どちらの評価制度がいいの? 年功序列、反対の意味の成果主義とは?
上司や同僚との会話の中で「うちは年功序列の会社だから」などというフレーズを聞いたことはありませんか?
年功序列とは、いったいどういったものなのでしょうか?また、年功序列と反対の意味を持つ言葉として挙げられる「成果主義」との違いは何でしょうか?
年功序列と成果主義の意味や違い、それぞれのメリット・デメリットを解説します。
年功序列とは?
ここでは年功序列の意味や目的など、基本的な情報を解説します。
勤続年数や年齢に応じて
給与や地位を決定する考え方
「年功序列」とは、従業員の給与や地位などの処遇を、勤続年数や年齢に応じて決定する考え方、もしくは評価する慣習そのものを指す言葉です。
「年功序列賃金制度(年功序列制度)」と表現されることもあります。
経験や年数を重視し、長年勤めている従業員ほど高い給与や地位を得られる傾向があります。実際の昇進や昇格は、直属の上司の評価によって決まることが多いようです。
長期雇用が目的
年功序列制度の主な目的は、従業員の長期雇用とされています。
現在も終身雇用を前提とした企業や官公庁で導入されていますが、もともとは第二次世界大戦後に取り入れられ、1950年頃の高度成長期に構築されたものです。
長期にわたって同じ会社に所属することで、勤続年数と共に従業員の技術や能力が熟練されていきます。
そうした従業員が活躍し成績が上がることで、会社の利益として還元されるという考えに基づいています。また、年々給料が上がるような仕組みによって、技術や能力が高い熟練者が転職してしまわないようにするという狙いもあります。
この仕組みによって従業員は給与や待遇を保証され、安心して働けるようになったため、会社への帰属意識が高まり、会社に定着しやすくなったと言われています。
会社側は人事評価に対する管理がしやすく、コストを抑えることができるというメリットもあります。
年功序列の対義語である「成果主義」とは?
年功序列と対をなす言葉として、成果主義があります。意味や目的など、基本的な情報を解説します。
業績や成果に基づく評価で
処遇を決定すること
「成果主義」とは、従業員の実績や成果に基づいて評価を行い、給与や昇進などの処遇を決定する考え方のことを指します。
「結果主義」「能力主義」「実績主義」なども、類似用語として使われます。
成果主義の場合、仕事の実績や成果が優秀であれば、勤続年数や年齢に関係なく、高い評価や給与が得られる傾向があります。
たとえば、設定された目標を達成したかどうか、プロジェクトでどのような成果を出したか、顧客からの評価はどうかなど、従業員の実績や成果が評価の対象となります。
高い成果を上げ会社に貢献した分だけ、収入が増えていくという考え方です。
従業員のモチベーションアップによる
業績向上が目的
成果主義を採用している会社側の目的はいくつかありますが、主に従業員のモチベーションアップによる業績向上であると言われています。
成果主義は、従業員個人の実績や成果を評価し、それに応じた給与や昇進、キャリアアップの機会を提供します。従業員がより良い評価をモチベーションに、自らの能力やスキルを高め、業務の効率化や改善に取り組むことで、会社の業績向上につながると考えられています。
また、成果主義は年功序列制度に比べて、能力や実績に応じた適切な給与や待遇を提供することができるため、人材の流出を防ぎ、優秀な人材を確保することにつながるとされています。
年功序列のメリット・デメリット
年功序列制度にはどんなメリット、デメリットがあるのでしょうか。
下記で詳しく解説します。
年功序列のメリットとは?
年功序列制度には、主に以下のようなメリットがあるとされています。
勤続すれば自動的に昇給するため、
安心して働ける
年功序列制度では、能力や業績に関係なく、年齢や勤続年数によって自動的に昇給すること(定期昇給)が約束されているため、安心して働くことができます。
また、ある程度の年次を重ねると「係長→課長→部長」といった地位にステップアップすることができます。一度昇進すれば、大きなトラブルがなければ降格することもあまりないので、給与も地位も着実に上がっていくメリットがあると言われています。
キャリア育成のサポートを十分に受けられる
年功序列制度の会社では、キャリア育成のサポートを十分に受けられることが期待できます。
というのも、年功序列制度の会社では、従業員の長期的なキャリアアップを目指し、会社側が積極的に人材の育成に力を入れるからです。
後輩を育てるフローやキャリアパスがしっかりしていることが多く、初めての部署や業務内容でもしっかりサポートを受けながらステップアップしていくことができます。
企業にとっても、技術やノウハウを新しい社員にしっかりと伝えていくことができるため、属人化を防ぎながら、優秀な人材を継続的に育成できるというメリットがあると言えるでしょう。
年功序列のデメリットとは?
