高く払いすぎない対策も解説! 社会保険料が高いと感じる理由

毎月の給料から天引きされる社会保険料。そのうち健康保険と厚生年金の金額を見て「高い」と感じる人も少なくないでしょう。

この記事では、社会保険料は本当に「高い」と言えるのか、その実態と、年度の途中で社会保険料が高くなる2つのケースについて解説します。

社会保険料は本当に「高い」?

社会保険料を「高い」と感じることはあっても、果たして本当にそう言えるのでしょうか?さまざまなデータをもとに、社会保険料の実態を探ります。

たしかに社会保険料の料率は上がっている

社会保険料を「高い」と感じるかどうかはあくまで個人の感覚によりますが、事実として、社会保険料の料率は年々上がっています

厚生年金(第1種)の料率は、1942年(昭和17年)時点で6.3%だったのに比べ、2021年(令和3年)には18.3%と3倍近い数字になっています。

健康保険(協会けんぽ)についても、1947年(昭和22年)は3.6%だった料率が、2021年には全国平均で10%と、こちらも3倍近く上がっていることになります。

また、2000年(平成12年)からは40歳以上を対象とした介護保険制度も始まり、こちらも導入時の0.6%から1.8%と、2021年までに3倍増しとなっています。

社会保険料の料率の変遷 厚生年金保険(第1種)、健康保険(協会けんぽ)、介護保険(協会けんぽ)、それぞれ導入当時から約3倍に

ただし、あくまで料率は労働者の賃金をもとに設定されるもの。「戦後日本の経済成長による賃金増加に比例して、料率も上がっていっただけ」とも言えます。単純に料率の上げ幅だけで社会保険料が「高い」と断言するのは難しいでしょう。

※参考:
保険料率の変遷|協会けんぽ厚生年金保険料率の変遷表|日本年金機構

給料は料率ほど上がっていない?

データが残っている1978年から、社会保険料の料率と平均年収(男性)を比べてみると、2000年(平成12年)前後から、料率の上げ幅に対して平均年収が伸びていないことがわかります。

1990年代半ばまでの平均年収および社会保険料のうち厚生年金の料率は、比例して同じ上げ幅を維持しています。しかし、バブル崩壊以降、平均年収はほとんど横ばい、むしろ減少傾向に転じた一方で、厚生年金の料率は2003年(平成15年)から上がり続けています

社会保険料の料率と平均年収の比較図

ちなみに、2003年(平成15年)に雇用保険の料率がガクッと落ちているのは、総報酬制の導入によるものです。この年の4月から、ボーナスにも社会保険料がかかるようになり、その分月給にかかる厚生年金の料率が下がりました。

月給から引かれる厚生年金保険料が減った分、ボーナスから引かれることになったため、1年間のトータルでかかる保険料に、大きな変化はありません

このように、バブル崩壊以降は社会保険料の上げ幅ほどには収入が増えていないことから、額面給与に対する社会保険料の割合が大きくなり、以前よりも社会保険料を「高い」と感じる人も少なくないでしょう。

※参考:民間給与実態統計調査|国税庁

日本の国民負担率は低い方?

平均年収や各種保険の給付内容も異なるため、単純比較はできないものの、日本における国民負担率(※)は、諸外国に比べるととくに「高い」とは言えないようです。

外務省のデータによると、2018年の国民負担率は日本が44.3%なのに対し、アメリカは31.8%、フランスは68.3%でした。

※国民負担率…個人や企業の所得における、税金や社会保険料の負担を示す割合。計算式は「(租税負担額+社会保障負担額)÷国民所得」

2018年の国民負担率の国際比較(OECD加盟35カ国)によると、日本の国民負担率は26番目の44.3%となっっており、日本の国民負担率は「高い」とは言えない

国民負担率はその国の社会保障がどれだけ充実しているかを示すため、一概に低い方がいい、高い方が悪いとは言い切れません。「低負担・低福祉」のアメリカ、「高負担・高福祉」のヨーロッパ諸国のどちらが望ましいかは、個人や社会の状況・考え方によって異なるのです。

※参考:国民負担率|財務省

社会保険料が先月より「高い」カラクリ

年度の途中で「給料は前月と変わらないのに、先月より健康保険や厚生年金の保険料が高くなった」というケースがあります。その場合、下記2つのいずれかの原因が考えられます。

  • 残業などで4月~6月の給料が一時的に多かった
  • 大幅な昇給・降給により、固定給に変動があった

それぞれのカラクリについて、詳しく見ていきましょう。

残業などで4月~6月の給料が一時的に多かった

社会保険料は、その年の4月~6月までの平均月収を、各健康保険組合などが決めている保険料額表にあてはめ、対応する等級(標準報酬等級)の保険料を、9月~翌年8月までの期間で支払います。これを社会保険料の定時決定といいます。

※働いた日数が17日未満の月があった場合、その月はこの計算から除く。

よって、残業や休日出勤が発生し4月~6月の給料が一時的に多かったときは、たとえ7月以降に残業がなくなり月給が減った場合でも、その年の9月から翌年8月までは、社会保険料(健康保険・厚生年金)が高くなります

※参考:保険料額表(協会けんぽ)

〈具体例〉

例えば、協会けんぽに加入している東京都在住のAさんがいて、毎月の総支給額合計が24万円だったとします。Aさんは3~5月にたくさん残業し、4~6月の平均総支給額合計が28万円台になりました。

この場合、Aさんの健康保険の標準報酬等級はもともと16等級(※13)。しかし、残業が増えた結果、月給が高くなり、標準報酬等級は18等級(※15)に上がります(※厚生年金の標準報酬等級)。

その結果、その年の9月~翌年8月までの社会保険料は健康保険と厚生年金をあわせて33,768円/月→39,396円/月に改定され、月々5,628円の増額となります。

