生活レベルや職業も紹介 月収90万円の手取り・年収はいくら?
「月収90万円」というと非常に豊かな生活が送れそうなイメージがありますが、実際の手取りはどれくらいになり、どのような生活を送ることができるのでしょうか。
今回は、月収90万円の人の手取り額や生活レベルについて詳しく解説します。
月収90万円の手取り・年収はいくら?
ここでは、月収90万円の手取り額や天引き率、ボーナスを含む年収額などを紹介します。
※「月収」はボーナスや残業代を含む年間の総収入を12カ月で等分した金額です。基本給と各種手当など毎月固定で支払われる「月給」とは異なります。
月収90万円の手取りは65万円前後
毎月の総支給額が90万円である場合、税金や保険料を差し引いた手取り月収は65万円前後になります。
具体的な手取り額は養っている家族の人数や保険料などによって変わります。
例として、以下の2世帯の手取り額や税金・保険料の天引き額を計算しました。
※参照:
令和5年度保険料額表(令和5年3月分から) | 協会けんぽ | 全国健康保険協会
保険料額表(令和2年9月分~)(厚生年金保険と協会けんぽ管掌の健康保険) |日本年金機構
雇用保険料率について |厚生労働省
令和5年分源泉徴収税額表|国税庁
月収90万円の場合、税金・保険料で総支給額の3割近くが天引きされると考えておけばよいでしょう。
月収90万円の手取り年収は約780万円
月収90万円の額面年収は1,080万円(90万円×12カ月)で、毎月の手取りはおおよそ780万円になります。
例として、以下の2世帯について、額面年収をもとにした手取りの内訳を計算しました。
妻や子どもなど扶養家族がいる人は配偶者控除や扶養控除が受けられるため、独身の人に比べると天引き率はやや下がります。
上の例でいえば、手取り年収に約16万円の差があります。
【割合】月収90万円の人はどれくらいいる?
月収90万円の割合は約3.5%
国税庁の調査によると、月収90万円(額面年収1,080万円)の人が該当する「年収1,000万円超~1,500万円以下」の人は全体の約3.5%しかいません。
給与階級別のくわしい割合は以下のとおりです。
※出典:国税庁「令和3年民間給与実態統計調査」
男性の中では上位8%、女性の中では上位2%
国税庁の調査結果を男女別に見ると、男性で年収が1,000万円超〜1,500万円以下である人は5.4%でした。また、年収が1,000万円を超えている男性の割合は7.6%でした。
一方、女性で年収1,000万円超~1,500万円以下である人はわずか0.8%でした。年収1,000万円を超えている女性の割合をすべて合わせても1.2%で、100人に1人程度しかいない計算になります。
最も割合が高い給与階級が男性で400万円超500万円以下、女性で100万円超200万円以下であることを考えると、月収90万円(額面年収1,080万円)以上の人は男女問わず給与面において日本のトップクラスに入ると言えるでしょう。
※出典:国税庁「令和3年民間給与実態統計調査」
【年代別】月収90万円以上の割合
厚生労働省の調査結果から、月収90万円以上の割合を年代別にくわしく見ると、20代では0.04%、30代は0.43%、40代は0.94%、50代は1.61%、60代は1.07%でした。
月収90万円以上の若手世代は20代と30代を合わせても200人に1人もおらず、収入が一番高くなる40代と50代でも月収90万円以上は100人に1人程度しかいません。
年齢層が上がっても、月収90万円を達成できる人はひと握りしかいないことがわかります。
【暮らし】月収90万円の生活レベルとは?
月収90万円の人は、実際にどのような生活を送っているのでしょうか?
