職種やメリット・デメリット 三交代勤務とは
シフト制の働き方のひとつである「三交代」。三交代制を取り入れている職種や、三交代のメリット・デメリットなどについて解説します。
三交代勤務とはどういう働き方?
三交代勤務とは、具体的にはどのような働き方を指すのでしょうか。
1日を8時間ごとの3つのシフトで交代する勤務形態
三交代勤務とは、1日を8時間ずつに区切り、3つのシフトで交代して働く勤務形態のことを指します。
24時間休まず営業することができるので、主に医療現場や生産ラインの工場、コンビニなどで多く取り入れられています。
3つのシフトは時間帯によって「日勤」「準夜勤」「夜勤」、あるいは「早番」「中番」「遅番」と呼ばれます。
3つのシフトの時間をどのように区切るかは、会社によって異なります。
三交代制の看護師のシフト例
三交代制で働くことの多い看護師を例に、1ヶ月のシフトのモデルケースを見てみましょう。
※それぞれの勤務時間は、日勤(8:00~17:00)・準夜勤(16:00~翌1:00)・深夜勤(0:00~9:00)
夜勤シフトは夜勤手当や深夜割増賃金がつくものの、生活リズムが崩れて体調不良が起こりやすいというデメリットもあります。
業務内容は同じでも、時間帯の違いで給与や健康リスクに差がでるという不公平さをなくすために、一般的にはシフトをローテーションすることが多いようです。
三交代と二交代の違いは?
三交代と二交代の違いは、シフトを区切る時間帯です。
二交代勤務とは1日を「朝から夕方までの日勤」と「夕方から朝までの夜勤」の2つのシフトで働く勤務形態です。
二交代制の夜勤は、休憩や仮眠の時間が設けられているものの、8時間以上の長時間労働が前提になるため、労働者にとっての負担が大きくなります。
一方、二交代制は勤務時間が昼か夜かの2パターンしかないため、三交代制と比べて生活リズムが崩れにくいというメリットがあります。
なお、労働政策研究・研修機構の調査によると、人手不足が原因で二交代制を採用する病院が近年増加しています。
二交代制を採用する病院のおよそ半数で、16時間以上にわたる長時間の夜勤が常態化しており、医療従事者への負担が問題視されています。
※参考:長時間労働につながる2交替制夜勤職場が過去最高に/日本医労連調査(2019年11月22日 調査部)|労働政策研究・研修機構(JILPT)
三交代勤務のメリット・デメリット
働く時間帯を3パターンに区切る三交代には、どのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。
三交代勤務のメリット
三交代制の職場で働くメリットは、以下の3つです。
- 深夜割増賃金や夜勤手当で給料が高くなる
- 残業が発生しにくい
- 日中に役所や病院に行きやすくなる
深夜割増賃金や夜勤手当で給料が高くなる
三交代制の場合、シフトに応じて深夜割増賃金や夜勤手当がもらえるため、日勤のみの働き方よりも給料が高くなります。
準夜勤・深夜勤のシフトがある三交代制の働き方ならではのメリットです。
深夜割増賃金は法律で定められており、22時から翌5時までの時間帯は1時間あたりの賃金が最低25%アップします。
加えて、会社によっては夜勤手当や交代勤務手当が与えられることもあります。
2019年の病院看護実態調査によると、三交代制の看護師の1回あたりの夜勤手当の平均額は準夜勤が4,141円、深夜勤が5,033円でした。
三交代の働き方だと1ヶ月にどれくらい稼げるのでしょうか?
