いつから・いくらもらえる? かんたん解説:労災の休業補償とは

労災(労働災害)が原因で仕事を休業する際に利用できる、休業補償。正式名称は休業(補償)給付といいます。

この記事では、補償を受けられる条件や、給付金の金額、手続き方法などを紹介します。

新型コロナウイルス関連の給付金との違いも紹介するので、参考にしてください。

休業(補償)給付とは

労災で休業する際にもらえる、給付金のこと

休業補償/休業(補償)給付とは、業務中に生じた怪我・病気が原因で働けなくなったときに支払われる給付金

休業(補償)給付とは、業務中に生じたケガ・病気が原因で働けなくなったときに支払われる給付金のこと。

いわゆる労働災害(労災)にあった従業員の救済制度として、労働基準法第76条で設置が義務付けられている制度です。

休業している期間、給料の約60%~80%を受け取ることが可能です。

会社で働いている人であれば誰でも利用できる制度ですが、給付金を受け取るには、次の3つの条件を満たしている必要があります

休業(補償)給付が支給される3つの条件。1)業務中に生じた怪我/病気である。2)怪我や病気によって仕事ができない。3)補償を受ける期間、給料をもらっていない。

休業給付・休業手当との違いは?

似たような名前ですが、休業給付・休業手当とは、支給される条件や支払い元などに違いがあります

業務中のケガ・病気は休業(補償)給付通勤中のケガ・病気は休業給付会社都合の休業は休業手当が適用されると覚えておきましょう。

休業(補償)給付・休業給付/休業手当の違い。休業(補償)給付・休業給付→労働保険の制度の一部。休業(補償)給付…業務中に生じた怪我・病気で、休業する場合に支給。休業給付…通勤中に生じた怪我・病気で休業する場合に支給。休業手当→労働基準法で定められた、会社から支給される手当。休業手当…会社の都合※で休業する場合に支給。※経営悪化による仕事量の減少など。

※休業手当については、こちらの記事でくわしく解説しています。

新型コロナウイルスの給付金とは、別制度

休業補償と新型コロナウイルス関連の給付金は、まったく別の制度です。

新型コロナウイルス関連の給付金は、正しくは「新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金」と称されます。感染症およびまん延防止措置の影響で会社が休業になった労働者のうち、会社から支給されるはずの休業手当を受け取れなかった人への支援制度です。

申請することで、休業前の1日あたりの平均賃金の80%を受け取れます。

新型コロナウイルスの給付金(新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金)対象者:新型ウイルス感染症およびまん延防止措置の影響で休業さえられた労働者のうち、休業手当を受け取れなかった人。金額:「休業前の1日あたりの平均賃金」×80%×休業日数。

厚生労働省の特設ページに概要・申請方法などがまとまっているので、くわしくはそちらを確認しましょう。

いくらもらえる?休業(補償)給付の計算方法

休業(補償)給付でもらえる給付金は、普段の給料の約60%~80%です。

労災保険からの休業(補償)給付が開始されるのは業4日目以降(※)で、給料の80%が支払われます。

なお、休業1~3日目は事業主(会社)から、給料の60%が支給されます。

業務中の怪我の場合、休業補償給付(給料の60%)に休業特別支給金(給料の20%)が給付金に上乗せされて支給されます。

※労災保険の起算日は「所定労働時間中にケガをし、早退して病院を受診したときはその日から」「終業時間まで業務を行ってから病院を受診した時は翌日から」となります。

休業(補償)給付でもらえる金額。休業1~3日目:給料の60%。休業4日目~:給料の80%。業務中の怪我の場合、休業特別支援金(給料の20%)が上乗せされる。

支給金の計算方法

ここでは、月給25万円の人を例に、具体的な支給金の計算方法をご紹介します。

1)給付基礎日額を計算する

まずは計算に使う「給付基礎日額」を求めます。

給付基礎日額とは、労働基準法の平均賃金に相当する額のこと。事故発生日以前の3ヶ月間における1日あたりの賃金を指しており、3ヶ月間で支払われた金額を、その期間の暦日数で割って計算します。労働日数ではありません。

例)10月15日に事故が発生した場合(賃金締切日は月末)

