税金・社会保険の手続きも解説 退職の意志はいつまでに会社に伝える?
「会社を退職する際は、いつまでに伝えればいいのか」と疑問を持つ人は多いでしょう。
この記事では、退職の意志を伝えるべきタイミングと、社会保険や税金などの退職に伴う手続きについて紹介します。
退職する際はいつまでに会社に申し出るべき?
退職の意志はいつまでに会社に伝えるべきなのでしょうか?
ここでは、退職を申し出るタイミングの目安と、法律上での決まりを解説します。
基本的には「1~3ヶ月前」までに伝える
退職の意志を会社に伝えるタイミングは、退職を希望する日の1ヶ月~3ヶ月前が目安です。
就業規則で「退職する際は、30日前までに退職願を提出しなければならない」などと定められている場合は、基本的にはそれ以前に伝えるようにしましょう。
転職活動中なら転職先が決まってから伝える
すでに転職活動中の場合、退職の申し出は選考を受けている会社から内定が出た後に行うのがベター。内定が出ていない状態で会社に退職を申し出てしまうと、先に退職日が決まってしまうため、不採用だった場合に焦って他の転職先を探すことになってしまいます。
なお、体調不良などで会社に勤めながら転職活動するのが難しい場合や、一旦仕事を辞めて時間をかけて転職活動を行いたいという場合であれば、先に退職を申し出てもかまいません。
▼退職の切り出し方・言い方についてくわしく
法律上では原則「2週間前まで」でOK
民法上では、退職の意志を伝えてから2週間経てば退職が成立するとされています。就業規則よりも効力が強いので、会社側が「退職させない」などと言っても法律が優先されます。
※派遣社員や契約社員など、有期雇用契約の場合は異なります
ただし、円満退職を望むのであれば、就業規則に書かれている条件で退職するのがベターです。退職の意志を伝えてから2週間で辞めるのは、会社から強引な引き止めにあっている場合などの最終手段としましょう。
▼最短での退職についてくわしく
コラム:選考中の会社から「いつ入社可能か」と聞かれたら?
選考を受けている企業から「いつ頃入社可能ですか?」といった質問をされた際は、1~2ヶ月後を伝えるのが一般的。具体的には「退職手続きや業務の引き継ぎなども鑑みて、内定をいただいてから1~2ヶ月後には入社可能です」と答えるのが良いでしょう。
なお、会社に相談した上で退職日が決まっている場合や、退職日まで差し迫っている場合は、入社可能な日にちを具体的に伝えてもOKです。
社会保険や税金の手続きはいつまでに行う?
退職時には様々な手続きが必要ですが、「いつまでに行えばスムーズに退職できるのか」不安になってしまいますよね。
ここでは、社会保険や税金の手続きについて、転職先が決まっている場合と決まっていない場合に分けて解説します。
【全員必須】退職後すぐに保険証を返す
転職先が決まっていてもいなくても、退職する場合は退職後すぐに保険証を返却しましょう。この「退職日」とは、最後に出勤する日(最終出社日)ではなく、勤めていた会社との雇用契約が終了する日のことを指します。
退職日に手渡しで保険証を返却できない場合は、勤め先の担当者に確認した上で、簡易書留か一般書留で郵送すればOKです。
▼保険証の返却方法についてくわしく
退職時に会社から受け取るもの【一覧表】
退職時に勤めていた会社から受け取るものは、以下のとおりです。
新しい会社に入社するときや社会保険の切り替えの際などに必要になるので、忘れずに受け取るようにしましょう。
転職先が決まっており、空白期間なく入社する場合
転職先が決まっている場合、「健康保険」「年金」などの社会保険、「所得税」「住民税」など税金については、新しく入社する会社が行ってくれるので、自分で手続きする必要はありません。
提出が必要な書類などがある場合、その都度会社から知らされるので、適宜対応するようにしましょう。
入社までに空白期間がある場合・転職先が決まっていない場合
転職先は決まっているが入社まで空白期間がある場合や、転職先が決まっていない状態で退職する場合は、社会保険や税金について自分の希望を決めた上で、できるだけ早めに行いましょう。
以下は、退職後に行う手続きの一覧表です。それぞれについて詳しく見ていきましょう。
雇用保険の失業等給付
雇用保険の失業等給付(失業中に受給できる雇用保険の手当)をもらうための手続きは、自宅に離職票が届き次第、居住地を管轄するハローワークで、できるだけ早めに行いましょう。
離職票は、一般的に退職してから10日前後で自宅に郵送されます。手続きの際は、退職時に受け取った「雇用保険被保険者証」も必要になるので、忘れずに持っていきましょう。
■雇用保険の受給手続きで必要なもの
- 雇用保険被保険者証
- 離職票
- 身分証明書(運転免許証、マイナンバーカードなど)
- 印鑑
- 証明写真2枚(直近3ヶ月以内・縦3.0cm×横2.5cm)
- 本人名義の普通預金通帳
自己都合で退職した場合は、申請して実際に基本手当が給付されるまで、最短でも7日の待機期間と2ヶ月の給付制限がかかります(実際に受け取れるのは約3ヶ月後)。会社都合で退職した場合は、給付制限がなく、7日間の待期期間のみとなります。
失業中に受け取れる雇用保険の手当(いわゆる失業保険)について、くわしくは下記の記事で解説しています。
【最新情報】自己都合退職の給付制限が2ヶ月に短縮されました(2020年10月1日更新)