以下で、三交代と日勤のみのそれぞれの働き方でもらえる月給をシミュレーションし、比較してみます。
結論
日勤のみより三交代の方が4万6500円、給料が高くなる
- 三交代制(日勤・準夜勤・深夜勤)の1ヶ月の給与:29万8,500円
- 日勤のみの1ヶ月の給与:25万2,000円
条件
- 時給:1,500円
- 深夜手当:5,000円/1回
- 準夜勤手当:4,000円/1回
- 日勤:8:00~17:00(労働時間8時間、休憩時間1時間)
- 準夜勤:16:00~25:00(労働時間8時間、休憩時間1時間)
- 深夜勤:24:00~9:00(労働時間8時間、休憩時間1時間)
※深夜割増賃金(賃金25%アップ)の時間帯は22時~翌5時
- 日勤、準夜勤、深夜勤の内訳(1ヶ月のスケジュール)は「三交代制の看護師のシフト例」と同じ
三交代制の人の給与計算
●月の総労働時間:168時間
-深夜割増賃金が発生する労働時間:28時間
(準夜勤:2時間×4回=8時間、深夜勤:5時間×4回=20時間)
-それ以外の労働時間:140時間
●深夜割増賃金と諸手当(深夜手当・準深夜手当):8万8,500円
-深夜割増賃金:1,500円×28時間×1.25=5万2,500円
-深夜手当:5,000円×4回=2万円
-準夜勤手当:4,000円×4回=1万6,000円
●それ以外の労働時間分の給料:21万円
1,500円×140時間=21万円
日勤のみの人の給与計算
1,500円×168時間=25万2,000円
このシフトスケジュールの場合、三交代制で働いている人は日勤のみの人よりも4万6,500円多く稼げます。
たくさん稼ぎたい人にとって、夜勤がある三交代勤務はおすすめです。
※夜勤手当について詳しくは→【夜勤手当のすべて】割増賃金との違いから計算方法まで
残業が発生しにくい
三交代制は残業が発生しにくい仕組みになっています。
なぜなら、三交代制は自分のシフトが終わった後、すぐ次のシフト担当者に作業を引き継ぐためです。
残業で引き継ぎの時間が遅れたり、長引いたりすると、次の担当者がスムーズに業務に取りかかれず、24時間営業のためのシフトに空白時間ができてしまいます。
そうならないように、作業が終わっていなくてもすぐに引き継げるような、残業が発生しにくい働き方になっているようです。
ただし実態としては、キリの悪いタイミングで終業することができず、残業せざるを得ない職場もあるようです。
日中に役所や病院に行きやすくなる
三交代制だと、朝や昼の早い時間に勤務が終わる、あるいは平日が休みになることがあるため、日中働いている人よりも役所や病院などに行きやすくなります。
そのためにわざわざ有給を使う必要もありません。
夜勤シフトがあると、その前の日中は休みになる上に、夜勤明けも休みになることが多いため、平日に休みがあたりやすくなります。
なお、休日だと混んでいる観光地やショッピングなども、混雑の少ない時間帯に快適に楽しむことができます。
三交代勤務のデメリット
三交代制には、以下のようなデメリットがあります。
- 生活リズムが崩れやすく体力・精神的にきつい
- 勤務時間の間隔が短くなることがある
- 家族や友人との予定を合わせにくい
生活リズムが崩れやすく体力的・精神的にきつい
三交代制は勤務時間の区分が3パターンあり、食事や睡眠の時間帯が日によって変わるため、生活リズムが崩れやすくなります。
それによってストレスがたまり、心身ともに健康を維持するのが難しくなることも。
三交代の働き方に慣れるまでは、不規則な生活リズムによって体調管理が難しくなるので、ローテーションが体力的にしんどいと感じて、辞めたくなるというケースもあります。
勤務時間の間隔が短くなることがある
三交代制だと、次の出勤までの間隔が短くなってしまうことがあります。
その場合、まとまった時間で休めるわけではないため、十分な休息が取れず、疲れているまま出勤することも。
例えば「日勤の翌日が夜勤」(日勤8時-16時、夜勤24時-8時)だとすると、日勤シフトが終わった8時間後には夜勤シフトで出勤することになります。
二交代制では夜勤の後が休みになるため、丸一日休むことができます。
