いくら働けばトクかすぐわかる! 配偶者控除の仕組み徹底解説

年末が近づくにつれ耳にすることが増える「配偶者控除」という仕組みについて、正しく理解できていますか?

「専業主婦が103万円以上働くと損」「130万円に壁がある」といった聞きかじりの知識があるだけで、実はよくわかっていないという人も多いのではないでしょうか。

配偶者控除は、多くの情報が飛び交うわりに全体像がわかりにくいトピックです。この記事では、配偶者控除をわかりやすく解説しながら、配偶者控除で損をしない年収ラインもシミュレーションしていきます。

配偶者控除とは

はじめに、配偶者控除の概要と、どんなときに使われるものなのかを考えていきます。

配偶者控除は、結婚してる人の税金が安くなる仕組み

会社員は毎月の給与やボーナスから、仮に計算した税金が天引き(源泉徴収)されています。そして年末には一年間に支払うべき税金を計算し直し、過不足を調整しています(年末調整)。

税金を計算する際、さまざまな条件によって支払う税金を減らせることを「控除」といい、控除の種類が多い人ほど税金の負担が軽くなります。そのひとつが「配偶者控除」。一定の条件を満たした配偶者(妻や夫)がいると受けられます。

配偶者控除でいくら引かれるかは、配偶者の年収によって変わります。「年収103万円の壁」「年収150万円の壁」「年収201万円の壁」という言葉が配偶者控除とセットで語られることが多いのはそのためです。

会社員の場合、配偶者控除を受けるためには年末調整が必要です。自営業者も配偶者控除を受けられますが、この記事では主に会社員を対象に解説します。

配偶者控除は所得税、住民税で使える

ところで「配偶者控除」という言葉は、税金にまつわるさまざまな場面で登場します。主に以下のとおりです。

税金 所得税 年末調整で勤務先に所定の書類を提出すると、世帯主の所得税・住民税が軽減される
住民税
相続税 亡くなった人の配偶者が一定の基準を満たしている場合、配偶者の相続税・贈与税が軽減される

また、社会保険にも配偶者控除に似た仕組みがあります。税法上の仕組みとは異なり厚生労働省の管轄になりますが、一定の条件をクリアした配偶者の社会保険や年金保険の支払いが免除されるというものです。

2018年に法律が変わったこともあり何かと話題ですので、本記事では所得税、住民税に加えて社会保険の配偶者控除についても解説します。

【所得税】配偶者控除の「103万円の壁」とは?

所得税の配偶者控除は、会社員の夫が世帯主(納税者)、パートで給与収入を得ている妻が配偶者という前提で考えられていますので、このモデルケースで話を進めていきます。

ただし、最近では働き方が多様化していて、夫が会社員であれば、妻が自営業を営んでいても扶養控除の対象となります(自宅での開業、フリーランスでの働き方など)。また、住民税も所得税と考え方はほぼ一緒です。

配偶者の年収が103万円までなら所得税ナシ!

配偶者控除が適用されると、配偶者本人の収入には103万円まで所得税がかかりません

また、納税者の所得から38万円の控除を受けることができ、所得税が安くなります。また、配偶者本人の配偶者控除を受けるためには、控除の対象となる配偶者がその年の年末の時点で、以下の条件すべてにあてはまらなくてはなりません。

※出典:国税庁HP

(1) 民法の規定による配偶者であること。
(2) 納税者と生計を共にしていること。
(3) 給与収入が103万円以下であること(収入が給与のみの場合)。
年間の合計所得金額が48万円以下であること。
(4) 青色申告者の事業専従者として給与の支払いを受けていないこと。
または白色申告者の事業専従者でないこと。

それぞれについて、詳しくは以下で説明します。

(1) 民法の規定による配偶者であること

婚姻届を提出した、法的な配偶者でなければいけません。事実婚や内縁関係は不可。

(2) 納税者と生計を共にしていること。

ただし必ずしも同居している必要はなく、単身赴任などで別居していても生活費が仕送りされていれば同一生計だと認められます。

(3) 給与収入が103万円以下であること(収入が給与のみの場合)。
   年間の合計所得(※)金額が48万円以下であること(株や不動産など不労所得がある場合)。

妻がパートなどで給与を得ている場合、妻の年収が103万円以下なら配偶者控除が適用され、妻は所得税の支払いを免除されます。さらに、夫の所得から38万円が控除されます。これがいわゆる「103万円の壁」です。

