銀行や公務員のケースも紹介 出向とは?出世?それとも左遷?

出向とはどんな働き方で、どのような目的があるのでしょうか。

出世や左遷にまつわる疑問についても解説するので、出向を指示されて悩んでいる方はぜひ参考にしてみてください。

出向とは?銀行や公務員でも行われる理由

まずは出向とはどんな働き方なのかついて説明します。

出向とは籍をおいたまま他社で業務を行うこと

出向とは、雇用契約や所属は元の企業のまま、子会社やグループ企業などの別会社で働くことです。

その際、勤務時間や休日についての就業規則などは出向先企業に従うことになるため、基本的に出向先企業の社員と同じように扱われることになります。

出向には本人の同意は必要ないとされていますが、ほとんどの場合は確認も兼ねてあらかじめ説明されることが多いようです。

勤務地が変わるという点では転勤に似ていますが、転勤はあくまで同じ会社内で勤務地及び所属先が変更になることを意味します。

出向には在籍出向と転籍出向の2種類ある

出向には労働契約の状況が異なる在籍出向」と「転籍出向」の2種類があります。

出向となった場合はどちらになるのかあらかじめ確認しておきましょう。

在籍出向

出向元企業との雇用契約を結んだまま、さらに出向先企業とも契約を結ぶケース。

社内では学べない技術を出向先で習得する、または出向先に技術のレクチャーをするというケースが多く、基本的には出向元企業の指示に従って仕事をします。

また、出向元と出向先のどちらの就業規則に従うかは、特に明示がなければ、労働時間や休日などの勤務に関する事柄は出向先企業その他の事柄は出向元企業の就業規則が適用される傾向にあります。

転籍出向

出向元企業との雇用契約は解消して、出向先企業と新たに契約を結ぶケース。

出向先企業の指示に従って業務を行い、出向先企業の就業規則が適用されます。

出向元企業との雇用契約は解消されているため、将来的に戻れる可能性は低いといえます。

出向になる背景や目的は?

出向は、ほとんどが社員の経験や成長のためといったポジティブな理由で行われるものが多いようです。

ただし、企業の業績によってはリストラを回避するための措置として行われる場合もあります。

出向の代表的な目的としては以下のようなものがあります。

人材育成 20~30代の若手社員に、勉強や経験の機会を与えるために出向させる。
人事戦略 グループ企業の発展を目的とし、リーダーとして出向させる。
企業間交流 新しい子会社・取引先との信頼関係を築くための潤滑剤のような役割として出向させる。
雇用調整 自社での雇用継続が厳しい場合、転籍を視野に入れて出向させる。

出向が多いのはどんな仕事?

出向が多い仕事として、銀行員と公務員が挙げられます。これらの職種を目指す場合、どういった状況や目的で出向が行われるのかしっかり把握しておくことが大切です。

銀行員

銀行は関連会社や融資先の企業への出向が多いことで知られています。

若手が経験を積むために出向することもありますが、そのほかにも業績の悪い取引先を立て直すことを目的とした「業務出向」があります。

また、40~50代の管理職になれなかった一部の銀行員は仕事が減り、行内でのポジションが確保できなくなったのち、同じ系列のグループ会社や取引先に出向するケースもよくあります。

この場合は「斡旋出向」と呼ばれ、出向してから1年ほどで転籍となり、銀行を退職することになります。

公務員

国家公務員・地方公務員ともに、若手を中心に職員の成長を促すことを目的とした出向が行われます。

また、出向先でのパイプを生かし、元の職場に戻った後にさまざまな情報を入手しやすくする、という狙いもあるようです。

<公務員の出向先の例>

  • 国の省庁
    …総務省、内閣府、厚労省、環境省、国交省
  • 他自治体
    …都庁や近県、県内市町村など
  • 民間企業
    …商社、銀行、鉄道会社、飲料会社、自動車メーカー、保険会社など

出向と派遣の違い

在籍型出向と労働者派遣の違いを表した図。出向の場合、労働者は出向元・出向先の双方との間に雇用関係があり、期間は1年以上と定められる場合が多く比較的長期。労働者派遣の場合、労働者と派遣先の間にあるのは指揮命令関係であり、期間も短期1日~1ヶ月、長期6ヶ月以上と短期。

出向と派遣の主な違いは雇用関係と期間です。

出向の場合は、出向元と出向先との間で「出向契約」が結ばれることで、出向先との間にも雇用関係が発生します。

一方、派遣の場合は派遣元と派遣先の間で「労働者派遣契約」が結ばれるので、派遣先は労働者に対して業務上の指示を行う権限しかありません。また、出向は派遣よりもやや期間が長い傾向があります。

出向は出世?それとも左遷?

出向には人によって出世や左遷のイメージが強いと思いますが、どのように解釈するべきなのかについて説明します。

親会社に戻る前提なら出世、そうでないなら左遷かも?

出向の期間が終わった後、出向元に戻ることが約束されているのであれば、技術やノウハウの習得などに関して大きな期待をされており、出世候補になっていると前向きに考えてもいいかもしれません。

一方、将来的に出向元と雇用契約を解消することになる転籍出向の場合、状況によっては左遷と感じてしまうのも仕方のないことですが、これもまた自分の考え方次第です。

自分自身を成長させる機会として前向きに捉えましょう。

給料が上がるか下がるかは状況次第

出向時の給与は出向先から支払われますが、給与額については出向元と出向先の話し合いによって決定されます。

そのため、以前と同じ給与水準のままの場合もありますが、基本的には出向先の給与水準に合わせて金額が決まるようです。

出向のメリットはスキルアップと実績作り

経営不振に陥っている子会社や取引先を立て直すために出向で送り込まれるようなケースであれば、スキルアップや実績を作る大きなチャンスです。出向前までは経験できなかった仕事をすることで成長でき、また成果を出すことで評価にもつながります。

出向元企業からの期待に応えるためにも、出向期間中に成果が出せるように頑張りましょう。

コラム:出向中の場合、クレジットカードの申込書はどう書く?

クレジットカードに申し込みをする際、申込用紙には「勤務先」「出向先」「派遣先」などを書く欄があります。

出向中の場合は、出勤先には在籍している企業名(親会社)、出向先の欄には出向している企業名(子会社・関連企業)を書きましょう。

まとめ

出向とは、雇用契約や所属はそのままで子会社やグループ企業などの別会社の業務に従事することです。人材育成や会社や企業グループ全体の発展を目的とした出向がほとんどなので、前向きに捉えていいでしょう。

ただし、出向には「在籍出向」と「転籍出向」の2種類があるので、指示を受けた場合どちらになるのかを必ず確認しましょう。

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