転職の筆記試験で落ちることはある?
求人募集の際に、選考の一環として筆記試験を行う企業は珍しくありませんが、「どんな問題が出題されるのかわからない」「落ちるかもしれない」と不安になる人も多いのではないでしょうか?
この記事では、筆記試験が行われる目的や、試験内容、対策方法について解説します。
転職の筆記試験ができなかったら落ちる?
転職の筆記試験は、点数によってはもちろん不合格となる場合があります。
ただし、選考の中のどのタイミングで試験が実施されるかによって企業側の目的が異なります。
得点率が6割以下だと落ちる可能性も
転職では筆記試験はあまり重視されない傾向にあるものの、得点率6~7割を下回ると業務に必要な知識がないと判断されて不合格になる可能性があります。
また、あまりに得点率が低かった場合は、筆記試験の対策をしてこなかったとみなされ、選考に対する姿勢や意識が低い人物であると判断されてしまう恐れもあります。
加えて、知識や学力を問う筆記試験ではなく、性格検査の結果で「自社が求める人物像とは合わない」と判断されてしまうことも考えられます。
筆記試験の点数をどの程度重視するかは企業や職種によって異なりますが、新卒に比べると中途のほうが筆記試験の重要度が低く、面接重視になる傾向です。
また、いくら筆記試験の点数が高くても、面接で不合格だと判断された応募者に建前上の理由として「筆記試験の得点が低かった」と伝える場合もあります。
【タイミング別】転職の筆記試験の結果の見られ方
筆記試験は実施されるタイミングによって、企業側の目的が異なります。
一次試験での筆記試験
一次試験での筆記試験は、応募者や採用予定数が多い場合に、点数が一定以下の人をふるい落とす目的で行われます。
この場合はまず筆記試験に合格しない限り、面接を受ける機会がないため、応募者にとって重要度が高いといえるでしょう。
面接と同時に行う筆記試験
面接と同時に筆記試験を行う場合、筆記試験の結果と面接の結果を統合して、総合的に判断する目的で行われます。
筆記試験の結果よりも面接での印象やスキルが重視される傾向にありますが、同じようなスキルを持つ応募者が多い場合は筆記試験の点数が低い方が不採用になることもあります。
最終選考での筆記試験
最終選考での筆記試験の場合、応募者の性格や行動の傾向などをチェックする目的で行われます。
特に応募者の性格と職場環境や仕事内容との相性を重視する企業の場合、筆記試験の結果が合否に大きく影響することもあります。
転職者向け筆記試験の内容と対策【問題例付き】
筆記試験にはどのような種類があるのでしょうか。ここでは、出題される内容と対策について紹介します。
適性検査
内容
適性検査は、企業が求める人物像とマッチするかどうかを判断するための検査です。
主に応募者の基礎学力を計る「能力(学力)適性検査」、応募者の性格を調べる「性格適性検査」に分かれており、その2つで構成される「総合検査」も用意されています。
総合検査には、主にリクルートキャリア社が作成した「SPI」と、日本SHL社が開発した「玉手箱」があり、それぞれ出題傾向が異なります。
能力検査では、計算力や語彙力が問われる問題が出題されます。
応募者の得意なジャンルや能力などの見極めや、採用後の部署や配置の参考として利用されることもあります。
時間:70~100分程度
<能力検査の問題例>
【問題】「露骨:婉曲」と同じ関係のものを選びなさい。
- 都合:工面
- 盛大:高揚
- 鮮明:模糊
性格検査では「はい・いいえ」、または「あてはまる・あてはまらない・どちらとも言えない」で答える質問が出題されます。
応募者の性格や人物像を把握する目的で実施されます。
主に「クレペリン」「Y-G性格検査」と呼ばれるものがあり、大企業や官公庁などで実施されることが多いようです。そのほかに「数研式M-G性格検査」「CPI」などもあります。
時間:30~40分程度
<性格検査の質問例>
- 小さなことでもなかなか決断できない
- これまで一度も嘘をついたことがない
- 与えられた仕事は完璧にこなさないと気が済まない
SPI
2019年時点の「SPI」の最新のバージョンは「SPI3」で、数学・理科・国語の分野から出題されます。
数学・理科では基本的な計算問題、倫理的に考えて判断する問題、図表の読み取りなど、国語ではことわざ・慣用句などの語句関連問題、長文読解問題などが出されます。
時間:テストセンターで受験するweb形式で約65分、企業などで受験するペーパーテストで約110分
