条件・期間・対象家族から給付金まで わかりやすい介護休暇・介護休業

介護にまつわる休暇制度には、「介護休暇」と「介護休業」があります。それぞれの取得条件や期間、給料や手当の扱いについて違いを知っておきましょう。

【介護休暇】とは?

【介護休暇とは】 <目的> 突発的、短期的な介護・世話のための休暇 <主な取得条件> 入社から6か月以上たっていること <期間> 対象家族1人につき1年に5日 (2人以上なら10日) ※時間単位で取得可能 <対象家族> ・配偶者(事実婚でもOK) ・父母(養父母を含む) ・子(養子を含む) ・配偶者の父母(義父母を含む) ・祖父母、兄弟姉妹、孫 <給料・手当> ・給料の有無は会社による。 ・給付金はなし

「介護休暇」とは、家族の介護や世話(買い物や通院の付き添い、書類手続きなど)を理由に、会社を休める休暇制度です。「介護休業」に比べ、突発的で短期的な介護を目的としています。

介護休暇を取得する「条件」

介護休暇はパートや派遣社員などの雇用形態に関わらず、原則すべての労働者が取得可能です。ただし例外的に、下記のような労働者は介護休暇をとることができません。

▼介護休暇が取得できない労働者

  • 日雇いの労働者
  • 入社から6カ月未満の労働者
  • 1週間の所定労働日数が2日以下の労働者

介護休暇を取得できる「期間」

介護休暇を取得できる期間は、対象家族1人につき1年に5日まで対象家族が2人以上いる場合は、10日となります(3人以上でも10日が上限)。

介護休暇の「対象家族」

介護休暇の対象家族とは「親族のうち、ここまでの範囲であれば介護休暇として休むことができる」という家族の範囲のことです。具体的には下記の通りです。

▼介護休暇の対象家族

  • 配偶者(事実婚でもOK)
  • 父母(養父母を含む)
  • 子(養子を含む)
  • 配偶者の父母(義父母を含む)
  • 祖父母、兄弟姉妹、孫

【介護休暇の対象家族の見取り図】 自分を中心に、祖父母、自分の父母、兄弟姉妹、配偶者、子、孫、配偶者の父母。

いとこや叔父・叔母は介護休暇の対象となりません。

介護休暇中の「給料・給付金」

介護休暇を取得した日の給料が出るか出ないかは、会社によって異なります。無給の場合、介護休暇をとる前に、先に有給休暇を使う人も多いようです。

また残念ながら、たとえ無給であったとしても、給付金などの手当が出ることはありません

介護休暇の「申請方法」

介護休暇の申請方法は会社によって異なりますが、口頭やメールで済まされることがほとんどでしょう。介護休暇はあくまで突発的な家族の介護・世話に対応するための休暇制度。体調不良による欠勤などと同様、当日あるいは事後の申請でも問題ないとする会社が多いようです。

家族の介護が必要になる前に、介護休暇に関する就業規則を確認しておくことが大切です。不明点がある場合、上司や人事に相談してみるのも良いでしょう。

【介護休業】とは?

【介護休業とは】 <目的> 2週間以上にわたる長期的な介護のための休暇 主な取得条件 ・入社から1年以上たっていること ・申請してから93日以内に退職しないこと <期間> 対象家族1人につき93日 ※3回まで分割取得も可能 <対象家族> ・配偶者(事実婚でもOK) ・父母(養父母を含む) ・子(養子を含む) ・配偶者の父母(義父母を含む) ・祖父母、兄弟姉妹、孫 <給料・手当> ・給料は無給の会社が多い。 ・介護休業給付金がもらえる

「介護休業」とは、2週間以上にわたって家族の介護が必要な場合に取得できる休暇制度です。「介護休暇」に比べて長期的な介護を目的としています。

介護休業を取得する「条件」

介護休業も介護休暇と同様、原則すべての労働者が取得可能です。ただし、労使協定によって下記のような労働者は取得できないとしている会社がほとんどです。

▼介護休業を取得できない労働者

  • 日雇いの労働者
  • 入社から1年未満の労働者
  • 1週間の所定労働日数が2日以下の労働者
  • 申請してから93日以内に退職する労働者
  • (有期雇用の場合)介護休業の開始日から93日を経過する日から、6カ月以内に契約が終了する労働者

介護休業を取得できる「期間」

介護休業を取得できる期間は、対象家族1人につき通算93日です。一度にまとめてではなく、3回まで分割して取得することもできます

また、対象家族1人につき、複数の兄弟や親子が同時、あるいは順番にそれぞれ93日ずつ介護休業を取得することもできます。いつ誰が介護休業を取るのか、役割分担について家族で相談すると良いでしょう。

介護休業の「対象家族」

介護休業の対象家族は、介護休暇と同様です。

加えて、対象家族が「常時介護を必要とする状態」であること、すなわち、以下の2つの基準のうち、どちらかを満たしている必要があります。

▼「常時介護を必要とする状態」の基準

  • 介護保険制度の要介護状態区分において「要介護2以上」であること
  • 下記の表にある状態1~12のうち、「2が2つ以上あるいは3が1つ以上」あてはまり、かつその状態が継続する可能性が高いこと

