手続きが必要な5つのケース 退職後の確定申告ガイド

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確定申告とは・・・

確定申告とは、1年間の所得税の額を確定させる手続きのこと。毎月の給与から徴収(源泉徴収)されていた概算の税金との差額を求め、過不足を清算します。

会社に勤めている場合は「年末調整」で代わりに税金の過不足を清算してもらえますが、退職した場合は自分で申告書類を税務署に提出し、「確定申告」しなければなりません。

1年間の所得税を確定させ、過不足を清算する確定申告手続き。この記事では「どんな人が確定申告する必要があるか」「どう手続きを進めればいいか」を解説します。

確定申告が必要な5つのケース

退職後、下記の5つのケースいずれかに当てはまる人は、確定申告が必要になります。自分に当てはまるものを探して、ピンポイントで見ていきましょう。

(1)12月31日までに転職しなかった |※転職したけれど… (2)源泉徴収票が届かず、年末調整できなかった (3)年内に給与の支払いがなかった (4)「退職所得の受給に関する申告書」を提出しなかった |※特殊なケース (5)転職の有無に関わらず、確定申告の対象になっているケース ■給与収入が年収2,000万円以上ある人 ■副業などの収入が20万円以上ある人 ■医療費控除、寄附金控除(ふるさと納税含む)、雑損控除、住宅ローン控除(初年度のみ)を受ける人 |(1)~(5)どれかに当てはまれば、確定申告が必要

1)12月31日までに転職しなかった

年の途中で退職し、その後年末までに転職しなかった人は、年末調整自体が受けられません。そのため、自分で税金を確定する=確定申告する必要があります。

無職の方はもちろん「年内に退職して専業主婦/専業主夫になった」「自営業をはじめた」人も確定申告が必要なので、注意しましょう。

2)転職したが、源泉徴収票が届かず年末調整できなかった

12月までに転職したものの、新しい会社の年末調整の際に前職の源泉徴収票が無いと、年末調整を行えません。その場合は、自分で確定申告する必要があります。

源泉徴収票は原則として退職後1ヶ月以内に発行されますが、もし期限を過ぎても届いていなければ前職に発行を依頼しましょう。

3)転職したが、年内に給与支払いがなかった

給料が翌月払いの会社に12月入社するなど、年内に給与が支払われない場合は、年末調整を受けられないことがあります。

会社によって規定が異なるため、自分が年末調整の対象になっているか確認し、状況に応じて確定申告を行いましょう。

4)「退職所得の受給に関する申告書」を提出しなかった

退職金を受け取る際、通常は「退職所得の受給に関する申告書」を前の職場に提出し、税金を正しく源泉徴収してもらいます。もし申告書を提出していなければ、自分で確定申告し、清算しなければなりません。

Q:申告書を提出したか分からない場合は?

A:「退職所得の源泉徴収票・特別徴収票」を見ましょう

「退職所得の受給に関する申告書」を提出したか分からない場合は、退職金の受け取り時にもらえる「退職所得の源泉徴収票・特別徴収票」を見れば、提出の有無が分かります。

下記の図の赤枠部分に数字が入っている場合「退職所得の受給に関する申告書」が提出されていないため、確定申告が必要です。

退職所得の源泉徴収票・特別徴収票の「所得税法第201条第3項並びに地方税法第50条の6第2項及び第328条の6第2項適用分」を赤枠でマークした図

5)転職の有無に関わらず、確定申告の対象

例外として、下記に当てはまる人は年末までに転職したかどうかに関わらず、確定申告が必要です。注意しましょう。

年末調整の対象外のため、確定申告が必要

  • 給与収入が年収2,000万円以上ある人

年末調整後に、追加で確定申告が必要

  • 副業などの収入が20万円以上ある人
  • 医療費控除、寄付金控除(ふるさと納税含む)、雑損控除、住宅ローン控除(初年度のみ)を受ける人

そもそも、確定申告するとどうなる?

