賃金格差はある? 正規雇用とは|非正規との違いって?

正規雇用とは、原則として雇用期間の定めがないフルタイム勤務の雇用形態。一方、非正規雇用は、正規雇用以外の全ての雇用形態を指します。

この記事では賃金や労働時間、保険加入など、正規・非正規の違いや知っておきたい知識について詳しく解説いたします。

正規雇用とは? 非正規との違いも解説

まずは、正規雇用の定義について、非正規雇用と比較しつつご紹介します。

正規雇用とは無期雇用・フルタイム勤務

正規雇用(正社員)とは一般的に、フルタイム勤務(1日8時間で週5日勤務など)で雇用期間、勤務地、職務内容に制限がない働き方のことです。

勤務先の企業に直接雇用され、定年まで働くことができます。

近年は、時短正社員、勤務地限定正社員、ジョブ型雇用などの従来の正規雇用から派生した働き方も見られるようになっています。

非正規雇用とは正規雇用以外の全ての雇用形態

非正規雇用とは正規雇用以外の全ての雇用形態を指します。再契約による更新はあるものの、雇用期間が決まっている有期雇用であるケースが多いでしょう。

非正規雇用の形態は多様ですが、代表的なものとして以下の5種類に分類されます。

【代表的な非正規雇用の形態6種】以下、呼称:勤務形態。(1)パート/アルバイト:・正社員よりも勤務時間が短い。・時給制のケースが多い。(2)派遣社員:・派遣会社と雇用契約をして、派遣先の企業の規定に合わせて働く。(3)契約社員:・あらかじめ雇用期間が決まっている。・更新しなければ労働契約が自動的に終了。(4)臨時社員:・雇用期間や労働時間などの勤務条件を企業と個別に契約し、比較的短い期間で働く。※パートタイマー・契約社員・嘱託などと呼ばれることもあるが、厳密な区別はない。(5)嘱託社員:・雇用期間が決まった臨時の社員に使われることが多いが、明確な定義はない(例:定年後の再雇用社員)

正規雇用と非正規雇用の違いは労働時間・雇用期間・待遇

正規雇用と非正規雇用は、労働時間・雇用期間・待遇の3点で異なります。その比較は以下の表の通り。

【正規雇用と非正規雇用の違い】以下、ポイント:正規雇用:非正規雇用。労働時間:フルタイム:個々の雇用形態による。雇用期間:定めがない無期雇用:定めがある有期雇用。待遇:給与や手当が手厚いことが多い:正規雇用に比べて劣る傾向にある

