実は応募できるって本当? 求人の年齢制限をオーバーしている…

求人票に記載されている年齢制限をオーバーしているために応募を諦めてしまっている人は意外と多いのではないでしょうか?

この記事では、企業が求人募集の年齢制限を設ける理由や、年齢制限が認められているケースなどを紹介します。

求人の年齢制限をオーバーしていたら?

求人募集の年齢制限をオーバーしていたら、応募することはできないのでしょうか。年齢制限に関連する法律や、企業が年齢制限を設けている理由について説明します。

求人の年齢制限を超えていても応募自体は可能

求人募集の年齢制限をオーバーしていても、応募は可能です。企業にとって年齢制限は、応募者をふるいにかけるための目安であることもあり、絶対条件ではありません

そのため、企業の求めているスキルや経験があれば応募を受け付けてもらい、書類選考や面接をしてもらえる可能性はあります。

気になる企業が年齢制限を設けている場合は、人事担当者に年齢制限の理由を聞いて、応募させてもらえないか交渉してみるのも良いでしょう。

また、転職エージェントを利用している場合、エージェントが企業に条件交渉を行ってくれることもあるので、そうしたサービスを利用するのも1つの方法です。

年齢制限は禁止されている

労働施策総合推進法第9条により、企業が労働者の募集・採用にあたり年齢制限を設けることは原則禁止されています。

例えばハローワークでは、年齢を理由に応募を制限したり、職種や雇用形態を限定したりといった不当な年齢制限を設けている求人票は、受理されません

不当な年齢制限を設けている求人を自社ホームページや求人情報誌、求人サイトなどに掲載した場合は違法となります。違反した場合、行政から指導勧告を受けることにもなります。

ただし、年齢制限の理由によっては例外となるケースがあります。詳しくは「求人の年齢制限が認められる理由6つ」で説明します。

企業は本当は求人に年齢制限を設けたい…その理由は?

転職面接をいている画像

法律で禁じられているにもかかわらず、企業が求人に年齢制限を設けたいのは「若い人を採用したい」という理由であることが多いです。

なぜなら、20代の若い人を採用すると「人件費が低く抑えられる」「新しい知識を吸収する意欲がある」「企業の文化になじむ適応力がある」と考えられるからです。

また、「社内の年齢層が若いため、年上の新入社員は敬遠される」といった理由や、「若者向けのサービスや商品を提供しているため、10~20代の趣味嗜好やセンスに理解がある人を採用したい」という理由などで年齢制限を設けていることもあります。

しかし、求人情報に「○歳以上は応募不可」などと記載して年齢制限することは禁止されています。そのため、企業は求人広告などに「20代が活躍している会社です」「社員の8割が20代です」といった内容を記載し、求職者に対して「募集対象は20代である」と遠回しに伝えているのが実情です。

※参考:厚生労働省 労働者の募集及び採用における年齢制限禁止の義務化に係るQ&A

求人の年齢制限が認められる理由6つ

求人募集で年齢制限をすることは法律で禁じられていますが、労働施策総合推進法施行規則第1条の3第1項では、例外として年齢制限が認められているケースを6つ示しています。

年齢制限が認められる6つのケース

  1. 定年の年齢を上限として募集する場合
  2. 労働基準法により年齢制限がある場合
  3. キャリア形成を図るため若者を募集する場合
  4. 特定の職種や年齢層でノウハウを受け継ぐ必要がある場合
  5. ある年齢のモデルや役者を募集する場合
  6. 60歳以上の募集または国の雇用促進施策を活用する場合

※参考:厚生労働省 その募集・採用年齢にこだわっていませんか?

定年の年齢を上限として募集する場合

定年を設けている場合は、定年を上限として募集することができます。ただし、有期契約の場合は対象外です。

<OK例>

  • 定年が65歳の企業が、65歳までの年齢に限定して募集する

<NG例>

  • 定年が65歳の企業が、40歳以上65歳未満の人を募集する。(契約期間6ヶ月)

<NGポイント>

  • 下限年齢が設定されている

2労働基準法により年齢制限がある場合

労働基準法などの法律で、特定の業務に就くために年齢制限が設けられている場合は、法律で定められた年齢に限定して募集することができます。

<OK例>

  • コンビニの夜勤(22:00-5:00)スタッフとして18歳以上の人を募集する。(労働基準法第61条により、22時以降に18歳未満を働かせてはいけないため)