以下の2世帯を例に1カ月の家計簿をシミュレーションしてみました。
住居の家賃は月20万円程度
一般的に「家賃は手取り月収の3割」が目安と考えられているため、月収90万円(手取り65万円)の場合は19万5,000円を住居費にかけることができます。賃貸なら都心のタワーマンションの1~2LDKが借りられる金額です。
家やマンションを購入する場合、住宅ローンは年収の5倍程度で組むことが多いため、月収90万円(年収1,080万円)なら5,400万円程度が一つの目安になるでしょう。頭金がない場合は、東京都なら都心の2LDK新築一戸建てを購入できます。
頭金を用意できる場合や、共働きで世帯年収が1,200万円以上の場合は、6,000万円台以上の物件も購入できるでしょう。
また独身の場合は、既婚者に比べて結婚生活の費用や子どもの教育費などがかからないため、他の支出を調整できれば家賃に20万円以上かけても生活を切り詰めずに、お金に余裕を持って生活できるでしょう。
貯金は毎月10万円程度が理想
一般的に「貯金の目安は手取りの15%程度」とされているため、月収90万円(手取り65万円)の場合は、月10万円程度を貯金できると理想的。年間に換算すると120万円程度です。
独身の場合は生活費があまりかからないため、節約を意識しなくても月10万円程度貯金することが可能でしょう。
また子育て世代でも、毎月の生活費を50万円程度に維持すれば問題なく貯金ができるはずです。
しかし、子どもを私立校に通わせたり、タワーマンションの高層階に住むなどして教育費や住居費が目安の金額よりも高くなったりすると、貯金が理想額に届かないこともあります。
結婚して片働きでもゆとりある生活が可能
月収90万円の場合、結婚して片働きになってもゆとりある生活を送ることができると考えられます。
総務省統計局の調査によると、月収90万円の人が多く該当すると思われる「年間収入984万円~1,193万円」の階級において、2人以上の世帯の1カ月あたりの消費支出は平均42万5791円で、年間に換算すると約510万円でした。
年収90万円の人の1カ月あたりの消費支出は、階級全体を含めた平均である32万627円よりも約10万円多く、自動車の購入、子どもの教育費、レジャー関係費などに対して平均よりも1万円以上多くかけているようです。
年間270万円程度の余裕がある
月収90万円の手取り年収は約780万円であるため、年間270万円程度を貯金に回したり臨時の支払いに充てたりできる計算になります。
ただし、上記の調査データは家賃の支払いがない世帯を含めた平均値を示しており、1世帯あたりの住居費が2万円台と低くなっています。
年収90万円前後の2人世帯の消費支出は平均42万5791円なので、賃貸物件に住む場合や住宅ローンの返済がある場合は月50万以上の支出があると予想されるため、実際の生活費はデータから算出した年間510万円より多いと考えられます。
※出典:総務省統計局「2022年 家計調査 家計収支編 第2表 年間収入五分位・十分位階級別1世帯当たり1か月間の収入と支出(二人以上の世帯のうち勤労者世帯) 」
子育ては子ども1人ならオール私立でも余裕
月収90万円の片働きで子どもを育てる場合、私立校に通わせても余裕のある生活が送れるでしょう。しかし、子どもが2人以上いる場合は生活費の節約が必要になるかもしれません。
子どもを幼稚園〜大学まで私立(オール私立)に通わせるとなると、養育費・教育費の総額は公立校と比較して1,400万円程度多くなり、大学卒業まで年間64万円(約1,425万/22年間)がプラスでかかる計算です。
仮に、調査対象の全世帯の子どもは公立校に通っていると仮定しても、月収90万円ならオール私立でも生活費のゆとり約270万円のうち4分の1弱でまかなえる計算です。年間の貯金の理想額や臨時の出費を差し引いても、月収90万円世帯なら子ども1人をオール私立で通わせるのは余裕でしょう。
また、子どもが2人になると追加の学費が年間128万円になり、貯金分を差し引くと生活費のゆとりはあまりありませんが、計算上は不可能ではありません。
※出典:文部科学省「令和3年度子供の学習費調査 調査結果の概要」「国公私立大学の授業料等の推移」
【職種・業界】月収90万円以上を稼ぐ職業とは?