■計算する期間
7月1日~9月30日(92日間)

※10月分の賃金が支払われていないため、支払い済である9月分までの期間で計算

■給付基礎日額(平均賃金)
=月給 × 3ヶ月 ÷ 日数
=25万円 × 3ヶ月 ÷ 92日
=75万円 ÷ 92日
8,153円/日(1円未満の端数は切り上げ)

2)【休業1~3日目】休業(補償)給付を計算する

休業1~3日目は、労災保険ではなく事業主から平均賃金の60%の額が支給されます。今回の支給額は、下記の通りです。

 ■休業(補償)給付(平均賃金の60%)
=平均賃金 × 60%
=8,153円 × 0.6
4,891円/日(1円未満の端数は切り捨て)

※1~3日目で、合計1万4,673円支給される。

3)【休業4日目】休業(補償)給付と休業特別支給金を計算する

休業4日目以降は、労災保険から休業(補償)給付(給料の60%)と休業特別支援金(給料の20%)の合計である、平均賃金の80%の額が支給されます。

今回の支給額は下記の通りです。1日あたりの支給額6,521円が、休んだ日数分だけ支給されます。

 ■休業(補償)給付(平均賃金の60%)
=平均賃金 × 60%
=8,153円 × 0.6
4,891円(1円未満の端数は切り捨て)

■休業特別支給金(平均賃金の20%)
=平均賃金 × 20%
=8,153円 × 0.2
1,630円(1円未満の端数は切り捨て)

■合計支給額
=4,891円 + 1,630円
6,521円/日

休業(補償)給付は、いつからいつまでもらえる?

休業(補償)給付の給付金は、休業4日目から始まり、休業(補償)給付の条件を満たしている限り支給され続けます

なお、実際に振り込まれるのは支給手続きの完了後です。申請書の確認には数日~数週間ほどかかり、書類不備があればその分支給開始が遅くなるので注意しましょう。休業3日目までの会社から支給される分は、給与と一緒に支払われることが多いようです。

休業(補償)給付をいつまでもらえるか/打ち切りの可能性があるのかなど、期間についてくわしくは下記の記事で解説しています。

休業(補償)給付の申請方法

休業(補償)給付の申請は、基本的には自分で行います。「休業補償給付支給請求書(様式第8号)」に必要事項を記入し、所轄の労働基準監督署に提出してください。

〈休業補償給付支給請求書(様式第8号)の入手方法〉

  • 厚生労働省のホームページからダウンロードする
  • 労働基準監督署で受け取る

なお、休業が数ヶ月に及ぶ場合、1ヶ月ごとに提出するのが一般的です

請求書には、企業の担当者や通院先の担当医に記入してもらう欄もあります。記載方法を見ながら、まずは氏名や住所、給付金の振込先、労働災害の内容など、自分が記入する欄を埋めていきましょう。

休業補償給付支給請求書の記載方法(表面)

休業補償給付支給請求書の記載方法(裏面)

出典:厚生労働省「休業(補償)等給付 傷病(補償)等年金の請求手続」より

パート・アルバイトでももらえる?

休業(補償)給付は、パート・アルバイトや派遣社員など、雇用形態に関係なく受け取ることができます

労働者災害補償保険法で労災保険の対象者になっている「労働者」とは、「職業の種類を問わず、事業または事業所に使用される者で、賃金を支払われる者」であり、パート・アルバイトも含まれています

そのため、会社から「アルバイトには労災がおりない」と言われるケースは違法です。勤務先に申請を拒否された場合は、自分で「休業補償給付支給請求書(様式第8号)」を記入し、労働基準監督署に提出して構いません

この記事の監修者

社会保険労務士

山本 征太郎

山本社会保険労務士事務所東京オフィス

静岡県出身、早稲田大学社会科学部卒業。東京都の大手社会保険労務士事務所に約6年間勤務。退所後に板橋区で約3年開業し、2021年渋谷区代々木に移転。若手社労士ならではのレスポンスの早さと、相手の立場に立った分かりやすい説明が好評。様々な業種・規模の会社と顧問契約を結び、主に人事労務相談、給与計算、雇用保険助成金などの業務を行う。

山本社会保険労務士事務所東京オフィス 公式サイト

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