勝ち組?それとも…? 年収800万円の手取りと生活実態

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2018年度の税制改正で、「年収850万円以上」の会社員の所得税増税が決まりました。

修正前の改正案でボーダーとなっていたのが「年収800万円」。年収800万円台の会社員は増税されてもいいほどのお金持ちと言えるのでしょうか?

年収800万円の会社員がどのくらいいるのか、実際の手取り額など、気になる実態を探ってみました。

年収800万円のサラリーマンはどれくらい?

はじめに、「年収800万円」のサラリーマンの数を、データを元にみていきます。

「年収800万」は全体の約2.7%

国税庁が発表したデータによると、年収800万円台のサラリーマン(会社員、公務員などの給与所得者)は全体の約2.7%でした。「800万円以上」では8.9%となります。

サラリーマンの年収階層別割合を表す円グラフ。

※参考→平成27年(2015年)分「民間給与実態統計調査」/国税庁

一方、サラリーマン全体の平均年収は420 万円で、男性521 万円、女性276 万円となっています。正規社員では485 万円、非正規社員で171 万円。年収のボリュームゾーンをみると、男性では300万円超400万円以下、女性では100万円超200万円以下という結果になりました。

このことから、年収800万円のサラリーマンは平均よりリッチな生活を送れそうだと予測できます。

男性は4.2%、女性はわずか0.7%

男女別の年収階層別割合を表す円グラフ。

上記のデータを男女別にみると、年収800万円台のサラリーマンは、男性では全体の4.2%いるのに対し、女性はわずか0.7%でした。

女性は出産や育児などライフステージの変化により休職や退職することが多いため、男性よりも継続したキャリアを築くのが難しいのが現状です。また、女性に多い職種は年収の天井が低めに設定されていることも多いため、男性との差が大きくなっているのだと考えられます。

年収800万円オーバーはインフラ系、金融・保険業界

年収800万円以上のサラリーマンは、「電気・ガス・熱供給・水道業」等インフラ業界が全体の37.4%を占めていることを表すグラフ。

業種別に見てみると、年収800万円超えのサラリーマンがもっとも多いのは「電気・ガス・熱供給・水道業」などのインフラ系で、全体の37.4%を占めています。平均給与が最も高い業種だけに納得の結果です。

次いで「金融業、保険業」で26.6%。さらに、情報通信業が18.6%、学術研究・教育研究業が16.2%と続きます。

業種別・給与階級別の構成割合を表すグラフ。

一方、もっとも年収800万円以上の割合が低いのは、「宿泊業・飲食サービス」の1.6%でした。

「年収800万円」サラリーマンの生活レベルは?

ここまでで、年収800万円のサラリーマンがそれなりの「勝ち組」だということがわかったのではないでしょうか。この章では、実際に「年収800万円」世帯ではどんな生活をしているのか、その実態をケース別にシミュレーションしていきます。

手取り金額は600万円前後

年収800万円の場合、税金や社会保険料が差し引かれた手取り額は600万円前後となります。手取り額は養っている家族の有無や保険料などによっても変わるので、以下では年齢や扶養家族別にシミュレーションしてみました。

表では参考数値として、サラリーマンの平均年収420万円でも概算してみました。

A・B・Cのケース別に生活シミュレーション。※いずれも生命保険加入済み、賃貸住宅に居住(住宅ローンなし)として算出。A(年収800万円・45歳・片働き・子ども2人)は、手取り年収602.2万円・月収50.2万円。所得税:38.5万円、住民税:41.6万円、社会保険料(概算):117.8万円、計197.8万円が天引きされる。B(年収800万円・35歳・独身)は、手取り年収594.6万円・月収549.6万円。所得税:48.4万円、住民税:45.8 万円、社会保険料(概算):111.1万円、計205.4万円が天引きされる。C(年収420万円・30歳・独身)は、手取り年収329.5万円・月収27.5万円。所得税:9.3 万円、住民税:18.9万円、社会保険料(概算):62.3万円、計90.5万円が天引きされる。

※利用ツール→「給与から所得税・住民税・社会保険料・手取りの簡易計算ツール – 控除入力(配偶者控除・医療費控除・ふるさと納税など)」/税理士試験と税務のメモ

年収800万円の場合、1ヶ月あたりの手取り額はおよそ50万円(ボーナスを含む12分割)ですが、扶養家族(このケースでは専業主婦と15歳以下の子供が2人いるとして概算)がいるAさんは独身のBさんより、手取り月収が約6万円高くなっています。さらに、所得税は独身の人に比べて約10万円低くなっています。

妻や子供など扶養家族がいる人は、配偶者控除や扶養控除が受けられるので所得税を低く抑えられるためです。

一方、年収420万円のCさんは、年収800万円の2人と比べて税金・社会保険料の天引き率が21.5%とずいぶん低く抑えられています。これは年収が上がるほど税金の占める割合が高くなる累進課税という仕組みによるものです。

