正社員や掛け持ちの場合は? マイナンバーで副業が勤務先にバレる?
2015年10月以降に交付されたマイナンバー。「提出すると副業がバレるのでは?」と不安に感じている人も多いのではないでしょうか?
マイナンバーと副業の関係や、副業が会社にバレないようにする方法について、Q&A形式で解説します。
Q1:副業はマイナンバーで会社にバレない?
最近になって副業を始めました。
微々たる収入ではあるものの、会社ではまだ副業が解禁されておらず、バレるのが怖いです。
マイナンバーの提出で副業が会社にバレることはあるのでしょうか?
マイナンバーカードを提出しても、会社に副業がバレることはありません。その理由は以下の2つです。
行政から会社に通知が行くことはないから
収入や納税額に関して、会社から行政への問い合わせはNGだから
2つの理由について、詳しく見ていきましょう。
行政から会社に通知が行くことはないから
副業をしているからといって、行政から会社に個人の副業を通知するようなことはありません。
マイナンバーはそもそも、国民一人ひとりに番号を割り当てることで、社会保障・税・災害分野で個人の情報を把握しやすくする制度です。
たしかに、マイナンバーによって税務署が個人の収入をより正確に把握することができるようになりました。
ただし、行政が本業の勤務先に「この人は副業をしていますよ」と教えるようなことはありません。
内閣府のホームページにも、「マイナンバー制度の導入により副業を行っている事実が新たに判明するものではありません」との記載があるように、マイナンバーによって副業がバレることはないのです。
収入や納税額について、会社から行政への問い合わせはNGだから
「あなたが副業しているかどうか」を調査するため、会社が収入や納税額について行政に問い合わせることはできません。
行政はマイナンバーから個人の副業状況を知ることができますが、正当な理由なしに第三者に開示することはありません。
もし会社があなたの副業を怪しんでいたとしても、マイナンバーを使って現在や過去の副業を知ることはできませんし、納税額などもわかりません。
Q2:マイナンバーを提出しないのはOK?
マイナンバーで副業が会社にバレることはない、ということはわかりました。
でも、収入や納税額などいろいろと管理されているようで怖いです。
できればマイナンバーを提出したくないのですが、提出しなくても良いのでしょうか?
会社にマイナンバーの提出を求められた場合、しっかりと提出するようにしましょう。
そもそも会社がマイナンバーを提出させる目的は、雇用保険、社会保険、年金、年末調整などの手続きの簡略化です。
企業は給与所得の源泉徴収票や金銭の支払いなどに係る法定調書に、マイナンバーを記載して行政機関に提出することが法律で義務付けられています。
くり返しになりますが、マイナンバーの提出によって会社に副業がバレることはありませんので、会社に提出を求められた場合、すみやかに対応しましょう。
Q3:マイナンバー以外で副業がバレる?
ときどき「副業が会社にバレた」という情報も目にします。
マイナンバーで副業がバレないとしたら、一体どうやって副業がバレてしまうのでしょうか?怖いので教えてください。
マイナンバーがきっかけで会社に副業がバレる可能性は低いものの、以下の2つのきっかけから、副業がバレることがあります。
副業について話した人から噂が広まる
住民税の納税額からバレる
周囲の人間から伝わって副業がバレることは十分考えられます。
同僚に副業していることを打ち明けた場合、社内に広まってしまうこともあります。副業していることをバラしたくない場合、本当に信頼できる人以外と、副業について話すはやめましょう。
また、住民税で会社に副業がバレることもあります。次の章でその理由と対策についてお話ししていきます。
Q4:住民税で副業がバレるのはどうして?
住民税の手続きによって、会社に副業がバレてしまうとのことですが、一体どういうことでしょうか?
住民税の手続きによって職場に副業がバレる可能性があるのは、住民税が「特別徴収」になっているからです。
住民税で副業でバレるのは、「特別徴収」が原因です。住民税はほとんどの場合、給与から直接天引きされる「特別徴収」がデフォルトとなっています。面倒な納税の手続きを、会社が代理でやってくれているわけです。
しかし、本業の住民税も副業の住民税も「特別徴収」のままにしていると、毎年5月31日までに税務署から本業の勤め先に、副業の収入も含めた「特別徴収税額の決定通知書」が送付されてしまいます。
その際、住民税の金額が本業の収入で課せられる分より多いことで、副業について追及されるのはよくあるパターンです。
Q5:住民税で副業がバレる…対策はないの?