自己都合退職の給付制限が、3ヶ月から2ヶ月に短縮されました。なお、期間短縮の対象者は2020年10月1日以降に退職した方です。ただし、最新の離職日からさかのぼって5年以内に3回以上自己都合退職をしている場合は、引き続き3ヶ月の給付制限がかかります。
健康保険
転職先が決まっていない場合、健康保険の切り替えには「国民健康保険に加入する」「加入していた健康保険を任意継続する」「家族の社会保険の扶養に入る」の3つの選択肢があります。
国民健康保険に加入する
国民健康保険に切り替える場合は、退職日の翌日から14日以内に居住地の市区町村の健康保険窓口に行って手続きをしましょう。
■国民健康保険の加入手続きで必要なもの
- 健康保険資格喪失証明書
- 各市町村で定められた届出書
- 身分証明書(運転免許証、マイナンバーカードなど)
- 印鑑
加入していた健康保険を任意継続する
今まで加入していた健康保険に任意継続加入する際は、退職日から20日以内に手続きする必要があります。退職する前に前職の担当者に相談すると良いでしょう。
■健康保険の任意継続加入の手続きで必要なもの
- 健康保険任意継続被保険者資格取得申出書
- 住民票
- 1ヶ月分の保険料
- 印鑑
家族の社会保険の扶養に入る
退職を機に家族が加入する社会保険で扶養に入る場合は、できるだけ早く家族が勤務している会社を通して加入の手続きをしてもらいましょう。
健康保険の切り替え手続きについて、くわしくは下記の記事も確認してください。
年金
転職先が決まっていない場合、年金の切り替え方法には、「国民年金に加入する(1号)」「配偶者の社会保険の扶養に入る(3号)」の2つがあります。
国民年金に加入する(1号)
国民年金に加入する場合、住んでいる自治体の役所などで手続きを行わなければいけません。手続きは退職日の翌日から14日以内に行いましょう。
■国民年金の加入手続きで必要なもの
- 年金手帳か基礎年金番号通知書
- 離職票または退職証明書
- 身分証明書(運転免許証、マイナンバーカードなど)
- 印鑑
配偶者の社会保険の扶養に入る(3号)
配偶者の扶養に入る場合は、できるだけ早めに「基礎年金番号」または「個人番号」を家族が勤務している会社に提出し、手続きをしてもらいましょう。
退職後の年金の切り替えについて、くわしくは下記の記事で解説しています。
所得税
転職先が決まっていない状態で退職した場合の所得税の手続き方法は、「退職した年に転職先に入社したかどうか」で異なります。
年内に転職した場合
退職後、同一年内に転職した場合は、入社時に前の勤め先から送られてきた「源泉徴収票」を提出すれば、転職先において年末調整を行ってくれます。
▼源泉徴収票についてくわしく
年内に転職先が決まっていない場合
年内に転職先が決まっておらず12月31日まで無職の場合は、翌年2月中旬~3月中旬頃に自分で確定申告を行う必要があります。また、年内に転職先が決まっても、入社したタイミングが会社の年末調整の手続き後だった場合は、自分で確定申告を行わなければなりません。
手続き自体は、管轄の税務署や還付申告センターで行うことができます。国税の電子申告・納税システム「e-Tax」で行うことも可能です。
▼退職後の確定申告の手続きについてくわしく
住民税
住民税を納める方法には、「前の会社の最後の給料から必要額を一括で天引きしてもらう」「自分で納付書を使って納める」「転職先で給与からの天引きを継続する」の3つがあります。
住民税は、前年の所得にかかる税金を、その年の6月~翌年5月の給料から天引きして納めることになっているため、退職するタイミングによっても、「いつどうやって住民税を納めるか」が異なります。
前の会社で必要額を一括で天引きしてもらう
住民税を給料から天引きしてもらう際は、退職する前に会社に依頼しましょう。
退職月が1~5月の人は最後の給与からその年の5月までの住民税を、退職月が6~12月の人は最後の給与から翌年5月までの住民税を一括で天引きしてもらうことが可能です。
いずれの場合でも、退職後に就業していない場合は、5月頃に新しい年度の住民税の納付書が送付されてきます。6月になっても就業予定がない場合は、送付されてきた納付書で支払い手続きをしましょう。
自分で納付書を使って納める
自分で住民税を納付する場合は、その旨を退職する会社に伝えましょう。会社が必要な手続きを行った後に、居住地の市町村から6月、8月、10月、4月の上旬~中旬(年4回)に住民税の納付書が送られてくるので、その月の末日までにその納付書を使って住民税を納めればOKです。
転職先で給与天引きを継続する
転職先で給与からの天引きを継続する場合は、前の勤務先に「特別徴収にかかる給与所得者異動届出書」を作成してもらい、それを転職先を通じて市区町村に提出する必要があります。連絡もれなどが原因で、市区町村から納付書が送付されてきた場合には、それを転職先に提出すれば手続きしてくれるでしょう。
▼退職後の住民税の納付についてくわしく
まとめ
退職の意志は、退職する1~3ヶ月前に伝えるのが目安ですが、自分が退職する時期や会社の状況によっても異なる場合も多いはず。
退職日は就業規則を確認した上で、自分の状況に合わせて調整するようにしましょう。
この記事の監修者
社会保険労務士
三角 達郎
三角社会保険労務士事務所