確定申告で税金額を確定することによって、下記のような恩恵を得られるケースがあります。

払いすぎた税金が戻ってくるチャンス

確定申告によって、税金の納め過ぎが発覚するケースがあります。その場合、手続き(還付申告)を行うことで「還付金」を受け取ることが可能です。

また、生命保険料や医療保険料などを支払っている場合は、さらに控除を受けられます。確定申告書の「生命保険料控除」欄などに金額を記入して、忘れずに申請しましょう。

逆に追加で支払う可能性も・・・

確定申告は、所得税を過不足なく納めるための手続きです。不足している場合は、当然その分を納税する必要があります。

なお、「所得税を安く済ませるために、わざと確定申告しない」のはNGです。本来納めるべき税金にプラスして税金が発生したり、懲役・罰金が科せられる恐れがあります。

国民健康保険料・住民税が安くなる可能性も

確定申告で計算された所得は、翌年度の国民健康保険料・住民税を算出する基準としても使われる金額です。退職にともなって所得が減った場合、支払う金額が安くなる可能性があります。

所得額によっては、低所得者世帯に対する「保険料の軽減措置」が受けられるケースもあります。各市町村によって制度が異なるため、居住している自治体の窓口・ホームページで確認しましょう。

確定申告の進め方・ポイント

確定申告の進め方を、3つのパートに分けて確認していきましょう。

【確定申告のタイミング・申請先】 ■毎年2月16日~3月15日の間に申請する ■手続きは「税務署」「還付申告センター」「ネット上(e-Tax)」の3種類 【確定申告の書類の種類と、入手方法】 ■退職にともなう確定申告では「白色申告の申告書B」を選ぶと安心。 ■書類は、税務署や確定申告相談会場、国税庁ホームページから入手できる。 【申告書以外で、用意するもの】 ■確定申告書のほか「源泉徴収票」「国民年金などの控除証明書」などがひつよう。 ■退職後の状況によって必要なものが変わるため、注意する。

確定申告のタイミング・申請先

確定申告のタイミングは、基本的に毎年2月16日~3月15日です。期限日に土日が来る場合は変動するので、国税庁の確定申告ページで確認しておきましょう。

なお、2020年分の確定申告(2021年に申告するもの)のタイミングは、下記の通りです。

2020年分の申告タイミング・申請先

確定申告の申請先は3種類ありますが、申告のタイミングはほぼ同じです。国税の電子申告・納税システム「e-Tax」を利用した場合のみ、早めに申請することができます。

2020年分の申告タイミングは、下記の通りです。

1住所地を管轄する「税務署」で申請

【持参】2021年2月16日(火)から4月15日(木)

【郵送】2021年2月16日(火)から4月15日(木)

※住所地を管轄する税務署は、国税庁ホームページ「組織(国税局・税務局等)」から検索できます。

2申告期間のみ開設される「還付申告センター」で申請

【持参のみ】2021年2月16日(火)から4月15日(木)

3国税の電子申告・納税システム「e-Tax」で申請

【システム上で申請】2021年1月4日(月)から4月15日(木)

なお、【3】のe-Taxを利用して確定申告する場合は、マイナンバーカードや読み取り用機器などの準備が必要です。

今後、確定申告を自分でやらないようであれば、e-Tax用の機器を揃えて手続きするよりも、税務署・還付申告センターへ書類を持参・郵送するのが楽でしょう。

※新型コロナウイルスの影響による変更について

2020年分の確定申告は、新型コロナウイルス感染症の拡大状況を鑑み、申告期限が延長されました。

出典:申告所得税、贈与税及び個人事業者の消費税の申告・納付期限を令和3年4月 15 日(木)まで延長します|国税庁

確定申告の書類の種類と、入手方法

確定申告の書類には、いくつかの種類があります。退職にともなう確定申告で選ぶべき書類と、その入手方法は下記の通りです。

書類は「白色申告の申告書B」を選ぶと安心

確定申告書には青色申告と白色申告がありますが、一般的な退職にともなう確定申告では「白色申告」を選択しましょう。青色申告は、主に節税する際に使用します。

なお、白色申告の確定申告書の様式には「申告書A(給与所得者・年金受給者用)」と「申告書B(個人事業主用)」の2種類がありますが、どんな場合にも使える「申告書B」を選べば間違いありません。「第一表・第二表」の2枚1組で提出してください。

所得税及び復興特別所得税の申告書Bのサンプル

 所得税及び復興特別所得税の確定申告書Bのサンプル

※申告書のA・Bの様式や手引きについて、詳しくは・・・確定申告に関する手引き等|国税庁

申告書の入手方法

書類の入手方法は、手書き/パソコン作成のどちらを選ぶかによって異なります。

手書きで作成する場合

  1. 年明け(1月中頃)に、税務署や申告相談会場で入手する。
  2. 国税庁ホームページの「確定申告等作成コーナー」からダウンロード・印刷する。

パソコンで作成する場合

入力画面の使い方

1トップページの「作成開始」をクリック

国税庁確定申告書等作成コーナーのページのスクリーンショット(トップページ)

