」は、2020年3月末時点で運営を担当していたケイセイ・フーズとSAの運営に関する契約の更新を行わない意向を発表。労使トラブルの改善を期待し、4月からは運営会社を那須高原SAなどを運営する「日の丸サンズ」に変更。従業員の雇用主も日の丸サンズに変更となりました。

事例2:全国港湾労働組合連合会

2019年4月に船の貨物の積荷を行う港湾労働者の組合が、定年延長に向けた制度の整備や産別最低賃金の引き上げなどを求めて、全国的に48時間のストライキを実施。平日に行われたため、物流や倉庫の営業に影響が出ました。

組合は翌月のゴールデンウィーク中にも再びストライキを行うことを示唆していましたが、雇用主側が団体交渉を申し入れたことで、二度目のストライキは回避されました。

結果:定年延長制度の整備は決定・賃上げならず

定年の延長にあわせて、港湾年金の支給要件を改定することが決まりました

一方、産別最低賃金の引き上げについては、雇用主側が「独占禁止法に抵触する」と主張。2020年7月現在も2015年の春闘時と変わらず、最低賃金は月16万4千円のままとなっています。

事例3:両備バス労働組合

2018年4月、岡山県南部を主要エリアとするバス会社「両備バス」の労働組合が、競合他社の新規参入に対して「自社の業績悪化が見込まれ、それによって給与が下がるのではないか」という不安を訴え、ストライキを行いました。

当初はバスの運行を休止する予定でしたが、乗客への影響が大きいことから、切符の回収業務だけを放棄する「集改札スト」という手法での決行に。乗客は無料でバスに乗車できたことから、会社だけにダメージを与えたストライキとして注目を集めました。

結果:新規参入の許可取り消しに向けて裁判・敗訴

会社側は、ストライキ実施時には、新規参入の認可取り消しに向けて動くこと社員の雇用を守ることを約束。

しかし、競合他社の新規参入に対し、国に認可取り消しを求め起こした裁判では、第一審で敗訴。第二審でも、東京高裁によって「訴訟を起こす資格がない」とされ、訴えを却下した一審判決が支持されました

事例4:日本プロ野球選手会

2004年、日本プロ野球は12球団2リーグ制で運営されていましたが、赤字を抱えていた「大阪近鉄バファローズ」が同年6月、突然他球団である「オリックス・ブルーウェーブ」との合併を発表。日本プロ野球全球団の選手が所属する選手会とファンは「合併せず球団を売ることができないか」「合併を1年凍結できないか」などと交渉しましたが、球団側は却下しました。

さらに球団オーナーの間で、ダイエーとロッテが合併して10球団1リーグ制に移行する構想があることも明らかに。選手会側は12球団2リーグ制の維持を求め、2004年9月に日本プロ野球初のストライキを実施。2日間で計12試合が中止されました。

結果:「12球団2リーグ制の維持」などに合意し妥結

3度の団体交渉の末、最終的に球団側と選手会側は「12球団2リーグ制の維持を視野に入れ、新規参加チームの参加審査を行う」などの7項目に合意。大阪近鉄バファローズとオリックス・ブルーウェーブは合併こそされたものの、新規参入チーム(東北楽天ゴールデンイーグルス)によって12球団2リーグ制は維持されました

事例5:私立正則学園高等学校

私立正則学園高等学校では、毎朝6時30分から全教師が理事長室に集まる「早朝あいさつ」が行われており、長時間労働の原因となっていました。残業代の不払い問題もあり、2019年1月には教員約20人がストライキを実施。生徒には影響が出ない「早朝あいさつ」の時間帯のみ出勤することを拒否しました。

結果:あいさつの撤廃と労働環境の改善

「早朝あいさつ」は廃止され、残業代の支払いなども約束されました。

【海外】ストライキの事例4つ

事例1:フランス・年金改革スト

2019年12月5日から約50日間に渡り、フランスの労働組合であるフランス労働総同盟(CGT)による大規模なストライキが起こりました。このストライキは、マクロン大統領が年金支給額の算定方法を一元化する年金改革案を提出したことが発端となっています。

