高い? 低い? 働き方別・薬剤師の年収、徹底比較!
薬剤師の年収はどのくらいなのでしょうか。
景気に左右されにくい医療系専門職で、安定した収入が得られるイメージの薬剤師について、平均年収や平均月収などさまざまなデータをまとめて紹介します。
薬剤師の平均年収は? 収入データ総まとめ
全国平均、性・年齢別の平均、都道府県や職種別のランキングなど、多様な切り口から、気になる薬剤師の収入についてご紹介します。
薬剤師の平均年収は約544万円!
2019年3月に発表された厚生労働省の調査によると、薬剤師の平均年収は544万円。
細かく見てみると、毎月の残業代を含む給与が38万円、年間のボーナスが合計88万円です。手取り月給はおよそ30万円となっています。
同じ調査から労働者全体の平均年収が460万円と試算されるため、薬剤師の年収は平均と比べて高い水準にあるといえます。
※参考→平成30年賃金構造基本統計調査-職種別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(e-Stat)
※計算方法=きまって支給する現金支給額×12+年間賞与その他特別給与額
薬剤師の年収は医療系専門職の中でも高め
ほかの医療系専門職と比較すると薬剤師の年収は、12職種中第3位と高めになっています。これは、医師、歯科医師に次ぐ順位です。
※参考→平成30年賃金構造基本統計調査-職種別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(e-Stat)
※計算方法=きまって支給する現金支給額×12+年間賞与その他特別給与額
【性別・年齢】年収・月収・ボーナス
続いて、より詳細なデータを見ていきましょう。
薬剤師の年収・月収・ボーナスについて、男性と女性に分類してグラフ・表にまとめました。
※参考→平成30年賃金構造基本統計調査-職種・性、年齢階級別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(e-Stat)
※計算方法=きまって支給する現金支給額×12+年間賞与その他特別給与額
年収が最も高くなる年齢は、男性薬剤師の場合55~59歳で約692万円、女性薬剤師の場合45~49歳で約614万円です。基本的には経験を積むにつれて、順調に収入が上乗せされています。
男性薬剤師と女性薬剤師の年収は、年齢を重ねるにしたがって大きな差が生じることがわかります。
20代は11~17万円とそれほど大きなものではありませんが、30代になったとたん70~100万円近く差が開き、40代後半で一度、差は40万ほどに縮まるものの、50代で再び100万以上の差が生まれます。
女性は出産・育児などのタイミングで仕事を辞めたり休んだりせざるをえず、継続したキャリアを築くのが難しいことが関係していると考えられます。
※こちらの表は1,000円以下切り捨てで表示しているため、12ヶ月分の月収とボーナスを足し合わせた額と年収が一致しない場合があります。
【都道府県】薬剤師の年収ランキング
※参考→「平成30年賃金構造基本統計調査-職種・性別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額」
※計算方法=きまって支給する現金支給額×12+年間賞与その他特別給与額
グラフから読み取れることは、薬剤師はほかの職業よりも地方の年収が高い傾向にあるということです。
それに対し、同じ調査で全職種の平均年収を見てみると、1位は東京都(622万円/薬剤師34位)、2位は愛知県(554万円/薬剤師27位)、3位は神奈川県(553万円/薬剤師22位)とギャップがあることがわかります。
これは、地方では薬剤師が不足する傾向にあるため、高くなりやすいことが影響していると考えられます。
【職場・職種】薬剤師の年収ランキング
調剤薬局、ドラッグストア、病院……。薬剤師は多彩な場所で必要とされる職業です。
その中でも研究者として働く、薬の知識を生かして営業を行うなどさまざまな仕事があります。
それぞれのうち、最も年収が高いのは製薬メーカーやCSOで働くMRで、年収レンジは500~800万円です。詳しいランキングは以下のとおり。
年収トップ3であるMR・創薬研究・CRAはいずれも製薬会社や化学会社など「企業」で働く職種です。
働く場所としては「企業」「ドラッグストア」「調剤薬局」「病院・医院」の順に年収が期待できるといえるでしょう。
【職種別】薬局や病院…薬剤師の特徴と年収
ここからは、薬剤師の職種別に働き方の特徴や向いている人のタイプなど気になる情報をまとめました。
働いている人の多い順に並べていますので、自分が興味のある職種があれば、ぜひチェックしてみてください。
【年収5位:400~650万円】調剤薬局の薬剤師
