引き出し方・財形との違いも 社内預金制度とは?利率が高いって本当?
「社内預金」制度は会社の福利厚生の一つとして導入されることがあります。どのような制度かわからない、加入するべきか悩むという人も多いのではないでしょうか?
ここでは、社内預金制度の仕組みや、メリットとデメリットについて説明します。
社内預金制度とは?2022年度の下限利率は0.5%
社内預金制度とは、どのような制度なのでしょうか。
まずは利率や財形貯蓄との違いについて説明します。
社内預金とは企業が貯蓄を代行する制度
社内預金とは、会社が毎月の給与やボーナスから一定額を天引きして、社員の貯蓄を代行する制度です。
社内預金制度では、労働基準法で預金額に利子をつけることが定められており、厚生労働省によって下限利率が設定されています。下限利率は毎年見直しが行われますが、2022年度は0.5%です。
なお、法律で設定してある金利の刻み幅が5厘(0.5%)であるため、法改正がない限り、この金利より下がることはありません。
会社によって社内預金の利率は異なりますが、基本的に銀行の利率よりも高く設定されています。
社内預金は主に大企業が優秀な人材確保・定着のために福利厚生の一環として導入していますが、導入している会社は年々減少傾向にあります。
※参考:令和4年10月から適用される社内預金の下限利率について|厚生労働省
社内預金は基本的に会社が管理する
社内預金で預けたお金は、銀行などの金融機関ではなく、会社もしくは会社の委託先である信託機関が管理します。
会社は毎年3月31日時点の預金額に対して、1年間、以下のような保全措置を講じる必要があります。
▼保全措置の方法
- 金融機関等による保証契約
- 信託会社との信託契約
- 質権または抵当権の設定
- 預金保全委員会の設置、かつ貯蓄金管理勘定その他適当な措置を講じること
上記のいずれか、または複数を講じる。
社内預金の金利の仕組み
社内預金の高い金利の仕組みは、元々は社員と会社側の双方のメリットの上に成り立っていました。
かつては社内預金に対する保全措置が必要なく、会社は社内預金の貯蓄金をそのまま運営資金として利用することができました。つまり、会社は低い金利で資金調達ができたため、高金利での還元が維持でき、社員にとっても大きなメリットがありました。
しかし、保全措置が義務付けられたことにより、社内預金は以前に比べて運営資金として活用しにくくなっています。社内預金を導入する企業が年々減っていることには、そうした背景も関わっています。
利率の上限や限度額が決まっていることも
会社によっては、利率の上限と預金の限度額が決められている場合もあります。
例えば、金利1%は上限額200万円、金利0.5%は上限額800万円などです。限度額に達すると、それ以上は預けることができません。
社内預金制度の加入は任意
社内預金制度がある会社の場合、希望すれば社員は加入することができます。
会社側が強制的に貯蓄金を管理する契約を結ばせる行為(強制貯金)は、労働基準法によって禁止されているため(労働基準法第18条)、無理やり社内預金制度に加入させられる心配はありません。
財形貯蓄との違いは引き出しの手軽さ
社内預金に似た制度に財形貯蓄制度がありますが、社内預金は財形貯蓄と違い、会社が管理しているため、いつでも貯蓄金の引き出しが可能です。労働基準法でも、社員が貯蓄金の返還を請求したときは遅滞なく返還するように定められています。
一方、財形貯蓄は銀行などの金融機関が管理するため、自由に引き出すことができません。また、利率も銀行が設定している数字が適用されるので、社内預金よりも低金利であることが一般的です。
※財形貯蓄について詳しくは→財形貯蓄制度とは?デメリットもあるの?
退職するときは解約、返金される
退職するときは、退職前に社内預金の解約請求をすると、利息を含む全額を返金してもらうことができます。
労働基準法により、労働者が退職するときは請求してから7日以内に貯蓄金を返金することが定められていますが、会社によっては日数がかかる場合もあるので、早めに申請しましょう。
社内預金のメリット・デメリット
ここでは社内預金のメリット・デメリットについて説明します。
加入をするかどうか悩んでいる人は、ぜひ参考にしてください。
メリットは高金利と貯蓄のしやすさ
社内預金のメリットは、主に以下の2つです。
金利(利率)が高い
社内預金のメリットの1つは、大手都市銀行の普通預金の利率(0.001%)や、定期預金の利率(0.002%)よりも高金利であることです。
下限利率は0.5%ですが、企業によっては5%前後を設定しているところもあります。
もし社内預金の利率が0.5%の会社で、年収400万円の人が毎月3万円ずつ、年2回のボーナス時にはさらに10万円ずつ預けていた場合、金利は2,800円となり、年間で562,800円貯蓄することができます。
貯蓄が苦手な人でもしっかり貯金できる
給与から自動的に天引きされたお金は、自分の口座とは別の口座に貯蓄されるため、使い込んでしまうことなく確実に貯金することができます。
無計画に出費してしまう可能性がある人は、利用したほうが良いといえるでしょう。
デメリットは貯蓄先としての不安定さ
反対に社内預金のデメリットについては、以下の通りです。
経営状態によっては制度の廃止もありえる
会社の経営状況によっては、金利が下限利率である0.5%まで下がってしまう可能性があるだけでなく、最悪の場合は社内預金制度自体が廃止になることもあります。
廃止が決定すると、労働者にその後の対応について告知されます。廃止後は、社内預金制度に代わる福利厚生として、財形貯蓄制度導入などの措置がとられることもあります。
倒産した場合は社内預金が戻ってこないことも
会社が倒産した場合、状況によっては社内預金が戻ってこないこともあります。
未払いの給与や賞与は民法308条で「先取特権」が認められているので優先的に支払われますが、社内預金は「任意で会社に貸しているお金」という扱いなので優先順位が低くなります。
会社には社内預金の損失を防ぐために保全措置義務が課せられていますが、なるべくリスクを回避するためにも、社内預金に給料の多くを預けてしまうのではなく、あくまでも預け先の1つとして利用しましょう。
社内預金にまつわるQ&A
最後に、社内預金にまつわる質問と回答をいくつかご紹介します。
社内預金の引き出し方は?
社内預金の引き出し方は?
社内預金は会社によって手続きが異なるので、引き出し方については、福利厚生の担当者や総務担当者に尋ねましょう。また、出金されるタイミングも会社によってさまざまです。
出金の手続き後は遅滞なく返還するように定められていますが、即日返金してもらえるとは限らないので、すぐにお金が必要な場合などは注意してください。
積立金額が知りたいときは?
積立金額が知りたいときは?
社内預金の積立金額が知りたい場合も会社によって確認方法が異なります。社内預金についての説明手引書などを参照するか、福利厚生の担当者や総務担当者に尋ねましょう。給与明細に記載されるのは、天引き金額のみであることが多いです。
半年または1年に1回、社内預金の残高証明書が渡されるところもあります。
まとめ
社内預金とは、会社が給与から天引きしてお金を預かる制度です。
社内預金制度に加入する際は、仕組みをしっかりと理解したうえで、預け先の1つとして利用することが大切です。
この記事の監修者
社会保険労務士
三角 達郎
三角社会保険労務士事務所