平均貯蓄高は1419万円、負債額は922万円

階級別の平均貯蓄額と平均負債額イメージ図。

総務省の平成28年度の家計調査によると、年収800万円が該当する世帯層では、貯蓄高が1419万円、負債額が922万円となっています。(世帯人員3.5人、世帯主の平均年齢48.5歳)。貯蓄は金融機関へのもの(定期預金など)が、また負債は土地・建物に対するもの(住宅ローンなど)がほとんどです。

年間収入が最も低い層の貯蓄額は692万円(第1階級/平均年収345万円)、最も高い層(第5階級/平均年収1232万円)が2372万円という結果になりました。年間収入が高くなるにつれて貯蓄高も増える傾向にあるようです。

一方、負債額でみると、年間収入が最も低い層が360万円、高い層が993万円となりました。この結果からみると、年間収入が高くなるにつれて負債額も多くなっていることがわかります。

※参考→「家計調査(貯蓄・負債編)‐平成28年(2016年)平均結果速報‐(二人以上の世帯)3.世帯属性別にみた貯蓄・負債の状況/総務省

平均持ち家率84.1%。教育費も考慮した住宅ローンを

サラリーマンの持ち家率イメージ図。

同じく調査によると、年収800万円世帯の持家率は84.1%でした。サラリーマン世帯全体の平均持家率は77%。年収が最も低い層では62.8%、最も高い層では86.6%と、年収が高くなるにつれて持家率もあがります。

年収があがるにつれて負債額が高くなるのは、「持家率の高さ=住宅ローンの負担」も影響しているといえるでしょう。

住宅ローンを返済している世帯の平均負債額は1649万円です。一般的に住宅ローンは年収の5倍以内であれば問題ないとされるため、年収800万円なら4000万円の住宅ローンまで問題ないという計算になります。

しかし、住宅ローンの返済期間は、子供の教育費がかかる時期とリンクするため、教育費の出費も十分に考慮してローンを組んだ方がいいでしょう

※参考→「家計調査(貯蓄・負債編)‐平成28年(2016年)平均結果速報‐(二人以上の世帯)」3.世帯属性別にみた貯蓄・負債の状況/総務省

タイプ別・年収800万円世帯の家計簿

年収800万円世帯は具体的にどんな生活を送っているのでしょうか? さきほど手取り額をシミュレーションした2タイプを例に取り、1ヶ月の家計簿を覗いてみました。

夫(45歳)の片働き夫婦、小学生の子供2人の場合

片働き・子どもあり夫婦の家計簿例。月収(手取り)50.2 万円。家賃13.0 万円_勤務地の都心まで電車で30分。都内の3LDK賃貸マンション。食費10.0 万円_月、数回、家族で外食。水道光熱費2.5 万円。通信費2.0 万円。消耗品費3.0 万円_日用品・衣類。保険料4.0 万円_子ども2人分の学資保険がメイン。教育費4.0 万円_中学受験を控えた長男の塾、次男のお稽古。夫の小遣い4.0 万円_ランチ代含む。妻の小遣い2.0 万円_ママ友とのランチ代など。車3.0万円_6年前、次男の誕生を機に300万のミニバンを8年ローンで買替え。子供の送り迎え、レジャーなどに使っている。趣味・娯楽4.0 万円_家族のレジャー、帰省。貯金3.7 万円_子どもの私立中学入学を視野に入れ、教育費の備えに。

Aさんの家計で注目すべきは教育費。小4の長男は私立中学受験を控えて塾代がかさんでいますが、私立中学に進学できればその後の授業料、また次男の教育費にも備えてさらに教育費を確保していくことが課題です。そのため、学資保険のほかボーナスや月の貯金も教育費にまわすようにと心がけています。

趣味・娯楽はレジャーのほか、年に2回、家族旅行をかねた福岡にある夫の実家への帰省のための費用にも使っています。

将来、子供の独立後にUターンすることも視野に入れ、マイホームは持たない主義です。

独身(35歳・男性)の場合

35歳独身男性の家計簿例。月収(手取り)49.2 万円。家賃17.0 万円_都心の1LDK賃貸タワーマンション。食費8.0 万円_ほぼ外食。仕事を兼ねた会食や飲み会など交友費も含んでいる。水道光熱費1.5 万円。通信費1.5 万円。消耗品費4.0 万円_シーズンごとのスーツ代など衣類、日用品。車2.0 万円_脱マイカー派。遠出するときだけカーシェアリングを利用。趣味・娯楽10.0 万円_プライベートジム、趣味のサイクリング、旅行など。貯金5.2 万円_将来の結婚資金に。

Bさんの悩みは、なかなか貯金ができないこと。付き合っている彼女との結婚も視野に入れ、できるだけ貯金をしたいと考えて入るものの、独身貴族の生活で身についてしまった贅沢からなかなか抜け出せていないのが現状です。

仕事が深夜におよぶことも多いため自炊はしておらず、仕事をかねた飲み会が多いため食費もかさんでいます。それでも趣味と健康を兼ねたサイクリングを始めたことを機にマイカーを手放し、ローンをなくすことには成功しています。

趣味や娯楽、あるいは家賃を見直せば、まだまだ貯金にまわせる余地はありそうです。

年収800万円で損する人&トクする人

同じ年収800万円でも、扶養家族の有無などで年収が変わってきますが、他にも気をつけておくとオトクになるポイントがあります。順番に見ていきましょう。

※所得税増税の試算です

ふるさと納税を活用しよう!