住民税で副業がバレないようにするための対策を教えてください。
副業が会社にバレないようにする一番の方法は、住民税を自分で納付する「普通徴収」を行うことです。
普通徴収の手続き方法について、詳しく説明します。
普通徴収の手続き方法
副業を会社に知られないよう住民税を自分で納付するには、確定申告を自分でする必要があります。
そのときに、住民税を「普通徴収」に変更することができます。確定申告の方法は以下の通りです。
- 時期:毎年2月16日~3月15日の1ヶ月間
- 提出場所:住民票のある住所を管轄する税務署やショッピングモール・コミュニティセンターなどの確定申告会場(郵送やe-Taxでの提出も可)
- 持ち物:確定申告書、源泉徴収票、社会保険の支払い証明書、保険料の控除証明書、医療費の領収書、印鑑など
※必要な持ち物は個人によって異なりますので、詳しくは国税庁のサイトをご覧ください→『確定申告の際にご持参いただくもの』|国税庁
納付方法を変更するには確定申告書 第二表『給与所得以外の住民税の徴収方法の選択』にある、「自分で納付(普通徴収)」欄に丸をつけましょう。
所得税確定申告書A様式
所得税確定申告書B様式
「自分で納付」に丸をつけ、確定申告の期間内に手続きを行うことで副業から収入を得ている方は、自分で住民税を納付する方法に切り替えることができます。
必要な手続きはこれだけですが、念のため書類提出後に住んでいる市町村に確認の電話を入れておくと良いかもしれません。
手続きミスにより特別徴収されてしまうこともあり得るので、「副業を会社に知られたくないから普通徴収にしたい」という希望を伝え、確実に普通徴収されるようにしておくと良いでしょう。
普通徴収は年4回に分けて徴収されます。手続きが完了すると6月中旬頃に「納付書兼納入済通知書」と呼ばれる納付書が1~4期の4枚分自宅に届きます。うっかり支払いを忘れてしまうと督促を受け、財産の差し押さえという事態にもなりかねないので、早めに指定のコンビニや金融機関で支払いを済ませることをおすすめします。
ただし、副業の収入が給与所得として企業から支払われている方は注意が必要です。
税法上、給与所得は本業・副業問わず合計した上で、メインの勤務先に特別徴収してもらうことになっています。副業先から給与所得を受け取っている方は、普通徴収を選んだとしても行政側の手続きによって特別徴収に切り替えられることもあるのです。
自治体によっては、給与所得でも事情を話せば普通徴収にしてくれるところもあるようなので、副業を行う前に、住んでいる市町村がどのような対応をしているか確認しておくことが大切です。
所得額20万円以下でも住民税の納付は必要
副業での所得額が20万円以下なら確定申告に関する手続きは不要ですが、住民税に関する手続きや納付は必要です。
住民税は本業の所得との合計で算出されるので、収入の金額にかかわらず申告しなければなりません。
副業の収入が20万円以下で確定申告を行っていない方は、住んでいる市区町村に所得申告し、普通徴収にチェックするのを忘れないようにしてください。
市区町村への所得申告期間は、確定申告と同じ2月16日から3月15日となっています。申告書は住んでいる市区町村の税務署窓口もしくは、ホームページからダウンロードできるので、期間内に申告できるように準備しておきましょう。
市区町村によって、収支内訳書や帳簿書類など必要な書類や添付資料が異なるため、早めの確認をおすすめします。
確定申告をすると税務署から自動的に市区町村にデータが送られるので、市区町村への住民税の申告は不要になります。副業の収入が給与所得でない方は確定申告の際に住民税の納付方法を「普通徴収」にしておきましょう。
確定申告しないとどうなる?
副業をバラしたくないために確定申告をしない方もいますが、収入が20万円以上あるのに確定申告をしないと無申告課税が課されます。
国税庁によると、 納付すべき税額に対して、50万円までは15%、50万円を超える部分は20%の割合を乗じて計算した金額が無申告課税として請求されます。
ただし税務署の調査前に自分で期限後申告をすれば5%に緩和されるので、早めの対処が重要です。
心当たりのある方は少しでもペナルティを軽くするために、税の相談窓口に連絡し、どのような手続きをすべきか確認してください。
※詳しくはこちら→確定申告を忘れたとき(国税庁)/税についての相談窓口(国税庁)
Q6:副業・投資をするときの注意点って?
住民税の手続き以外にも、副業をする上で気をつけた方がいいことはありますか?