この改革案は、これまで42の職種ごとに分かれていた特別年金制度を廃止するもので、CGTに加入しているホワイトカラーや公共事業に従事する労働者など、年金制度上、これまで比較的優遇されてきた層が強い反発を示しました。ストライキ当日は首都であるパリを中心に、列車や地下鉄の運休が多発しました。

結果:コロナにより争議は一時中断

マクロン大統領は、退任時に支給される大統領特別年金を受け取らない意向を発表。その後、新型コロナウイルス感染症の拡大によって、争議は一時中断しています(2020年7月時点)。

※参考→日本経済新聞「仏で大規模スト 年金改革に反発 経済に悪影響も」日本経済新聞「フランス大統領、特別年金辞退 改革目指し制度廃止へ」

事例2:香港・逃亡犯条例に対するスト

2019年8月5日、中国や台湾、マカオなど、犯罪人引渡し協定を結んでいない地域と容疑者の引き渡しが可能になる「逃亡犯条例」の改正案に対する抗議活動が、香港各地で行われました。

当日は香港国際空港に発着する約200便が欠航。地下鉄でも、扉にリュックを挟むことで電車の出発を妨げる抗議活動が行われ、ダイヤが大幅に乱れました。

このストライキは、2019年3月から行われている「香港民主化デモ」において掲げられている五大要求のうちの1つで、唯一達成されたものです。

結果「逃亡犯条例」の改正案の撤廃を表明

大規模化していたストライキや反対デモ活動の結果、香港政府が2019年9月4日に「逃亡犯条例」改正案の撤廃を表明。10月23日には、李家超保安局長が改正案の完全撤廃を宣言しました。

※参考→朝日新聞デジタル「香港で大規模スト、200便超欠航へ 電車、バスも混乱」朝日新聞デジタル「デモ発端の「逃亡犯条例」を撤回 香港長官の更迭報道も」

事例3:ドイツ・物流倉庫スト

ドイツにあるアマゾン・ドット・コムの物流倉庫にて、2020年6月29日夜より48時間にわたるストライキが実施されました。これは、世界で爆発的に流行している「新型コロナウイルス感染症」に対する対策が十分に取られていないことに抗議するもので、従業員約2000人が参加したとされています。

結果:約4億7000万点の手指消毒剤などの提供を約束

アマゾン側は新型コロナウイルス感染症に関連する取り組みとして、世界中にある拠点に対して40億ドル(約4300億円)を投資すると回答。ドイツの倉庫には、手指の消毒剤、手袋、フェイスシールドなどを提供するとしています。

※参考→日本経済新聞「新型コロナ:ドイツのアマゾン従業員がスト コロナ対応の改善求め」CNBC「Amazon warehouse workers go on strike in Germany over coronavirus infections」

事例4:アメリカ・オンライン上でのスト

フェイスブックのマーク・ザッカーバーグCEOが、政治家の発言やニュースを検閲しないという意向のもと、トランプ大統領の攻撃的なツイートを放置した件に対し、一部の社員がストライキを実施

抗議は2020年6月1日よりオンライン上で決行され、在宅勤務中の従業員の一部がPCにログインせずに突然休暇を取得する、従業員らがツイッター上で反対意見を述べるなどの争議行為が行われました。

結果:検閲しないという方針は変わらず

マーク・ザッカーバーグCEOは今まで通りの方針で、トランプ大統領のツイートに対して特別な対応は行っていません。一方、トランプ大統領のツイート時にSNS上で加速していた「Black Lives Matter運動」に関連して、人種差別に反対する取り組む複数の団体に1000万ドルを寄付する意向を発表しました。

※参考→Business Insider Japan「フェイスブック従業員がバーチャルストライキ…トランプ発言への対応に抗議」

コラム:旅行先でストライキに巻き込まれたら?

