生活レベルや仕事も解説 月収80万円の手取り・年収を公開

月収80万円」というと豊かな生活が送れそうなイメージがありますが、実際の手取りはどれくらいになり、どのような生活を送ることができるのでしょうか。

今回は、月収80万円の人の手取り額や生活レベルについてくわしく解説します。

月収80万円の手取り・年収はいくら?

ここでは、月収80万円の手取り額税金・保険料の天引き率、ボーナスを含む年収額などを紹介します。

50歳で既婚・子ども1人」と「35歳で独身」の2世帯のモデルケースとともに紹介していきます。

※「月収」はボーナスや残業代を含む年間の総収入を12カ月で等分した金額です。基本給と各種手当など、毎月固定で支払われる「月給」とは異なります。

月収80万円の手取りは60万円弱

毎月の総支給額が80万円である場合、税金や保険料を差し引いた手取り月収は60万円弱になります。ただし、具体的な手取り額は養っている家族の人数や保険料などによって変わります。

2つの世帯のそれぞれの手取り額や税金・保険料の天引き額は、以下のとおりです。

【月収80万円の手取りの例】▼50歳・既婚・16歳の子ども1人の場合/手取り額:59万4,436円/天引き額:20万5,564円(天引き率:25.7%)/健康保険料:3万9,500円/介護保険料:7,189円/厚生年金保険料:5万9,475円/雇用保険料:4,800円/所得税:5万700円/住民税:4万3,900円/▼35歳・独身の場合/手取り額:58万1,285円/天引き額:21万8,715円(天引き率:27.3%)/健康保険料:3万9,500円/厚生年金保険料:5万9,475円/雇用保険料:4,800円/所得税:6万4,740円/住民税:5万200円|※利用ツール:ZEIMO「給与手取り額計算ツール」

月収80万円の場合、税金・保険料で総支給額の4分の1以上が天引きされると考えておけばよいでしょう。

給料の手取りの計算についてくわしく

月収80万円の手取り年収は約710万円

月収80万円の額面年収は960万円(80万円×12カ月)で、毎月の手取りはおおよそ710万円になります。

2世帯の手取り年収は、以下のとおりです。

 【年収960万円の手取りの例】▼50歳・既婚・16歳の子ども1人の場合/手取り:716万5,772円/天引き額:243万4,228円(天引き率:25.3%)/社会保険料:129万8,628円/所得税:60万7,100円/住民税:52万8,500円/▼35歳・独身の場合/手取り:700万4,640円/天引き額:259万5,360円(天引き率:27.0%)/社会保険料:121万2,360円/所得税:77万9,900円/住民税:60万3,100円|※利用ツール:ZEIMO「年収手取り額計算ツール」

妻や子どもなど扶養家族がいる人は配偶者控除や扶養控除が受けられるため、独身の人に比べると天引き率はやや低くなります。

上の例でいえば、手取り年収に16万円の差があることがわかります。

月収80万円以上の人の割合は?どれくらいいる?

月収80万円以上は上位7%に入る

国税庁の調査によると、月収80万円(額面年収960万円)の人が該当する「年収900万円超~1,000万円」の人は全体の約1.9%しかいません。

また、月収80万円以上(年収900万円超え)の人は6.8%を占めていることがわかります。

給与階級別のくわしい割合は以下のとおりです。

【給与階級別の割合】~100万円:8.1%|~200万円:13.3%|~300万円:14.8%|~400万円:17.4%|~500万円:15.0%|~600万円:10.5%|~700万円:6.7%|~800万円:4.6%|~900万円:2.9%|~1,000万円:1.9%|1,000万円超~:4.9%|※国税庁|令和3年分民間給与実態統計調査

男性では上位10%、女性では上位2%

国税庁の調査結果を男女別に見ると、男性で年収が900万円超~1,000万円である人は全体の3.0%。年収が900万円を超えている男性の割合は10.6%でした。

一方で、女性で年収900万円超~1,000万円である人はわずか0.4%でした。年収900万円を超えている女性の割合をすべて合わせても1.2%で、100人に1人程度しかいない計算になります。

【男女別・給与階級別の割合】▼男性の給与階級別構成比|~100万円:3.5%|~200万円:6.7%|~300万円:10.5%|~400万円:16.9%|~500万円:17.5%|~600万円:13.8%~700万円:9.4%|~800万円:6.8%|~900万円:4.4%|~1,000万円:3.0%|1,000万円超~:7.6%|▼女性の給与階級別構成比~100万円:14.3%|~200万円:22.5%|~300万円:20.9%|~400万円:18.0%|~500万円:11.4%|~600万円:5.9%|~700万円:3.0%|~800万円:1.7%|~900万円:0.8%|~1,000万円:0.4%|1,000万円超~:1.2%|※国税庁|令和3年分民間給与実態統計調査

