男女の割合は?税金面は地獄? 年収700万円の手取りと生活レベル
会社員で年収700万円というと高収入は、節約生活とは無縁なイメージがありますが、実際に月々の手取りはどれくらいで、どのような生活を送ることができるのでしょうか。
年収700万円の手取り額や、生活レベルについてくわしく解説します。
年収700万円の割合は?どれくらいいる?
年収700万円台は全体の4.6%
国税庁の調査結果を見ると、年間給与額が700万円超~800万円以下である人は4.6%しかいないことがわかります。
年収700万円を超える人は上位14.3%に入り、給与面においては日本のトップ層であるといえます。
給与階級別のくわしい割合は、以下のとおりです。
同調査によると、日本全体の平均年収は443万円です。このことを踏まえると、年収700万円以上の人は平均よりも比較的裕福な生活を送れそうだと予測することができます。
年収700万円台は男性が6.8%、女性が1.7%
国税庁の調査結果を男女別に見てみると、男性で年収が700万円超~800万円以下である人は全体の6.8%です。
その一方で、女性で年収700万円超~800万円以下である人はわずか1.7%でした。
男性のなかで年収700万円以上の人は21.8%もおり、5人に1人以上いる計算になりますが、女性の場合は4.1%で50人に1人もいません。
このことから、年収700万円以上の人のほとんどが男性であると考えられます。女性は結婚や出産などのライフイベントでキャリアから離れることのある、非正規雇用の割合が多いことが背景にあります。
給与階級別に割合を見ると、男性は400万円超500万円以下(17.5%)、女性は100万円超200万円以下(22.5%)が最も多くなっています。
年収700万円は男性のなかでも十分稼いでいる方に入り、女性のなかでは100人に1人程度のトップクラスの年収であることがわかります。
コラム:20代・30代で年収700万円の人は一握り
年2回のボーナスをそれぞれ月給2カ月分とした場合、年収700万の人の月給(ボーナスを含まない毎月の額面収入)は43万7,500円と換算できます。
700万円÷{12カ月+(2カ月分×2)}
=43万7,500円
厚生労働省の調査結果では、20代で月収40万円以上である人は同世代のなかで約1.9%、30代では約12.2%でした。
20代ではおよそ50人に1人、30代でも8人に1人と、若手で年収700万円以上を稼いでいる人は一握りです。
年収700万円の手取りは?税金はいくら?
年収700万円になると、税金や保険料でどれくらい天引きされ、いくら手元に残るのでしょうか。
会社員で年収700万円になった場合の手取り額や天引き率などを「既婚・子ども2人」と「独身」それぞれのケースで紹介します。
手取り年収は530万円前後
年収700万円の場合、税金や社会保険料が差し引かれた手取り額は530万円前後になります。
ただし、具体的な手取り額は養っている家族の有無や保険料などによっても変わります。
例として、以下の2世帯の手取り額や税金・保険料の天引き額などを計算しました。
※利用ツール→ZEIMO「年収手取り額計算」
妻や子どもがいるAさんの世帯のほうが、独身のBさんよりも手取り額が約6万円多くなっています。これは、扶養家族がいる人は配偶者控除や扶養控除などによって、税金が低く抑えられるためです。
手取り月収は約44万円
年収700万円の場合、手取りの年収が530万円程度になることから、手取り月収はおおよそ44万円になります。
年収700万円の手取り年収530万円÷12カ月
=年収700万円の手取り月収
=44万2,000円
夏や冬に支給されるボーナスも含めて年収700万円である場合は、実際の毎月の手取りは44万円よりも少なくなります。
年収700万円になると税金は約25%
年収700万円の場合、給与の天引き率は25%前後になります。給与の4分の1が税金として引かれるため、税負担が大きいと感じる人もいるようです。
給与階級別の天引き率は、以下のとおりです。
天引き率は給与階級が一つ上がるごとに1%前後増えますが、年収600万円から年収700万円に上がるケースに限っては天引き率が1.5%も増えています。
この天引き率が一気に上がる背景には、所得税の税率が、課税所得が195万円~329万9,000円の間であれば10%で済みますが、330万円~694万9,000円になると20%になることが関係しています。
※課税所得=総収入のうち、税金の計算の対象となる所得
年収が700万円になると、課税所得は350万円前後になります。
年収700万円の課税所得(35歳独身)の計算
課税所得
=給与収入ー給与所得控除ー所得控除
=700万ー180万ー152万
=368万円
※所得控除は社会保険料と基礎控除のみとする
つまり年収が700万円近くになると、課税所得の330万円の境目で所得税の税率が倍になるため、税負担が急に重たくなったと感じやすくなるのです。
既婚・独身で比較|年収700万円の生活レベルとは
年収700万円世帯は具体的にどんな生活を送っているのでしょうか?