副業をするときに注意したいポイントは、どんな副業をするのか、あるいは働き方によって違います。
以下の4つのケースについて、詳しく説明します。
本業が公務員のケース
アルバイトを掛け持ちするケース
給料が「手渡し」の内職や日雇いで働くケース
株やFXをするケース
公務員はしっかりと申告することが重要
公務員の副業は国家公務員法第103、104条、地方公務員法第38条により副業は原則禁止とされています。
※参考:アルバイト等の制限(人事院)/地方公務員法(e-Gov)
しかし、全ての副業が禁止されているわけではありません。職務に関連して利害関係が生じることがなく、公務に影響がないと認められる業種に関しては副業可能です。
具体的には「不動産賃貸」「株式・FX・仮想通貨」「講師・講演」「執筆」「小規模農場」などが挙げられます。
さらに、神戸市や奈良県の生駒市では地域活動の貢献につながるようなものも(NPO法人や有償ボランティア、サッカーのコーチなど)副業が許可されており、公務員の副業を容認する動きが広がっているようです。
※参考:公務員の〝副業解禁〟自治体にもジワリ 神戸市、奈良・生駒市で基準明確化|産経新聞
また、2018年6月から、「公益的活動」を目的とする副業が解禁されました。具体的には、地域貢献活動などを中心としたNPO法人や非政府組織(NGO)の活動が挙げられます。
上記のような副業を始めたいと思っている人は、上司に相談してみましょう。
※参考:国家公務員の兼業、政府が容認へ 公益活動に限定|日本経済新聞
バイト掛け持ちの場合は確定申告が必要
バイトを掛け持ちしている方の場合、合計の年間所得が103万円を超えると所得税の課税対象となります。確定申告を期間内に行いましょう。
ただし、収入の多いメインのバイト先で年末調整を受けており、副業先の収入が20万円以下の場合は確定申告が不要です。この場合は、副業先に関する住民税の申告だけが必要です。
また副業の収入が20万円以下でも源泉徴収が行われていた場合は返還金があります。アルバイト先から源泉徴収票を受け取り、期間内に確定申告を行えば、1ヶ月~1ヶ月半後にはお金が戻ってきます。
源泉徴収されているかどうかは、源泉徴収票の源泉徴収金額で確認できるので、必要に応じて確定申告を行いましょう。
給与手渡しの内職や日払いでも確定申告は忘れずに
副業が手渡しの内職や日払いでも確定申告は必要です。「面倒だし、どうせバレないだろう」と放置するのは避けてください。
マイナンバー導入以前は、個人の副業を把握するのが難しい現状もあったため、確定申告しなくてもバレずに済んだケースもありました。しかし、現在では「給与支払報告書」にマイナンバーの記載が義務付けられており、手渡しで給料を受け取っていても税金の未納が国にバレるようになっています。
脱税をしていたことがバレれば、会社からの信頼を失い、最悪の場合は懲戒解雇されてしまうこともあるでしょう。税金の手続きは、どんな場合であっても必ず規定通りに行いましょう。
株やFXをしている方は特定口座を開設しよう
本業とは別に株やFXなどで所得を得ている方は、特定口座を開設しておくと便利です。
証券会社の口座には一般口座と特定口座があり、特定口座の中には源泉徴収有りと無しのものがあります。
源泉徴収ありの特定口座を開設しておけば、所得税や住民税などの支払うべき税金を全て源泉徴収してくれるため、確定申告や住民税の申告を自分でする必要がありません。
収入が20万円以下だと確定申告が不要なので、株やFXでの稼ぎが20万以下の場合は、源泉徴収されない方がお得な気がするかもしれません。
しかし、少しでも利益が出れば住民税の支払いが必要になるので、株やFXでの副業を会社に知られたくない方は、源泉徴収ありの特定口座を選びましょう。
コラム:副業を始める前に会社の就業規則の確認を
副業が原因で本業を失わないためにやっておくべきことは、会社の就業規則の事前確認です。
前述のように公務員であれば副業は原則禁止です。しかし、企業の中には「副業禁止」と明記されているところもあれば「許可さえ取れば可能」というところもあり、副業に関する対応は異なります。
バレないように策を講じるにしても、ルールがわからなければ適切な対策が取れません。安全に副業を営むためには、勤務先の就業規則を確認することが不可欠です。
まとめ
マイナンバーが直接の原因となって、副業がバレるわけではないことがわかりました。ただし、確定申告や住民税の取り扱い方に注意するなど、自分で対策しないとマイナンバー以外の要因から副業がバレてしまうリスクもあります。
些細なことでバレてしまわないように、必要な手続きをしっかり行いましょう。