最も割合が高い給与階級が男性で400万円超~500万円、女性で100万円超~200万円であることを考えると、月収80万円(額面年収960万円)以上の人は男女問わず給与面において日本のトップクラスに入るといえるでしょう。

【年代別】月収80万円以上の割合

厚生労働省の調査結果から、月収80万円以上の割合を年代別にくわしく見ると、20代では0.09%30代は0.70%40代は1.52%50代は2.63%60代は1.62%でした。

役職につく人が多い50代の割合が最も大きく、20代~50代は月収80万円の割合が徐々に大きくなる傾向が見られます。一方で60代は定年退職や再雇用などで役職から外れる人が増えるため、40代と同等の割合になっていると考えられます。

 【年収960万円の手取りの例】▼50歳・既婚・16歳の子ども1人の場合/手取り:716万5,772円/天引き額:243万4,228円(天引き率:25.3%)/社会保険料:129万8,628円/所得税:60万7,100円/住民税:52万8,500円/▼35歳・独身の場合/手取り:700万4,640円/天引き額:259万5,360円(天引き率:27.0%)/社会保険料:121万2,360円/所得税:77万9,900円/住民税:60万3,100円|※利用ツール:ZEIMO「年収手取り額計算ツール」

20~30代の若手世代で月収80万円以上の人は1%もおらず、収入が一番高くなる40代~50代であっても1~2%程度しかいないようです。

年齢が上がっても、月収80万円を達成できる人はひと握りしかいないことがわかります。

月収80万円の生活レベルとは?

月収80万円の人は、実際にどのような生活を送っているのでしょうか?

ここでは「50歳で既婚・子ども1人」と「35歳で独身」の2世帯を例に、1カ月の家計簿をシミュレーションしてみました。

【▼50歳・既婚・16歳歳の子ども1人の場合】月収80万、手取り59万円/・住宅ローン:18万円(都内、新築一戸建て、3LDK、5,500万円)/・光熱費:2万円/・通信費:2万円/・食費:8万円/・教育費:7万円/・車維持費:4万円/・日用品費:2万円/・服飾費:2万円/・保険料:3万円/・夫の小遣い:3万円/・妻の小遣い:2万円・交際・娯楽費:3万円/・貯金:3万円

【▼35歳・独身の場合】月収80万、手取り58万円/・家賃:18万円(東京都心、新築マンション、2LDK)/・光熱費:2万円/・通信費:2万円/・食費:8万円/・車維持費:5万円/・日用品費:2万円/・服飾費:3万円/・交際・娯楽費:8万円/・貯金:10万円

【住居】家賃は約18万円前後

一般的に家賃は手取り月収の3割が目安と考えられているため、月収80万円(手取り60万円)の場合は18万程度を住居費にかけることができます。

家やマンションを購入する場合、住宅ローンは年収の5倍以内なら問題ないと言われているため、月収80万円(年収960万円)なら4,800万円程度まで組むことができます。

千葉県や埼玉県などの関東圏であれば、3LDKの新築一軒家を購入できるレベルです。

一方で賃貸物件の場合は、都心のマンションの2LDKが借りられる程度の金額です。独身の場合は既婚者に比べて結婚生活の費用や子どもの教育費などがかからないため、仮に住居費に18万円以上かけても、生活を切り詰めずにお金に余裕を持って生活できるでしょう。

【貯金】月9万円程度貯められたら理想

一般的に貯金にまわす金額は「手取りの15%前後」が理想とされることが多いため、月収80万円(手取り月収60万円)の場合は月9万円以上が目安となります。年間では108万円以上の貯金ができれば十分といえます。

独身の場合は生活費があまりかからないため、そこまで節約を意識しなくても月10万円程度であれば貯金することが可能でしょう。

子育て世代でも、毎月の生活費を50万円程度に維持できれば問題なく貯金ができるはずです。しかし、子どもを私立校に通わせたり、タワーマンションの高層階に住んだりして、教育費や住居費が目安の金額よりも高くなれば、生活費として使えるお金に余裕がなくなるでしょう。

【結婚】片働きでもゆとりある結婚生活が可能

月収80万円の場合、結婚して片働きになってもゆとりある生活を送ることができると考えられます。

総務省統計局の調査によると、月収80万円の人が該当する「年間収入869万円~984万円」の階級において、2人以上の世帯の1カ月あたりの消費支出は平均37万1,487円で、年間に換算すると約440万円でした。

