額は下がる?どちらからもらう? 出向したら給与はどうなるのか

出向するとなると「給与は下がるのか」「元の会社と出向先、どちらから給与を受け取るのか」など、給与について気になりますよね。

実は、出向には2種類のタイプがあり、給与の支払われ方も変わってきます。

  • 在籍出向…現在の会社との雇用契約を維持したまま赴任
  • 転籍出向…契約を解消して出向先と新たに雇用契約を結ぶ

それぞれ詳しく見ていきましょう。

出向についてくわしくはこちら

【在籍出向】給与が大幅に下がることはない

一般的には元の会社の給与水準で支払われる

元の会社に籍を置いたまま他の会社で働く在籍出向では、元の会社の基準で給与が支払われることが一般的です。

この場合の給与額は、出向後の仕事内容によって多少変化するものの、出向前より大きく減ることはないでしょう。

ただし、本来、出向元・出向先どちらの給与水準に合わせるかは、2社間の取り決めに任されています。そのため、在籍出向であっても、出向先ベースで給与が支払われる可能性もゼロではありません

差額分が補われるケースもある

元の会社よりも低い出向先の給与水準に合わせる場合は、調整手当などによってそれまでの給与との差額が補われる傾向にあります。

労働者の同意を得ていないまま、給与の大きな減額をすることは、会社側が権限を濫用したとして、出向自体が無効になる可能性もあります。

会社によっては出向手当が出ることも

中には、出向による労働条件の変化を考慮して、出向手当を用意している会社もあります。厚生労働省の平成30年賃金事情調査によると、197社中89社(45.2%)が出向手当制度を導入していました。

出向手当の金額は会社ごとに異なり、さらに同じ会社でもどの出向先に行くかなどによって幅があります。

ひと月あたりの平均支給額は、定額の場合2万3千円、支給額に幅がある場合は最高5万9千円、最低5,300円となっています。

出向手当の有無や、支給される金額については出向前に就業規則などで確認し、それでもわからない場合は人事担当者に聞いてみましょう。

※出典:
平成30年賃金事情調査 調査結果の概要|厚生労働省

給与がどちらから支払われるかは状況次第

在籍出向のとき、出向元・出向先のどちらが給与を支払うかは、給与水準と同様に2社間の取り決めによって決まります。一般的な支払いパターンは下記の3つです。

  1. 出向元から全額が支払われる
  2. 出向先から全額が支払われる
  3. 出向元と出向先の両社で分担して支払われる

一般的なパターンは【1】です。【3】の出向元・出向先の両社から支払われるパターンでは、雇用保険や健康保険・厚生年金保険の保険料が【1】【2】よりも安くなるケースがあります。

雇用保険料が安くなるケース

基本給を含む給与全体が出向元・出向先によって分割して支給される場合、雇用保険料が安くなります

雇用保険は、1人の労働者につき1つの保険関係しか成り立たないため、在籍出向の場合は給与の支払い額が多い会社とのみ、保険関係が成立します。よって、給与の全額を1社から受け取るときよりも、雇用保険料が安くなります。

健康保険料・厚生年金保険料が安くなるケース

基本給のみが出向元から支払われ、基本給以外の通勤手当や住宅手当は出向先から受け取る場合、健康保険と厚生年金保険料が安くなるかもしれません

2社以上で勤務している場合、通常は年金機構が各社の給与を合算して保険料を計算します。

しかし、出向先から通勤手当や住宅手当だけを受け取っている場合は、出向先との雇用関係があると認められず、2社以上勤務しているケースに当てはまりません。

そのため、出向元からの基本給のみが保険料の計算に用いられることになり、他の場合に比べて保険料が安くなる可能性があります。

※出典:
社会保険労務士たちばな事務所 出向・転籍 Q&A

コラム:海外へ出向する場合の給与計算

海外に出向する場合、多くの会社は、社員が現地でも日本と同じような生活ができるように「購買力補償方式」で給与を計算しています。

購買力補償方式とは、国内での給与に「生活費指数(各国の物価などを比較して算出した数字)」と「為替レート」をかけ合わせて給与を計算する方法です。

こうして計算した額のうち、生活費を現地通貨で支給し、残りは日本円で支給されることが多いようです。

海外転勤について詳しくは、下記の記事を参考にしてください。

【転籍出向】給与は出向先の水準で決まる

元の会社との雇用契約は終了する

出向先の企業と新たに雇用契約を結ぶ転籍出向の場合、給与は出向先の水準で支払われます

元の会社との雇用関係は終了しているため、ほとんど転職と同じ状況と言えるでしょう。出向先の給与水準が元の会社よりも低い場合は、必然的に給与も下がります。

通常、転籍出向する場合は出向先の労働条件について会社から説明があります。雇用契約が結び直されることや、給与が下がるといった「不利益変更」については、本人の同意が必要なためです。

不利になる出向命令を無理に受け入れる必要はありません。会社から転籍出向を持ちかけられたら、自分にとって最適な選択か慎重に検討しましょう。

給与は出向先から支払われる

転籍出向では、雇用契約を結んでいるのは出向先のみとなるため、給与を支払うのも出向先になります。また、社会保険に関しても出向先のみと保険関係があります。

まとめ

出向には2種類あり、在籍出向の場合、給与の支払い方法は会社によってさまざまですが、給与額が大幅に下がることはありません。一方、転籍出向の場合、給与額は出向先の給与水準次第です。

出向は、キャリアにおける大きな転機となります。給与に限らず、出向先の労働条件などに不安がある場合は、会社にしっかり確認しておきましょう。

出向には給与以外にもさまざまなメリット・デメリットがあるので、下記の記事で確認しておきましょう。

(文:転職Hacks編集部)

この記事の監修者

特定社会保険労務士

成澤 紀美

社会保険労務士法人スマイング

社会保険労務士法人スマイング、代表社員。IT業界に精通した社会保険労務士として、人事労務管理の支援を中心に活動。顧問先企業の約8割がIT関連企業。2018年より、クラウドサービスを活用した人事労務業務の効率化のサポートや、クラウドサービス導入時の悩み・疑問の解決を行う「教えて!クラウド先生!®(商標登録済み)」を展開。

社会保険労務士法人スマイング 公式サイト

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