一方、妻の収入が給与だけではなく、株式や不動産などの収入があるときは、年間の合計所得が48万円以下であれば配偶者控除が適用されます。

※所得とは、収入から必要経費を引いた金額のこと。給与所得のほか土地やマンションを貸した時に受け取れる不動産所得、株式などの配当所得など。

ちなみに住民税は、一般的に年収が100万円以下(給与収入のみの場合)、もしくは年間の合計所得金額が35万円以下だと妻の住民税が免除されます。住民税については「年収100万円の壁」があるといえるでしょう(ただし市区町村によって基準が異なる場合あり)。

(4) 青色申告者の事業専従者として給与の支払いを受けていないこと。
   または白色申告者の事業専従者でないこと。

会社員の場合はあてはまりませんが、夫が会社を経営していて、そこで働く家族従業員のことを「事業専従者」と呼びます。夫が確定申告(青色申告か白色申告)をしていて、妻がその会社で働き給与をもらっているときは、配偶者控除を受けられません。

コラム:この年結婚退職した人は……

すでに入籍を済ませたが結婚式は翌年に控えているといったケースは、民法上の婚姻は成立しているので配偶者控除を受けられます。

逆に、一年の途中で結婚退職した場合、前の職場での年収が103万円を超えるようであれば配偶者控除が適用されなくなるので注意が必要です。

配偶者控除の申請書類の書き方

配偶者控除を受けるためには年末調整のときに会社へ指定の書類を提出しなくてはいけません。年末調整のときに必要なのは以下の書類です。

令和●年分基礎控除申告書兼給与所得者の配偶者控除等申告書兼所得金額調整控除申請書

給与所得者の基礎控除と配偶者控除、所得金額調整控除の申告を行う書類です。

基礎控除申告書兼給与所得者の配偶者控除等申告書兼所得金額調整控除申請書記入の仕方

【記入内容】

(1)本人(夫・世帯主・納税者)の情報を記入
捺印は基本的にシャチハタ可
(2)給与所得者の基礎控除申告書の欄に記入
合計所得金額の見積もりと、控除額の計算を行い、区分を記載
(3)給与所得者の配偶者控除等申請書の欄に記入
配偶者の情報と、配偶者の合計所得金額を記入し、区分を記入
(4)年収が850万円超2,000万円以下の場合は、所得金額調整控除申告書の欄にも記入

すでに必要以上の所得税が天引き(源泉徴収)されているとき、年末調整することで1~2か月後に多く支払った分の所得税が還付金として振り込まれます。給与に上乗せされていたり、還付金だけが支払われたりと企業によって対応はまちまちです。

企業が支払う家族手当も年収103万円が基準

配偶者控除が適用されるとおトクなのは税金だけではありません。配偶者控除は企業の「家族手当」の支給条件になっているケースが多いため、配偶者控除があるかないかで、家計への影響が大きくなります。

そのため、年末調整が控える年末が近づくと年収を103万円より少なくするため働き控えするケースが増えるのです。

これは年収に含む? 交通費、育休給付金、年金

配偶者控除を考えるとき、年収に加えた方がいいか悩みがちなものがあります。ほんの数万円オーバーしたために配偶者控除が受けられなくなると残念です。一覧にしましたので、チェックしてみてください。

【妻の年収に含まない費用&給付金】

・交通費(1か月15万円を超えた分は、その分だけを年収に含む)
・出産育児一時金
・出産手当金
・育児休業給付金
・年金(雑所得扱いのため、ほかの所得との合計が48万円以下であれば配偶者控除の対象となる)
・雇用保険の求職者給付金

【コラム】配偶者控除と扶養控除の違い

配偶者控除と混同されがちなのが「扶養控除」です。これは、配偶者控除の配偶者を扶養家族に置き換えたもの。子供や高齢の父母など、養っている家族が多いほど所得税や住民税の負担を軽くする仕組みです。

配偶者控除と同じように養われている人の年収が一定額以下なら対象。扶養家族と同居していなくても仕送りなどをしていれば適用されます。

控除額は、主に養われている人の年齢で決まります。控除額は以下のとおり。

種類 年齢 控除額
一般の控除対象扶養親族 16~18歳、23~69歳 38万円
特定扶養親族 19~22歳 63万円
老人扶養親族(同居の親など) 70歳以上 58万円
老人扶養親族(その他) 70歳以上 48万円

