理由や断り方まで解説 出世したくない人が増えているって本当?
仕事の成果が認められると、会社から昇進を打診されることがあります。
しかし、さまざまな理由から「できれば出世したくない」と思っている人も多いのではないでしょうか。ここでは、出世したくない人の理由や、出世したくないときの対処法について紹介します。
出世したくない人が増えている?
出世したくないと感じている人は、どのような理由で出世したくないと思っているのでしょうか?
若者の20%は出世に無関心!その理由とは?
2019年に行われた調査によると、出世は「どうでもよい」「役職にはつきたくない」等、出世に関心がない人は全体の22.9%でした。
2009年の「どうでもよい」「役職にはつきたくない」の合計16.2%より6.7%増加し、「主任・班長」(7.9%)や「社長」(12.6%)を目指す人と比べても昇進に関心がない人が最も多い結果となりました。
出世したくない理由としては、
- 仕事のストレスが増えたり責任が重くなったりするのが嫌
- 給料が上がらないのに仕事が大変になるのは避けたい
- 出世をするとプライベートの時間がなくなるから
などが多いようです。
昔に比べてワークライフバランスを重視する人や出世にこだわらない人が増え、生き方が多様になっていることも、出世したくない若者が増えている一因でしょう。
※参考→平成31年度新入社員 働くことの意識調査|公益財団法人日本生産性本部・一般社団法人日本経済青年協議会
公務員・女性・40代が出世したくない理由
ここでは、出世したくない事情のある「公務員・女性・40代」のそれぞれの理由を、具体的に見ていきましょう。
公務員の場合
公務員が出世したくない理由で多いのは「勤続年数で給料が上がるのだから、管理職になって仕事が増えるよりも一般職のままでいたい」というものです。
公務員の場合、民間企業と異なり成果や能力ではなく勤続年数に応じて昇給していきます。そのため、わざわざ出世して仕事を増やすのではなく、「現状を維持して勤続年数に伴い給料が上がればそれでいい」と考える人もいるようです。
また、管理職に昇進すると、部下が不祥事を起こした際に組織の代表として謝罪を行うだけでなく、減給の対象にもなることがあるので、責任が重いと感じる人も少なくありません。
その上、管理職に就くと管理職手当がもらえるものの、残業代が出なくなります。公務員の場合は給与にみなし残業代が含まれていないため、これまで残業代を多くもらっていた場合は、昇進したにもかかわらず、残業代の出る部下よりも給料が低くなってしまうこともあります。
女性の場合
女性が出世したくない理由で多いのは「結婚後は家事や育児を優先したいため、残業や責任が増えるのを避けたい」というものです。
2017年の日本総合研究所の調査では、86%以上の女性が「管理職への登用を希望しない」と答えています。入社時は会社で出世したいという志を持っていても、結婚や出産による生活環境や状況の変化から、仕事に対する考え方が変わることも影響しているでしょう。
※参考→“昇進はまっぴら”女性社員低モチベの元凶|BLOGOS
40代の場合
40代の人が出世したくない理由で多いのは、「社内で中堅クラスの年齢になったものの、出世した同期との差が開いてしまったことで失望感を覚え、仕事に対するモチベーションそのものが低下した」というものです。
「出世の意識」についてパーソル総合研究所が行った調査では、42.5歳を境に「出世したいと思わない人」が「出世したい人」を上回ることがわかりました。
30代前半では「出世したい人」の割合は35%以上、「出世したいと思わない人」の割合は約25%と、出世したい人の方が出世したくない人よりも10%以上多い結果となっています。
しかし、それ以降、「出世したい人」の割合が下降する一方、「出世したいと思わない人」の割合は上昇し、両者がおよそ42.5歳で逆転します。40代は出世意欲が交差するキャリアの転換期といえるでしょう。
また、エン・ジャパン株式会社がミドル世代を対象に行った「出世意欲」についてのアンケートでは、出世意欲がないと答えたのは全体の22%にのぼりました。理由として最も多かったのは、「出世にこだわらず働きたいから」という考えでした。
※参考→キャリアの曲がり角は42.5歳 ミドル・シニア正社員と成長の関係|パーソル総合研究所
出世したくないのに出世しそうなときは?
出世したくないのに出世しそうなときは、どうしたらいいのでしょうか。
出世を断る前に一度考えてほしいポイントを説明します。
「出世しなくても後悔しないか」一度考えよう
出世を断ると今後は出世コースに戻れない場合がほとんどなので、本当に出世しなくても良いのか一度考えましょう。
断ったことを後悔しないためにも、目先の仕事や責任だけでなく10~20年先を見据えたうえで結論を出すことが大切です。
出世した場合としない場合で給料がどのくらい違うのか、今より大きな業務にチャレンジしなくて後悔しないか、今後出世していく同期と比べて劣等感を感じてしまわないかなど、じっくり考えてみましょう。
以下に出世した・しなかった場合のメリット・デメリットをまとめたので、参考にしてください。
出世した場合のメリット・デメリットは?
