世帯年収の平均は?家計内訳モデルも公開
家族の生活を左右する「世帯年収」。近年は夫婦で共働きをする家庭が増えてきたため、世帯年収を気にする方も増えているのではないのでしょうか。
この記事では、世帯年収の平均や世帯年収ごとの生活費の内訳などをわかりやすく解説します。
うちは多い?少ない? 世帯年収の平均を知ろう
まず始めに、世の中の世帯年収の平均について知っておきましょう。
そもそも世帯年収とは?
世帯年収とは、「同一の生計を立てる世帯の合計年収」を指します。
「同一の生計を立てる世帯」とは、“生活するためのお金が出ているサイフが同じ世帯”ということで、自分の年収の有無や、同居か別居かについては関係ありません。
例えば、以下のケースはいずれも「世帯年収600万円」となります。
③のケースでは子が大学生で収入がなく、父母と別居していますが、父母から仕送りなど経済的援助を受けて生活していれば、子と父母は「同一の生計を立てる家族」と見なされ、子の世帯年収も「600万円」ということになります。
また、④のケースでは夫が単身赴任のため別居していますが、妻子の生活費を夫の給与でまかなっているため、夫婦は「同一の生計を立てる家族」となり、夫も妻も世帯年収は「600万円」となります。
世帯年収の平均は545.7万円
厚生労働省の調査によると、世帯年収の平均は545.7万円です。
世帯主の年齢階級別でみると、29歳以下が377.5万円、30代が627.2万円、40代が728.5万円、50代が742.1万円と、50代をピークに上昇し、60代、70代と下降していきます。
※参考:2022年国民生活基礎調査の概況|厚生労働省(公表:2023年7月4日、参照:2023年9月10日)
また、グラフのオレンジ色の棒は世帯人員1人当たりの平均年収を示しています。こちらも50代が291.9万円ともっとも高くなっています。
子育て世帯の平均は785万円 中央値は低め
児童(18歳未満の未婚者)のいる世帯の世帯年収の平均は785万円と一見高い数字に思えますが、「中央値」は710万円と75万円近くの差が出ています。
785万円以上あれば子育てには充分と考える人も多いかもしれませんが、「平均値」は一部の高収入世帯によって釣り上げられている可能性もあるため、「中央値」のほうが一般的な生活実感に近いのではないでしょうか。
そのため、生活意識アンケートでは、子育て世帯の54.7%もが「生活が苦しい」と回答しています。生活が苦しいと感じる理由は、教育費など子どもにかかる家計負担が大きい点が考えられます。
※参考:「2022年国民生活基礎調査の概況」及び「統計表」|厚生労働省(公表:2023年7月4日、参照:2023年9月10日)
世帯年収別・手取り金額早見表
世帯年収は、あくまで額面の金額。年収から社会保険料や税金、雇用保険料などが引かれ、実際に使える金額が「手取り金額」です。
年収別のおおよその手取り額は、以下のとおりです。
※月収はボーナスなしで計算
年収が高くなるほど税率も高くなる累進課税のため、額面年収と手取り年収は単純に比例していません。
また上記表は、1人でその年収を稼いだ場合の概算金額です。共働きの場合をはじめ、さまざまな要因によって手取り金額は変化します。
▼詳しく計算したい方はこちら
世帯年収が高いのは関東地方で平均675.7万円
総務省統計局の調査より、地域別に勤労者世帯を算出したところ、最も高い地域は関東地方で、平均675.7万円でした。
※参考→2022年家計調査 / 家計収支編 総世帯 詳細結果表|e-stat(参照:2023年9月10日)
関東地方に続いたのは北陸地方(671.6万円)、北陸地方(654万円)。
一方、最も低い地域は沖縄地方(447万円)で、関東地方とは200万円近い開きがあることが見て取れます。
世帯年収から見るライフスタイル
この章では、世帯年収ごとに家計の収支はどのようになっているのかのモデルケースを紹介するとともに、世帯年収に対して適正なローンや生活費、貯蓄額の目安についてまとめていきます。
世帯年収別の家計内訳モデル一覧
まずは、世帯年収によって生活スタイルにどのような違いがあるのか、世帯年収「500万円」「1,000万円」「1,500万円」の家庭の一例から、それぞれの家計簿を覗いてみましょう。
※世帯年収は、すべて額面金額です。
※月収は、ボーナスを含めた年収を12(カ月)で均等に割り、1千円未満を四捨五入して算出しています。
世帯年収500万円の場合
世帯年収1,000万円の場合
世帯年収1,500万円の場合
住宅ローン(家賃)と貯蓄額については、後述の世帯年収と住宅ローン&家賃および世帯年収と貯蓄額で紹介する適正価格に近い事例を掲載しました。
その他の家計内訳については、それぞれの世帯年収や家族構成などにより、「お金のかけどころ」が違うことが分かります。
