源泉徴収票がないときの対処法も 転職したときの年末調整ガイド
▼年末調整とは
年末調整とは、会社に所得税の過不足金を調整してもらう作業のことです。
給与にかかる所得税は会社があらかじめ徴収(源泉徴収)していますが、その金額はあくまでも概算。12月末に年末調整をして、はじめてその年の所得税が確定します。
その結果、余分に徴収されている場合は還付金が支払われ、逆に不足している場合は追加徴収されます。
毎年行われる年末調整。転職した年の年末調整がどうなるのか、また必要な手続きがあるのかについても紹介します。
転職した年の年末調整はどうなる?
年内に転職していれば、基本的に年末調整を受けられる
年内に転職した場合、基本的に転職先で年末調整を受けることができます。年内に2回以上転職をしている場合も対象です。
転職先で年末調整を受ける場合、前職の源泉徴収票を提出しなければなりません。年に2回以上転職をしている場合、すべての会社の源泉徴収票が必要です。
一方、12月までに次の会社に入社しなかった場合、年末調整を受けることはできません。確定申告が必要になるので、翌年2月16日から3月15日に、住んでいる市町村を管轄している税務署で手続きを行いましょう。
※退職後の確定申告について詳しくは→退職後の確定申告 ポイントを押さえて「困った!」を解消しよう
年内に転職していても確定申告が必要な3つのケース
年内に転職した場合でも例外があり、その場合は確定申告が必要です。例外3パターンを以下で解説します。
例外1:手続き時に源泉徴収票がない場合
例外2:年内に転職先で給与支払いがない場合
例外3:確定申告が必要な場合
例外1:手続き時に源泉徴収票がない場合
10月から12月に前職を退職した場合など、年末調整の手続き時に源泉徴収票が手元にないときは、確定申告をしなければなりません。
退職から1ヶ月以上経っても源泉徴収票が届いていない人は、前職に源泉徴収票の発行を依頼しましょう。
会社によっては、源泉徴収票の提出をギリギリまで待ってくれる可能性もあるため、転職先の担当者に事情を話し、提出期限を確認しておくのがおすすめです。
※源泉徴収票の交付依頼について詳しくは→源泉徴収票とは?手元にないときは?
例外2:年内に転職先で給与支払いがない場合
翌月払いの会社に12月入社するなど、年内に給与が支払われない場合、前職の源泉徴収票があっても年末調整を受けられないことがあります。会社によって規定が異なるため、自分が年末調整の対象になっているかは、転職先の担当者に確認をしましょう。
例外3:確定申告が必要な場合
下記に当てはまる人は転職の有無に関わらず、確定申告をしなければなりません。
- 給与収入が年収2,000万円以上ある
- 副業などの収入が20万円以上ある
- 医療費控除、寄付金控除(ふるさと納税含む)、雑損控除、住宅ローン控除(初年度のみ)を受ける場合 など
「給与収入が年収2,000万円以上ある」場合、年末調整の対象ではないため、確定申告をする必要があります。
副業で収入がある場合や、医療費控除・寄付金控除などを受けたい場合は、年末調整を受けた後に、さらに確定申告が必要です。
源泉徴収票とは?手元にないときは?
源泉徴収票とは、1年間で企業から支払われた給与額や、控除された社会保険料額、徴収された所得税額などが書かれている書類です。年末調整や確定申告をするとき、必ず必要になります。
源泉徴収票をなくしてしまった場合でも、無料で再発行が可能です(ただし、郵送料などがかかるケースもあります)。
ここでは、源泉徴収票が手元にない場合の対処法について解説します。
※源泉徴収票について詳しくは→退職時にもらえる「源泉徴収票」、転職でなぜ必要なの?|社労士監修
源泉徴収票がないときの対処法
源泉徴収票が手元にないときは、以下のように対応しましょう。
1転職先の担当者に「すでに提出していないか」を確認する
転職先で源泉徴収票の提出を求められたのに、手元にない場合、まずは転職先の担当者に「入社時に提出していなかったか」を確認しましょう。やはり提出できていないようであれば、担当者に事情を伝えた上で、前職に源泉徴収票の発行を依頼してください。
2前職に源泉徴収票の発行を依頼する
源泉徴収票を転職先に提出しておらず、手元にもない場合、前職に発行を依頼しましょう。会社側には源泉徴収票の交付義務があるため、「源泉徴収票がほしい」と伝えれば対応してもらえます。
3「税務署や労働基準監督署に相談してみる」と伝える
前職に依頼しても源泉徴収票を発行してもらえない場合「税務署や労働基準監督署に相談してみる」と伝えてみましょう。ほとんどの場合、すぐに発行してもらえるはずです。
4税務署に「源泉徴収票不交付の届出書」を提出する
それでも発行してもらえない場合は、住民票がある市町村を管轄している税務署に「源泉徴収票不交付の届出書」を提出しましょう。税務署から前職に税制指導が入り、源泉徴収票が発行されます。
源泉徴収票が届いたら、転職先に提出、もしくは確定申告をする
源泉徴収票が届いたら、すぐに転職先の担当者に提出しましょう。届くのが遅く、年末調整の手続き期限までに源泉徴収票を提出できなければ、確定申告が必要となります。
前職が倒産している場合は?
前職が倒産している場合、源泉徴収票は破産管財人から発行してもらうことができます。破産管財人がいない場合や分からない場合は、税務署で「源泉徴収票不交付の届出書」を提出することで対応が可能です。
転職後の年末調整|書類の書き方は?
転職者だからといって書類の書き方は変わらない
転職した場合でも、年末調整に関する書類の書き方は、周りの社員と基本的に変わりません。提出が必要な下記4点の書類に、必要事項を記入しましょう。
- 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
…扶養親族の有無に関わらず全員提出 - 基礎控除申告書兼配偶者控除申告書兼所得金額調整控除申告書
…年末調整を受ける人は全員提出 - 保険料控除申告書
…国民年金や国民健康保険、生命保険、地震保険の支払いをしている場合のみ提出 - 住宅借入金等特別控除申告書
…住宅ローンを利用している場合のみ提出(2年目以降)
なお、手続き簡略化のため、2020年からは年末調整の電子化が推奨されています。電子化されると、書類の提出方法や記入の仕方が変わる可能性があります。転職先が電子化に対応しているのかについては、担当者に確認しましょう。
国民年金・国民健康保険料を支払った場合、社会保険料控除欄に記入が必要
転職するまでに離職期間があり、国民年金や国民健康保険の支払いをした場合「給与所得者の保険料控除申告書」の「社会保険料控除」欄に、支払先の名称や支払額などの記入を行いましょう。
また、保険料控除を受けるための添付書類として、日本年金機構から送られてくる「控除証明書」が必要です。控除証明書の控えが届く時期は年金を納めていた時期によって変わるので、日本年金機構のサイトで確認してください。
まとめ
年内に転職した場合、年末調整を受けることができますが、年内に転職ができなかった場合は確定申告が必要です。
また、前職の源泉徴収票は年末調整の必須書類になるため、必ず交付してもらうようにしましょう。
(文:転職Hacks編集部)
この記事の監修者
特定社会保険労務士
成澤 紀美
社会保険労務士法人スマイング
社会保険労務士法人スマイング、代表社員。IT業界に精通した社会保険労務士として、人事労務管理の支援を中心に活動。顧問先企業の約8割がIT関連企業。2018年より、クラウドサービスを活用した人事労務業務の効率化のサポートや、クラウドサービス導入時の悩み・疑問の解決を行う「教えて!クラウド先生!®(商標登録済み)」を展開。