由来やランキングも ユニコーン企業とは?定義と国内外の現状
最近耳にすることが多くなった「ユニコーン企業」。定義や由来、日本と海外の現状について解説します。
ユニコーン企業とは?定義と由来
ユニコーン企業とは「評価額10億ドル以上・創業10年以内・未上場のテクノロジー企業」を指す造語です。
創業から短期間で大きな成果を出せる企業が希少であることから、幻獣であるユニコーンの名を冠しています。
著名なユニコーン企業として、日本の「SmartNews」やアメリカの「Uber」、TikTokの運営会社である中国の「Bytedance」などが挙げられます。
ユニコーン企業4つの条件
ユニコーン企業とされる企業の条件として、以下の4つが挙げられます。
1.評価額10億ドル以上
ユニコーン企業は、評価額10億ドル(日本円で約1004億円)以上であることが条件のひとつです。
評価額1000億円台の目安として、日本の企業では、企業のためのカレンダーサービスを提供する「rakumo」や、総合情報サイトやインターネット広告事業を展開する「オールアバウト」などが挙げられます。
評価額とは?定義や算出方法
評価額とは「企業の価値を示す価格」です。
上場している企業は株価を参考に決定されますが、ユニコーン企業は未上場であることも条件のひとつとされており、その場合、同業種の上場企業の評価額を目安に、その会社が持っている預金などが判断材料となります。
評価額は企業や調査機関の独自調査により算出されるものであり、発表期間や調査媒体によって金額が異なります。
2.創業10年以内であること
ユニコーン企業の条件として、創業10年以内であることが挙げられます。
日常的に新しい企業が立ち上がる欧米や中国では、そもそもその約半数以上が5年以内に倒産しています。加えて、存続できた残り半分のうち、10年という短期間で大きな利益を出せる企業はほとんどありません。
評価額のインパクトは大前提として、それを短期間で達成して初めてユニコーン企業と銘打つことができるのです。
※参考:中小企業のライフサイクルP109ー中小企業庁
3.未上場
ユニコーン企業は、未上場の企業に限られています。
創業10年以内、評価額10億ドル以上のテクノロジー企業でも、上場するとユニコーン企業という定義からは外れます。その理由として、上場により株主の利益も考慮する必要性が生じ、経営の自由度が下がることで、新しいことにチャレンジしにくくなるからではないかと言われています。
上場によってユニコーン企業ではなくなった企業として、日本では「メルカリ」が挙げられます。
4.テクノロジー企業
ユニコーン企業と呼ばれるのは、新しい技術を開発したり、ITと既存事業の今までにない掛け合わせをビジネスモデルにしたりといった、いわゆるテクノロジー企業に限られます。
近年はITの発達に伴い、新しく立ち上がる企業のほとんどがテクノロジー企業です。ただし、これはあくまで傾向。他の3つの条件を満たしているのに、テクノロジー企業でないという理由でユニコーン企業から除外されることはないでしょう。
ユニコーン企業の進化系とは?
ユニコーン企業がさらに評価額を上げると、デカコーン企業・ヘクトコーン企業と呼ばれるようになります。
- ユニコーン企業(Unicorn)
→評価額10億ドル(約1000億円)以上
- デカコーン企業(Decacorn)
→評価額100億ドル(約1兆円)以上
- ヘクトコーン企業(Hectcorn)
→評価額1000億ドル(約10兆円)以上
単位の接頭語であり「単一」という意味を持つ「Uni」を、10倍(Deca)にしてデカコーン企業、100倍(Hect)でヘクトコーン企業と呼ばれています。評価額以外の該当条件はユニコーン企業と同じです。
日本のユニコーン企業の現状
日本のユニコーン企業は、外国と比べて数が少ないと言われています。どんな会社があるのか、なぜ日本は外国と比べてユニコーン企業が少ないのか、解説します。
2020年現在:日本のユニコーン企業は7社
2020年9月時点では、日本のユニコーン企業は下記の7社といわれています。
※出典:ユニコーンが7社に。2020年1月国内スタートアップファイナンス動向ーINITIAL
AIによる機械学習や深層学習に特化し、画像認識やデータ解析の技術を開発してる「Prefferd Networks(プリファード・ネットワークス)」が、日本のトップユニコーン企業です。トヨタ自動車、NTT、日立製作所など、名だたる国内企業と次々に提携し、アメリカのインテルやマイクロソフトからも注目されています。
日本ではデカコーン企業、ヘクトコーン企業はまだ出ておらず、インフラ・素材・基礎技術などの技術開発を事業とする企業が続々と伸びています。
NEXTユニコーン?注目が集まっている企業
評価額10億ドルには届かないものの、その一歩手前を意味する「NEXTユニコーン企業」として注目が集まっている企業もあります。