2「印刷して提出」をクリック

 国税庁確定申告書等作成コーナーのページのスクリーンショット(税務署への提出方法の選択のページ)

3「利用規約に同意して次へ」をクリック

国税庁確定申告書等作成コーナーのページのスクリーンショット(ご利用のための事前確認のページ)

4「所得税」をクリック

国税庁確定申告書等作成コーナーのページのスクリーンショット(作成する申告書等の選択のページ)

5退職のケースに応じた「作成開始」をクリック

  • 「退職金をもらった際に、申告書を提出しなかった」ケース
    →赤枠の「左記以外の所得のある方」の作成開始ボタンをクリック
  • それ以外の退職ケース
    →青枠の「給与・年金の方」の作成開始ボタンをクリック

 国税庁確定申告書等作成コーナーのページのスクリーンショット(入力方法選択のページ)

申告書以外で、用意するもの

確定申告の際には、申請書類のほかに源泉徴収票なども必要になります。あらかじめ用意して、原本を「添付書類台紙」に貼り付けて提出しましょう。

なお、状況によって必要な書類が異なるので、下記から確認してください。

【退職後に、確定申告が必要なケース】 (1)12月31日までに転職しなかった (2)転職したが、源泉徴収票が届かず、年末調整できなかった (3)転職したが、年内に給与の支払いがなかった (4)退職金をもらった際に、申告書を提出しなかった 【(1)~(4)の場合の必要書類をまとめた表】(必要な書類/(退職後の確定申告が必要なケース)(1)/(2)/(3)/(4)): <確定申告の申告書> 申告書/AまたはB/AまたはB/AまたはB/AまたはB/B |第三表(分離課税用)/―/―/―/○ |→書類の入手元:税務署、確定申告相談会場、国税庁HP <給与所得の源泉徴収票> 元勤務先のもの/○/○/○/○ |転職先のもの/―/○/―/― |→書類の入手元:元勤務先、転職先 <退職所得の源泉徴収票> 元勤務先のもの/―/―/○/― |→書類の入手元:元勤務先 |国民年金などの控除証明書/○/○/○/― |→書類の入手元:日本年金機構など、各種関係機関

※確定書類台紙は、確定申告書類と同じく税務署や市区町村役所で受け取れます。国税庁のサイトからダウンロードしたものをカラー印刷し、提出しても構いません。

1)12月31日までに転職しなかった

12月31日までに転職しなかったケースで必要な書類は、確定申告書を含めて3種類です。手続き前に源泉徴収票が届くように、前職に発行を依頼しましょう。

  • 確定申告書AもしくはB
  • 給与所得の源泉徴収票(元勤務先のもの)
  • 国民年金などの控除証明書

2)転職したが、源泉徴収票が届かず年末調整できなかった

源泉徴収票が届かずに転職先で年末調整ができなかった場合、必要な書類は4種類です。転職先で給与支払いがあった場合、給与所得の源泉徴収票が「元勤務先・転職先」それぞれ必要なので、忘れずに入手しましょう。

  • 確定申告書AもしくはB
  • 給与所得の源泉徴収票(元勤務先のもの)
  • 給与所得の源泉徴収票(転職先のもの)
  • 国民年金などの控除証明書

3)転職したが、年内に給与支払いがなかった

転職したが、年内に給与支払いがなかった場合、必要な書類は3種類です。現在の職場で収入が無い(税金が徴収されていない)ので、源泉徴収票は元勤務先のもののみ入手し、提出しましょう。

  • 確定申告書AもしくはB
  • 給与所得の源泉徴収票(元勤務先のもの)
  • 国民年金などの控除証明書

4)退職金をもらった際に、申告書を提出しなかった

退職金をもらった際に申告書を提出しなかった場合、必要な書類は4種類です。注意するのは、源泉徴収票が2種類必要な点。給与所得用に加えて、退職所得の源泉徴収票が必要になります。

  • 確定申告書B
  • 申告書第三表(分離課税用)
  • 退職所得の源泉徴収票(元勤務先のもの)
  • 給与所得の源泉徴収票(元勤務先のもの)

コラム:困ったときは相談窓口へ無料相談

確定申告の方法が分からない場合は、国税局の相談窓口へ無料相談するのもひとつの手です。電話相談を受け付けているので、まずは国税局電話相談センターへ電話してみましょう。

また、確定申告のシーズンには税務署・市町村役場等に特別窓口が開設されることがあります。税務署職員のほか、地元の税理士が相談員になっているケースもあるので、ぜひ活用してみてください。

退職時の確定申告Q&A

ここでは、退職時の確定申告に関するよくある質問にお答えします。

申告期限を過ぎてしまった場合は?