年功序列制度には、主に以下のようなデメリットがあるとされています。
出世スピードが遅く、給料が上がりにくい
年功序列制度では、出世スピードが遅い(昇格や昇進のペースが緩やか)と言われています。
この制度では、年齢や勤続年数が出世の基準となります。たとえば「主任は30代になってから」といったように、仮に主任を任せられる実力を持った20代の社員がいても、年数の条件が満たされなければ昇進できません。
このため、結果的に個人の能力や実績が無視されていると感じる従業員もいるようです。特に新卒や若手社員はスキルに関わらず低い初任給やポジションとなります。
こうしたことから、能力の高い若手社員には出世のチャンスが巡ってこないため、不満がたまりやすいことが指摘されています。
経営が悪化すると、
勤続年数が長い人はリストラされやすい
年功序列制度の会社で経営が悪化した場合、人件費が高いという理由から、勤続年数が長い年配従業員はリストラの対象になりやすいと言われています。
企業の経営が悪化した場合、昇給が行われなかったり、減額・カットになったりすることが一般的です。しかし、年功序列制度の会社では、年齢や勤続年数に応じた昇給や昇進が必要になるので、かかる人件費を少しでも抑えるために、年配従業員をリストラすることもあります。
社内文化や企業体質が変わりにくい
年功序列制度を採用している会社は、新しい価値観やトレンドが社内に反映されづらく、社内文化や企業体質が変わりにくいことが指摘されています。
その原因の一つとされているのは、地位が上の人ほど、勤続年数を重ねている年配者が多いことです。
事業決定権を年配者が握っているため、若手や中堅などのアイデアが通らなかったり活かせなかったりして、新しいイノベーションが生まれにくい傾向があるとされています。
成果主義のメリット・デメリット
一方、成果主義にはどんなメリット、デメリットがあるのでしょうか。
下記で詳しく解説します。
成果主義のメリットとは?
成果主義には、主に以下のようなメリットがあるとされています。
目標達成に向けて、意欲的に仕事に取り組める
成果主義では、自分の担当業務や仕事に対して意欲的に取り組めるようになると言われています。目標達成が評価の基準となるため、自分が成果を出した分だけの給与を受け取れる仕組みだからです。
「この仕事を成功させるぞ!」という強い動機づけがなされることで、自分のモチベーションがより向上する効果が期待できます。
自分の属性に関らず、公平な評価をしてもらえる
成果主義は、年齢、性別、学歴、勤続年数などの個人の属性に関係なく、公平に評価されるのが特徴です。なぜなら、シンプルに「個々の業務内容の成果や目標の達成度のみ」を評価するからです。
こうしたことから、「不当な評価をされた」「特定の社員がひいきされている」といった不満感が少ないことが、成果主義のメリットのひとつと言えます。
成果主義のデメリットとは
成果主義には、主に以下のようなデメリットがあるとされています。
達成しにくい目標を設定されると、
ストレスを感じる
成果主義の会社では、組織や上司の意向で、実力に見合わない目標や、達成しにくい目標を設定されてしまうことがあります。
目標を達成できないと評価が下がり、給与にダイレクトに反映されます。そうしたプレッシャーから、ストレスを感じる可能性があります。
評価基準を設けるのが難しく、
公正性が保てないことがある
成果主義では、評価基準を設けることが難しく、公正性が保てないことがあると言われています。
たとえば営業部門などの場合、成果が売上金額や契約件数などの数値で表れるため、目標が達成できているかどうかがすぐに判断できます。
しかし、事務職・研究職・社内インフラ整備などの部門は、突発的な業務に対応する役割もあります。また、そもそも目標を数値で設定することは難しく、成果に対する評価が曖昧になったり、未達成と判断されることがあります。
すべての職種の成果を定量的に測ることは非常に難しく、目標達成の成果はもちろん、目に見えない範囲で貢献度を見極める必要のある部門や職種もあります。
評価基準を上手く設けられず、公正性が保たれていない場合は、従業員の不満に直結するでしょう。
結果が重視されプロセスを無視されることがある
成果主義では業績が重視されるあまり、いわゆる「結果がすべて」という評価に偏りがちになり、従業員のチャレンジやプロセスは評価の対象とならないケースもあるようです。
もちろん企業の中には、プロセスや結果の背景も理解した上で、総合的に判断して成果を評価するところもあります。
企業によって成果主義をどのように解釈して運用しているかが異なることもあるため、これらを見極める必要があります。
目標を達成しようとするあまり、
キャパオーバーで疲弊してしまう