○メリット
- マネジメント能力を高めることができる
- 給料が上がることが多い
出世した場合は、現在よりも大きな仕事に携わったり、部下を指導する立場になったりと、マネジメント業務が増えるでしょう。幅広い仕事を管理できるマネジメントスキルは、どんな職種であっても必ず役立ちます。
長く仕事を続けるためにも、出世は自分自身を成長させるチャンスだと前向きに捉えるのも1つの方法です。また、残業代が出なくなるとは言え、役職(管理職)手当が出るため、給料アップも期待できます。
×デメリット
- 仕事が忙しくなり、プライベートの時間が少なくなることが多い
- 残業代が出なくなる
仕事の量が増加したり難易度が上がったりすることで仕事が忙しくなるため、プライベートの時間が減る可能性があります。
また、管理職の場合は役職手当がつくものの、残業手当はつかなくなるため、激務の場合は部下よりも給料が低くなってしまう可能性もあります。
出世しなかった場合のメリット・デメリットは?
○メリット
- これまでと変わらずプレイヤーとして仕事に取り組める
- プライベートの時間を確保できる
出世しない場合は、これまで通りプレイヤーとして第一線で働くことができます。現場のリアルなニーズを知ることができ、実践的なスキルも磨き続けられるでしょう。
また、仕事量が急激に増えることもないので、プライベートの時間も確保しやすいでしょう。
×デメリット
- 給料が上がりにくい
- 年下の上司や出世した同期に対して劣等感を抱く可能性がある
出世しなかった場合は、年下の上司や同年代に対する劣等感などで人間関係がうまくいかなくなる可能性もあります。
出世を断った結果、年下の社員が自分の上司になったり、後々管理職になった同年代の肩書きや給料をうらやましく思ってしまう人も少なくありません。
出世したくない人は会社にとって「不要な人材」?
出世した場合・しなかった場合のメリット・デメリットを考えて、それでも出世したくないと思うか、出世を目指すかは個人の自由です。
でも、出世したくないと考えている人を会社はどのように評価するのでしょうか?
企業の人事制度・評価制度に詳しい人事コンサルタントの西尾太さんは、「出世したくないという思考のままでは、いずれ会社から不要な人材という烙印を押されるかもしれない」と言います。
なぜ出世したくない思考が危険なのか、その理由は下記の記事で解説しています。
どうしても出世したくない場合の対処法
自分以外に適任者がいないなど、出世せざるを得ない状況になってしまうこともあるかもしれません。どうしても出世したくない場合の対処法を説明します。
なるべく穏便な断り方を考える
出世をせずに今の仕事を続けたいときは、角が立たないようになるべく穏便な断り方で自分の気持ちを伝えましょう。
今の立場で好きな仕事を続けたいという「前向きな姿勢」を見せつつ、出世自体が自分には向いていないという「正直な自己評価」についても触れるのが良いでしょう。
いくつか例を挙げてみましょう。
▼出世を断る理由の例<仕事に対する姿勢>
- 今の仕事で成果を上げたいので、このまま続けたい
- マネジメント業よりもプレイヤーとして今の仕事を一所懸命やる方が性に合っている
- 今の勤務形態が自分に合っているので、この先も続けたい
<正直な自己評価>
- 自分の仕事で精一杯なので、他人の面倒を見る余裕がない
- 他人の能力や成果に対して、正しい評価ができる自信がない
- 体力に不安があり、長時間の勤務に耐えることができない
転職を視野に入れる
どうしても出世したくないときは、転職することで出世を免れる方法もあります。
出世をしないようなポジションへ転職した場合は、その後も出世を打診される可能性が低いため、思い切って転職するのも良いでしょう。
ただし、年齢によっては管理職のポジションしか募集していない場合もあり、転職先を探すのに苦労することもあります。
まとめ
出世したくない人が増えた背景には「仕事のストレスや責任を増やしたくない」「給料が上がらないのに仕事が大変になるのは嫌」などと考える人が増え、昔よりも出世にこだわる人が減ったからだと考えられます。
出世したくない場合は回避する方法もありますが、出世することによって自己成長できるというメリットもあります。
出世を断って後悔しないためにも、目先の仕事や責任だけでなく、未来を見据えたうえで結論を出すことが大切です。