計算方法ともらうための5つの条件 誰でもわかる休業手当まとめ

会社が休業したときにもらえる休業手当。どんなときにいくらもらえるのでしょうか?

休業手当の計算方法やもらうための条件のほか、紛らわしい「休業補償」との違いもあわせて説明します。

※個別の詳しい状況については、自治体等にお問い合わせください

休業手当とは?金額や条件も解説

まずは、休業手当がどのような手当なのか説明します。

休業手当とは、会社の責任で仕事ができない場合の手当

休業手当とは、例えば「経営悪化による仕事量の減少」といった会社の責任で仕事ができないとき、給料の代わりにもらえる手当のことです。

労働者の生活保障のため、労働基準法(第26条)によって定められている制度です。

休業手当は、会社が負担する手当なので、雇用保険や労災保険とは関係ありません。

休業手当は普段の給料の6割

休業手当は、少なくとも普段受け取っている給料の6割をもらえます(労働基準法第26条)。

休業手当は給与所得(賃金)扱いとなるため、税金や社会保険料が引かれます。また、受け取りのタイミングは給料の支払い日と同じです。

なお、休業手当をもらうために労働者側が申請手続きをする必要はありません。

パートや派遣でも休業手当がもらえる

パート・アルバイト・派遣社員などの雇用形態でも、正社員と同じように休業手当をもらうことができます。

ただし派遣社員の場合は、派遣元から休業手当をもらうか、新しい就業先を紹介してもらうかのどちらかになることが多いようです。不安な人はあらかじめ派遣元に確認しておきましょう。

休業手当をもらうための条件とは

休業手当がもらえるケース、もらえないケースを見ていきましょう。

もらえるケース

  • 不況や資金難、材料不足などの経営障害による休業
  • 予告なしに解雇された場合の予告期間中の休業
  • 採用内定者が会社の指示で自宅待機をしている場合
  • 一部の労働者のストライキで残りの労働者が就業できる状態だったにもかかわらず、使用者がこれを拒否した場合
  • 使用者が年次有給休暇の計画付与として一斉付与を行い、年次有給休暇の権利のない労働者を休業させた場合

もらえないケース

  • 台風や地震などの自然災害による休業
  • 労働安全衛生法の規定による健康診断の結果に基づいて行った休業
  • 代休付与命令による休業
  • ロックアウト(ストライキなどへの対抗措置として会社が工場などを閉鎖すること)による休業
  • 別事業場での自組合のストライキにより就労できなかったストライキ不参加者の休業
  • ストライキ解決後、操業再開にあたって流れ作業の時間的格差のために一斉に就業させることができなかった場合

台風などの自然災害による休業といった、会社側に過失がなく、不可抗力で休業となった場合は休業手当をもらうことができません。

休業手当がもらえるのは、基本的に会社側の過失が認められる場合です。つまり、労働者に働く意思があるにもかかわらず、会社都合で仕事ができない状況です。

休業手当の計算方法

休業手当の金額は、平均賃金×60%×休業日数という計算式から算出できます。

平均賃金とは、直近の3ヶ月間(賃金締切日がある場合は直前の賃金締切日からさかのぼって3ヶ月)の賃金(残業代や各種手当を含む)を、その3ヶ月の総暦日数(カレンダー上の日数)で割った金額です。

労働日数ではなく総暦日数で割る点に注意しましょう。

実際に計算してみましょう。

フルタイムの正社員の場合

<条件>

  • 休業の開始日:7月3日
  • 直近3ヶ月:賃金締切日が月末のため、4月1日~6月30日の91日間
  • 直近3ヶ月の賃金総額:78万円

(内訳)4月分:30万円(基本給20万円+通勤手当4万円+残業代6万円)、5月分:24万円(基本給20万円+残業代4万円)、6月分:24万円(基本給20万円+残業代4万円)

<1日あたりの休業手当の計算式>

1日あたりの休業手当
=平均賃金×60%
=(直近3ヶ月の賃金総額÷直近3ヶ月の総暦日数)×0.6
=78万円÷91日×0.6
=8,571円(※端数は切り捨て)×0.6
5,143円(※端数は四捨五入)

平均賃金の6割が1日の給付金額となり、会社が就業規則で定めている休日を除く就業日数分もらうことができます。

時給・シフト制のパート・アルバイトの場合

パートやアルバイトの場合、労働日数が少ないことから平均賃金が低くなりがちなので、平均賃金の計算方法が「通常」と「最低保障額」の2パターンあります。

それぞれの計算方法で平均賃金を算出し、いずれか高い方が休業手当の計算に適用されます。

 <条件>

  • 時給:1,000円
  • 勤務時間・日数:8時間/日、15日/月
  • 直近3ヶ月:賃金締切日が月末のため、4月1日~6月30日の91日間

<平均賃金の計算式>

1通常

平均賃金(通常)
=直近3ヶ月の賃金総額÷直近3ヶ月の総暦日数
=(1,000円×8時間×15日間×3ヶ月)÷91日
=360,000÷91
3,956円(※端数は切り捨て)

2最低保障額

平均賃金(最低保障)
=直近3ヶ月の賃金総額÷その期間の実労働日数×60%
=(1,000円×8時間×15日間×3ヶ月)÷(15日間×3ヶ月)×0.6
=360,000円÷45×0.6
4,800円

この場合、最低保証額の4,800円が平均賃金となり、1日の休業手当はその6割である2,880円となります。

時給制で勤務する労働者が途中で業務終了した場合

時給制で働いていて、始業から数時間たって突然休業となってしまったときでも、数時間分の賃金が1日分の休業手当に満たない場合は、その差額をもらうことができます。

<条件>

  • 時給:1,000円
  • 休業までの労働時間:2時間
  • 1日あたりの休業手当:2,880円

<休業手当(差額分)の計算方法>

休業手当(差額分)
=1日あたりの休業手当-休業になるまでの賃金
=2,880円-(1,000円×2時間)
880円

この場合、差額の880円をもらうことができます。

月給制の場合でも「1時間あたりの賃金」が会社側で計算され、休業手当との差額が支払われるのが一般的です。会社によっては実労働時間に関わらず、フルタイム働いたとみなされることもあるようです。

※出典
・労働基準法ワンポイント解説(平均賃金)|大阪労働局
・平均賃金について【賃金室】|神奈川労働局

休業手当と休業補償の違い

休業手当と混同しやすい「休業補償」とは、労働基準法(第76条)に基づいて、仕事中に起きた病気やケガで働けなくなったときにもらえる給付金です。

会社が労災保険に加入していれば、労働基準監督署に請求することで給付基礎日額(平均賃金)の80%の給付を受けることができます。

休業手当と休業補償の違い一覧表。以下、項目:休業手当の場合・休業補償の場合。主な条件:会社に責任がある状況で休業になった場合・業務が原因で病気や怪我をして働けなくなった場合。支払元:会社・労働基準監督署(厚生労働省)。金額:平均賃金の60%以上・給付基礎日額(平均賃金)の80%※休業(補償)給付(給付基礎日額の60%)+休業特別支給金(給付基礎日額の20%)。扱い:給与所得(賃金)・損害賠償。課税の有無:課税・非課税。

まとめ

休業手当がもらえるのは、原則として会社側に過失がある状況での休業時だけです。平均賃金の6割以上が支払われますが、給与所得扱いのため課税対象であり、社会保険料も引かれます。

パートやアルバイトの人が平均賃金を計算する際は、最低保証額との比較を忘れないようにしましょう。

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