うまく転職する方法を徹底解説 競合他社への転職は裏切り?

競合他社への転職は「裏切りと言われないか?」「そもそも法律的に大丈夫か?」と心配な点も多いことでしょう。この記事では、その疑問に答えます。

競合他社への転職は裏切り行為?

競合他社に転職する場合、「上司から悪く言われるのではないか」「法律上の問題はないのか」「誓約書を書かされた内容の違反になるのではないか」など、さまざまな悩みが生じるのではないでしょうか。

競合他社への転職は法律上禁止されていない

そもそも競合他社への転職は、法律上は禁止されていません。

日本では職業選択の自由が憲法で保障されています。そのため、本来どの企業に転職しようと問題はないのです。

誓約書の法的拘束力は低い

企業によっては、入社時もしくは退職時に競合他社への転職をしないという誓約書を書かされることがあります。しかし通常、誓約書の法的拘束力は低いです。

これは、憲法上の職業選択の自由が優先されるから。裁判では、誓約書の内容は合理的なものではないと判断されることが多いです。

ただし、法的拘束力が低いからと言って誓約書に安易にサインをするべきではありません。誓約書に書かれている項目、期間や範囲について納得した上でサインをするようにしましょう。

競業避止義務のある会社では訴えられる可能性も

誓約書の法的拘束力は低いものの、「競業避止義務」が成立している場合には訴えられる可能性があります。

「競業避止義務」とは、同業他社への転職や同業での独立をある一定の期間禁止する義務のこと。会社独自の技術やノウハウ、顧客情報を競合他社に利用されないために定められています。

ただし、一般社員の場合には競業避止義務よりも「職業選択の自由」の方が優先される場合が多いです。競業避止義務が認められるのは「幹部クラスの社員が、顧客リストやクライアントの内部情報など、会社での地位を利用して得た情報を持って競合他社に転職した」といった限られたケースとなります。

また、その場合でも違約金の支払いや退職金の一部カットなどの対処で終わるケースが主流です。

前職の経営者・従業員から悪く思われても気にしない

競合他社に転職したからといって、前職の経営者や従業員からは「結局は仕方のないこと」と受け止められることがほとんどでしょう。

良くない感情を持つ人がいたとしても、法的に問題のある行為をしているわけではありません。気にせず堂々としていましょう。

【コラム】同僚を誘って一緒に転職するのはあり?

競合他社に転職する場合、同僚を誘って一緒に転職するといった連れ出し行為が行われることがあります。これは問題になるのでしょうか。

結論からいうと、こちらも法律上問題のない行為です。

前述のように、日本では職業選択の自由が憲法で保障されています。また、競合企業にも営業の自由があります。元従業員であろうと競合他社であろうと、引き抜きは違法行為とはみなされません。転職の多い時代、引き抜きをいちいち気にしていられないという事情もあるようです。

ただし、一斉かつ大量に人を巻き込んで転職する場合、雇用契約上の誠実義務に違反したとされることがあります。「単なる転職の勧誘の域を越え社会的相当性を逸脱し極めて背信的方法で行われた」とみなされる場合、損害賠償を支払う義務が生じることも。

誠実義務に違反したかどうかは転職する従業員の地位、人数、会社に及ぼす影響などを考慮して判断されます。

※出典→損害賠償請求/反訴請求事件 ラクソン等事件|公益社団法人全国労働基準関係団体連合会

競合他社に転職するときの4つのポイント

それでは、競合他社に転職するときにはどのような点に注意すれば良いのでしょうか。以下の4つのポイントを解説します。

競合他社に転職するときの注意点4つ。(1)転職先を黙っておく(2)前職の企業秘密は絶対に話さない(3)転職先の企業について調べておく(4)即戦力をアピールする

ポイント1:転職先を黙っておく

現職の同僚や上司には転職先を黙っておく方が無難です。法的には問題ないといっても、思わぬ人間関係のトラブルを引き起こしてしまう恐れも。

嘘をつく必要はありませんし、最終的には人づてに伝わってしまうかもしれませんが、あえて自分から話す必要はありません。

転職先がバレないようにするための2つのコツをご紹介します。

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会社のパソコンで転職活動をしない

転職活動は会社の人に見られない場所で行いましょう。また、会社のパソコンやメールアドレスは使わず、個人用のものを用意しましょう。

有給の理由を考えておく

面接などで有給を取る場合、「子どものイベント」「法事」「通院」などの理由を考えておきましょう。急に有給を取るようになると、転職を疑われてしまいます。

それでも心配な場合、面接日を休日にしてもらえないか転職先の企業と相談しましょう。

ポイント2:前職の企業秘密は絶対に話さない

いわゆる企業秘密は絶対に話さないよう注意しましょう。前職の機密に触れることを話した場合、競業避止義務や秘密保持義務の違反に当たり、訴えられる可能性があります。

転職活動中はもちろん、競合他社への転職が決まってからも、軽々しく重要な内容について漏らさないようにしましょう。

ポイント3:転職先の企業について調べておく

転職を希望する競合他社について、主な顧客やどの地域を中心に展開しているかをあらかじめ調べておきましょう。

同業とはいえ会社によって特徴や得意分野は異なります。今働いている企業のみならず、その業界全体をよく知っているという印象を与えられると、応募先の企業への印象が良くなります。