申告期限を過ぎて確定申告した場合は「期限後申請」という扱いになり、追加で税金を納めることになります。

代表的なものが「無申告加算税」です。故意に確定申告を怠った場合は、より重いペナルティとして「重加算税」が課せられます。

無申告加算税(免除条件あり)

  • 納付すべき税額に対して、50万円までは15%、50万円以上は20%課される税金
  • 税務署の調査前に自主的に申告した場合など、税金が減免されるケースがある

重加算税

  • 支払うべき税金を意図的に隠ぺい・仮装した場合に課せられる税金
  • 無申告加算税に代わって、40%の高税率が課せられる

確定申告をしないと刑事罰があるって、本当?

期限内に確定申告せず、無申告加算税、重加算税が課されると、刑事事件に発展する可能性もあるので注意が必要です。

故意ではない場合でも、申告が送れると「1年以下の懲役または50万円以下の罰金」が科される恐れがあるので、忘れずに確定申告をしましょう。

確定申告で、還付金はいくらぐらい戻ってくる?

確定申告の還付金は、あくまで払い過ぎた税金が戻ってくるというもの。個人の状況に左右されるため、一概に「いくらぐらい戻ってくる」とは言えません。

確定申告前に還付金を計算したい場合は、下記の流れで計算できます。複雑なので、気になる方だけ計算してみましょう。

 【還付金を計算するための6ステップ】 (1)総所得金額を調べる (2)所得控除額を求める (3)課税所得を求める (4)税額を求める (5)税額控除を求める (6)還付金の金額を求める

【1】総所得金額を調べる

収入が給与のみの人は「給与所得(額面の年収)」がこれにあたります。

【2】所得控除額を求める

所得控除額は、下記の控除の合計から求めます。

給与所得控除

…国税庁のHPにある計算表を使って算出します。
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1410.htm

例)年収440万円の場合

  • 給与所得=収入金額×20%+44万円

基礎控除

…一律で「48万円」控除されます。

社会保険料控除

…その年に自分で支払った/給与・公的年金から差し引かれた社会保険料の金額が、全額控除されます。

医療費控除

…多額の医療費を払った場合、医療費控除される場合があります(最大200万円まで)。

  • 医療費控除=支払った医療費の合計-保険金などで補填される金額-(10万円 or 総所得金額の5%のうち、小さい方の金額)

寄付金控除

…ふるさと納税など、国や地方公共団体などへ寄付した場合、所得控除が受けられます。控除額は、下記の計算式のうち小さい方の金額です。

寄付金控除=「特定寄附金の額の合計額-2000円」

または「総所得金額等の40%相当額-2000円」

【3】課税所得を求める

…計算に使う所得額です。下記の式で求めます。

  • 課税所得=【1】総所得金額-【2】所得控除額

【4】税額を求める

…課税所得の金額を使って、本来支払うべき所得税額を求めます。

  • 税額=所得税(課税所得×所得税の税率※-控除額※)+復興所得税(所得税×2.1%)

※所得税の税率・控除額は、課税所得金額によって異なります。
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2260.htm

【5】税額控除を求める

…【4】で求めた税額に対して、控除を受けられる場合があります。国税庁のHPから、該当する控除があるか確認しましょう。
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1200.htm

【6】還付金の金額を求める

…【4】税額と【5】税額控除を使って、還付金を求めます。

  • 還付金=既に支払った所得税-(【4】税額+【5】税額控除)

手書きで記入ミスした場合、修正液は使っていい?

申告書に記入ミスした場合でも、修正液を使うのはNGです。ただ書き損じたからといって、イチから書き直す必要もありません。該当箇所を二重線で消し、余白に正しい内容を記入しましょう。

また、鉛筆やシャープペン、消せるタイプのペンで記入するのもNGです。必ず黒か青のボールペンで記入しましょう。

まとめ

退職後、年内に次の企業へ転職していない場合や、転職先の年末調整に間に合わなかった場合などには確定申告が必要です。

忘れた場合には罰則もあるため、自分が5つのケースに当てはまるか確認し、忘れずに手続きするようにしましょう。

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