それに対して、三交代制で勤務時間の間隔が短くなると、帰宅した後に体力を回復させるために寝ることしかできず、遊びに出かけるなどのリフレッシュができません。
家族や友人との予定を合わせにくい
三交代制は勤務時間が毎週異なり、土日が必ず休みになるとは限らないため、日中働いている友人や家族との時間を取りにくくなります。
他の人と生活リズムが異なるため、恋愛や結婚(婚活)がしにくくなるのもデメリットです。
仮に結婚したとしても、生活リズムのズレが配偶者や子どもとのすれ違いにつながることもあります。
それを防ぐために、お互いに積極的にコミュニケーションを取ることが大切です。例えば、「こまめに連絡を取り合う」「休みが合う日は一緒に過ごす」などを実践してみましょう。
コラム:三交代でも健康維持する方法
生活リズムが不規則になりがちな三交代勤務でも、以下の方法で健康の維持を期待できます。
(1)日中の睡眠の質を確保する
(2)栄養バランスが整った食事をとる
(3)シフトの組み方を工夫する
(1)の睡眠は、健康において重要な要素のひとつです。
夜勤の場合、仕事が終わって帰宅するのは昼前になります。疲れていても外が明るいと寝づらく感じますが、遮光カーテンやアイマスク、耳栓などのアイテムを使うことで緩和されるでしょう。
夜勤明けは睡眠を優先するあまり、(2)の食事はどうしても外食やコンビニ食が増えて栄養バランスが偏りがちです。
栄養バランスが乱れがちな夜勤明けの食事は、胃への負担を避けるため、食べ過ぎに気をつけて、消化にいい食事をとるようにしましょう。
(3)のシフトの組み方では、「勤務時間の間隔が短い」「夜勤が連続する」といった状態をなるべく避けることが重要です。
体力的にきついシフトが続く場合は、上司に体調が良くない旨を説明した上で、シフトを調整してもらえないか相談しましょう。
【職種別】三交代の働き方・スケジュール例
三交代では、以下の1週間のスケジュール例のように不規則な働き方になることが多くなります。
三交代を取り入れている職種別に、実際どのような働き方をしているのか、体験談とともに見ていきましょう。
医師や看護師
入院患者を受け入れる総合病院などでは、けが人や病人に常に対応できるように三交代制を採用しているところが多くあります。
他にも、老人ホームなどの介護施設に勤務している介護士でも、三交代制がひろく取り入れられています。
<看護師のモデルケース:夜勤>
勤務時間:0:00~9:00
23:30…自宅を出発
0:00…出勤
0:00~0:30…準夜勤シフトの看護師から交代引き継ぎ
0:30~4:00…病室を巡回
4:00~5:00…休憩
5:00~6:00…病室を巡回
6:00~7:00…起床時間(患者)・点滴交換
7:00~8:30…配膳・食事介助
8:30~9:00…日勤シフトの看護師に交代引き継ぎ
9:00…退勤
9:30~10:30…自宅に到着・朝食・入浴
10:30~17:30…睡眠
シフトによっては休みが連続で取れたり、夜勤の深夜手当がもらえて多く稼げたりします。
しかし、日勤が続いた後に休みなく深夜勤があったり、夜勤が連続で続いたりすると体力的にしんどく、寝不足のまま働くこともあります。
眠いと集中力が続かないので医療事故につながるのでは、という不安が常にあります。また、患者さんの容態が急変すると、休憩や仮眠ができないまま朝までずっと忙しいということも…。
このまま長く続けられるとは思わないので、辞めるか日勤専従にしてもらうか迷っています。
工場勤務者やインフラ系システムエンジニア
工場でも、生産・製造の機械を24時間稼働させるために三交代制を取り入れています。
また、災害などの緊急時に対応できるように、水道・電気・ガスなどのインフラ系企業も三交代制の部署を配置しています。
<工場勤務の人のモデルケース:準夜勤>
勤務時間:16:30~24:30
16:15…自宅を出発
16:30…出勤
16:30~17:00…ミーティング・日勤勤務者から引き継ぎ
17:00~20:00…設計・組み立て
20:00~21:00…休憩
21:00~24:00…設計・組み立て
24:00~24:30…ミーティング・夜勤勤務者への引き継ぎ