さきほど手取り額を計算した2世帯を例に、1カ月の家計簿をシミュレーションしてみました。
【結婚】余裕のある暮らしができる
年収700万円であれば、結婚して2人世帯になっても十分余裕のある暮らしができます。
総務省統計局の調査によると、年間の収入が700万円台で2人以上の世帯の1カ月あたりの消費支出はおよそ30万円。年間の支出として試算すると360万円でした。
年収700万の手取り額は約530万円であるため、片働きだとしても200万円近くゆとりがあります。貯金のためにやりくりする必要はありますが、家賃や住宅ローンなどで月に15万円程度の出費があったとしても、大きな問題はありません。
ただし、実際には「年収◯万円だから結婚できる/できない」という明確な基準はありません。たとえ年収が低くても、今よりも安いマンションに引っ越したりどちらかの実家に住んで家賃や生活費を押さえたりなど、工夫をすればゆとりのある結婚生活を送ることができます。
※出典:総務省統計局「家計調査報告(家計収支編)2022年」
【住居】23区内の2LDK中古マンションが購入可能
一般的に住宅ローンは年収の5倍程度で組むことが多いため、年収700万円の住宅ローンの目安は3,500万円になります。
東京都の相場なら、都心から離れた23区内の中古マンション・2LDKを購入することができるレベルです。新築マンションでも、23区外であれば1LDKを購入できるでしょう。
ただし、子どもがいる場合は住宅ローンの返済期間と教育費の支払いが重なるため、ローンを組むときは子育てにかかる費用も十分に考慮する必要があります。
ちなみに総務省の調査によると、年収700万円の二人以上世帯の持ち家率は85%前後で、ほとんどの人が賃貸ではなく、一戸建てを購入していることがわかります。
※持ち家率…700~750万円世帯は85.4%、750~800万円世帯は87.0%
※参考:総務省「令和4年度家計調査 <貯蓄・負債>貯蓄及び負債の1世帯当たり現在高 年間収入階級別」
【教育】高校までは公立校が現実的
年収700万円・片働きで子どもを育てる場合、学費を考えると高校までは公立校に通わせることが現実的でしょう。
一般的に、子ども1人を0歳~大学卒業の22歳まで育てるとなると、国立・公立学校に通わせた場合でも養育費・教育費合わせて約3,000万円かかると言われています。単純計算で年間約136万円です。
年収700万円世帯なら手取りが530万円程度あるため、子ども1人分の養育費・教育費は十分まかなえるでしょう。子どもが2人以上いる場合は少し生活が厳しくなるかもしれません。
もし仮に子どもを幼稚園〜大学まで私立に通わせるとなると、学費でさらに約1,400万円必要になり、養育費・教育費の総額は約4,400万円になります。単純計算で年間200万円必要になるため、片働きでは生活費をやりくりしないと難しいでしょう。
※出典:文部科学省「令和3年度子どもの学習費調査 調査結果の概要」「国公私立大学の授業料等の推移」
【貯金】年間で80万円程度が理想
一般的に、貯金にまわす金額は手取りの15%程度が目安とされていることから、年収700万円(手取り年収530万円)の場合は年間80万円程度を貯金できると理想的です。
月に換算すると6万7,000円になります。手取り月収は44万円程度あるため、単身世帯は生活費の節約を意識しなくても十分貯められる額です。
ただし、子育て世代の場合は教育費や保険料などで出費がかさむため、しっかり家計を管理しないと毎月7万円近く貯金するのは難しいかもしれません。
年収700万円以上を稼げる仕事
ここからは、年収が700万円以上になる可能性がある役職・業界・職業を紹介します。
【役職】課長以上の役職
社内で課長級以上の役職に就くことができれば、年収700万円以上になる可能性があります。
2022年の厚生労働省の調査によると、役職別の月の賃金は係長級で36万9,000円、課長級で48万6,900円、部長級で58万6,200円でした。
このデータを元に、夏と冬のボーナスをそれぞれ月給2カ月分とすると、係長級の年収は590万4,000円、課長級は779万400円、部長級は937万9,200円となります。
