賃金格差はある? 正規雇用とは|非正規との違いって?
正規雇用とは、原則として雇用期間の定めがないフルタイム勤務の雇用形態。一方、非正規雇用は、正規雇用以外の全ての雇用形態を指します。
この記事では賃金や労働時間、保険加入など、正規・非正規の違いや知っておきたい知識について詳しく解説いたします。
正規雇用とは? 非正規との違いも解説
まずは、正規雇用の定義について、非正規雇用と比較しつつご紹介します。
正規雇用とは無期雇用・フルタイム勤務
正規雇用(正社員)とは一般的に、フルタイム勤務(1日8時間で週5日など)で雇用期間に期限がない無期雇用の働き方のこと。
勤務先の企業に直接雇用され、転職をしない限りは定年まで働くことができます。
ただし、企業が制度として認めれば1日6時間などの柔軟な働き方もできます。
例えば「改正育児・介護休業法」により、3歳に満たない子供を育てている場合はどの企業でも1日原則6時間の時短勤務(短時間勤務)が認められることとなっています。
非正規雇用とは正規雇用以外の全ての雇用形態
非正規雇用とは正規雇用以外の全ての雇用形態を指します。再契約による更新はあるものの、雇用期間が決まっている有期雇用である点が特徴といえるでしょう。
非正規雇用の形態は多様ですが、代表的なものとして以下の6種類に分類されます。
正規雇用と非正規雇用の違いは労働時間・雇用期間・待遇
正規雇用と非正規雇用は、労働時間・雇用期間・待遇の3ポイントで異なります。その比較は以下の表の通り。
正規雇用の場合はフルタイムで働くことになるため、雇用保険・社会保険への加入がマストとなっています。
一方、非正規雇用者は一定の要件を満たせば雇用保険・社会保険に加入できるものの、雇用期間・労働時間の短さから加入できない場合も多いです。
ただ、正規雇用と非正規雇用に明確な定義はなく、非正規雇用の保険加入の判断は企業に依るところが大きいのが実情です。
労働者が正規or非正規で働くメリット・デメリット
正規雇用のメリット・デメリットを紹介したうえで、それぞれの働き方がどのような人に向いているのかを解説いたします。
正規雇用で働くメリット・デメリット
- メリット:安定性と待遇の良さ
正規雇用のメリットは、非正規雇用に比べて賃金や福利厚生などの待遇が良く、安定している点です。
正規雇用は契約期間の定めがない無期雇用のため、自ら望んだ場合や会社の倒産などよっぽど大きな問題が起こった場合を除き、職を失う心配がありません。
そのため、社会的信用度が高くローンなども組みやすいです。
さらに、昇給・昇格の機会が制度として設けられており、ボーナス・退職金をもらえることも多いため、非正規の場合に比べて年収が高くなる傾向にあります。
また、住宅手当、資格手当などの会社ごとに用意された福利厚生もフルに活用できます。
- デメリット:拘束性と責任の重さ
正規雇用の働き方は、あらかじめ仕事内容が明確に定められていないことが多く、会社が命じた仕事に従事しなければなりません。
たいていの場合希望を伝えることはできるものの、望まない仕事に従事しなければならないケースもあります。異動や転勤も命じられます。
また、非正規社員よりも裁量の大きい仕事を任される場合が多いため、残業や休日出勤が発生しやすい傾向にあります。
月給が極端に低ければ、時給換算で非正規社員以下になる可能性もないとはいえません。
非正規雇用で働くメリット・デメリット
- メリット:会社に縛られない働き方
雇用期間に期限がある非正規雇用は、残業などで会社に縛られるリスクが少ない点がメリットです。
アルバイト・パートなどの働き方であれば、自分の働きたいときだけ働き、後は休みということも可能でしょう。
また、仕事内容や責任の範囲が契約時に明示されていることが多いため、正規雇用のように希望とは違う仕事を命じられるケースは少ないです。
- デメリット:待遇面と安定性の低さ
非正規雇用は正規雇用に比べて賃金が低く抑えられることが多く、昇級・昇格もあまり望めません。
また、ボーナス、退職金、住宅手当などが受け取れない可能性も高いです。
雇用期間に定めがある有期雇用のため、契約期間を迎えたり、企業の業績が悪化したりした際に契約が打ち切られるリスクがあります。
そのため、将来設計がしにくく、安定性は低いといえるでしょう。
正規雇用と非正規雇用にまつわるQ&A
正規雇用と非正規雇用にまつわる疑問についてQ&A形式で解説します。
正規雇用と非正規雇用の賃金格差はどれくらい?
