企業型・個人型別 転職後、確定拠出年金の移換は必要?

公開

老後の生活資金として加入している人も多い確定拠出年金。転職・退職する場合、移換の(移し替える)手続きが必要です。

ここでは転職・退職時における確定拠出年金の取り扱い、注意しておきたいポイントを解説します。

確定拠出年金の基礎知識

まずは、確定拠出年金の基本的な知識をご紹介します。

企業年金の一種である企業型確定拠出年金

企業型確定拠出年金(別名:企業型DC)は、国民年金や厚生年金とは別に、企業が個々に用意する企業年金の一種

確定拠出年金は企業ごとに管理されているため、転職や退職の際、変更の手続きが必要です。

企業型確定拠出年金の場合、企業に任せっきりで手続きについて知らなかったというケースも。しかし、退職から6ヶ月以内に移さないと損をしてしまうため、手続きは忘れずに行いましょう。

個人向けの確定拠出年金、iDeCo

確定拠出年金には、企業型の他に個人が任意で加入する個人型確定拠出年金(別名:iDeCo)があります。iDeCoも企業型確定拠出年金と同じく、退職から6ヶ月以内に移換の手続きを行う必要があります。

企業型確定拠出年金とiDeCoの違いは以下の表の通りです。

企業型確定拠出年金とiDeCoの違い一覧表。以下、個人型確定拠出年金(iDeCo)|企業型確定拠出年金(企業型DC)。対象者:20歳~60歳までの自営業者、会社員、公務員、専業主婦(主夫)|会社に確定拠出年金の制度がある会社員。加入方法:任意で手続き|会社の制度に合わせる。掛け金の負担者:自分|会社(上乗せ分は自分)。納付方法:自分の口座から振替/給与天引き|会社から納付。加入先金融機関:自分が選択|会社が選択。運用商品:契約の金融機関が用意した商品から選ぶ|会社が用意した商品から選ぶ。

転職・退職時の企業型確定拠出年金の手続き

転職・退職時に企業型確定拠出年金を移し替える手続きについて、具体的に見ていきましょう。

企業型確定拠出年金を差し替える手続きフロー(企業型確定拠出年金に入っている人)。iDeCoに移す場合:公務員・専業主婦になる場合、自営業になる場合、6ヶ月以上就職しない場合、転職先の企業に確定拠出年金・確定給付企業年金がない場合。確定給付企業年金に移せるか確認またはiDeCoに移す場合:転職先の企業に確定拠出年金はないが確定給付企業年金がある場合。転職先の企業型確定拠出年金に移す場合:転職先の企業に確定拠出年金がある場合。

上のチャートからわかるように、最終的に取るべき手続きは以下の3パターンに分けられます。

【1】転職先の企業型確定拠出年金に移す
【2】iDeCoに移す
【3】確定給付企業年金に移せるか確認

それぞれのパターンにおいて取るべき行動を順番にご紹介します。

【1】転職先の企業型確定拠出年金に移す

転職先の会社にも企業型確定拠出年金がある場合、前職でも加入していたことを転職先の担当者に申告すればOK。

「個人別管理資産移換依頼書」などの書類を提出するよう求められます。必要事項を記入して提出すれば、あとは企業が手続きを進めてくれます。

移換後は、今まで運用していた資産は売却され、転職先の企業が予め決めた金融商品に改めて投資することになります。

前職の金融商品とは性質が異なる可能性があるので、移換完了の通知が届いたら、各金融商品についてよく調べた上で選び直しましょう

【2】iDeCoに移す

転職先に企業型確定拠出年金がない場合、資産をiDeCoに移します。

iDeCoを取り扱っている銀行・証券会社・保険会社などの金融機関から一つ選んで加入し、企業型確定拠出年金で運用していた資産を移せばOK。加入までの流れは以下の通りです。

1.加入先の金融機関を選ぶ
2.電話やメールなどで口座開設の資料や申込書、「個人別管理資産移換依頼書」を取り寄せる
3.申込書や個人別管理資産移換依頼書を加入先に提出する

iDeCoは取り扱っている金融機関が多く、口座管理料などのコストや取り扱っている金融商品の種類も金融機関ごとで異なるため、いくつかの金融機関を比較して自分に適したものを選びましょう。