名刺管理サービスを提供する「Sansan」や、クラウドベースの会計ソフトを提供する「freee」など、これまでアナログだった部分をデジタル化するサービスが売上を伸ばしています。
日本でユニコーン企業が少ない理由
2020年6月の調査によると、全世界のユニコーン企業479社のうち半数はアメリカ、4分の1は中国にあります。日本のユニコーン企業は2020年9月時点で7社と、アメリカや中国と比較するとかなり少なくなっています。
その理由としては「起業家の数が少ないこと」「若手起業家の育成が進まないこと」が挙げられています。
起業家の数が少ない
2018年の調査によると、日本は諸外国に比べて起業家の数が少なく、起業する人の割合を示す開業率はたったの4.4%。国によって調査方法が異なり、単純な比較はできないものの、イギリスの13.6%、アメリカの10.3%と比べると、かなりの低水準です。
その背景として、日本人特有の安定志向や失敗を恐れる風土が影響しているのではないかと言われています。
若手起業家の育成が進まない
世界有数の起業家が集まるアメリカのシリコンバレーでは、起業家の平均年齢は30代とされています。しかし日本の優秀な若手の多くは、大企業に就職する傾向が強く、起業する人の約60%が40代以上です。
また、アメリカで注目されている若手起業家をポケットマネーで支援する「エンジェル投資家」が少ないなど、資金のない若手起業家が事業を興しやすい環境も、いまだ発展途上です。
※参考1:The Complete List Of Unicorn CompaniesーCB INSIGHT
※参考2:アメリカで活躍する「エンジェル投資家」の正体ー東洋経済オンライン
海外のユニコーン企業の現状
ユニコーン企業大国といわれるアメリカや、人口が多くビジネスチャンスが豊富な中国、今注目されているインドなど、海外の事情について解説します。
ユニコーン企業大国はアメリカ、中国
※出典:The Complete List Of Unicorn CompaniesーCBINSIGHTS
2020年6月時点では、ユニコーン企業は世界中で479社あります。そのうちアメリカの企業は228社と半分以上、次いで中国が122社。米中2カ国で、世界中のユニコーン企業の73%を占めています。3位以降はイギリス(22社)、インド(21社)、ドイツ(13社)と続きます。
また近年は、韓国が大幅にユニコーン企業数を伸ばしています。米中のベンチャーキャピタル(未上場企業に積極的に投資する投資会社)から出資を受ける企業が増えていることが、背景にあるといわれています。
アメリカのユニコーン企業
※出典:米国ユニコーン企業時価総額ランキングーStrainer
FacebookやTwitterなど、今や世界中で利用されるサービスを生み出してきたアメリカのユニコーン企業。この2社は創業から10年以上経ち、ユニコーン企業の定義からは外れました。
現在のアメリカのユニコーン企業では、タクシー配車サービスの「Uber」、画像検索アプリの「Pinterest」、ファイル共有サービスの「Dropbox」、社内コミュニケーションツールの「Slack」など、世界各国で利用されるサービスを展開している企業が名を連ねています。
なお「Uber」「Pinterest」「Dropbox」はいずれも評価額100億ドル以上のデカコーン企業です。
中国のユニコーン企業
※出典:中国のユニコーン企業が218社に 総時価総額は84兆円ーAFP BB News
中国では、莫大な国内需要を基盤に中国国内で事業を展開しているユニコーン企業がほとんど。
アリババ傘下でオンライン決済サービスを提供する「Ant Financial(アント・フィナンシャル)」は、評価額1500億ドルのヘクトコーン企業です。他にもデカコーン企業として、ライドシェア(相乗り)サービスを運営する「滴滴出行(Didi Chuxing)」、ショート動画投稿アプリの「快手(Kuaishou)」などが挙げられます。
中国のユニコーン企業は、人口約14億人の巨大な国内市場があるため、海外進出している企業はアメリカほど多くないという特徴があります。例外として、中国発のデカコーン企業に、TikTokの運営会社である「Bytedance(バイトダンス)」があります。
まとめ
ユニコーン企業とは、「創業10年以内・評価額10億ドル以上・未上場」のテクノロジー企業のことです。アメリカと中国が数多くユニコーン企業を輩出しており、日本ではSmartNews、アメリカではUberやPinterest、中国ではTikTokの運営会社Bytedanceが代表的です。
日本は「起業家の数が少ない」「若手起業家の育成が進まない」など様々な理由で、ユニコーン企業の輩出数は低水準にとどまっています。