非正規雇用と正規雇用の賃金格差(時給換算)は、所定内給与額ベースで1.5倍、ボーナスや手当も含めた年収ベースで1.8倍程度、正規雇用が非正規雇用を上回る結果となっています。
所定内給与額とは、給与のうち残業などの時間外労働やボーナスなどを引いたものです。
2017年の正規雇用労働者の平均賃金(時給換算)は1,937円、非正規雇用労働者は1,293円(いずれも所定内給与額ベース)。
こちらも正規雇用の平均賃金が非正規雇用の1.5倍近いという結果を示しています。
また、大企業で長く務めるほど格差が大きくなる傾向にあります。これは、勤続年数が長くなるにつれて、昇進・昇給による賃金格差が積みあがるためだと考えられます。
正規雇用と非正規雇用の割合は?
2017年の非正規雇用の割合は、雇用者全体の37.3%。つまり、正規雇用と非正規雇用の割合は約6:4で正規雇用の方が多いということになります。
雇用形態ではパート・アルバイトが増加傾向にあり、非正規雇用者のうち14.3%は正規雇用の機会がないため、不本意ながら非正規雇用で働いているという調査結果が出ています。
企業に正規雇用を促す助成金とは?
政府は、非正規雇用労働者の企業内でのキャリアアップ等を促進するため、「キャリアアップ助成金制度」を設けています。
これは正社員化や待遇改善など、非正規雇用労働者のキャリアアップをサポートする施策を行った企業に対し、助成金を支給する制度です。
例えば、非正規雇用者の正社員への転換や、契約期間の無期化などを実施するといった具合です。
ただし、「契約の無期化(無期雇用)=正規雇用」ではないので注意。
パートや契約社員、派遣社員といった非正規雇用の社員が無期雇用に転換した場合、「契約期間の定め」がなくなるだけで、業務内容や待遇は以前の契約と変わらないことも。
正規雇用と無期雇用を混同しないよう注意しましょう。
キャリアアップ助成金制度には、非正規雇用労働者の待遇改善を促進する「賃金規定等改定コース」「短時間労働者労働時間延長コース」や、正規雇用への転換を促し雇用の安定を図る「正社員化コース」など7つのコースが設けられています。
正規・非正規の現状は?
待遇や雇用の安定性といった面での正規・非正規の格差はまだまだ大きく、解消するため試行錯誤が重ねられている段階です。
特にここ最近のトピックとなっていたのが「2018年問題」。雇用の定めのある非正規社員の契約が更新されず、大量の失業者が生まれることを指します。
2013年、1年更新の雇用契約で働く派遣社員はその契約が5年を超えて更新された場合は無期契約で働くことができるという「無期転換ルール」が導入されました。
そこから5年後となる2018年。無期雇用への転換を果たす非正規社員が生まれたと同時に、無期契約を嫌った企業が5回目の契約を結ばない(=雇い止め)問題も生じたのです。
今後、正規・非正規といった雇用形態ではなく、業務内容に応じて待遇を決める「同一労働同一賃金」制度が、大企業では2020年4月、中小企業では2021年4月に導入されるなど、格差是正は推進されつつあります。
とはいえ、2018年問題のような問題が発生しないとは限りません。社会全体で格差の是正に協力する意識が求められます。
コラム:正規雇用を英語でいうと?
近年、「海外で正規雇用者として働きたい」と考える人も多いようです。
海外の正規雇用求人をネットで検索する際などには、「正社員や正規雇用形態を英語で何というか?」を覚えておくと便利です。
【正規雇用にまつわる英語表現】
正規雇用の従業員(=正社員)
- A permanent staff (employee, worker)
- A full-time staff (employee, worker)
- A full-time salaried worker
正規雇用形態
- Regular employment
正社員を意味する表現にもいくつか種類がありますね。
海外での就職や転職を検討している人は参考にしてみてください。
まとめ
正規雇用と非正規雇用、それぞれの雇用形態の特徴や違いについてご紹介しました。
どちらの雇用形態がより自分にふさわしいかは、仕事に何を求めるか、どんな働き方をしたいのかによって変わってくるといえそうです。
この記事の監修者

社会保険労務士
山本 征太郎
山本社会保険労務士事務所東京オフィス
静岡県出身、早稲田大学社会科学部卒業。東京都の大手社会保険労務士事務所に約6年間勤務。退所後に板橋区で約3年開業し、2021年渋谷区代々木に移転。若手社労士ならではのレスポンスの早さと、相手の立場に立った分かりやすい説明が好評。様々な業種・規模の会社と顧問契約を結び、主に人事労務相談、給与計算、雇用保険助成金などの業務を行う。