給料や期間、問題点まで解説 トライアル雇用とは?
ハローワークの求人票には「トライアル併用」と記載されたトライアル雇用の求人があります。聞き慣れない言葉に、どういった仕組みの雇用なのか気になっている人も多いのではないでしょうか?
この記事では、トライアル雇用とはどのような制度なのか、対象者は誰なのか、メリットやデメリットも含めて解説いたします。
トライアル雇用とは
まずは、トライアル雇用についてご説明します。
対象となる人の条件や、試用期間との違いについても理解しておきましょう。
トライアル雇用とは就職困難者の支援制度
トライアル雇用とは、職業経験が少なく技能不足で就職が難しい求職者を、企業側が一定期間雇用して正式に採用するか否かを見極める制度です。
求職者はトライアル雇用されている間に企業から仕事上で必要な指導を受け、本採用への移行を目指します。
トライアル雇用はさまざまな職種・業界の求人で行われているため、希望の職種に就くチャンスは多いといえるでしょう。
トライアル雇用の仕組み
トライアル雇用には、ハローワークを経由して申し込みます。仕組みは以下の図の通りです。
※参考→トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)|厚生労働省
求職者がハローワークに求人に応募したい旨を伝えると、ハローワークから企業に連絡してもらえます。
企業の許可が出れば、ハローワークから紹介状が発行されます。その後、企業の面接に合格できればトライアル雇用が始まります。
トライアル雇用開始後に一定の要件を満たした企業は、都道府県労働局に申請すると助成金を受け取ることができます。助成金には、トライアル雇用の対象となる人を雇う際の教育コストを補助する意味があります。
トライアル雇用の対象となる人
トライアル雇用の対象となるのは、主に就労経験が少なく、なかなか就業先が見つからない人です。
具体的には、下記の条件のいずれかに該当する人がトライアル雇用の対象です。
- 離職している期間が1年を超えている
- 2年以内に2回以上離職または転職を繰り返している
- 就労経験のない職業に就くことを希望している
- 学校を卒業して3年以内であり、卒業後安定した職業に就いていない
- 生活保護受給者
- 母子家庭の母等
- 父子家庭の父
- 日雇労働者
- 季節労働者
- 中国残留邦人等永住帰国者
- ホームレス
- 住居喪失不安定就労者
ただし、トライアル雇用の対象となる条件に該当していても、下記の条件に1つでも該当する人は、トライアル雇用の対象とはなりません。
- 在職中の就業者
- 自ら事業を営んでいる事業主や役員で、1週間当たりの実働時間が30時間以上
- 他の企業でのトライアル雇用期間中
- 在学中の学生(学校を卒業する年度の1月1日を経過している人で卒業後の就職内定がない場合は除く)
試用期間との違いは原則3ヶ月の有期雇用
トライアル雇用には原則3ヶ月の雇用期間が義務付けられており、期間満了後に本採用に至らなければ解雇になる点が、試用期間との大きな違いです。
試用期間の場合は当初から期間の定めのない雇用契約のため、会社側の都合で自由に解雇することはできません。
また、トライアル雇用は期間の定めがあるため、求職者は期間中に、本採用に至るレベルの技術や知識を身に付ける必要があります。
トライアル雇用への応募から採用までの流れ
トライアル雇用求人への応募から正式採用までの流れは以下の図の通りです。
それぞれのステップにおける注意点などについて、詳しく紹介していきます。
1求人を探す
トライアル雇用の求人は、ハローワークや職業紹介事業者の紹介で探すことができます。
求人情報には「トライアル併用」と記載されていることが多く、この場合はトライアル雇用で応募するか、通常の求人として応募するかを選ぶことができます。
応募する業種が未経験であれば、ハードルの低いトライアル雇用に応募する方が合格の可能性が高いといえるでしょう。
もし経験があるのであれば、通常の求人に応募して当初から期間の定めのない雇用契約を結ぶ方がおすすめです。
<求人情報の表記例>
求人条件にかかる特記事項 |
|
2応募~採用
トライアル雇用の求人に応募する際は、ハローワークや職業紹介事業者を通して企業に応募します。
企業は面接を1~2回程度行い、求職者をトライアル雇用するかどうかを決定します。
トライアル雇用の面接では、求職者にある程度適性があるかどうかを判断しますが、職業経験が少ないことが前提なので、技能や知識よりもポテンシャルを重視されるといって良いでしょう。
また企業によっては、若年者向けや障害者向けのトライアル雇用もあり、その場合は特定の応募条件や採用基準があります。