月収80万円(50歳で既婚・子ども1人の場合)の手取り年収は約710万円であるため、年間270万円程度を貯金に回したり臨時の支払いに充てたりできる計算になります。

ただし、上記の調査データは家賃の支払いがない世帯を含めた平均支出を示しており、1世帯あたりの住居費は2万円台と低い数値です。賃貸物件に住む場合や住宅ローンの返済がある場合は月40万円以上の支出がかかっていると予想され、実際の生活費のゆとりは年間270万円より少ないと考えられます。

※出典:総務省統計局「2022年 家計調査 家計収支編 第2表 年間収入五分位・十分位階級別1世帯当たり1か月間の収入と支出(二人以上の世帯のうち勤労者世帯)

【子育て】子ども2人でも大学からなら私立も可能

月収80万円で子どもを育てる場合、子どもが2人以上いても大学からなら私立校に通わせることができるでしょう。

子どもを幼稚園〜大学まで「オール私立」で通わせるとなると、養育費・教育費の総額は公立校と比較して1,400万円程度多くなります。大学卒業まで22年かかるとすると、出費が年間64万円増える計算です。

【公立学校と私立学校の学費(総額)の目安】教育課程/公立の学費/私立の学費/私立と公立の差額/幼稚園/3歳/13万3,353円/30万9,170円/17万5,817円|4歳/14万838円/27万6,125円/13万5,287円|5歳/19万8,555円/33万9,341円/14万786円/小学校1年生/37万9,539円/213万6,449円/175万6,910円|2年生/28万3,211円/140万2,725円/111万9,514円/3年生/31万5,794円/151万9,595円/120万3,801円|4年生/32万9,198円/159万2,088円/126万2,890円|5年生/38万774円/168万3,972円/130万3,198円|6年生/42万3,506円/166万4,831円/124万1,325円|中学校/1年生/53万1,544円/180万6,991円/127万5,447円/2年生/44万3,848円/121万8,559円/77万4,711円|3年生/ 64万925円/127万8,255円/63万7,330円/高校(全日制)/1年生/62万9,459円/127万6,978円/64万7,519円|2年生/45万7,895円/94万1,873円/48万3,978円|3年生/45万5,762円/93万7,550円/48万1,788円/大学/4年制|253万6,757円/396万9,723円/143万2,966円|合計/828万958円/2,235万4,225円/1,407万3,267円|※大学は令和3年度の入学料+授業料(4年分)より算出

総務省統計局の調査結果から、月収80万円(手取り年収710万円)世帯の年間支出は養育費・教育費を含めて約470万円程度。仮に、調査対象の世帯がすべて子どもを公立校に通わせているとするなら、「オール私立」の場合は生活費のゆとり約240万円のうち4分の1以上を私立校の学費に充てることになります。

年間100万円程度を貯金したり臨時の支払いが発生したりすることを考慮すると、月収80万円世帯なら子ども1人を「オール私立」で通わせることができます。

子どもが2人以上いる場合は「オール私立」は難しいですが、大学からなら公立校と私立校の差額が143万2,966円(4年制の場合)であるため、数年間の貯金で私立の学費を十分まかなえると考えられます。

※出典:文部科学省「令和3年度子供の学習費調査 調査結果の概要」「国公私立大学の授業料等の推移

月収80万円を稼げるのはどんな仕事?

どのような仕事に就けば、月収80万円以上稼ぐことができるのでしょうか。

ここでは、月収80万円以上を超える職種や、高所得者の割合が多い業界の特徴について紹介します。

【職業】士業など専門資格が求められる仕事

月収80万円(年収960万円)以上は、専門性の高い資格を持っている傾向があります。

なかでも司法書士や弁護士などの「士業」と呼ばれる職業は、軒並み平均年収が800万~1,000万円前後です。これらの仕事は、企業や組織で十分な経験を積んでから個人事業主やフリーランスとして独立し、さらに年収を上げることも可能です。

厚生労働省が運営する職業情報提供サイト「jobtag」の各職業年収データによると、平均年収が800万円前後の士業職種は以下のとおりです。

職種 平均年収
  • 弁護士
  • 司法書士
  • 弁理士
  • 土地家屋調査士
971.4万円
  • 中小企業診断士
  • 社会保険労務士
780.9万円

※令和4年賃金構造基本統計調査の結果を加工して作成
※出典:厚生労働省「jobtag

士業に就くためには専門性の高い資格を取得する必要があります。資格試験の合格率は低く、試験に受かるためには、数年単位で勉強に取り組む必要があります。

たとえば司法書士の場合、試験に合格するためには3,000時間の学習が目安と言われています。仕事を続けながら1日3時間学習しても、単純計算で2年半以上かかる計算になります。