<NG例>

  • コンビニの昼間勤務スタッフを、18歳以上ならOKと募集する

<NGポイント>

  • コンビニの昼間の労働は年齢制限の対象にならない 

3キャリア形成を図るため若者を募集する場合

即戦力を求めず、キャリア形成を目的としてじっくり育てていきたい場合は、できるだけ長く勤務してもらうために若年層の人に限定して募集することができます。

ただし「職歴は不問にする」「新卒社員と同様の待遇にする」「労働契約で期間の定めを設けない」の3つの条件を満たしている必要があります。

 

<OK例>
  • 経験不問で、35歳未満の人を募集する

<NG例> 

  • 〇〇業務経験のある25歳以上35歳未満の人を募集する

<NGポイント>

  • 経験者を募集している
  • 下限年齢が設定されている

4特定の職種や年齢層でノウハウを受け継ぐ必要がある場合

社員の年齢が偏っている企業の場合は、技能やノウハウを受け継ぎやすくするために特定の年齢層を募集することができます。

ただし、労働契約で期間の定めを設けている場合には対象外です。 
年齢制限をしてもよいのは、30歳から49歳までです。5~10歳幅で区切り、前後の年齢層と人数を比較して、半分以下であれば該当する年齢層に限定して募集することができます。

 

【技能・ノウハウ継承のための年齢制限】特定の職種・年齢層が少ない場合、その年齢層に限定した募集・採用が認められる。 35歳~40歳の人数が、30~35歳及び40歳~45歳までの人数のそれぞれ2分の1以下の場合、35歳~40歳に年齢層を限定して募集することができる。

<OK例>

  • 社内のSEが、25~30歳が10人・30~35歳が4人・35~40歳が12人の場合、30~35歳の人をSEとして募集する

<NG例>

  • 社内の営業が、25~30歳が10人・30~35歳が2人・35~40歳が8人の場合、25~36歳の人を営業として募集する

<NGポイント>

  • 「30~49歳まで」の範囲に収まっていない
  • 募集年齢幅も「5~10歳」を超えている

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5ある年齢のモデルや役者を募集する場合

芸術作品のモデルや演劇等の役者の場合は、作品のテーマや真実性を忠実に再現・表現するために任意の年齢に限定して募集することができます。ただし、芸術や芸能の仕事に当たらない場合、年齢制限は認められません。

660歳以上の募集または国の雇用促進施策を活用する場合

60歳以上の高年齢者を募集する場合は、60歳以上に限定して募集することができます。ただし、「60歳以上70歳以下」のように上限を設定することはできません

また、特定の年齢層の雇用を促進する助成金などを活用する場合は、その施策の対象となる特定の年齢層に限定して募集することができます。

<OK例>

  • 60歳以上を募集する

<NG例>

  • 60歳以上65歳未満の人を募集する

<NGポイント>

  • 上限年齢を設定している(ただし、特定求職者雇用開発助成金を活用する場合はOK)

年齢制限をオーバーしていても採用の可能性があることも

年齢制限が認められている求人に対して、自身の年齢が上限をオーバーしていても、先程紹介した6つのケースのうち以下の3つでは、スキルや経験をアピールすることで採用される可能性があります

「定年未満の労働者の募集」「キャリア形成を図るための募集」「ノウハウを受け継ぐための募集」の場合、企業の人員構成のバランスを考慮した年齢制限となるため、業務に必要と認められれば制限を外してもらいやすい背景があります。

(1)定年年齢未満の労働者を募集する場合

求人の年齢制限をオーバーしていても、短期雇用や有期契約としてなら採用される可能性あり。

(2)キャリア形成を図るため若者を募集する場合

(3)特定の職種や年齢層でノウハウを受け継ぐ必要がある場合

スキルがあり、即戦力になりそうなら求人の年齢制限をオーバーしていても採用される可能性あり。

まとめ

求人募集の際に企業が年齢制限を設けることは原則禁止されているので、もし年齢の対象外でも応募すること自体は可能です。

募集内容によって年齢制限が認められている場合もありますが、自身のスキルや経験をアピールすることで採用に至ることもあるので、まずは人事担当者に交渉してみましょう。

この記事の監修者

社会保険労務士

三角 達郎

三角社会保険労務士事務所

1972年福岡県生まれ。東京外国語大学卒業。総合電気メーカーにて海外営業、ベンチャー企業にて事業推進を経験後、外資系企業で採用・教育・制度企画・労務などを経験。人事責任者として「働きがいのある企業」(Great Place to Work)に5年連続ランクインさせる。
現在は社会保険労務士として、約20年の人事キャリアで培った経験を活かして、スタートアップ企業や外資系企業の人事課題の達成から労務管理面まで、きめ細やかにサポートを行っている。
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