年収500万で子どもがいない若い夫婦世帯は趣味・交際費の比重が高く、子ども2人がまだ小さい年収1,000万円の世帯はこまめに節約して貯蓄に回しています。
また、子どもの教育費が非常に高い年収1,500万円の世帯は、年収は高くても貯蓄に回す額が低めです。
自分の世帯年収や家庭の状況と比較し、参考にしてみてはいかがでしょうか。
世帯年収と住宅ローン&家賃
一戸建て、マンションなどにかかわらず自宅を購入する場合は、世帯年収からいくらまでならローンを組めるかを考える必要があります。目安となる金額や考え方を紹介します。
ローン額は20%以内が目安
マイホームを購入する際の一般的な目安として、ローン返済額は世帯年収の20%以内に収めるのが良いと言われています。
適切なローン金額を大まかに計算すると、世帯年収1,000万円の場合、年収の20%は200万円。
仮に、頭金ゼロ・毎月の返済額を概算で16万円とすると、20年ローンで2,884万円、35年ローンだと4,157万円の住宅を購入できることになり、世帯年収の5倍である5,000万円以内に収まっていることが分かります(金利3%、元利均等払い、ボーナス返済なしで計算)。
借入額についてさらに詳しく知りたい場合は、金融機関や不動産情報サイトなどにある簡易計算ツールを利用すると便利です。
なお、住宅ローンは、夫婦どちらか1人の単独名義で借り入れるパターンの他、夫婦連名で借り入れることも可能です。連名で借りると1人で借り入れるよりも借り入れ可能額が大きくなる、夫と妻の両方で住宅ローン控除を受けられるといった利点もあります(連帯保証型は除く)。
賃貸の家賃は、年収の30%以内を目安に
賃貸の場合は、家賃の目安は年収入の30%以内に抑えること(手取り収入の3分の1程度)が一般的とされています。
2人以上の世帯は単身世帯に比べて支出が多い傾向にあるので、25%程度に抑えると良いでしょう。
世帯年収と貯蓄額
月々どれだけ貯蓄するかは、世帯によって大きな差ができるところです。目安はどのくらいなのか確認してみましょう。
年収の10~20%を貯金、ライフステージに応じて調整しよう
一般的には、年収の10~15%を貯金に回すのが理想的と言われています。
貯蓄に回す額は、ライフステージに合わせて適宜増減させると、無理なく貯蓄することができるでしょう。
例えば、子持ち世帯の家計を大きく左右する教育費を目安に考えると、結婚から子どもが小学校低学年のうちは教育費がそれほどかからないので、収入の20%~25%の貯蓄を目標に。塾代や学費の負担が徐々に大きくなる小学校高学年以降は10~20%に抑えるなど、家計の事情に応じて無理のないペースで貯蓄しましょう。
上の実例で見てみると、それぞれの世帯の月あたりの貯蓄額は以下の通り。
世帯年収に比例して貯蓄額が増えているわけではなく、ライフステージごとに貯蓄の割合が異なっていることが分かります。
現実は「貯蓄ゼロ」の世帯が23.1%も!
金融広報中央委員会が行った調査によると、2人以上の世帯で貯蓄がゼロの世帯が23.1%もあるという結果も出ています。コツコツお金を貯めたいという理想はあっても、なかなかきちんと貯蓄できていない世帯も少なくないようです。
「生活費から残ったお金を貯金」という姿勢では、なかなか貯蓄はできません。本気で貯蓄を増やそうと考えている人は、「あらかじめ貯金額を決め、残りのお金を使う」というスタイルに切り替えてみてはいかがでしょうか。
※参考:家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](令和4年)|金融広報中央委員会(参照:2023年9月10日)
コラム:住むなら世帯年収が自分と近い地域が良い?
何にお金をかけるかの価値観は人それぞれですが、世帯年収によって、おおよそのライフスタイルは似通ってくると言えるかもしれません。
また、2017年に文部科学省が実施した「全国学力・学習状況調査」では、「世帯年収の高い家庭の子どもほど学力が高い傾向にある」と分析されています。
子育て世代には世帯年収の金額が教育水準に少なからず影響すると考える人もいるかもしれません。
全国の市区町村ごとに、世帯年収の分布割合が分かるサイトがあります。
これは、総務省の「平成25年住宅・土地統計調査」データを元に作られており、地域ごとにどの世帯年収層が多いのかなどがわかります。
これから引っ越しを検討している人は、希望している地域に自分と同じくらいの年収層の割合が多いかどうかを確認してみるのもよいでしょう。似たライフスタイルの家庭が多ければ住みやすいかもしれません。
もちろん、世帯年収で住みやすさが測れるわけではなく、また、データのない市区町村もあるので、参考程度に調べてみることをおススメします!
まとめ
世帯年収をさまざまな視点から考えていきましたが、いかがでしたか?
自分の世帯年収は平均と比べてどの程度なのか、家計の内訳で見直せる点はないかなど、働き方の見直しや無駄遣いを減らすきっかけにしてみてはいかがでしょうか。