新卒就職者の割合:薬学部生の36.7%
特徴
調剤薬局の薬剤師は、処方箋を元に薬を処方したり、患者の服薬履歴を管理したりするのが主な業務です。
調剤薬局は夕方までに閉まるところや深夜営業をしているところなどさまざまな形態があるため、勤務時間や勤務地などを選びやすいのがメリットといえます。
調剤薬局のキャリアアップモデルとしては、管理薬剤師が挙げられます。文字通り医薬品の在庫や品質、ほかの従業員などの管理を行う職業です。管理薬剤師は調剤薬局の各店舗に必ず1人は必要なため、復職しやすいというメリットもあります。
こんな人におすすめ
調剤薬局では薬の種類や分量についてミスなく取り扱うことが求められるため、一回一回の作業において細かい点まで意識できる几帳面な人に向いています。また、初対面の患者さんと接する場面が多いので、コミュニケーション能力に長けた人にもおすすめです。
【年収6位:300~550万円】病院・医院の薬剤師
新卒就職者の割合:薬学部生の27.3%
特徴
病院の薬剤師の業務は「院内調剤」と「病棟薬剤師」に大きく分けられます。院内調剤とは、病院内で患者さんごとの状態に合わせて投与する薬を調剤する仕事です。
病棟薬剤師は、ベッドサイドで患者さんとコミュニケーションをとることでその背景や薬歴を確認し、薬の処方設計と医師への提案を行います。
病院の薬剤師のキャリアモデルとしては、薬剤部長や医局部長など病院薬剤師全体の管理に回るという道が挙げられます。
病院の薬剤師の平均年収は300~550万円と、他職種と比べると低い方ですが、薬剤部長になれば平均年収は500~650万円と、大幅な収入アップが期待できます。
こんな人におすすめ
病院・医院の薬剤師は薬剤師として医療に深く携わりたい人に向いています。
患者さん一人ひとりの治療に深く携わる経験は、調剤薬局やドラッグストア、企業では得ることができません。また、病院は医療の最先端の現場です。そこで調剤を行うことで大きなスキルアップが期待できます。
【年収4位:400~700万円】ドラッグストアの薬剤師
新卒就職者の割合:薬学部生の5.3%
特徴
ドラッグストアの薬剤師は、お客さんの症状や希望に合わせて市販薬を紹介し、使用方法について指導を行うのが主な業務です。
しかし、品出しやレジ打ちなど通常の店舗業務を行うことも必要で、処方箋を取り扱う店舗では調剤業務を担当することもあります。このようにさまざまな業務をこなす必要があるため、要領よく動ける人材が重宝されます。
ドラッグストアの一番のメリットは、病院・医院や調剤薬局と比べて収入が高いことです。店長やエリアマネージャーなど管理職になれば、年収1,000万円以上も不可能ではありません。
こんな人におすすめ
ドラッグストアは求人数が多いわりに収入が高いため、高収入を得たい方におすすめしたいキャリアの1つです。
また、ドラッグストアの薬剤師には、商品を売る「ビジネスマン」としての能力も必要になるため、売り上げなど数字を目標に仕事をするのが好きな人にも適しているでしょう。
【年収1位:500~800万円】企業のMR(医薬情報担当者)
新卒就職者の割合:薬学部生の4.8%
特徴
MR(Medical Representative)とは、病院の医師や薬剤師に自社医薬品の情報を伝える職種です。
自社医薬品の有効性や安全性だけでなく、副作用などのネガティブな情報についても薬を購入した医師や薬剤師への調査を通して収集し、医療機関に提供することが求められます。
高い収入が狙えることがメリットの1つで、個人の頑張りによっては30代で年収1,000万円以上も狙えます。ただし、その分厳しい営業目標があったり、MR認定試験という資格の取得が義務付けられたりと、高いハードルが課せられることがあります。
MRの勤務先としては、製薬メーカーとメーカーにMRを派遣するCSOの2つが挙げられます。
こんな人におすすめ
多忙な医師に短い時間で情報を伝える必要があるため、トークに自信がある人におすすめです。
また、自己管理能力の高い人にも向いています。外回りの仕事が多い上に多忙なMRは、日々医師や薬剤師に対して営業活動を行いつつ、自主的に勉強も行う必要があるからです。
【年収3位:450~700万円】企業のCRA(臨床開発モニター)
新卒就職者の割合:薬学部生の3.0%
特徴
CRA(Clinical Research Associate)とは、製薬開発を行う上で欠かせない「治験」をコーディネートする職種です。
治験のモニタリングから、報告書の作成まで担当し、実際に治験薬を投与する医師を支えます。
転勤や休日出勤はほとんどなく、育休・産休など制度が充実している場合が多いため、女性で長く働きやすい職種です。ただし、治験は全国であるため、担当エリアによっては出張が多くなる可能性も。
CRAの勤務先には、製薬メーカーとメーカーにCRAを派遣するCROの二通りがあります。