  改定前 改定後
健康保険 11,808円 13,776円(+1,968円)
厚生年金 21,960円 25,620円(+3,660円)
社会保険料合計 33,768円 39,396円(+5,628円)

※参考:
令和3年4月納付分からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表(東京都)

大幅な昇給・降給により、固定給に変動があった

大幅な昇給・降給により固定給に変動があった(2等級以上、標準報酬等級が上がった/下がった)場合、たとえそれが4月~6月ではなくても、変動があった月から起算して4ヶ月目にあたる月以降、社会保険料が改定されます。これを社会保険料の随時改定といいます。

※固定給(基本給)の昇給・降給がなければ、残業代といった変動給だけで2等級以上の変動があっても、随時決定の対象にはなりません。

〈具体例〉

例えば、月給24万円だったAさんが昇給のため、10月分の給与から総支給額合計が29万円になったとします。保険料額表にあてはめると、健康保険の標準報酬等級は16等級(※13)から18等級(※15)に上がります(※厚生年金の標準報酬等級)。

この場合、4~6月の定時決定の時期ではなくても社会保険料の見直しの対象となり、昇給のあった月から起算して4か月目にあたる翌年1月から保険料が改定されます。

つまり、4~6月の定時決定の分の社会保険料を9月~12月に支払い、翌年1月からは随時改定された社会保険料を支払うことになります

このように、随時改定によって社会保険料が変わるタイミングは、昇給(降給)で給料が変わる時期とは異なるので「前月と給料が変わらないのに社会保険料だけ高くなった」と感じることもあるでしょう。

ちなみに降給した場合は等級が下がるので、改定後から支払う社会保険料は安くなります。

コラム:社会保険料は賞与からも天引きされている

社会保険料は、賞与(ボーナス)からも天引きされています

日本は、国民が年間で得るすべての給料を対象にして社会保険料を天引きする「総報酬制」です。以前は賞与からは天引きされていませんでしたが、2003年以降は賞与からも社会保険料を天引きされています。

※制度変更の詳細は→
社会保険への総報酬制の導入|みずほ総合研究所

賞与の保険料額

=標準賞与額(千円未満の端数を切り捨てたもの)✕保険料率

賞与も、毎月の給与と同じで、保険料額表に照らし合わせて計算されていて、標準賞与額に保険料率をかけた額が賞与から天引きされます。

例えば、東京都在住のAさん(40歳未満)が50万5,900円の賞与をもらった場合、賞与にかかる社会保険料は、

健康保険料(協会けんぽ)

=50万5,000円×9.84%÷2
=24,846円

厚生年金保険料

=50万5,000円✕18.3%÷2
=46,207円

社会保険料合計

=24,846円+46,207円
=71,053円

となります。

社会保険のうち、健康保険の保険料率は、地域や所属する企業によって異なるため、自分の該当する保険料額表をチェックして計算しましょう。

平成31年4月分(5月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表における、「厚生年金保険料率の箇所(用紙右上)」を示した図。※厚生年金保険料率は基金ごとに定められている「免除保険料率の控除した率」となる。加入する厚生年金基金ごとにことなるため、確認が必要。

社会保険料が高いことにまつわるQ&A

社会保険料を抑える対策はあるの?

社会保険料を抑えるための対策は、残念ながらありません。

自分の給料に比例した金額を支払っているので、自分で支払う金額を決められるわけではないからです。

毎年の3~5月の残業時間をセーブし、4~6月の給料に上乗せされる残業代を抑えることで、高く払いすぎないように調整することもできなくはありませんが、残業はそもそも会社からの命令によって行われるもの。自分でコントロールすることは難しいため、効果的な対策とはいえないでしょう。

退職するときに社会保険料で注意することってあるの?

【退職のタイミングで差が出る社会保険料】:退職日10月31日→資格喪失11月1日→社会保険料9月分+10月分、退職日10月30日→資格喪失10月31日→社会保険料9月分のみ

退職してすぐに次の会社で働きはじめる場合、退職するタイミングによっては、前の会社の最後の給与から2ヶ月分の社会保険料が引かれることがあります。

社会保険料は、資格を喪失する日が属する月の前月分までを支払うというルールがあり、社会保険料を支払う被保険者としての資格を喪失するのは、「退職日の翌日」です。そのため、月末日に退職すると、会社での社会保険料の支払い義務の喪失は「翌月の1日」となります。

つまり、10/31に退職をすると、資格を喪失するのは11/1となるため、9月と10月の2ヶ月分の社会保険料が最後の給与から引かれることになります。

しかし、10/30に退職をすると、資格を喪失するのは10/31のため、前月の9月分の社会保険料を支払い、10月分の社会保険料は支払う必要がなくなるのです。

このような仕組みにより、退職日によっては2ヶ月分の社会保険料を最後の給与から引かれることになるのです。

ちなみに、退職の翌日から他の会社で働くときは、会社の対応にもよりますが、その月の分の社会保険料を二重で徴収されることはありません

まとめ

社会保険料の支払いは、日本にいる限りは免れられないものです。

仕組みを知って、出来る範囲でうまく付き合っていくことが大切です。

この記事の監修者

社会保険労務士

三角 達郎

三角社会保険労務士事務所

1972年福岡県生まれ。東京外国語大学卒業。総合電気メーカーにて海外営業、ベンチャー企業にて事業推進を経験後、外資系企業で採用・教育・制度企画・労務などを経験。人事責任者として「働きがいのある企業」(Great Place to Work)に5年連続ランクインさせる。
現在は社会保険労務士として、約20年の人事キャリアで培った経験を活かして、スタートアップ企業や外資系企業の人事課題の達成から労務管理面まで、きめ細やかにサポートを行っている。
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