まずは、低リスクでコツコツ預金を積み立てたいのか、ある程度のリスクを取ってでも資産を増やしたいのかを決めてから金融機関や商品を選ぶのがおすすめです。

【3】確定給付企業年金に移せるか確認

転職先に企業型確定拠出年金はないが、確定給付企業年金の制度がある場合、そちらに企業型確定拠出年金の資産を移せる場合があります。

規約によって認められている場合にのみ可能な方法のため、まずは転職先の担当者に前職で確定拠出年金に加入していたことを話し、移すことは可能か尋ねましょう。

可能な場合、担当者の指示に従って確定給付企業年金に移換(引き続き加入)します。できない場合、前述の手順でiDeCoに移しましょう。

確定給付企業年金とは、企業が用意する年金制度の1つで、「給付額」があらかじめ決められているのが特徴です。年金資産の運用は企業が一括して行うことになっており、もし運用に失敗しても企業が補填してくれるため、損をするリスクがないのがメリットといえるでしょう。

その代わり、自己都合退職したり懲戒解雇になったりした場合は、支給額が減らされてしまう可能性もあります。

なお、確定給付企業年金に加入していた人が確定拠出年金に移換することも可能です。

転職・退職時のiDeCoの手続き4パターン

前職で個人型確定拠出年金(iDeCo)に加入していた方が転職する場合の手続きを解説します。

以下のフローチャートをご覧ください。

転職・退職時のiDeCoの手続きフロー(iDeCoに入っている人)。引き続きiDeCoに加入する場合:公務員・専業主婦になる場合、自営業になる場合、6ヶ月以上就職しない場合、転職先の企業に確定拠出年金・確定給付企業年金がない場合。確定給付企業年金に移せるか確認またはiDeCoに移す場合:転職先の企業に確定拠出年金はないが確定給付企業年金がある場合。転職先の企業型確定拠出年金に移す場合:転職先の企業に企業型確定拠出年金がありiDeCo同時加入NGの場合。企業型とiDeCo同時加入もOKの場合:転職先の企業に企業型確定拠出年金がありiDeCo同時加入OKの場合。

iDeCoの場合、取れる手続きは、以下の4パターンです。

【1】引き続きiDeCoに加入

【2】転職先の企業型確定拠出年金に移す

【3】確定給付企業年金に移せるか確認

【4】企業型確定拠出年金とiDeCoの両方に加入

企業型DCの場合と同じく、それぞれのパターンについて解説していきます。

【1】引き続きiDeCoに加入

退職後企業に転職しない場合や、転職先に企業型確定拠出年金がない場合、iDeCoに引き続き加入します。

この場合の手続きは、サラリーマンになる場合と、6ヶ月以上就職しなかったり、自営業者や主婦になったりする場合など、退職後の働き方によって異なります。

それぞれのケースについて詳しく見ていきましょう。

サラリーマンになる場合

サラリーマンになる場合、登録事業所の変更手続きが必要です。

「加入事業所変更届」に転職先が記入済みの「事業所登録申請書兼第2号加入者に係る事業主の証明書」を添付して、iDeCoの運営機関に提出しましょう。

6ヶ月以上無職・自営業または主婦になる場合

6ヶ月以上就職しなかったり、自営業者または主婦(夫)になったりする場合は、国民年金の被保険者種別を変更する必要があります。サラリーマンの国民年金の被保険者種別は第2号ですが、自営業者や無職の場合第1号、扶養に入っている配偶者の場合第3号になるからです。

変更先の加入者番号それぞれに変更届が用意されていますので、モデルに従って記入の上、運営管理機関に提出しましょう。

コラム:国民年金の被保険者種別とは?

国民年金の被保険者種別とは、以下の国民年金被保険者の3分類を意味します。

  • 第1号被保険者
    …自営業者、農家、漁業者、学生、無職など厚生年金保険や共済組合などに加入しておらず、扶養にも入っていない被保険者。
  • 第2号被保険者
    …会社員や公務員など厚生年金保険や共済組合に加入している被保険者。
  • 第3号被保険者
    …第2号被保険者に扶養されている配偶者で年収が130万円未満の被保険者。

第1号、第3号被保険者は20歳以上60歳未満に限られますが、第2号保険者に特に年齢制限はありません。ただし、65歳以上で老齢基礎年金などを受ける権利を持っている人は除外されます。