<SPIの問題例>
【問題】ある品物に、定価の3割引で売っても、原価の5割の利益が得られるように3,000円の定価をつけた。原価はいくらか。
玉手箱
WEBテストで実施されることが多い試験で、言語・計数・英語の分野から出題されます。
言語では長文読解後に付随する設問が論理的に合っているものを選択する問題、計数では四則計算、図表の読み取り、規則性のある表の空欄の推測などが出されます。
時間:30分~70分程度(言語・計数・英語の問題の組み合わせや問題数が企業によって異なるためばらつきあり)
<玉手箱の問題例>
【問題】50×◎÷0.4=25 ◎に入る数値を答えなさい。
対策
能力検査と性格検査では内容が異なるため、それぞれに合った対策方法を行う必要があります。
1能力検査
さまざまな分野がありますが、出題パターンがある程度決まっているため、SPIや玉手箱の問題の傾向に慣れることで合格点をとれる可能性が高くなります。
時間を計りながら練習問題を繰り返し解き、制限時間内に正答率の高い回答ができるようにしておきましょう。
2性格検査
質問の答えに明確な正解はないので、本来の自分の性格が伝わるように正直に答えることが大切です。
中には、言い回しが異なる同じ内容の質問があるので、嘘をついた場合は回答に一貫性がなくなってしまいます。また、面接の回答と大きく異なった場合は不誠実な性格だと判断される可能性があるので注意しましょう。
※適性検査について詳しくは→転職時の適性検査を絶対にクリアするためのポイント
一般常識
内容
一般常識の筆記試験では、基礎的な学力や情報処理能力を測るため、国語・数学・英語・社会・理科の5科目と、文化・時事問題から出題されます。
5科目の出題レベルは、一般的に高校1年生程度ですが、企業によって異なる場合もあります。
時間:30分~1時間程度
<一般常識の問題例>
【問題】作品と書き出しの組み合わせで、間違っているものは次のうちどれか。
- 夏目漱石「こころ」…わたしはその人を常に先生と呼んでいた
- 森鴎外「高瀬舟」…石炭をば早積み果てつ
- 太宰治「人間失格」…私は、その男の写真を三葉、見たことがある
対策
一般常識の対策では、小学校・中学校・高校の教科書で習った基本的な問題や公式を復習しておくことが重要です。
時事問題対策では、最近のニュースを欠かさずチェックするなどして情報収集をしっかり行いましょう。
専門知識
内容
専門知識の筆記試験では、業務上必要なスキルに関する企業独自の問題が出題されます。
経理なら日商簿記3級程度の問題など、業務で必要な資格にまつわる問題が出される場合も多いようです。
時間:30分~1時間程度
<システムエンジニアに応募した場合の問題例>
【問題】読み方について答えなさい。
(1)Perl
(2)nginx
(1)パール
(2)エンジンエックス
<経理に応募した場合の問題例>
【問題】各取引について仕訳しなさい。なお勘定科目は指定の中から選ぶこと。
(1)商品¥10,000を仕入れ、代金は現金で支払った。
(2)商品¥50,000を売上げ、代金は他店振出しの小切手で受け取った。
借方科目 金額 | 貸方科目 金額 |
(1)仕入 10,000 | 現金 10,000 |
(2)現金 50,000 | 売上 50,000 |
対策
異業種に挑戦する場合は、あらかじめその業界や業務内容の勉強をしておくなどの準備をしておきましょう。
同業界・同業種での転職であれば、すでに知識が身に付いていることがほとんどなので、培ってきた経験や知識をそのまま生かせる場合が多いようです。
小論文
内容
筆記試験が小論文であった場合、出題されたテーマや文章に関して、自分の意見を論理的に記述できるかどうかがみられます。
出題されるテーマは、企業によってさまざまです。文章力や構成力の他、漢字がどの程度書けるのかチェックされることもあります。
時間:30分~1時間程度
<小論文のテーマ例>
- 前職での仕事の取り組み方
- なぜこの職種を希望するのか
- 人生で一番感動したこと
対策
小論文は「(1)結論(2)具体的な補足説明(3)結論」の構成で記述するのが一般的に良いとされています。
この構成に則り、制限時間内に決められた文字数で自分の考えを書く練習を繰り返し行いましょう。
日頃からさまざまな物事に対して考えをまとめておくと、スムーズに意見を引き出すことができ、文字数を調整する余裕も生まれます。
コラム:転職に筆記試験があるのは当たり前?