 【常時介護を必要とする状態に関する判断基準】(状態:1/2/3): <1,座位保持(10分間一人で座っていることができる)> 自分で可/支えてもらえばできる/できない <2,歩行(立ち止まらず座り込まずに5m程度歩くことができる)> つかまらないでできる/何かにつかまればできる/できない <3,移乗(ベッドと車いす・車椅子と便座の間を移るなどの乗り移りの動作)> 自分で可/一部介助、見守り等が必要/全面的介助が必要 <4,水分、食事摂取> 自分で可/一部介助、見守り等が必要/全面的介助が必要 <5,排泄> 自分で可/一部介助、見守り等が必要/全面的介助が必要 <6,衣類の着脱> 自分で可/一部介助、見守り等が必要/全面的介助が必要 <7,意思の伝達> できる/ときどきできない/できない <8,外出すると戻れない> ない/ときどきある/ほとんど毎回ある <9,物を壊したり衣類を破くことがある> ない/ときどきある/ほとんど毎日ある <10,周囲の者が何らかの対応をとらなければならないほどの物忘れがある> ない/ときどきある/ほとんど毎日ある <11,薬の内服> 自分で可/一部介助、見守り等が必要/全面的介助が必要 <12,日常の意思決定> できる/本人に関する重要な意思決定はできない/ほとんどできない

対象家族は、必ずしも要介護認定を受けている必要はありません。

※参考→常時介護を必要とする状態に関する判断基準|厚生労働省

介護休業中の「給料・給付金」

介護休業中の給料は無給とする会社がほとんどですが、その代わり、雇用保険から介護休業給付金をもらうことができます。ただし、介護休業給付金がもらえるのは介護休業の終了後。休業中のお金のやりくりは、事前にしっかり考えておく必要があります。

さらに、たとえ無給の場合でも、健康保険や厚生年金、住民税は働いていたときと同じ金額支払わなければなりません。毎月振り込むのか、まとめて先払いするのか、支払い方法について会社と相談すると良いでしょう。

介護休業の「申請方法」

介護休業の申請方法は会社によって異なりますが、法律により「介護休業の開始予定日から2週間前までに介護休業申出書を提出すること」としている会社が多いようです。申請の流れは会社により異なりますので、上司や人事に確認しましょう。

介護休業申出書

また、会社から「対象家族が要介護状態であることを証明する書類」の提出を求められることもありますが、この書類は医師の診断書に限定はされていません。

コラム:介護休業取得率の現状

介護休業は労働者に認められた権利ですが、令和3年度の介護休業取得率はおよそ1.4%程度と、まだまだ取得率が低いのが現状です。

その一方で介護のために離職する人も多く、内閣府によれば、過去10年間で介護離職者は約2倍に増加したとのこと。その背景には、仕事と介護を両立する難しさがあるようです。

※参考→令和4年度雇用均等基本調査|厚生労働省

【介護休業給付金】とは?

介護休業給付金とは、介護休業で会社を休んだ労働者に対して、給料の代わりに支給される給付金です。

介護休業給付金をもらうための「条件」

介護休業を取得できた場合、おおよそ介護休業給付金の取得条件もクリアしていると言えるでしょう。厳密にいうと、介護休業給付金をもらうための条件は、以下の通りです。

▼介護休業給付金をもらうための条件

  • 介護休業の開始日前の2年間のうち、雇用保険に12カ月以上加入していること
  • 介護休業の開始日に、介護休業終了後に離職する予定がないこと
  • (有期雇用の場合)同じ会社で1年以上働いていること
  • (有期雇用の場合)介護休業の開始日から93日を経過する日から、6カ月以内に契約が終了しないこと

介護休業給付金がもらえる「時期」

介護休業給付金が実際にもらえるのは、介護休業の終了日から数カ月後。給付金を休業中の生活のあてにすることはできないので注意が必要です。

これは、会社がハローワークに給付金の申請をする期限が「介護休業終了日の翌日から起算して、2カ月を経過する日の属する月末まで」となっているためです。

例えば、6月20日が介護休業終了日の場合は、6月21日から8月31日までがハローワークへの書類提出期限。そのため、会社が8月31日に申請書類を提出した場合、給付金の受け取りは9月10日前後にまで延びてしまいます。

介護休業給付金の「金額・計算方法」

介護休業給付金でもらえる金額は、これまでの給料を日割りした金額の67%。厳密には、下記のような計算方法で決まります。

▼介護休業給付金の計算方法

休業開始時賃金日額×支給日数×67%

休業開始時賃金日額は「介護休業の開始日前6カ月間の給料を180で割った金額」です。

▼もらえる給付金の目安

賃金月額(≒直近6カ月の給料の平均) もらえる介護休業給付金の目安
15万円程度 月額10万円程度
20万円程度 月額13万4,000円程度
30万円程度 月額20万1,000円程度

※参考→Q&A~介護休業給付~|厚生労働省

介護休業給付金の正確な金額は、会社がハローワークに提出する「雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書」によって算出されます。