若年者のトライアル雇用
長く働いてもらいたいという理由から、30歳くらいまでの若年者を対象とした年齢制限のあるトライアル雇用を行う企業もあります。
内容は一般的なトライアル雇用と変わりません。企業側としては、学校を卒業したばかりで職業経験のない人を求めている場合が多いようです。
<求人情報の表記例>
年齢制限の理由 |
長期勤続によるキャリア形成のため若年者等を対象 |
障害者のトライアル雇用
仕事内容によっては、障害者を優先して採用するトライアル雇用もあります。
企業側はトライアル雇用期間中、求職者の仕事に対する適正を見極めると同時に、「毎日通勤することができるか」や「どういったサポートが必要であるか」などを判断します。
<求人情報の表記例>
応募資格 |
障害者限定 (障害の程度は問いません) |
3トライアル雇用で働く
トライアル雇用が決定すると、原則として3ヶ月の期間限定で「お試し」で入社します。
離職期間が長かった人は仕事に慣れるための期間であり、未経験の職種に就いた人であれば知識や技術を身に付ける期間です。
何事にもやる気を持って積極的な姿勢を見せることで、今後も企業に貢献できる人材であることをアピールしましょう。
また、期間中に企業側が設定した技術や知識を習得し、本採用に至るレベルの人材となれるよう努力することも必要です。
4本採用
トライアル雇用期間を経て本採用が決定すると常用雇用となり、正式に正社員として入社します。
もし、本採用とならなかった場合は解雇となり、仕事を続けることはできません。
トライアル雇用で気になるQ&A
トライアル雇用に関して気になる疑問についてご紹介します。
トライアル雇用のメリットは?
トライアル雇用のメリットは以下の2つです。
- 未経験の仕事でも応募できる
- 職場の雰囲気や実際の仕事を体験することができる
未経験の仕事を実際に体験してみることで、雇用された後に「イメージと違った」「こんなはずではなかった」と後悔するのを防ぐことができます。
経験のない職種に就きたい場合は、選択肢のひとつとしてトライアル雇用を検討してみるのも良いかもしれません。
トライアル雇用期間も保険に加入できる?
トライアル雇用でも、健康保険・厚生年金・雇用保険などの社会保険に加入することができます。
ただし、労働時間が短い場合や1週間あたりの就業日数が少ない場合は、社会保険に入れない場合もあります。
必ず雇用される前に確認しておきましょう。
トライアル雇用の採用率は?
ハローワークによると、トライアル雇用を受けた人の約80%が正社員に本採用されています。
雇用当初は職業経験が少なく技能不足であっても、トライアル雇用期間内に企業側が設定した技術や知識を習得できれば、本採用される確率は高まるといえそうです。
※参考→トライアル雇用に応募してみませんか?|厚生労働省・都道府県労働局・ハローワーク
トライアル雇用の面接はどんな内容?
トライアル雇用の面接では、以下のような一般的な質問が聞かれます。
- どうしてこの仕事を選んだのか
- この会社を選んだ理由は?
- どのような仕事がやりたいのか
トライアル雇用期間中、仕事を投げ出さず真面目に学んで技術や知識を身に付けてくれそうな人を選ぶために、企業側は質問の答えと同時に求職者の人間性を見ています。
必要以上に自分を大きく見せようとせず、やる気と誠実さを伝えられるようハキハキと受け答えをするのが良いでしょう。
トライアル雇用の問題点 悪用される場合も?
トライアル雇用のデメリットともいえる問題点についてご説明します。
状況によっては悪用される場合もあるので、しっかり制度について把握しておきましょう。
複数の企業には応募できない
トライアル雇用での応募は一社までと決まっているため、複数の企業に応募することができません。
仕事内容や採用条件を見比べて、入社したいと思う会社に応募するようにしましょう。
助成金目的で悪用される場合もある
トライアル雇用の期間中、企業側には人材を育成する費用として助成金が支給されるため、それを目的としてトライアル雇用を行い、本採用をしない企業もあるようです。
そういった被害に遭わないためにも、面接時に「どういったことを教えてもらえるのか」「どういった技術や知識を習得できれば本採用となるのか」をしっかり聞いておくことが大切です。
トライアル雇用期間終了後、明確な理由なく解雇された場合は、ハローワークに相談しましょう。
まとめ
トライアル雇用は、就職が困難な人や未経験の職種を希望する人にとって、正社員を目指すための選択肢のひとつです。
トライアル雇用の対象となる人は、状況に合わせて検討してみてはいかがでしょうか。