海外では日本に比べてストライキが頻繁に行われるため、旅先で突然飛行機が欠航になったり、電車などの公共交通機関が運休となることがあります。

ストライキが行われる際は、基本的に事前に告知されていることが多いので、出発前に旅行先の大使館の公式HPや航空会社のホームページで、関連情報がないか確認すると良いでしょう。

ちなみに、EU圏ではストライキによって飛行機の遅延・欠航が発生した場合、航空会社に補償の義務はないとされていますが、実際には代替便の手配や航空券の払い戻しを受けられるケースが多いようです。

ストライキのやり方は?一人でできる?

ストライキの手順4ステップ

ストライキは、労働組合が主体となって手続きを進め、団体交渉、投票、予告通知を経て実施されます。

ストライキのやりかた・手順:団体交渉→投票→予告通知→ストライキの実施

(1)団体交渉

労働組合が雇用主に労働条件の改善を求める場合、まずは両者で交渉を行います。双方の意見が対立し、交渉では解決できない場合、ストライキを検討します。

(2)投票

ストライキを実施するかどうか、労働組合で投票を行います。組合員または組合員の中から選ばれた代議員が投票し、過半数の賛成を得られればストライキを行います

(3)予告通知

ストライキを実施することを雇用主に予告します。

加えて、運輸、郵便、電気、水道、ガス、医療などの公益事業に携わる従業員がストライキを行う場合、決行日の10日前までに労働委員会と厚生労働大臣または都道府県知事に通知する必要があります。

(4)ストライキの実施

ストライキを開始したら、すぐに労働委員会または都道府県知事に対して争議行為発生届を提出します。

ストライキ期間中は業務を止めてビラ配りや集会、演説などの抗議活動を行います。交渉の目処が立ち次第、ストライキを終了します。

一人でストライキを起こすことはできない

一人で仕事を放棄しただけではストライキとは認められません。なぜなら、ストライキなどの争議行為は、団体で行うことが前提となっているためです。

仮に会社に対して個人的な不満があり、一人でストライキを起こしたいと思った場合は、まずは団体交渉をするために、社内の労働組合に相談する必要があります。その場合も、そもそも自分の抗議内容が他の組合員の賛同を得られなければ、ストライキはおろか団体交渉すら難しいでしょう。

社内に労働組合がなくてもストライキは可能?

ユニオンに入るor新たに組合を結成すれば可能

社内に労働組合がない場合、同じ会社の複数人で、さまざまな会社の労働者が集まって結成された合同労働組合(ユニオン)に入ることで、ストライキを行うことができます。

ただ、ストライキは企業との話し合いの末に行うものなので、まずは専門知識を持つ組合員に現状を相談します。その後、必要であれば企業との話し合いの場を設け、交渉が決裂した場合にはじめて、実際にストライキを起こす流れとなります。

実際にユニオンを探す場合は、インターネット上で自分の住んでいる地域や業種に当てはまるものを選び、問い合わせてみると良いでしょう。

※参考→日本労働組合総連合会(連合)

また、新たに組合を作るというのも一つの手です。労働組合自体は、原則として従業員のうち2人以上で結成することができます。しかし、ノウハウがない状態で企業との交渉やストライキを起こすことは現実的ではないため、まずはユニオンに加入するのが得策でしょう。

※参考→安心して働きたい – 労働組合のつくり方 –

コラム:公務員はストライキを起こすができない

公務員がストライキを起こすことは、国家公務員法や地方公務員法などによって禁じられています。公務員のストライキを認めてしまうと、役所や警察、消防などの機能が止まり、国民の生活に大きな影響を与えてしまうためです。

ただし、公務員は「ストライキを起こすことができない」という制約がある代わりに、不当に解雇や減給をされないよう、法律で身分が保障されています。

ストライキを行うデメリット

ストライキには、以下の4つのデメリットがあると言われています。

【ストライキを起こすデメリット4つ】1:ストライキ中の賃金は支払われない。2:ストライキ参加によって減給されることもある。3:損害賠償を請求される可能性がある 。4:業績悪化や倒産のリスクがある	。

