AIによる代替事例を紹介 「10年後もなくならない仕事」の、いま
2013年、オックスフォード大学によって「10年~20年後には47%の仕事がAI(人工知能)に取って代わられる」という衝撃の研究結果が発表されました。
「なくならない仕事」が具体的にどのようなものなのか、その内容と実態を紹介します。
なくならない仕事・なくなる仕事一覧
「これから先もなくならない」とされる仕事と、「今後なくなる」とされている仕事を、それぞれAIの導入事例とともに紹介します。
紹介する仕事は、オックスフォード大と共同研究を行った野村総合研究所の資料を参考にしています。
<なくならない仕事>
- 医療関係の仕事
- 教育・コンサルティング関係の仕事
- エンタメ・クリエイティブ関係の仕事
- 法律関係の仕事
<なくなる仕事>
- 単調なルーティン作業が多い仕事
※参考:日本の労働人口の 49%が人工知能やロボット等で代替可能に |野村総合研究所
10年後もなくならない仕事
オックスフォード大学が予測した、10年後でもなくなっていないとされる仕事を、4つのカテゴリーに分けて紹介します。
医療関係の仕事
医療関係のホスピタリティを提供する仕事は、今後もなくならないと言われています。
なぜなら、AIやロボットでは、患者の身体的・精神的状態を敏感に察知して、臨機応変な対応をすることが難しいからです。
とりわけ精神科など、心のケアが必要な病気は機械では治せず、加えて医療行為は責任重大で人間以外に判断を任すことはできないため、人間が行う医療行為は完全にはなくならないでしょう。
具体的な職業例は以下の通りです。
- 医師
- 看護師
- 介護士
- カウンセラー
- 言語聴覚士・作業療法士
実際に医療現場にAIを導入しようとして失敗した事例があります。
Googleは2016年、視力喪失の要因になっている病気の兆候を見つけるための深層学習システムを開発しました。
しかし、目の画像処理の結果が安定せず、現場の診療方法とうまく調和しませんでした。
診断結果の正確性が向上しない限り、AIが医療行為を行うことはまだ難しいでしょう。
※出典:Healthcare AI systems that put people at the center|Google Health
教育・コンサルティング関係の仕事
都度細かな状況判断が必要な教師やコンサルタントなどの、助言・指導する仕事はなくならないとされています。
教師は担任する子どもたちとコミュニケーションを取りながらそれぞれの個性・適性を考慮して、臨機応変に進路指導や生活指導を行います。
また、コンサルタントは企業の定性的な課題、さまざまな要素が絡み合った複雑な課題を解決することもあるでしょう。
AI・ロボットが得意とする計算や統計処理だけでは、複合的な判断が必要になる生活指導や経営課題解決などはできません。
教育・コンサルティング関連の具体的な職種は以下の通りです。
- 教師
- 保育士・幼稚園教員
- コンサルティング職(例:キャリアコンサルタント、中小企業診断士)
学校教育へのAI導入事例は、倫理的な観点から、教師の役割を完全に代替できているものはまだありません。
2016年の東洋大学の研究によると、AIは学力や感性の育成についてはあくまで補助的にしか使えないとされています。
従って、子どもの学力向上だけでなく、人格形成のサポートも求められる教師のような仕事は、AIに代替されることは考えにくいでしょう。
※出典:人工知能は教師の役割をどう変えるかー教師に求められる役割と倫理ー|特集「教員養成の現状と課題」|東洋大学
エンタメ・クリエイティブ関係の仕事
人間が表現するからこそ価値が生み出されるエンタメ関連の職種や、創造性・独創性が必要なクリエイティブな仕事は、なくならないとされています。
たしかにAIは、既存の要素を組み合わせたアイデアの量産を得意としており、有名作家の作品をそっくりに模倣することもできます。
しかし、とりわけアートの分野では「誰がどのような状況で何を思って生み出した作品なのか」といった作家性も含めた評価がされるため、人ではないAIが生み出した「作品」に、そうした価値を見出すのは難しいという見方もあるでしょう。
また、似たような理由で「生身のその人だからこそのプレー」という身体性に価値があるスポーツ選手、音楽アーティストなども、AIに代替される可能性は低いでしょう。
具体的な職業の例は以下の通りです。
- 映画監督
- 作曲家・演奏家
- 芸術家
- スポーツ選手
- フリーライター・コピーライター
- 学術研究者
AIを映画業界に導入した事例があります。