正規雇用の場合はフルタイムで働くことになるため、雇用保険・社会保険への加入が必要になります。

一方、非正規雇用者は一定の要件を満たせば雇用保険・社会保険に加入できるものの、雇用期間・労働時間の短さから加入できない場合もあります。

労働者が正規or非正規で働くメリット・デメリット

正規雇用のメリット・デメリットを紹介したうえで、それぞれの働き方がどのような人に向いているのかを解説いたします。

正規雇用で働くメリット・デメリット

正規雇用のメリット、デメリット

  • メリット安定性と待遇の良さ

正規雇用として働くメリットは、賃金や福利厚生などの待遇が良く、安定している点です。

正規雇用は契約期間の定めがないため、会社の倒産などの大きな問題が起きた場合を除き、職を失う可能性が低いです。

そのため、社会的信用度が高くローンなども組みやすいです。

さらに、昇給・昇格の制度があり、ボーナス・退職金が支給されることも多いため、非正規の場合に比べて年収が高くなる傾向にあります。

また、住宅手当、資格手当などの会社ごとに用意された福利厚生もフルに活用できます。

  • デメリット拘束性と責任の重さ

正規雇用の場合、長期的な人材育成の観点から、異動や転勤を命じられることがあります。場合によっては、本人の希望とは全く異なる辞令を受けることもあるかもしれません。

また、非正規社員よりも責任の大きい仕事を任される場合が多いため、残業や休日出勤が発生しやすい傾向にあります。

非正規雇用で働くメリット・デメリット

非正規雇用のメリット、デメリット

  • メリット会社に縛られない働き方

非正規雇用で働くメリットは、残業などで会社に縛られるリスクが少ない点です。

アルバイト・パートの場合、自分の働きたいときに働き、後はプライベートを充実させるということも可能でしょう。

また、仕事内容や責任の範囲が契約時に明示されていることが多いため、正規雇用のように希望とは違う仕事を命じられるケースは少ないです。

  • デメリット待遇面と安定性の低さ

非正規雇用は正規雇用に比べて賃金が低く抑えられることが多く、昇級・昇格もあまり望めません。

また、ボーナス、退職金、住宅手当などが受け取れないことが多いです。

雇用期間に定めがある有期雇用のため、契約期間を迎えたり、企業の業績が悪化した際に契約が打ち切られるリスクがあります。

そのため、将来設計がしにくく、安定性は低いといえるでしょう。

正規雇用と非正規雇用にまつわるQ&A

正規雇用と非正規雇用にまつわる疑問についてQ&A形式で解説します。

正規雇用と非正規雇用の賃金格差はどれくらい?

2017年の正規雇用労働者の平均賃金(時給換算)は1,937円、非正規雇用労働者は1,293円(いずれも所定内給与額ベース)。

正規雇用の平均賃金が非正規雇用の1.5倍近いという結果を示しています。

※参考:非正規雇用の現状と課題|厚生労働省(2018年)

また、大企業で長く勤めるほど格差が大きくなる傾向にあります。これは、勤続年数が長くなるにつれて、昇進・昇給による賃金格差が積みあがるためだと考えられます。

正規雇用と非正規雇用の割合は?

2017年の非正規雇用の割合は、雇用者全体の37.3%。つまり、正規雇用と非正規雇用の割合は約6:4で正規雇用の方が多いということになります。

雇用形態ではパート・アルバイトが増加傾向にあり、非正規雇用者のうち14.3%は正規雇用の機会がないため、不本意ながら非正規雇用で働いているという調査結果が出ています。

※参考:非正規雇用の現状と課題|厚生労働省(2018年)

企業に正規雇用を促す助成金とは?

政府は、非正規雇用労働者の企業内でのキャリアアップ等を促進するため、「キャリアアップ助成金制度」を設けています。

これは正社員化や待遇改善など、非正規雇用労働者のキャリアアップをサポートする施策を行った企業に対し、助成金を支給する制度です。

例えば、非正規雇用者の正社員への転換や、契約期間の無期化などを実施するといった具合です。

ただし、「契約の無期化(無期雇用)=正規雇用」ではないので注意。

パートや契約社員、派遣社員といった非正規雇用の社員が無期雇用に転換した場合、「契約期間の定め」がなくなるだけで、業務内容や待遇は以前の契約と変わらないことも。

正規雇用と無期雇用を混同しないよう注意しましょう。

キャリアアップ助成金制度には、非正規雇用労働者の待遇改善を促進する「賃金規定等改定コース」「短時間労働者労働時間延長コース」や、正規雇用への転換を促し雇用の安定を図る「正社員化コース」などのコースが設けられています。

正規・非正規の現状は?

待遇や雇用の安定性といった面での正規・非正規の格差はまだまだ大きく、解消するため試行錯誤が重ねられている段階です。

例えば、総合スーパーを展開するイオンでは、2023年3月にパート従業員など非正規社員の待遇を、同じ業務を担う正社員と同等にする制度を開始。待遇を改善することで、既存社員の定着や新たな人材の獲得につなげるといいます。

また、2021年には正規・非正規といった雇用形態だけではなく、業務内容に応じて待遇を決める「同一労働同一賃金」制度が施行され、格差是正は大手企業を中心に推進されつつあります。

とはいえ、待遇や雇用の安定性といった面での正規・非正規の格差はまだまだ大きいのが現状です。2023年2月には、労働組合がない非正規雇用者らによって、一律10%の賃上げを求める「非正規春闘」も行われ、当事者による格差是正へ向けた動きも活発化しています。

まとめ

正規雇用と非正規雇用、それぞれの雇用形態の特徴や違いについてご紹介しました。

どちらの雇用形態がより自分にふさわしいかは、仕事に何を求めるか、どんな働き方をしたいのかによって変わってくるといえそうです。

この記事の監修者

社会保険労務士

三角 達郎

三角社会保険労務士事務所

1972年福岡県生まれ。東京外国語大学卒業。総合電気メーカーにて海外営業、ベンチャー企業にて事業推進を経験後、外資系企業で採用・教育・制度企画・労務などを経験。人事責任者として「働きがいのある企業」(Great Place to Work)に5年連続ランクインさせる。
現在は社会保険労務士として、約20年の人事キャリアで培った経験を活かして、スタートアップ企業や外資系企業の人事課題の達成から労務管理面まで、きめ細やかにサポートを行っている。
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