1:ストライキ中の賃金は支払われない

「働いていない間の賃金は請求できない」というノーワーク・ノーペイの原則により、ストライキ中は給与が支払われません。ストライキが長引けば、労働者側も経済的に苦しむことになります。

一方、所属する労働組合によっては、活動資金として組合員が月々支払っている積立金から、カットされた賃金を補償することもあります。

また、ストライキの影響で業務が中断された場合、たとえ自分がストライキに参加していなくても、賃金は全従業員一律で支払われません

2:ストライキ参加によって減給されることもある

法律上はストライキを理由とした減給や解雇は禁じられていますが、実際には会社側が「勤務態度に問題がある」などとストライキ以外の理由を作り、労働者を不当に扱う可能性があります

不当な扱いを受けた場合は、各都道府県の労働委員会に対し、会社側の対応を正してもらうための救済申立てを行うことができます。

3:損害賠償を請求される可能性がある

ストライキが正当な方法によって行われていない場合、会社側から「業務が停止したことで発生した損害」賠償するように求められる可能性があります。また、ストライキの目的や手段が適切でない場合も、刑事責任・民事責任を問われ、刑事処罰や懲戒処分を受ける可能性もあります

■正当なストライキの条件

  1. 労働組合が主体となって行う
  2. 労働条件の改善を目的に行う
  3. 暴力を用いず、正当な手段で行う
  4. 労働組合で投票を行い、代議員の過半数の賛成を得ている
  5. 団体交渉による協議を尽くしている

一方で、会社側にはストライキを理由とした解雇や減給など、労働者の権利を侵害するような「不当労働行為」を行うことが禁じられています。

4:業績悪化や倒産のリスクがある

ストライキによって業務が止まると会社の業績が悪化します。また、ストライキが起きることで他社にも「この会社には問題がある」と認識され、取引先が減る、契約を断られるといった風評被害が出る可能性もあります。

規模が小さい会社ほどダメージが大きく、最悪の場合、倒産・失職してしまう可能性があります

コラム:日本のストライキの歴史|どうして減った?

かつて日本でも海外と同様、ピーク時の1974年には1年間で9,581件ものストライキなどの争議行為が発生していましたが、2018年にはわずか58件と、近年は減少の一途をたどっています(厚生労働省調べ)。

【日本の争議行為件数の推移】 年数・総争議件数・争議行為を伴う争議(うち数)→1946年920件810件、1947年1,035件683件、1948年1,517件913件、1949年1,414件651件、1950年1,487件763件、1951年1,186件670件、1952年1,233件725件、1953年1,277件762件、1954年1,247件780件、1955年1,345件809件、1956年1,330件815件、1957年1,680件999件、1958年1,864件1,247件、1959年1,709件1,193件、1960年2,222件1,707件、1961年2,483件1,788件、1962年2,287件1,696件、1963年2,016件1,421件、1964年2,422件1,754件、1965年3,051件2,359件、1966年3,687件2,845件、1967年3,024件2,284件、1968年3,882件3,167件、1969年5,283件4,482件、1970年4,551件3,783件、1971年6,861件6,082件、1972年5,808件4,996件、1973年9,459件8,720件、1974年10,462件9,581件、1975年8,435件7,574件、1976年7,974件7,240件、1977年6,060件5,533件、1978年5,416件4,852件、1979年4,026件3,492件、1980年4,376件3,737件、1981年7,660件7,034件、1982年7,477件6,779件、1983年5,562件4,814件、1984年4,480件3,855件、1985年4,826件4,230件、1986年2,002件1,439件、1987年1,839件1,202件、1988年1,879件1,347件、1989年1,868件1,433件、1990年2,071件1,698件、1991年1,292件935件、1992年1,138件788件、1993年1,084件657件、1994年1,136件628件、1995年1,200件685件、1996年1,240件695件、1997年1,334件782件、1998年1,164件526件、1999年1,102件419件、2000年958件305件、2001年884件246件、2002年1,002件304件、2003年872件174件、2004年737件173件、2005年708件129件、2006年662件111件、2007年636件156件、2008年657件112件、2009年780件92件、2010年682件85件、2011年612件57件、2012年596件79件、2013年507件71件、2014年495件80件、2015年425件86件、2016年391件66件、2017年358件68件、2018年320件58件

