残業や休日出勤・有給は? シフト制とはどういう働き方?
求人票や転職サイトなどでよく見かける「シフト制」。シフト制とは働き方のひとつであり、さまざまな種類があります。
シフト制における残業や休日出勤、有給の考え方や、メリット・デメリットについて解説します。
シフト制とは交代制の勤務形態
シフト制とは交代制の勤務形態で、同じ職場でも出勤時間や退勤時間、勤務日数が人によって異なるのが特徴です。
シフト制の仕事は、営業時間が長く24時間体制での稼働が必要とされるものが多いです。
シフト制と聞くとパートやアルバイトのイメージが強いですが、正社員、契約社員、派遣社員など雇用形態にかかわらず広く導入されています。
シフト制の種類
シフト制にはいくつかの勤務スタイルがあります。
<シフトの決め方による分類>
- 固定シフト制
…基本的に働く曜日や休日、時間帯が決まっています。
予定を立てやすく収入や生活スタイルが比較的安定しているのが特徴です。 - 希望シフト制
…勤務先に勤務日時の希望を伝えられるため、ライフスタイルに合わせて働くことができます。
一方、希望が通らないことも多いため、収入が不安定になる傾向があります。
<勤務時間による分類>
- 2交代制
…1日24時間を2分割して12時間交代で働きます。
労働時間が8時間を超えるため、休憩時間は最低1時間以上確保されます。夕方から朝にかけて働く夜勤の場合、2時間程度の仮眠の時間が設定されるケースが一般的です。 - 3交代制
…1日24時間を3分割して8時間交代で働きます。
2交代制に比べて勤務時間が短く、時間になると業務内容を次のシフトの人へ引き継ぐ体制になるため、残業は少ないのが特徴です。
正社員でシフト制を採用している業種
「シフト制」と聞くと、パートやアルバイトのイメージが強いですが、正社員でシフト制を採用している業種は少なくありません。
代表的なのは、スーパーや百貨店、ホテル、飲食店といった土日・祝日も営業するサービス業、緊急事態に備えて24時間体制での対応が求められる消防士や警察官、救急病院の医師、介護士などです。
また、空港や食品製造工場などの正社員もシフト制で働いていることが多いです。
コラム:正社員のシフト制はきつい?
シフト制の正社員は、施設の営業時間が長かったり、時間帯問わずに緊急対応が必要となったりする場合が多く、心身ともに負担を感じることが少なくないようです。
具体的には「連休が取りづらい」「希望した日に休みが取れないことがある」「生活リズムが不規則になって体調管理がしづらい」といった声が多く聞かれます。
2017年には、首都圏を中心とした大手スーパー「いなげや」で不規則なシフト制で長時間勤務していた男性社員が過労死し、遺族が訴訟を起こしたことが報じられています。
男性社員の残業は毎月30時間程度と記録されていましたが、さいたま労働基準監督署などの調査結果では少なくとも毎月80時間ほどの残業があり、過労死として労災認定されました。
シフト制のメリット・デメリット
自由なイメージのあるシフト制ですが、シフト制で働く上でのメリットやデメリットにはどのようなものがあるのでしょうか。
メリットは平日に休みを取りやすいこと
シフト制のメリットは平日に休みを取りやすいことです。
平日に休みが取れると、混雑を避けてレジャーやショッピングを楽しめたり、役所や銀行関係の用事を済ませたりすることができます。
また、勤務時間帯によっては通勤ラッシュを避けられるメリットもあります。
デメリットは不規則で予定を立てにくいこと
シフト制のデメリットは、必ずしも休みの希望が通るとは限らないことや、予定が立てにくいことです。
土日に休日が取りにくい場合も多く、「友人との予定が合わない」「子どもの学校行事に参加できない」といった声も聞かれます。
シフト制の有給、残業代、手当は?
シフト制での有給の扱いはどうなるのか、残業代や深夜手当などの待遇は勤務時間が固定されている場合と比べてどうなのか、そうした疑問について解説します。
シフト制の有給は出勤予定日と置き換える
シフト制の有給は出勤日にしか取得することができません。
出勤日が決まっている固定シフト制ではいずれかの出勤日を有給にあてますが、希望シフト制ではシフトスケジュールに応じて出勤予定日と置き換える形になります。
具体的には、シフト希望を提出するとき、あわせて有給を取得したい日を申請し、その日を出勤日扱いにしてもらいます。
また、シフト制の有給休暇の日数は他の勤務形態と同様、労働日数・勤続年数で変わります。
例えば、フルタイムで勤続年数が6ヶ月の場合は10日、週所定労働時間かつ週4日勤務かつ勤続年数が6ヶ月の場合は、7日です。
※有給休暇の日数については詳しくは→派遣でも有給休暇は取れるの?休める日数やもらえる金額は?
残業代や休日出勤・深夜手当のルールは変わらない
シフト制の場合も、残業代や休日出勤、深夜手当に関するルールは勤務時間が固定の場合と変わりません。
労働基準法では、残業や休日出勤、深夜手当における待遇は勤務形態や雇用形態にかかわらず一律となっているためです。
主な割増賃金の割増率は以下の通りです。
深夜手当
25%以上
休日出勤
法定休日の場合→35%以上
法定外休日→25%以上
残業代の割増賃金
月60時間未満の残業で25%以上、月60時間を超えた場合は50%以上
※休日出勤手当の計算方法について詳しくは→休日出勤すると実際いくら増える?手当の割増率・計算方法まとめ
コラム:シフト制と変形労働時間制の混同に注意!
シフト制と混同されやすい働き方に「変形労働時間制」がありますが、この2つの違いは制度の対象となるものです。
シフト制は勤務形態について、一方の変形労働時間制は勤務時間についての制度です。
変形労働時間制とは「あらかじめ労働時間を月や年単位で決め、その一定期間内であれば週40時間または1日8時間の法定労働時間を超えても残業代を支払わない」という制度で、シフト制と併用されることもあります。
ただ、「変形労働時間」の持つ自由なイメージが、働く時間を調整できるシフト制と重なることから、これらを混同する企業があります。このような企業の中には従業員を不当にサービス残業させているケースもあるようです。
シフト制でサービス残業をさせられることがある場合、就業規則などを確認して変動労働時間制と混同されていないかチェックしてみましょう。
まとめ
シフト制とは基本的に勤務日時が固定されない勤務形態であり、さまざまな業種や職種で導入されています。
シフト制で働く場合、残業や休日出勤、有給の考え方、メリットやデメリットをしっかり理解した上で取り組みましょう。
(文:転職Hacks編集部)
この記事の監修者
特定社会保険労務士
成澤 紀美
社会保険労務士法人スマイング
社会保険労務士法人スマイング、代表社員。IT業界に精通した社会保険労務士として、人事労務管理の支援を中心に活動。顧問先企業の約8割がIT関連企業。2018年より、クラウドサービスを活用した人事労務業務の効率化のサポートや、クラウドサービス導入時の悩み・疑問の解決を行う「教えて!クラウド先生!®(商標登録済み)」を展開。