役職・病院・診療科別 気になる医師の年収データ集
さまざまな職業の中でもトップレベルの年収を誇る医師。しかし、働く場所や経験年数などの要素によって、その収入は大きく上下します。
この記事では、気になる医師の平均年収から病院の種類や診療科ごとの年収ランキングまで、医師の年収データを丸ごとご紹介します。
【職種・年齢・性・役職別】医師の年収基本データ
まずは、医師の平均年収と、職種・年齢・性・役職で変わる医師の年収データを、図表を用いて分かりやすく解説します。
医師の平均年収は約1,161万円!
医師の平均年収は約1,161万円です(厚生労働省「平成30年 賃金構造基本統計調査」による)。
残業代を含む毎月の給与が89万800円、その12ヶ月分に、年間の賞与(ボーナス)92万1,200円を加えて試算しています。
額面で89万800円の月給であれば、毎月の手取り額は70万円程度となります。
同調査によると、労働者全体の平均年収は490万円、毎月の給料は30万7,600円。そのため、医師の年収は平均と比較して非常に高水準だといえます。
全職種の中で医師の年収は2番目に高い
全職種の年収ランキングでは、医師は2位にランクインしています。
医師の平均年収は、航空機操縦士(パイロット)に次ぐ2位。非常に高水準であることが分かります。
また、高齢化によって医師の需要が高まっていることから、医師の平均年収は近年上昇傾向です。
【年齢・性別】でみる医師の年収
年齢階層別に、医師の年収の推移を見ていきましょう。
男女ともに50代まで右肩上がり
年齢別に医師の年収を見てみると、男性医師・女性医師ともに50代までほぼ右肩上がりに上がっていくことが分かります。
また、企業勤めのサラリーマンと違い、医師には明確な定年がないことから、60代以降も1,000万円以上の高い年収が見込まれます。
男女の格差は200万円以上
男女の年収差について見てみると、ほぼすべての年代で男性医師よりも女性医師の方が低くなっており、その差は最大で400万円以上。医師の収入における男女格差は大きいといえるでしょう。
これには、役職の有無、診療科目選びにおける男女の傾向の違い、出産・育児によるキャリアの中断など複数の要因が関連していると考えられます。
ただし、この傾向は医師特有のものではなく女性労働者全体に共通する問題です。
一般的な女性労働者の場合、30歳前後を境にその後はあまり年収が伸びないことを踏まえると、女性医師はむしろ継続したキャリアを築くことができる可能性が高いといえるのではないでしょうか。
【役職】別でみる医師の年収
医師の場合、医科長、副院長、病院長と役職が上がるにつれて年収が高くなります。
また、このデータにはボーナスが含まれていないので、副院長や病院長であれば年収2,000万円以上に到達できる可能性も高いでしょう。
ただし、それらの役職の平均年齢はいずれも50歳以上となっており、経験の浅い医師がおいそれとなれるものではないようです。人の命を預かる病院において、マネジメントする立場にある医師は大きな責任を負うことになります。
そのため、優秀な医師が長い経験を積んだうえで選任される狭き門となっているのです。
【病院・診療科別】医師の年収ランキング
民間病院・国立病院などの病院の種類または産婦人科・一般内科など診療科の種類ごとの医師の年収をランキングにまとめました。
【病院】別にみる医師の年収ランキング
病院の形態別に医師の平均年収を見てみると、民間病院の年収が最も高く、そこから国立病院、市立病院、県立病院と続きます。
詳しく見ていきましょう。
※参考(国立病院・民間病院)→第21回医療経済実態調査の報告(平成29年実施)|中央社会保険医療協議会
※参考(市町村立病院・都道府県立病院)→平成29年地方公務員給与の実態|総務省
※参考(大学病院)→平成29年賃金構造基本統計調査|厚生労働省
国公立病院はボーナスや福利厚生が手厚い
1位は市立病院の1,677万円。国公立病院は月収では民間病院を下回る傾向にありますが、賞与(ボーナス)はかなり充実しており、民間病院を上回ることもあります。
公立病院では在職期間に応じて支給される期末手当に加え、業績に応じて支給される勤勉手当がそれぞれ年に2回支給されます。
例えば、特別区の期末手当と勤勉手当はそれぞれ175万円と169万円で合計すると344万円(総務省「平成29年 地方公務員給与の実態」)。
民間病院の賞与171万円(第21回医療経済実態調査の報告(平成29年実施))と比較しても、2倍以上もらっていることになります。
その他にも、市立病院・県立病院などに勤める医師は公務員となるため、住宅手当・地域手当・退職積立金の支給など福利厚生の手厚さも大きな魅力。このようにさまざまな手当が充実していることから、民間病院に引けをとらない年収となっているのです。