月収90万円以上を稼ぐ仕事には、どんな職業があるのでしょうか。
月収90万円以上を超える職種や業界の特徴について紹介します。
職種…パイロット・医師・大学教授
厚生労働省の調査結果を見ると、月収90万円(年収1,080万円)以上の人を含む年収1,000万円以上の上位の職業は「パイロット(航空機操縦士)」「医師」「大学教授」の3職種でした。
高度な専門職に限定されており、一般企業で年収1,000万円以上を達成することは難しいかもしれません。
※高度な専門職(高度プロフェッショナル制度)についてくわしく
調査の中で特に年収が高かった10職種をランキングにすると、以下のとおりです。
年収が高い職種TOP10(年収額)
順位 | 職種(年収額) |
1位 | 航空機操縦士(1,600万) |
2位 | 医師(1,429万) |
3位 | 大学教授(高専含む)(1,066万) |
4位 | 法務従事者(971万) |
5位 | 大学准教授(860万) |
6位 | 歯科医師(810万) |
7位 | その他の経営・金融・保険専門職業従事者(781万) |
8位 | 公認会計士,税理士(747万) |
9位 | 小・中学校教員(740万) |
10位 | 研究者(704万) |
※年収額:「きまって支給する現金支給額」×12カ月+「年間賞与その他特別給与額」で計算(企業規模計 10人以上)
※出典:厚生労働省「令和4年賃金構造基本統計調査 一般労働者 職種」
業界…インフラ・金融・保険・情報通信業
個人がもらえる収入は職種だけでなく、企業が属している業界によっても左右されます。
例えば、事業規模が大きく会社組織も巨大であることが多いインフラ業界や金融・保険業界、ITの発展に伴って安定的に市場が成長している情報通信業界は、業界の特性から個人も高収入になる傾向があります。
国税庁の調査でも、インフラ・金融・保険・情報通信業界は年収1,000万円以上の給与所得者の割合が10%を超えています。
年収1,000万円以上の人の割合(業界別)
業界 | 割合 |
電気・ガス・熱供給・水道業 | 24.02% |
金融業、保険業 | 17.66% |
情報通信業 | 10.66% |
学術研究、専門・技術サービス業、教育、学習支援業 | 9.09% |
製造業 | 6.30% |
建設業 | 6.17% |
不動産業、物品賃貸業 | 5.90% |
医療、福祉 | 3.58% |
卸売業、小売業 | 3.34% |
サービス業 | 2.82% |
複合サービス事業(郵便局、協同組合) | 2.38% |
運輸業、郵便業 | 2.22% |
農林水産・鉱業 | 1.36% |
宿泊業、飲食サービス業 | 0.90% |
※出典:国税庁「令和3年分民間給与実態統計調査 第8表 業種別及び給与階級別の総括表」
パイロットや医師、大学教授など、高度な専門性を求められる職業への就職はハードルが高いですが、経験やスキルさえあれば給与水準の高い業界に転職することは不可能ではありません。
インフラ・金融・保険・情報通信の業界への転職を目指すなら、取得しておくと就職で有利になりやすい資格がいくつかあります。気になる人は調べてみましょう。
就職で有利になりやすい資格の例
- インフラ業界
…技術職を目指すなら危険物取扱者、電気工事士、ガス主任技術者など
- 金融業界
…証券外務員、証券アナリストなど
- 保険業界
…損害保険募集人、公的保険アドバイザーなど
- 情報通信業界
…ITパスポート、基本情報技術者など
※専門職を目指すならプログラミング、デザインなどの技術・経験も必要
資本金10億円以上の企業では、約12%が年収1,000万円超
企業規模が大きな会社ほど、社員の年収が高い傾向にあります。
国税庁の調査を企業の企業規模で見ると、年収1,000万円超の給与所得者の割合が最も高いのは資本金10億円以上の企業(12.3%)でした。
資本金が大きい企業は、多くの支店を持っているなど事業規模が大きい大企業がほとんどです。全国的に名が知られている分、就職希望者も数多くいるでしょう。
もし就職を目指すなら、多くの候補者の中から採用されるために、その企業で活躍できることを証明する実績や過去の経験が必要になります。
コラム:歩合制の仕事なら年収1,000万円を超える可能性も
自分の頑張りと能力次第でインセンティブがもらえる「歩合制」の仕事を選ぶことで、月収90万円前後の人が該当する「年収1,000万円」以上になる可能性もあります。
以下のような職種は歩合制が採用されていることが多いため、自分に向いていそうな職業があれば、まずは情報収集から始めてみるのも良いかもしれません。
歩合制が採用されていることが多い職種の例
-
不動産営業
-
保険営業
-
MR
-
ファンドマネージャー
-
自動車ディーラー
-
タクシーやトラックのドライバー
-
販売員
例えば、行動力があり体力やコミュニケーション力に自信があるなら不動産営業や保険営業、運転が得意ならドライバーなどが候補になるでしょう。
ほかの月収の手取りや生活レベルを知るなら…
以下の記事では、20万円~100万円のそれぞれの収入階級について、月々の手取り額や生活スタイルを紹介しています。
月収90万円以外も知りたい人は、ぜひ見てみてください。
この記事の執筆者
「転職Hacks」編集部
株式会社クイック
株式会社クイックが運営する、転職活動にまつわる情報サイト「転職Hacks」の編集部。履歴書・職務経歴書の書き方や面接対策などのノウハウ記事、キャリアの悩みを解消するインタビュー・コラムを掲載中。