このなかでも、19~22歳を対象とする特定扶養控除は、最大の63万円が控除されます。大学や専門学校に通う子供がいる世帯では教育費がかさむため、配慮されているようです。

一方、特定扶養控除を縮小して財源を確保し、返済不要な「給付型奨学金」制度を新設することが議論されています。親の所得が少なくても、大学などで学びたい子どもたちを支援するためです。しかし、公平性を保ちながら制度を変化させるためにはさらなる議論が必要そうです。

【所得税】「150万円・201万円の壁」の配偶者“特別”控除とは?

配偶者控除とまぎらわしいのが「配偶者特別控除」です。「150万円・201万円の壁」ともいわれる「配偶者特別控除」の仕組みは、何がどう違うのでしょうか。

年収103~201万円未満なら所得税はかかるが低税率

妻の年収が配偶者控除の対象となる103万円を超えてしまっても、いきなり高額な所得税の支払い義務が発生するわけではありません。年収201万円未満(所得額が48万円超~133万円以下)なら、配偶者特別控除を受けられます

配偶者控除と配偶者特別控除のイメージ

控除額の一覧は以下をご参照ください。

配偶者特別控除一覧

※出典:国税庁HP

※配偶者特別控除は、夫の所得が1,000万円(給与収入が約1,220万円)を超える年は受けることができません。

申請書類は配偶者控除と同じでOK

配偶者特別控除専用の申請書類はありません。

配偶者控除の時にも使う「基礎控除申告書兼給与所得者の配偶者控除等申告書兼所得金額調整控除申告書」の「給与所得者の配偶者控除等申告書」の欄の欄に必要事項を記載して、勤務先に提出してください。

【社会保険】「106万円・130万円」2つの壁とは?

ここからは、税法上の配偶者控除ではなく、社会保険で配偶者が保険料の支払いを免除される制度について解説していきます。

年収130万円以上なら健康保険&年金を支払う

社会保険では、妻の年収が130万円未満なら健康保険や厚生年金の支払いが免除されます。正確には、夫の健康保険や厚生年金の「被扶養者」になり、各保険料を自己負担せず保障が受けられます。

ただし、週30時間以上働いた場合は、保険料の支払い義務が発生します。

この場合の収入とは、所得税の場合と違って給与収入のほか、交通費や、家族手当・住宅手当などの手当も含んだ合計額になります。

また、この制度は会社員などが加入する厚生年金のみ、国民年金には「被扶養者」の優遇はありません。

2016年の法改正で、大企業では年収106万円で支払い義務!

2016年10月より、法が改正されて、年収106万円(月収8.8万円以上)でも社会保険料の支払い義務が発生するケースが出てきました。これが新たに登場した「年収106万円の壁」です。ただし、年収に加えて以下のすべての条件にあてはまる方が対象となります。

【社会保険/年収106万円の壁に該当する条件】

・勤務時間が週20時間以上
・1ケ月の賃金が8.8万円以上(年収に換算すると106万円)

※1年間すべての月で月収8.8万円を超えると判明した時点で加入義務が発生

・勤務期間が1年以上
・勤務先の従業員(正社員)が501人以上であること
・学生ではない

安易な働き控えに注意! 働き損しない年収シミュレーション

総務省の就業構造基本調査によると、妻がパート勤務である共働き世帯において、妻の年収は「50万円以上100万円未満」が48%でもっとも高かったそうです。さらに、年収150万円未満に9割が分布しているというデータも。

税金や社会保険の負担を避けるため、年収の壁を意識して仕事をセーブするという人も多いですが、せっかく世帯年収をアップできるチャンスを逃していないでしょうか。

そこで、妻の年収がいくらなら、損せず世帯年収をあげられるのか、所得税や住民税、社会保険料の負担も考慮しながら、いくつかのパターンでシミュレーションしていきます。

控除には以下のようなものがありますが、今回のシミュレーションでは「基礎控除」「配偶者控除」「給与所得控除」「社会保険料控除」のみを適用しています。

【控除一覧】

基礎控除(年収2,500万円以下のすべての人が受けられる)年収から16~48万円引ける
配偶者控除(年収1,220万円以下で配偶者の年収が103万円以下だと)13~38万円
配偶者特別控除(年収1,220万円以下で配偶者の年収が201万円以下だと)38万円より少ない金額で変動
扶養控除(16歳以上の子供などがいると)38万円
特定扶養控除(19~22歳の子供1人あたり)63万円
給与所得控除(会社員であれば受けられる)収入に応じて金額は変動
社会保険料控除(健康保険&厚生年金を支払うと)支払額に応じて金額は変動

妻の年収によって世帯年収はどう変わる?