ただし、過疎化によって財政の厳しい地方公共団体が増えてきていることから、近年ではこうした手当を削減していく傾向にあるようです。
民間病院は医師ひとりあたりの仕事量が多い
2位の民間病院はほかの病院に比べて職員の数が少ないことが多いため、医師1人当たりの対応患者数が国公立の病院に比べて多くなり、結果として給与が高くなります。
また、看護師などの職員数が少ない分抑えられた人件費が、医師一人ひとりに還元されている側面もあります。
ただし、それは少ない人数で多くの仕事をこなさなければならない、民間病院の医師の多忙さの裏返しでもあります。
【診療科】でみる医師の年収ランキング
転職Hacks編集部が独自に調査した結果によると、高額な年収が得られる診療科1位は美容外科・美容皮膚科、2位は婦人科・産婦人科、3位は訪問医療です。
「診療科別 医師の年収ランキング」と題し、3つの大手医師転職サイトに掲載された5万790求人の中から、最低2,000万円以上の年収を提示している病院の割合を診療科ごとに求めました。
診療科別:医師の年収ランキング(2019年2月25日時点)
順位 と 診療科目 | 2000万円以上の求人の割合 |
1 美容外科・美容皮膚科 | 25.72% |
2 形成外科 | 14.97% |
3 婦人科・産婦人科 | 12.26% |
4 耳鼻咽喉科 | 8.81% |
5 老人内科 | 6.91% |
6 心臓血管外科 | 6.57% |
7 一般外科 | 6.51% |
8 脳神経外科 | 5.51% |
9 総合診療科 | 5.37% |
10 整形外科 | 5.00% |
11 病理科・病理診断科・臨床検査科 | 4.92% |
12 呼吸器外科・胸部外科 | 4.87% |
13 心療内科 | 4.72% |
14 人工透析 | 4.30% |
15 消化器外科・肛門外科・肝胆膵外科 | 4.24% |
16 神経内科 | 4.20% |
17 眼科 | 4.17% |
18 腎臓内科 | 4.07% |
19 皮膚科 | 4.04% |
20 泌尿器科 | 3.98% |
21 血液内科・腫瘍内科 | 3.97% |
22 循環器内科 | 3.72% |
23 一般内科 | 3.67% |
24 消化器内科 | 3.40% |
25 呼吸器内科 | 3.36% |
26 乳腺外科・内分泌外科・甲状腺外科 | 3.36% |
27 放射線科 | 3.19% |
28 精神科 | 3.00% |
29 内分泌内科・糖尿病内科・代謝内科 | 2.94% |
30 麻酔科 | 2.52% |
31 訪問医療 | 2.47% |
32 小児科・新生児科・小児外科 | 2.14% |
33 救命救急 | 2.14% |
34 人間ドック・健診 | 2.03% |
35 リハビリテーション科 | 1.90% |
36 緩和ケア | 0.00% |
※小数点第三位以下は四捨五入
※参考→リクルートドクターズキャリア、マイナビDOCTOR、ドクターズWORKER
美容外科・美容皮膚科は保険適用外ゆえの高額年収
年収提示額2,000万円以上の求人率が高い診療科第1位は、「美容外科・美容皮膚科」で、その割合は25.72%と圧倒的です。
その大きな要因は、美容整形が保険の適用されない「自由診療」であるということ。病院側で自由に料金を設定できるため、多くの治療費を得ることができる傾向があります。
ただし、手術結果が患者の意に沿わなかった場合の訴訟リスクや、ほかの科への移りにくさなど、美容にまつわる診療科特有のデメリットもあります。
2位の形成外科は、先天性の病気ややけどの治療、がん切除後の再建手術など、「見た目を正常に戻す」保険診療が基本ですが、広義には美容外科・美容皮膚科も含むため、美容外科・美容皮膚科に連動して順位が高くなっていると考えられます。
産科・産婦人科は激務による人手不足が要因
3位の「産科・産婦人科」は、24時間365日体制の診療科だといわれています。
出産はいつ起こるかわからないため、夜中に起こされて出産を取り扱わなければならないこともしばしば。
また、妊婦・胎児両方の命を取り扱うため責任が重く、精神的な負担も大きいといえるでしょう。そのようなハードな職場環境を背景に産科医・産婦人科医不足が発生しており、それに連動して給与が跳ね上がっているようです。
このように、高額な求人数にはリスクの大きさ、ハードな職場環境など、トレードオフの関係にある明確な理由があります。
提示された年収だけを見て診療科を判断せず、理想の働き方と照らし合わせてどの診療科が、最も自分に適しているのか判断することをおすすめします。
コラム:歯科医の年収は約857万円、獣医の年収は約569万円
一般的な医師とは毛色の違う、歯科医・獣医の収入はどの程度なのでしょうか?