成果主義は業績を上げた分だけ評価されるため、目標を達成しようとするあまり、従業員がキャパオーバーになり疲弊してしまうこともあります。
成果を上げた分だけ給与アップや昇進につながるため、もっと評価してもらうために、従業員はより多くの業務をこなそうと努力します。
すると、業務量が増え、担当領域が広がり、その分責任も大きくなり、ストレスやプレッシャーがかかることがあります。中には、自分の実力や能力に見合わない程のタスクを抱え、手に負えなくなってしまうこともあるでしょう。
今の日本経済において「年功序列」は少なくなりつつある
今の日本経済において「人を採用し、長く働いてもらい、適切な給与を支払う」ための年功序列賃金制度は、維持し続けることが難しく、全体数として少なくなりつつあることが指摘されています。
年功序列賃金制度が浸透していた日本の高度経済成長期は、大卒者の比率がとても少ない状況でした。そのため当時の企業の多くは、限られた若い人材をなるべく多く囲い込んで採用し、長く会社に貢献してほしいと考えていました。
しかし現在では、大学進学が一般化していることから、企業としても新卒一括採用で若い人材を多く採り、長い時間をかけて育てていくことが難しくなっています。
またバブル崩壊後は、継続的かつ安定的な経済発展が難しくなったことや、安い人件費で高品質なものを生産できる海外企業との競争が激化したことにより、受注が減少。生産性が高まらないまま人件費が膨らんでしまう企業が増えてきています。
そうした背景もあり、現在ではもともとは年功序列の考え方だった会社が、成果主義に基づく評価制度を取り入れる動きが進んでいます。
今後、高度成長期を大きく支えてきた「年功序列」という仕組みを存続させることがより厳しくなるなか、企業に対しては柔軟性のある評価制度が求められる動きが進んでいくでしょう。
自分には年功序列と成果主義、どっちの評価制度が向いてるの?
今後もし転職するなら、「年功序列」と「成果主義」どちらの評価制度が自分にあっているのか気になる人もいるでしょう。
ここでは、どんな人が年功序列・成果主義に向いているか、考えられる可能性を解説します。
※現代のビジネス環境では、どちらの評価制度も求められる従業員像が変化しています。そのため、以下の内容は流動的で、あくまで一つの参考としてください。
「年功序列」の職場が向いてるのは
こんな人かも
継続的な業務遂行能力が高い人
年功序列では、継続的な業務遂行能力が高い人が向いているかもしれません。
年功序列の会社では従業員の経験や年数に応じて昇格・昇進します。そのため、組織に長く在籍している人にとって、有利な評価制度と言えるでしょう。
同じ会社でキャリアを積み、継続的に会社の事業目標に貢献し続けることにモチベーションを感じる人にとっては、良い評価制度かもしれません。
与えられたタスクをしっかり遂行することに
長けた人
与えられたタスクをしっかり遂行できる人は、年功序列の会社に向いている可能性があります。
年功序列の場合、目標を達成したかどうかは評価基準にならないので、与えられた業務をきちんと滞りなくこなすことが大切になります。
「成果主義」の職場が向いてるのは
こんな人かも
目標志向性が高い人
目標志向性が高く、自己管理能力がある人は、成果主義に向いていると言えそうです。
成果主義では目標を達成することが重要で、その成果や実績が評価の基準となるため、自ら目標を設定し、達成するためのプランを立て、計画的に取り組むことが求められます。
主体性がある人
成果主義は、自ら考え、主体的に行動することができる人に向いているでしょう。
たとえば、上司から指示されたことをこなすだけでなく、自分で考えて新しい企画を提案したり、改善案を立案するなど、自発的に行動することができるようなことが挙げられます。
年功序列と成果主義は、どちらがいいの?
「年功序列」と「成果主義」、それぞれの制度は一定の基準で良し悪しを判断することはできないでしょう。
というのも、どの会社であっても、制度に対する印象や体感は社風や文化によって変わる可能性があるためです。
また、それぞれに存在するデメリットを払拭しようと、両方のメリットを組み合わせた独自の評価制度を取り入れている会社もあります。
もし、あなたが今後転職活動をする場合、応募したい会社は年功序列と成果主義のどちらの考え方が強いのかをリサーチの上、自分の望む働き方ができるのかどうかを考えると良いでしょう。
この記事の執筆者
「転職Hacks」編集部
株式会社クイック
株式会社クイックが運営する、転職活動にまつわる情報サイト「転職Hacks」の編集部。履歴書・職務経歴書の書き方や面接対策などのノウハウ記事、キャリアの悩みを解消するインタビュー・コラムを掲載中。