給付金には上限があるので要注意

介護休業給付金の上限額は月額347,127円と決まっています。

休業開始時賃金日額に30をかけたものを賃金月額といいますが、その金額は518,100円が上限。仮に518,100円以上の給料をもらっていても、給付金の金額が増えることはありません。よって、どんなに給料が高い人でももらえる給付金は最大でもその67%、すなわち347,127円になります。

逆に、賃金月額が86,070円を下回る場合、給付金は57,666円。これ以上減ることもありません。

※支給限度額および最低限度額は、毎年8月1日に変更される場合があります。

介護休業給付金の「申請方法」

ハローワークに介護休業給付金の申請を行うのは申請する本人ではなく会社のため、詳しい流れは人事・総務担当者に確認してください。一般的に、介護休業を取得するタイミングで給付金についても会社から説明してもらえることが多いでしょう。

介護休暇・介護休業にまつわるQ&A

介護休暇・介護休業にまつわるQ&Aを紹介します。

介護休暇・介護休業を拒否されたら?

法律により、会社が介護休暇・介護休業の取得を拒否することは禁止されています。ただ、それぞれ取得条件があるので、自分がきちんとその条件をクリアしているのか、会社の就業規則などで確認しましょう。

明らかに条件を満たしているにもかかわらず会社が拒否してくる場合、下記のような対応をしましょう。

  1. 介護休暇・介護休業は拒否できない制度であることを説明する
  2. 介護休業ができない場合、所定労働時間を短くするなど代替案を切り出す
  3. それでも進展がない場合、労働局などに相談する

※参考→Q22介護休業をとれない|東京都TOKYOはたらくネット

介護休業中に働くことはできる?

介護休業中は長期的に無給の状態が続きますが、その生活費のために休業中に働くこと自体は可能です。ただし働いた上で給料を受け取った場合、その分の介護休業給付金は減額、場合によってはゼロになります。具体的な計算式は下記の通りです。

▼介護休業中に働いた場合の介護休業給付金の金額

受け取った給料が、「休業開始時賃金日額×支給日数」の

  • 13%以下の場合…賃金月額の67%がもらえる
  • 13~80%未満の場合…賃金月額の80%ともらった給料の差額がもらえる
  • 80%以上の場合…支給なし

また、パートなどを新しく始める場合は、そもそも自分の会社が副業を禁止していないか、事前に確認しておきましょう。

介護休業中に働く日数にも注意

介護休業が始まってから1カ月の間に11日以上働いた場合、その1カ月間の介護休業給付金はまるまる「支給なし」になってしまうので要注意(休業する期間が1カ月に満たない場合、休業の開始日から終了日までの間)。

加えて、介護休業の終了日が含まれる休業期間が1カ月未満の場合、たとえ11日以上働いていなくても、丸一日まったく働いていない日が1日以上ないと、同じくその期間分はまるまる「支給なし」になります。

※参考→介護休業給付の内容及び支給申請手続きについて|ハローワーク

介護休業中に退職したらどうなる?

介護休業中に退職した場合(復職できない場合)、介護休業給付金がもらえなくなります。ただでさえ休業中は無給な上に、もらえたはずの給付金までもらえないとなると、生活はますます苦しくなってしまいます。

会社には介護休業をする社員に対して、下記のような配慮措置をすることが法律で義務付けられています。退職を決める前に、仕事と介護を両立できる方法がないか会社と相談してみましょう。

▼介護休業をする社員に対して、会社が検討しなければならないこと

  • 残業や深夜労働を制限すること
  • 1日の所定労働時間を元々8時間なら2時間以上、7時間なら1時間以上短くすること
  • フレックスタイム制度を導入すること
  • 出社・退社する時間をずらすこと
  • 社員が利用する介護サービス費用を補助すること

介護休業法、改正で何が変わった?

2022年4月、改正育児・介護休業法が施行されました。主な改正ポイントは以下の1つです。

介護休業を取得できない労働者のうち、「入社1年以上であること」が「有期契約労働者の入社1年以上の要件を撤廃」※ 労使協定の締結により1年未満の労働者を除外可は現行と変わらず に変更されています。

※出典:そのときのために、知っておこう。介護休業制度|厚生労働省(公表:2024年1月、参照:2024年9月13日)

まとめ

家族に介護が必要な状況は、ある日突然やってきます。

そうなった場合に介護休暇・介護休業をスムーズに利用するためにも、前もって知識を身に付けておくことが大切です。

この記事の監修者

社会保険労務士

山本 征太郎

山本社会保険労務士事務所東京オフィス

静岡県出身、早稲田大学社会科学部卒業。東京都の大手社会保険労務士事務所に約6年間勤務。退所後に板橋区で約3年開業し、2021年渋谷区代々木に移転。若手社労士ならではのレスポンスの早さと、相手の立場に立った分かりやすい説明が好評。様々な業種・規模の会社と顧問契約を結び、主に人事労務相談、給与計算、雇用保険助成金などの業務を行う。

山本社会保険労務士事務所東京オフィス 公式サイト

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