1974年は、前年の第一次オイルショックによる約20%の物価上昇により「賃上げ」を求めるストが多発。翌年の春闘は「国民春闘」とも表現され、最終的に主要企業で約32%の賃上げが実現しました。また、国鉄(現JR各社)や電電公社(現NTT)などの公共企業を率いる労働組合や、官公庁がストライキの権利を主張した「スト権奪還スト」が実施されたことも、この年にスト数が最大となっている一因です。

以降、日本のストライキは生活水準の安定を求める「生活防衛闘争」の色が強くなっていき、労働運動も交渉をメインとしたため、ストライキの件数は減少傾向に転じました。

その後、1970年代後半~80年代前半には、家電製品や自動車の輸出が活発になり、経常収支(貿易収支など)の黒字化が進んだことで、再び「賃上げ」「残業時間削減」を掲げた労働運動が加速。ストライキの件数も一時的に増加しました。

また、同時期に、元来思想や産業ごとに分かれていた各労働組合が、現在の全国中央組織である「日本労働組合総連合会」に統一されていきます。労働組合が規模の拡大に比例して影響力を強めたことで、企業側もおのずと労働環境を整えなければならなくなったため、労働問題は自然と解消し、スト行為自体も減少していきました。

こうした歴史的背景以外にも、近年日本でストライキが激減した理由として、以下のようなものが考えられています。

  • 不況により、企業に大きな影響を与えられず、実施のメリットが少ない
  • 組合に加入していない労働者が多く、ストライキの実施方法も継承されない

ストライキ=集団での仕事の放棄は、好景気のときには企業に莫大な損害を与えますが、不景気では与えられるインパクトが小さくなります。また、スト実施日には賃金が払われないため、仮に「賃上げ」を叫ぶのであれば、大きな見返りも期待できず割りに合わない行為となってしまいます

また、ストライキの減少に伴い、労働組合自体への関心が薄れたことも要因の1つです。労働組合への加入者の割合(組織率)も減り、いざ企業に不満を訴えようとしても、そもそも労働組合を通して交渉するという手段が思い浮かばなかったり、「ストライキ」が選択肢としてでてこないということもあるでしょう。

賃金や労働時間などの待遇が、1970年代に比べて大幅に改善されていることがストライキ減少の最も大きな要因と言えますが、最近では、新型コロナウイルス感染症の流行によって、非正規雇用労働者の雇用が突然打ち切られたり、休業手当や賞与が支払われなくなったりといった労働問題が再び増えてきています

今後もスト実施件数は減少して0に近づくのか、それとも諸外国に習い息を吹き返すのか。これからの日本国内でのストライキ事情に要注目です。

まとめ

ストライキは立場の弱い労働者にとって、雇用主と対等に交渉するための重要な権利です。

ただし、ストライキは労働者にとっても不利益を被るリスクがあるため、まずは交渉を尽くし、最終手段として用いるのが現実的でしょう。

この記事の監修者

社会保険労務士

山本 征太郎

山本社会保険労務士事務所東京オフィス

静岡県出身、早稲田大学社会科学部卒業。東京都の大手社会保険労務士事務所に約6年間勤務。退所後に板橋区で約3年開業し、2021年渋谷区代々木に移転。若手社労士ならではのレスポンスの早さと、相手の立場に立った分かりやすい説明が好評。様々な業種・規模の会社と顧問契約を結び、主に人事労務相談、給与計算、雇用保険助成金などの業務を行う。

山本社会保険労務士事務所東京オフィス 公式サイト

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