経験を積み、担当する治験の規模が大きくなるに従って収入も増加し、プロジェクト全体のマネージャーになれば、年収1,000万円以上も夢ではありません。
こんな人におすすめ
CRAは、スケールの大きい仕事を通じて社会に影響を与えたいという人におすすめです。
日本CRO協会によると、1つの新薬ができるまでにかかる期間は9~16年で、必要な開発費は500億円以上。もし1つでも新しい医薬品を世に出すことができたならば、多くの人命を救うことにつながります。
【年収2位:450~750万円】企業の創薬研究者
新卒就職者の割合:薬学部生の0.3%
特徴
創薬研究者は、研究と実験を重ねることで新しい薬を開発する職種です。
疾患の分析から薬物の化合、効果や安全性の研究などさまざまなステージにおいて創薬に携わります。
創薬研究には、10年以上の期間や何百億円ものコストがかかります。それゆえに、成功したときのインパクトは絶大で、ときには世界中にいる何百万人もの患者さんを救えたり、何千億円もの収益を会社にもたらしたりできます。
創薬研究者のキャリアとしては、研究室長、研究本部長など研究プロジェクトや企業全体を統括する立場になるコースが考えられます。大手企業で順調に出世すれば、1,000万円以上の年収を受け取れる可能性も高いでしょう。
こんな人におすすめ
創薬研究者は、長期的な目標に手を抜かずに取り組むことができる人におすすめです。前述の通り、創薬研究は短期間で成果が出るものではありません。何年にもわたって粘り強く取り組む忍耐力が不可欠です。また、給与が高い、休みがとりやすいなど、待遇面の魅力は高いです。
コラム:調剤薬局やドラッグストアから企業への転職は可能?
調剤薬局やドラッグストアから企業への転職は、未経験者であっても可能です。
年収アップや社会的意義を目的に、CRA・MRに未経験者が転職する例はよく見られます。どちらを目指す場合においても医療・臨床・薬学などについての知識と英語力が役立ちます。英語力は、新薬についての英語論文を読んで知識を蓄えたり、海外の製薬会社と協力して共同治験を行ったりする際に必要となります。
ただしCRA・MRと違い、未経験から創薬研究者になるのは非常に難しいです。創薬研究者は、修士・博士課程を修了した高学歴者で占められる狭き門のうえに、転職市場では基本的に研究経験が求められます。
どうしても創薬研究者を目指したい場合は、研究職に応募した際、明白にほかの求職者と比べて強みだといえるような経験をつくるよう意識して今から業務を行いましょう。例えば管理薬剤師として多くの部下をまとめた経験は、チーム作業である研究職に応募する際、1つの強みとなります。
薬剤師が年収1,000万円を目指すには?
比較的高めの年収が得られる薬剤師ですが、同じ医療職である医師の年収は約1,160万円と大きく引き離されています。調剤薬局やドラッグストアで薬剤師が年収1,000万円を目指すには、どのような手段があるのでしょうか。
ここでは、3つの年収アップの秘訣をご紹介します。
1.調剤薬局を開業する
調剤薬局の経営者になれば、年収1,000万円以上を手にすることは可能です。また、車の維持費や交際費も経費として取り扱われる場合があるため、実質的な収入はより増加します。
ただし、店舗の売上が悪ければ当然年収は少なくなりますし、最悪の場合経営破たんしてしまう場合もあり得ます。そのようなリスクをさけるためにも、「経営や経理について勉強する」や「病院・医院とのつながりを持つ」など準備整えたうえで、開業すると良いでしょう。
2.薬剤師の年収が高い地方で就職する
「都道府県別薬剤師の年収ランキング」で解説した通り、一般的には都市部のほうが年収は高いものですが、薬剤師の場合、地方の方が大都市よりも収入が高いこともあります。そのため、栃木県や福島県など薬剤師の年収が高い地域で就職することで、年収を上げることが可能になります。
薬剤師の需要が高い僻地や離島に勤めれば、年収1,000万円を実現できる可能性もあります。
3.派遣薬剤師として働く
世間一般のイメージとは違い、薬剤師は派遣社員の方が正社員よりも多くの年収を受け取れる傾向にあります。その背景にあるのは、現在まで続く薬剤師不足です。
1年などの短期間だけ専門スキルを持った薬剤師に働いてほしいという需要は高く、特に地方においては4,000円以上など高時給の求人も多く見られます。
それらの仕事に就くことで、年収1,000万円には及ばないまでも、正社員として勤務する以上の年収を受け取ることが可能になります。
まとめ
薬剤師の年収や職種の特徴、年収アップの秘訣についてご紹介しました。
薬剤師は資格を活かして努力すれば、大きな収入アップが見込める職業です。ぜひこの記事を、自分に最も適したキャリア選びの参考にしてください。