では、世帯年収ベースで考えたとき、妻の年収によって世帯年収はどう変わるのでしょうか。税金や社会保険の負担をふまえながらシミュレーションした結果は以下のとおりです。

妻の年収別 世帯年収シミュレーション

世帯年収に影響するポイントは、社会保険の「年収106万円の壁」「年収130万円の壁」にあるようです。夫の扶養から外れて自分で社会保険に加入すると、世帯年収がぐっと下がってしまいます。もし被扶養者としての恩恵を受けながら世帯年収を最大化したいと考えているのであれば、小規模な会社でのパートなど社会保険を負担しなくて済む妻の年収129万円がおトクだといえるでしょう。

ただし、今、社会保険料の支払いがキツイと思っても、長い目で見れば病気やケガをしたときの保障が手厚くなったり、年金が多く受け取れたりと、生活基盤を安定させられるという面ではメリットも。目の前の負担増だけにとらわれず、世帯のライフプランを長期で考えたうえで働き方を選択することが大切でしょう。

※住民税/標準税率(東京都も同じ)(市民税 3500円、県民税 1500円)
※健康保険料 9.87%(自己負担額は半分)
厚生年金保険料 18.300%(自己負担額は半分)
「令和2年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表」
※復興税は含まず

配偶者控除、これからどうなる?

「配偶者控除の廃止」「夫婦控除」など、たびたびニュースをにぎわすキーワード。来年度は大きな変化はない模様ですが、長い目でみるとさらに変化していきそうです。浮上しているいくつかの変更案をピックアップします。

配偶者控除の廃止は見送り。年収の壁はどうなる!?

ここ数年、政府の税制調査会では、所得税の配偶者控除を廃止しようという案がたびたび浮上しては見送られています。満額の控除を受けようと、妻の年収をあえて103万円以下に抑えている世帯もあり、それが女性の就労を妨げる「壁」になっているという指摘もあるからです。

そこで、2018年度の税制改正では、妻が少しでも年収を増やしやすくするため、配偶者特別控除の年収上限額が141万円から、201万円に引き上げられました控除が満額受けられる額も103万円から150万円に引き上げられています

将来は「夫婦控除」に移行?

配偶者控除が女性の働き方を妨げているとの声を受け、将来は「夫婦控除」に移行すべきだという意見も浮上しています。夫婦控除とは、結婚していれば妻(配偶者)の働き方や年収にかかわらず一定の控除が受けられるというもの

女性も自由に働く時間を増やせる一方、専業主婦世帯からは反対の意見も。配偶者控除の見直しや夫婦控除の導入は、専業主婦世帯が増税になる可能性もあり、子育てや介護に専念していて働けない専業主婦にはとってはメリットが少なくなるということが原因のようです。

まとめ

配偶者控除にまつわる疑問がクリアになったでしょうか?

仕組みが煩雑なだけに、とくに「実際にいくらかかるのか」という計算は難しいですが、知らずに働きすぎてしまったり、逆に働く時間を控えすぎて損をしてしまう可能性もあります。

働き方や夫婦の形が多様化する今こそ、配偶者控除を利用して賢く税金を納めましょう。

※本文中の試算は一例です。実際の金額とは異なる場合があります。この記事では会社員の妻を対象としています。夫が自営業などの場合には結果が異なります。

(文:転職Hacks編集部)

この記事の監修者

社会保険労務士

山本 征太郎

山本社会保険労務士事務所東京オフィス

静岡県出身、早稲田大学社会科学部卒業。東京都の大手社会保険労務士事務所に約6年間勤務。退所後に板橋区で約3年開業し、2021年渋谷区代々木に移転。若手社労士ならではのレスポンスの早さと、相手の立場に立った分かりやすい説明が好評。様々な業種・規模の会社と顧問契約を結び、主に人事労務相談、給与計算、雇用保険助成金などの業務を行う。

山本社会保険労務士事務所東京オフィス 公式サイト

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