ふるさと米便り

年収800万円のなかで手取り額を減らさないために有効なのが、所得税をおさえること。その方法として好評なのが「ふるさと納税」です。

自分の好きな地域を選んで寄附をする仕組みで、寄付額に応じてお礼の品がもらえるうえに、支払う所得税と住民税が安くなります(控除される)。

自己負担額2000円を除いた寄付金の全額が控除されますが、全額控除される寄付額には年間上限があります。上限を超えた金額分は、全額控除の対象とならないので気をつけましょう。年収800万円の寄付額の目安は以下のとおりです。

年収800万円のふるさと納税 寄付額目安 (※自己負担額2000円含む)。以下、家族構成:寄付額上限。独身・共働き(子どもなし):12.9 万円。共働き(高校生の子ども1人):12.0 万円。共働き(大学生の子ども1人):11.6 万円。共働き(大学生・高校生の子ども2人):10.7 万円。配偶者控除のある夫婦(子どもなし):11.0 万円。配偶者控除のある夫婦(高校生の子ども1人):11.0 万円。配偶者控除のある夫婦(大学生の子ども1人):10.7 万円。配偶者控除のある夫婦(大学生・高校生の子ども2人):8.5 万円。※1「共働き」…配偶者控除の適用がない(配偶者の給与収入が141万円以上)の場合※2「高校生」…16歳から18歳の扶養親族※3「大学生」…19歳から22歳の特定扶養親族※4中学生以下の子どもは、扶養控除がないため、寄付額上限に影響しない。

私立高校の授業料免除は年収760万円まで

現在、東京都と国では、年収910万円未満の世帯を対象に、所得に応じて段階的な就学支援金や奨学金を支給しています。さらに2017年1月、東京都知事が年収760万円未満の都内在住世帯を対象に、独自の給付型奨学金を拡充し、毎月およそ44万円かかる私立高校の授業料を無償化することを決定しました。

今後も継続されるかは不明ですが、高校入学前の子供がいる世帯は、年収760万円が教育費を下げられるボーダーラインになりそうです。年収800万の人も、残業を控えるなどして収入を下げることで対象になる可能性があります。

共働きで年収800万円なら手取りアップ!?

共働きの夫婦

年収800万円といっても、夫婦が年収400万円ずつの共働きの場合、課税所得が抑えられるため、支払う税金や社会保険料が抑えられ、実質的な世帯年収がアップするという裏技も。

社会情勢や企業経営が一生安泰とは言えないご時世だからこそ、夫一人の片働きに頼るのではなく、子育てが落ち着いたら、夫婦共働きでリスクに備えるのもありなのではないでしょうか。

D・A・Bのケース別に生活シミュレーション。※いずれも生命保険加入済み、賃貸住宅に居住(住宅ローンなし)として算出。D(年収800万円・35歳・共働き※年収400万×2人)は、手取り年収629.7万円・月収52.5万円。所得税:17.3万円、住民税:35.3万円、社会保険料(概算):117.7万円、計170.3万円が天引きされる。A(年収800万円・45歳・片働き・子ども2人)は、手取り年収602.2万円・月収50.2万円。所得税:38.5万円、住民税:41.6万円、社会保険料(概算):117.8万円、計197.8万円が天引きされる。B(年収800万円・35歳・独身)は、手取り年収594.6万円・月収549.6万円。所得税:48.4万円、住民税:45.8 万円、社会保険料(概算):111.1万円、計205.4万円が天引きされる。

共働きで800万円の世帯は、社会保険料は夫婦それぞれに差し引かれるため、少々割高にはなりますが、所得税・住民税は半額近くに。結果的に手取り年収では、片働き世帯・独身世帯よりも30万円近くアップしています。

仕事や家庭環境の問題もあるため、現在夫もしくは妻しか働いていない世帯が急に共働きになるのは難しいことも多いですが、これだけの手取りへのインパクトがあることは覚えておいて損はないでしょう。

まとめ

年収800万円のリアルな収入状況とライフスタイルが理解できたでしょうか?

年収800万円以上の人はサラリーマン全体でも1割を切る高所得者である一方、そこまで贅沢ができる年収というわけでもありません。

これから年収850万円をボーダーに所得税の控除が変更になり増税となりますが、できるだけ損しないようしっかりと調べ、賢く生活しましょう。

 更新日:2018年7月5日
(公開日:2017年6月27日)

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