ポイント4:即戦力をアピールする

競合他社から転職する場合、特に即戦力の人材であることが期待される傾向にあります。

これまで似たような内容の仕事をしているので、ほかの応募者よりもスキルと経験を持っていることが見込まれるからです。企業秘密に関わらない範囲で、関わったプロジェクトの内容などを的確にアピールできるようにしておきましょう。

競合他社への転職理由の書き方【NG例も】

競合他社に転職する場合、転職理由はどのように書けば良いでしょうか。

「前の会社と同じように、うちの会社もすぐ辞めてしまうかもしれない」と思われないようにするためのポイントを詳しく見ていきましょう。

競合他社へ転職する際の転職理由の例

競合他社への転職でも説得力を持って語れる転職理由には以下のようなものがあります。

前職でできなかったことに挑戦したい

「前職でできなかったことに挑戦したい」は、前職との違いを出しつつポジティブで受け入れられやすい理由となります。

「前職ではできない規模の仕事に携わりたい」「より顧客の顔が見える仕事がしたい」など、競合他社ならではの仕事内容を転職理由に盛り込んでみましょう。

企業理念に共感した

応募先の企業理念を盛り込んだ志望動機は、前職と差別化できる要素を見つけやすくおすすめです。

また、企業理念は転職活動中の人が意外に見落としやすい部分なので、ほかの応募者と比べてオリジナリティを出すことができます。企業のHPを見れば簡単に調べられるので、確認してみましょう。

家庭の事情

結婚や親の介護など、やむを得ない事情があるというのも受け入れられやすい転職理由です。

全国転勤があるような競合他社では使えませんが、地域に密着していたり地方に本社があったりする企業では、むしろ積極的に採用されることもあります。その地域に永住する可能性が高く、滅多なことでは転職しないだろうと考えてもらえるからです。

避けた方が良いNG例

逆に、競合他社への転職において避けるべきNG表現もあります。

仕事がつまらない、マンネリ化

前職の仕事内容のマイナス面は、そのまま競合他社にも当てはまってしまうことがあります。即戦力として採用されることが多く、前職と同じような仕事を任される傾向があるからです。

同じような理由ですぐに辞めてしまうだろうと思われかねません。避けたほうが良いでしょう。

前職を悪く言う

当たり前ですが、悪口を言うことは転職先の競合他社に良い印象を与えません。

入社してからも同じように悪口を言うに違いない、他社に悪口を言いふらすかもしれないと思われる可能性が高いです。たとえ前職で嫌な思いをしていたとしても、絶対に言わないようにしましょう。

競合他社に転職するメリット・デメリット

ここまで競合他社への転職について見てきましたが、そもそも競合他社への転職にはどのようなメリットやデメリットがあるのでしょうか。それぞれ見ていきましょう。

メリット1:スキルや知識を生かせる

現職で培ったスキルや知識を生かせるのが、競合他社への転職の何よりのメリットです。

業務内容に共通する部分もあるため、仕事を一から覚え直す必要もなく即戦力として働くことができます。

あらかじめ知識がある分、他業種から転職してきた人に比べて圧倒的に有利です。

また、周りもあなたのことを経験豊富な人として扱います。大きな仕事を任されたり、重要な場面で重宝されたりすることも多いでしょう。

メリット2:転職のハードルが低い

競合他社への転職は、他業種からの転職よりも転職のハードルが低くなります。

もともとその業界の知識を持っているため、他業種に転職するよりも深い企業分析をすることが可能です。今までの就業経験で培ってきたスキル・知識をアピールすることができるため、自己PRもスムーズに行えます。

デメリット1:競合の情報収集目的の恐れがある

転職先の企業が、優秀な人材ではなく競合企業の情報やノウハウを求めている場合もあります。それらを吸収したらあとは用済みとなり、出世や給料アップが見込めないこともあります。

競合他社に転職する場合、自分の持つ情報だけが求められていないか、冷静に見極めることが必要です。

デメリット2:仕事にギャップを感じることも

企業独自の方針ややり方が存在するため、前職と仕事内容が全く同じになることはありません。

むしろ前職よりも仕事がやりづらくなってしまうケースも。今までやっていたルーチンワークとは異なる手順での作業を求められることがあるからです。

同じ業界とはいえ異なる企業で働く以上、「前の職場ではこうだった」は通用しません。環境が変わることは覚悟しておいたほうが良いでしょう。

まとめ

競合他社への転職は法的に問題のない行為です。

メリット・デメリットをしっかり把握した上で、選択肢のひとつとして考えてみましょう。

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