【2】転職先の企業型確定拠出年金に移す

転職先に企業型確定拠出年金があり、iDeCoとの同時加入が許されていない場合は、そちらに資産を移すことになります。

まずは、iDeCoの「加入者資格喪失届」を運営管理機関に提出して加入者資格を喪失させましょう

その後の手続きは、転職先の担当者に申告すれば行ってもらえます。

【3】確定給付企業年金に移せるか確認

転職先に確定給付企業年金の制度があるなら、企業型確定拠出年金と同じく、そちらにiDeCoを移せる場合があります。規約によって認められている場合にのみ可能な方法のため、まずは転職先の担当者にiDeCoを移せるか尋ねましょう。

確定給付企業年金について詳しくは、上の【3】確定給付企業年金に移せるか確認をご確認ください。

【4】企業型確定拠出年金とiDeCoの両方に加入

現段階では数は少ないのですが、企業型確定拠出年金とiDeCoの同時加入を認めている企業もあります。

2つの制度それぞれの知識が求められるため、上級者向けの方法ですが、企業型確定拠出年金に加入しつつ、運用の自由度を高めたい方にはメリットがある方法です。興味がある方は企業の担当者に問い合わせてみましょう。

確定拠出年金の注意点

最後に確定拠出年金の運用で知っておくべき注意点をご紹介します。

解約にはさまざまな条件がある

転職や退職を機に確定拠出年金を解約して現金(脱退一時金)を受け取りたいと思っても、条件を満たさなければ解約することはできません。

また、その条件は企業型確定拠出年金・iDeCoそれぞれの場合で細かく決められており、クリアするのは非常に難しくなっています。確定拠出年金は基本的に60歳になって初めて受け取る年金として設計されているからです。

それでも、自分が条件を満たせているかどうか知りたいという方は、以下のリンク先から問題回答形式の判定テストを受けてみてください。

※出典:脱退一時金支給判定|IDeCoポータル

各種変更時には届け出が必要

iDeCoに加入中、自分の状況が申込時と変わったときは変更届が必要です。

転職して勤務先が変わった、名字や住所の変更があった、掛け金の金額や振替口座を変更したいなどの場合、金融機関のHPで変更届をダウンロードするか、電話やメールで請求して提出しましょう。

また、配偶者の扶養に入っていた加入者や無職だった加入者がサラリーマンになる場合、国民年金の被保険者種別の変更手続きが必要。「加入者被保険者種別変更届(第2号被保険者用)」に就職/転職先が記入済みの「事業所登録申請書兼第2号加入者に係る事業主の証明書」を添付して運営機関に提出しましょう。

移換の手続きは6ヶ月以内に

転職や退職で企業型確定拠出年金の資格を喪失した場合、その翌月から6ヶ月以内に移換の手続きを行わなければなりません。

期間内に手続きが済まされなかった場合、企業型確定拠出年金で運用されていた資産は現金化され、国民年金基金連合会によって自動的に移換されてしまいます。

結果として資産自体は引き継がれるので、なくなるわけではありませんが、費用負担が出てくるなど損してしまいます。具体的なデメリットは以下の通り。

  • 年金資金が運用されない
  • 自動移換で連合会に預けられている期間は正式な加入期間とは認められないため、受給開始の時期が遅れる可能性がある
  • 移換手数料や毎月の管理手数料などの費用負担が生じる

なお、6ヶ月以内に移換の手続きを行わなかった場合でも、退職または転職後に新たに企業型確定拠出年金やiDeCoに加入すれば、国民年金基金連合会へ自動移換された資金はまた自分の口座に移換されます。

企業型確定拠出年金の全額移換の条件は勤続年数3年以上

転職前の会社に3年以上勤続していた場合、これまで企業型確定拠出年金として積み立てていた全額を移換することができます。

一方、勤続年数が3年未満の場合、会社が支払っていた掛金が引かれる可能性があります。退職前には、まずその点について企業の担当者に確認してください。

まとめ

企業型と個人型の2種類がある確定拠出年金。老後のための資産形成ができる制度ですが、転職・退職時には注意すべきことがあります。

退職後のパターンそれぞれで必要な手続きについてチェックし、退職・転職の際にはスムーズに資産を移しましょう。

  • HOME
  • 転職後、確定拠出年金の移換は必要?企業型・個人型別