以下の表をご覧ください。
獣医のボーナスは86万円と歯科医のボーナス57万円を大きく上回っています。
しかし、歯科医の年収は獣医よりも300万円近く高額です。これは、歯科医が獣医に比べ、28万円多く月給を受け取っているからです。
歯科医・獣医ともに開業医と勤務医の年収差が大きいため、多くの医師は勤務医として経験を積んだ後、開業医を目指します。
しかし、倒産や廃業によって借金を背負ってしまうリスクもあるため、平均以上の年収を得るためには経営についてのノウハウも身に付けることが不可欠です。
「医師の給料は安い」そういわれる理由とは?
これだけ高額な収入を得ている医師ですが、それでもその給料は「安い」といわれることがあります。それはどうしてなのでしょうか?
勤務医の実態と、給料アップにつながる対策をご紹介します。
2004年まで若手医師は非常に薄給だった
医師の年収は20代にしておよそ500~700万円と、一般的な同世代の値段から考えると高額です。
しかし、2004年に新臨床研修制度が義務化され、国が月給30万円以上を基準として提示するまでは、研修医の給料は低く抑えられており、月給5~20万円程度と、アルバイトをしなければ暮らしていけないほどでした。
その当時の状況を知っている人は「医師は激務薄給」という印象を持っているかもしれません。
医師の仕事は激務
医師の仕事は非常に激務です。
2017年に行われた厚生労働省の調査によると、20代勤務医の1週間の平均的な勤務時間は週55時間程度。ここに当直・オンコールの平均待機時間14時間程度を加えると、約69時間になります。ここから、1週間の法定労働時間40時間を引いた週の残業+職務待機時間は29時間であり、月に換算すると116時間となります。
実際の業務を伴う残業時間は月60時間程度だとはいえ、これは現在の労働行政で定められている過労死ライン80時間を大幅に超過するものであり、医師の業務のハードさを物語っています。
そのため、医師によっては、1,000万円以上の高給をもらっていてもわりに合わないと感じる人も少なくないようです。
※参考→医師の勤務実態及び働き方の意向等に関する調査|厚生労働省医政局
コラム:給料アップにつながる医師の節税対策とは?
現在の給料を「安い」と感じる医師は、節税によって手取りを増やすことができないか考えてみても良いかもしれません。
節税対策の1つとして挙げられるのが「所得控除」。医療費や住宅ローン、保険料やなどの出費を記録し、確定申告を行うことで、所得のうち課税される部分を小さくすることができます。
※所得控除の詳しい種類や計算方法についてはこちら→所得税の控除とは?控除一覧&計算例
このほかにも、不動産投資や法人設立、個人が負担した経費を申請する特定支出控除などの手段で、勤務医でも税金を抑えられる場合があります。
まとめ
医師の収入にまつわるデータとランキング、医師の給料が安いといわれる理由についてまとめました。医師の収入相場や病院・診療科による年収の違いを理解すると、実際に自分が医師として転職する際、収入において損をする可能性が減らせます。
この記事の内容を、ぜひご自身の年収アップに役立ててみてください。