dodaエージェントサービスの調査によると、中途採用で約5割の企業が筆記試験を行っているという結果が出ています。
筆記試験の内容は半数以上が適性検査(能力検査+性格検査の総合検査)で、合否の判断材料として使われています。
また、筆記試験が多い職種は機械・電気の技術職(66%)、化学・食品の技術職(63%)です。これらの職種は専門的な知識やスキルを段階的に、なおかつ長期的に習得する必要があるため、面接だけでは判断しにくい知識や適性を知るために筆記試験が行われています。
ちなみに筆記試験が少ない職種はクリエイティブ系(38%)、医療系専門職(39%)。これらの職種は制作実績やスキル、資格が重視されやすく、筆記試験は必要ないと判断されているようです。
転職の筆記試験におすすめの問題集・対策本
筆記試験で適性検査がある場合は、模擬テスト形式の問題集、一般常識試験がある場合は通勤中など空いた時間にも使える1問1答形式の問題集、小論文がある場合は減点基準について説明されている問題集を使って対策するのがおすすめです。
それぞれの試験対策におすすめの問題集・対策本を以下で紹介します。
適性検査
SPI
『主要3方式<テストセンター・ペーパー・WEBテスティング>対応 これが本当のSPI3だ! 【2021年度版】』
実際の試験に近い問題の設定や解説のわかりやすさで人気があるシリーズです。受験者の報告にもとづいて問題を再現しているので、より実践的な対策ができます。また、性格検査の解説ページもあります。
玉手箱
『必勝・就職試験! 【玉手箱・C-GAB対策用】8割が落とされる「Webテスト」完全突破法[1]【2021年度版】』
Webテストの受検画面を再現したページが人気のシリーズです。制限時間も記載されているので、実際に時間を計りながら本番に近い感覚で問題に取り組むことができます。また、Webテストの形式を把握することにも役立ちます。
一般常識試験
国語・英語・社会・数学・理科のほか、マナーや文化・スポーツなどの一般常識、最新の時事がまとめてあり、幅広い分野をカバーすることができます。1問1答なので空いた時間を活用して効率的に学習することができます。
小論文
小論文の失敗答案から統計的に導いた「減点基準」がわかる1冊です。
減点されるポイントについて修正前と修正後を比較できる形式になっていて、どこをどう直せば良いのかがわかりやすいため、合格ラインを目指すためのコツを取得できるようになっています。
まとめ
転職の筆記試験は企業が応募者に対して、業務に必要なスキルを備えているか、性格や思考が社風に適しているかどうかを判断するために行われます。
主に適性検査・一般常識・専門知識・小論文などがあり、一定の水準に達しなければ不合格となる可能性があります。筆記試験の出題傾向をしっかりと把握し、適切な対策を行うことが大切です。