就職への影響は? 学歴ロンダリングのメリット・デメリット
あまりポジティブな意味で使われることのない「学歴ロンダリング」。「就活に有利」という説もありますが、本当なのでしょうか?
この記事では、学歴ロンダリングの実情をはじめ、メリット・デメリットについて解説します。
学歴ロンダリングとは?
学歴ロンダリングとは具体的にどんなことを指すのでしょうか?
出身大学よりも上のレベルの大学院に進学すること
学歴ロンダリングとは、就活のために自身の出身大学よりレベルの高い大学院に進学することです。例えば、「偏差値58程度の私立大学の卒業生が、就活のために東京大学大学院に入学する」といった場合に使われます。
つまり、「行きたい研究室がある」など前向きな理由で出身大学よりもレベルの高い大学院に進学することは、本来は学歴ロンダリングとはいえません。
しかし、実際にはそういった本人の意思に関係なく、「出身大学よりもレベルの高い大学院に進学した」というだけで「学歴ロンダリングだ」と揶揄されるケースもあるようです。
また、レベルの高い大学院に進学したことを周囲から祝われたときに謙遜の意味で使ったり、自虐的に使ったりすることもあります。
学歴ロンダリングは大学院ロンダリング、学歴ロンダ、院ロンダなどと呼ばれることもあり、海外留学に行くことも含まれます。
学歴ロンダリングは嫌われるのか?
「より知名度の高い大学院に進学し、最終学歴に箔をつけようとしている」というイメージから、出身大学よりも上のレベルの大学院に進学することを「学歴ロンダリングだ」と否定的に見る人も少なくありません。
大学院入試は大学入試よりも受験者数・受験科目ともに少なく、面接もあるため、同じ難関校でも大学院の方が入りやすい場合もあるためです。
よって、一部では「その人の学力では本来受かる可能性が低い難関大学なのに、大学院から入ることで有名校のネームバリューを手に入れた」とネガティブなイメージを持たれることもあります。
また、大学の一般入試を経て大学院に進学した内部生の中には、「就職のために最終学歴を上げるのが目的」「有名大学卒の肩書きが欲しいだけ」と、外部から入学した人を快く思わない人もいるようです。
しかし、東京大学大学院の例を見ると、以下のように外部からの入学生の割合は文系・理系ともに決して少数派ではないのが実情です。
2019年の東京大学大学院の入学状況
このような現状を見ると実際に学歴ロンダリングだからと偏見を持たれたりすることは考えにくく、たとえ一部に偏見を持つ人がいたとしても自分がきちんと学業に打ち込んでいれば気にすることもないでしょう。
※参考:東京大学 大学院学生の入学状況 [令和元(2019)年]
コラム:学歴ロンダリングの由来は「洗濯」?
学歴ロンダリングは「洗濯する」という意味の英語“ロンダリング(laundering)”に由来します。
不正に得たお金の出所をごまかす「マネーロンダリング(資金洗浄)」のように「これまでの学歴をごまかす」といったネガティブな意味で使われることが多いのが実情です。
学歴ロンダリングから派生した類義語に、編入学によって学歴ロンダリングをする「編入ロンダリング」、通信制の学部や通信制大学を卒業して最終学歴のランクを上げる「通信ロンダリング」、より就職に有利な学科に専攻を変える「専攻ロンダリング」などがあります。
学歴ロンダリングは本当に就職に有利?
学歴ロンダリングは文系・理系を問わず、学歴を重視する企業においては就活に有利になると言われています。
確かに、就活では学歴によってセミナーの席数が異なるなどの噂がありますが、それは本当なのでしょうか?
理系の場合
専門知識のある技術者・研究者が重宝される理系の分野では、特に最終学歴を重視する傾向があるようです。そのため、研究開発職においては、学歴ロンダリングで最終学歴を上げることは就職に有利に働くかもしれません。
ただし、当然ながら職種や企業のニーズによって事情は異なります。企業によっては出身学部で評価したり、学歴に関係なく研究内容を重視したり、「大学卒業後は大学院で学ぶことよりも社会に出ることが大事だから」と大学院卒ではなく、4年制大学卒の応募者を優先したりするケースもあるようです。
文系の場合
法律や経済の専門知識が必要な公務員の場合は、学歴ロンダリングが就職に有利に働くこともあるようです。
ただし、文系の場合は専門性を重視しない企業も多いため、必ずしも学歴ロンダリングが有利に働くとはいえないようです。
学歴ロンダリングにデメリットはないの?
場合によっては就職に有利に働く学歴ロンダリングですが、デメリットはないのでしょうか?
研究期間が短く修士論文に苦労する
学歴ロンダリングの場合、大学院から新たな研究室や教授の元で研究を始めることになるため、研究できる期間が内部生に比べると短く、修士論文に苦労しやすいというデメリットがあります。内部生は大学4年生の時に決めたテーマをそのまま大学院でも引き続き研究できるため、修士の1年目では知識量に大きな差が生じることもあるようです。
しかし、研究期間の短さは必ずしも就職に不利な影響を及ぼすわけではありません。就活においては、研究内容をいかに的確にわかりやすく伝えられるかが重視されるため、そういったスキルを身に付けることが大切です。
人間関係の構築に苦労することも
学歴ロンダリングをすると、大学時代の研究室の教授や仲間などの人間関係がリセットされるため、人によっては新たな人間関係の構築に苦労することもあるようです。
内部生であれば、大学院に行っても大学時代からの関係が続く場合もあるでしょうが、外部生の場合はほぼ知り合いがいない状態からのスタートになりがちです。
まとめ
一般的に「就職に有利」というメリットがあると考えられている学歴ロンダリング。
確かに専門性の高い職種ではその傾向があるようですが、企業が新入社員に求めるニーズはさまざまなので、理系・文系ともに確実に学歴ロンダリングが有利に働くとは言い切れないのが実情です。
就活対策として学歴ロンダリングを検討している人は、自分の進みたい分野や企業の実情を入念にリサーチすることをおすすめします。