【業界】インフラ、金融・保険、情報通信業を選ぶ

高収入の人が多い業界であれば、平均年収も高い可能性があります。

高収入者の割合が特に高い「電気・ガス・熱供給・水道業」「金融業・保険業」「情報通信業」などに転職すれば月収80万円以上を目指せるチャンスも多くなると考えられます。

国税庁の業界別の調査データを見ると、「電気・ガス・熱供給・水道業」の年収1,000万円以上の人の割合は24.02%。月収80万円以上のおおよそ4人に1人が「電気・ガス・熱供給・水道業」で働いている計算になります。

「金融業・保険業」「情報通信業」も年収1,000万円以上の人の割合が10%を超えており、他の業界に比べて高収入者が多いことがわかります。

年収1,000万円以上の人の割合(業界別)

業界 割合
電気・ガス・熱供給・水道業 24.02%
金融業、保険業 17.66%
情報通信業 10.66%
学術研究、専門・技術サービス業、教育、学習支援業 9.09%
製造業 6.30%
建設業 6.17%
不動産業、物品賃貸業 5.90%
医療、福祉 3.58%
卸売業、小売業 3.34%
サービス業 2.82%
複合サービス事業(郵便局、協同組合) 2.38%
運輸業、郵便業 2.22%
農林水産・鉱業 1.36%
宿泊業、飲食サービス業 0.90%

※出典:国税庁「令和3年分民間給与実態統計調査 第8表 業種別及び給与階級別の総括表

上記3つの業界への転職を目指すなら、実際の業務で役立ち、就職活動でも有利になりやすい資格がいくつかあるので気になる方は調べてみましょう。

就職で有利になりやすい資格の例

  • インフラ業界
    …技術職を目指すなら危険物取扱者や電気工事士、ガス主任技術者など
  • 金融業界
    …証券外務員、証券アナリストなど
  • 保険業界
    …損害保険募集人、公的保険アドバイザーなど
  • 情報通信業界
    …ITパスポート、基本情報技術者など

    ※専門職を目指すならプログラミング、デザインなどの技術・経験も必要

資本金10億円以上の企業は約12%が年収1,000万円超

企業規模が大きな会社は社員の年収が高い傾向にあるため、資本金10億円以上の企業で順調に昇進していけば、給与が最も高くなる50代後半に年収1,000万円を達成できる可能性があります。

国税庁の調査データを企業規模別で見ると、年収1,000万円超の給与所得者の割合が最も高いのは資本金10億円以上の企業でした。

【企業規模別/年収1,000万円超の社員】<企業規模(資本金)/割合>2,000万円未満/3.1%|2,000万円以上5,000万円未満/2.8%|5,000万円以上1億円未満/2.6%|1億円以上10億円未満/4.6%|10億円以上/12.3%

※出典:国税庁「令和3年分民間給与実態統計調査結果

資本金が大きい企業は、全国に支店を持っているなど、事業規模が大きく名の知れた大企業がほとんどです。

就職希望者も数多くいるので、就職を目指すのであれば、多くの候補者のなかから採用されるために「その企業で活躍できること」を証明する実績や過去の経験が必要になります。

コラム:歩合制の仕事を選ぶのもひとつの手

高所得者が多い職業や業界を目指すことが難しくても、自分の頑張りと能力次第でインセンティブがもらえる「歩合制」の仕事を選ぶことで、月収80万円以上になる可能性もあります。

歩合制が採用されていることが多い職種は以下のとおりです。自分に向いていそうな職業があれば、チャレンジしてみるのもよいかもしれません。

歩合制が採用されていることが多い職種の例

  • 不動産営業
  • 保険営業
  • MR
  • ファンドマネージャー
  • 自動車ディーラー
  • タクシーやトラックのドライバー
  • 販売員

例えば、行動力があり体力やコミュニケーション能力に自信があるなら不動産営業や保険営業、運転が得意ならドライバーなどが候補になるでしょう。

転職して年収アップを狙うには?

給料を上げる方法の一つとして「転職」がよく挙げられますが、実際には、転職したからといって全員の年収が上がるわけではありません

転職で年収アップを狙うために、まず給与が上がる仕組みを理解してから、転職活動を行うことが大切です。

以下の記事では、年収を上げる方法や給与が高い業界・会社に転職する方法を紹介しているので、あわせてチェックしましょう。



                                        

この記事の執筆者

「転職Hacks」編集部

株式会社クイック

株式会社クイックが運営する、転職活動にまつわる情報サイト「転職Hacks」の編集部。履歴書・職務経歴書の書き方や面接対策などのノウハウ記事、キャリアの悩みを解消するインタビュー・コラムを掲載中。