課長以上の役職であれば年収700万円を超える可能性が高いといえます。
※出典:厚生労働省「令和4年賃金基本調査 結果の概況 役職別」
【業界】給与水準が高いインフラや金融など
給与水準が高い業界に入ることで、年収700万円以上になる可能性が上がることもあります。
厚生労働省が発表した産業別・年代別の賃金データを見ると、平均賃金が40代で年収700万円のおおよその手取り額である44万円を超えている業界は「電気・ガス・熱供給・水道業」「情報通信業」「金融業、保険業」「学術研究、専門・技術サービス業」の4つでした。
〈業界別・年収700万円を超える年代と平均賃金〉
電気・ガス・熱供給・水道業
年代 | 平均賃金 |
40代前半 | 44万800円 |
40代後半 | 46万5,900円 |
50代前半 | 51万8,600円 |
50代後半 | 50万4,900円 |
情報通信
年代 | 平均賃金 |
40代後半 | 45万400円 |
50代前半 | 46万2,500円 |
50代後半 | 49万1,100円 |
金融・保険
年代 | 平均賃金 |
40代後半 | 44万5,800円 |
50代前半 | 48万1,200円 |
学術研究、専門・技術サービス業
年代 | 平均賃金 |
40代後半 | 44万800円 |
50代前半 | 46万円 |
50代後半 | 48万1,200円 |
※参考:厚生労働省「令和4年度賃金構造基本統計調査 結果の概況 産業別」
ただし、これらの業界に入ったとしても、実際の給与は個々人の成績や役職などで大きく変わります。年収700万円以上をもらうには、給与基準が高い業界に入った上で、昇進や昇給を目指してコツコツ努力することが大切です。
【職業】国家資格必須など専門性が高い仕事
国家資格が必要であったり学術的な専門性が求められたりする仕事は、給与が高く年収が700万円以上になることがあります。
厚生労働省の調査結果によると、平均賃金が年収700万円のおおよその手取り額である44万円を超えたのは、以下の14職種でした。
〈年収700万円を超える職種と月の平均賃金〉
職種 | 平均賃金(月) |
航空機操縦士 |
130万5,300円 |
医師 |
109万6,100円 |
大学教授 |
66万700円 |
歯科医師 |
62万2,900円 |
法務従事者 |
56万5,500円 |
大学准教授 |
54万4,300円 |
法務従事者,公認会計士,税理士以外の経営・金融・保険専門職業従事者 |
50万7,900円 |
獣医師 |
49万4,700円 |
大学講師・助教(高専含む) |
47万9,400円 |
公認会計士,税理士 |
47万6,800円 |
著述家,記者,編集者 |
46万8,100円 |
小・中学校教員 |
46万4,600円 |
システムコンサルタント・設計者 |
45万2,100円 |
研究者 |
44万9,100円 |
※参考:厚生労働省「令和4年賃金構造基本統計調査 一般労働者 職種」
上記の職種のなかで、システムコンサルタント・設計者は国家資格や学術的な専門性が求められない仕事ですが、ITに関連する豊富な知識・経験がないと務まらない職業です。デジタル化に対する社会的な需要も高まっていることも影響し、給与水準が高い傾向があります。
転職して年収アップを狙うには?
転職は給料を上げる方法の一つですが、転職したからといって全員の年収が上がるわけではありません。給与が上がる仕組みを理解して転職活動を行うことが大切です。
これから転職を考えている方は、以下の記事もぜひチェックしましょう。給与が高い業界・会社に転職する方法を紹介しています。
また、年収を上げる方法は転職以外にも「社内で昇進する」「副業を始める」「投資をする」などがあります。自分に合った年収アップの方法を検討したい方は、以下の記事も確認してみてください。
この記事の執筆者
「転職Hacks」編集部
株式会社クイック
株式会社クイックが運営する、転職活動にまつわる情報サイト「転職Hacks」の編集部。履歴書・職務経歴書の書き方や面接対策などのノウハウ記事、キャリアの悩みを解消するインタビュー・コラムを掲載中。