しかし、AIが執筆した映画脚本をもとにしたロンドンの短編映画「Sunspring」は、意味のあるセリフがなく、突拍子のないストーリー展開であるため、人間が理解できるまでのレベルではありませんでした。
人間が理解できるストーリーを考え、撮影までこなすAIが開発されるには、まだ時間がかかると言われています。
一方、日本経済新聞社は企業決算の要点を自動執筆して配信するAIライティングサービスを導入しました。データを分析して簡単にまとめて記事にすることはAIにもできると証明された事例です。
※出典:
Sunspring – Therefore Films
完全自動決算サマリー by NIKKEI
法的議論をする法律関係の仕事
法的議論をする必要がある職業はなくならないでしょう。
法律を扱う職業は、人同士のトラブルを調停・仲裁し、双方の主張を整理して落としどころを見つける仕事です。
AI・ロボットには、情状酌量する能力や、法律を整備するために民意を汲み取るスキルなどはありません。
具体的な職種は下記の通りです。
- 弁護士
- 検察官
- 裁判官
- 政治家
アメリカでは、法律関係の仕事でAIが導入された事例があります。
これは、過去の判例や裁判で使われた書類を精査したり、テンプレート化された契約書を作成したりするものです。
しかし、AIには肝心の法的議論の部分で、人の感情を考慮することはできません。法律について議論する仕事は、引き続き人間の仕事として残ると考えられます。
※出典:ROSS Intelligence – Legal Tech Corner
今後なくなる仕事
今後なくなるとされている仕事は、専門的な資格やスキルが不要で、単調なルーティン作業が多い仕事と言われています。なぜなら、そうした作業はAIやロボットの方が効率的にこなせるためです。
具体的になくなるとされている仕事とは、以下の通りです。
- 一般事務・コールセンター
- 銀行窓口
- スーパー・コンビニ店員(レジ係)
- ホテルのフロントマン
- 警備員
- 清掃員
- 郵便配達員
- 宅配便配達員
- タクシー運転手・電車の車掌
このうち、すでにAIやロボットによる代替が行われている事例は多くあります。
例えば、旅行会社のH.I.S.グループが展開するホテルでは、ロボットがチェックインなどの窓口業務を担当しています。
この取り組みは「初めてロボットがスタッフとして働いたホテル」として、ギネス世界記録に認定されました。
他にも、大手回転寿司チェーン「はま寿司」では、来店客を席に案内する接客業務をロボットが担当しています。
なくならない仕事に就くためには?
なくならない仕事に転職するためには、普段からどのようなことに気をつけるべきなのでしょうか。2つのポイントを紹介します。
- 世の中のニーズを予測する
- 業種・職種問わずさまざまな経験をする
世の中のニーズを予測する
なくならない仕事に就くためには、社会情勢や世の中のトレンドなどから、これから先どのようなニーズが生まれそうなのか予測する習慣が大切です。
国内外問わず、テクノロジーの進化や労働に関する政策などのニュースをチェックし、ニーズを予測することで、どの業界・職業ならなくならないかを普段から分析します。
そうすれば、転職のタイミングで伸びしろのある会社を効率的に選ぶことができるでしょう。
また、技術革新によって新たな商品やサービスが生まれることで、新しい仕事が登場する可能性があります。
再び技術革新が起きてその仕事が代替されない限り、働き続けることができます。毎日変化する社会情勢やトレンドを敏感に察知できるようになると、なくならない仕事に就ける可能性が高まるでしょう。
業種・職種問わずさまざまな経験をする
なくならない仕事に就くには、今の仕事がなくなってもすぐに転職できるよう、自分の選択肢を広げておくことも有効です。
具体的には、さまざまな業界・職業で経験値を積んだり、スキルを磨いたりすることで可能性の幅を広げることが大切です。
あらゆる分野に柔軟に対応できる人材なら、どの職業に就いても活躍することができます。
また、さまざまな経験を積んでいくことで、業界や世の中のニーズの変化を察知する力が養われ、将来性のある事業・会社を選びやすくなる場合もあります。
将来性のある会社に入れば、そこでの仕事はなくなりにくいと言えるでしょう。
まとめ
なくならない仕事とは、細かな状況判断が必要な医療関係や教育関係・法律を扱う仕事、あるいは独創性が必要なクリエイティブな仕事です。
反対に、単調なルーティン作業になりやすい仕事は、将来的にはAI・ロボットに代替されてしまう可能性が高いでしょう。
自分の仕事がなくなってしまっても時代の変化にすぐに対応できるように、今のうちから将来のニーズを予測したり、資格勉強などを通してさまざまな経験・知識を積んだりしておくようにしましょう。