24:30…退勤
24:45~1:30…自宅に到着・夕食・入浴
1:30~8:30…睡眠
夕方から勤務が始まるので、けがをしないようにミーティング前に準備体操をします。
業務内容はどのシフトでも大きく変わらないので、働く時間が変わることの影響はありません。
ただし、休憩で夕食をとった後は、単調な作業だと眠気を感じてしまうことも。
機械に巻き込まれるなどの事故が起きないように、同じシフトの作業者と声を掛け合うようにしています。
業務が終わる頃には深夜になっているので集中力が切れてしまいがちですが、退勤するまで気を抜かないようにしています。
深夜勤シフトの人に自分が担当した業務の内容や進捗を引き継ぐ時は、なるべく認識のズレが起こらないように丁寧に報告することを心がけています。
コンビニ店員
一部地域を除き、スーパーやコンビニエンスストアなどの小売店で、24時間営業している店では三交代制を取り入れているところもあります。
<コンビニエンスストア勤務の人のモデルケース:日勤>
勤務時間:7:00~16:00
6:30…自宅を出発
7:00…出勤
7:00~7:30…深夜スタッフから引き継ぎ
7:30~9:00…品出し・検品・陳列
9:00~12:00…レジ対応・商品の補充
12:00~13:00…休憩(昼食)
13:00~15:30…レジ対応・商品の補充・店内掃除
15:30~16:00…準夜勤スタッフへ引き継ぎ
16:00…退勤
16:00~17:00…役所で用事を済ませる
18:00~21:00…友人と食事
朝方は来店者が比較的少ないので、昼のピークをトラブルなく迎えられるように、その間に商品の品出し・検品やカウンターフーズの仕込みなどを行います。
昼のピークが落ち着いた後は、レジはアルバイトの人に任せて、自分は商品の発注やスタッフのシフト作成、売上報告書の作成などの管理業務を行います。
日勤は朝起きるのがつらいだけで、日中働いている会社員より早く仕事が終わります。役所や病院にも行きやすく、仕事終わりに予定を入れやすい働き方だと思っています。
警察官や消防士
警察や消防士などの保安系公務員も三交代制を取り入れていますが、これまで説明した三交代とは異なる勤務時間になります。
警察や消防士の三交代制は、当番日(24時間勤務)、非番日(勤務明け)、公休日(週休日)の3サイクルをローテーションで回しています。
非番日は24時間勤務から明けた体を休めるためのもので、非常時には出勤することもあります。
部署や地域によっては、非番日の後に日勤(8:30~17:15)が入ることもあります。
当番日は24時間勤務になるため、仮眠時間や食事を取るための休憩が設けられています。
会社員のような働き方とは異なり、土日休みということがないため、友人や家族と予定が合わせにくいです。
休憩時間であっても通報があれば現場に向かわなければならず、事件・事故があると休みもなくなるので、プライベートの予定を立てるのが大変になります。
24時間勤務の当番日の後の非番日は、疲れて1日中寝て過ごしてしまいます。しかし、何もトラブルがなければ非番日と公休日で実質2日休めるので、メリハリをつけるためにも、きつくても当番日は頑張ろうと思えます。
まとめ
三交代とは、1日を8時間ごとの3シフトで交代する勤務形態を指します。
主に看護師や工場勤務者などが三交代制で働いています。3パターンのシフトがあるので生活リズムが崩れやすいというデメリットがありますが、給料に深夜手当などが含まれる分、日中働いている人よりも多く稼ぐことができます。
三交代制で働く場合、メリット・デメリットをしっかり理解した上で、健康を損ねないような工夫をしながら取り組むようにしましょう。
(文:転職Hacks編集部)
この記事の監修者
特定社会保険労務士
成澤 紀美
社会保険労務士法人スマイング
社会保険労務士法人スマイング、代表社員。IT業界に精通した社会保険労務士として、人事労務管理の支援を中心に活動。顧問先企業の約8割がIT関連企業。2018年より、クラウドサービスを活用した人事労務業務の効率化のサポートや、クラウドサービス導入時の悩み・疑問の解決を行う「教えて!クラウド先生!®(商標登録済み)」を展開。