昇給がない会社の割合とその理由 「昇給なし」は普通なのか

何年働いても給料が上がらないと悩む方は少なくありません。

昇給なし」はよくあることなのか、昇給がない会社の割合やその理由を解説します。

「昇給なし」は普通?違法じゃないの?

定期昇給なしの会社は2割強

社員数100名以上で定期昇給制度がない会社の割合は、2021年の調査結果で16.9%でした(一般職のみ※)。

制度はあるものの、昇給を中止または延期した会社も合わせると、23.9に上ります。昇給がないのは、決して珍しいことではありません。

※この場合の一般職とは…部長や課長などの組織の管理に従事する管理職以外の常用労働者

【定期昇給の有無 2021年・一般職】 定期昇給制度あり/81.6% |定期昇給制度なし/16.9% |不明/1.5% 〈定期昇給制度ありのうち〉 定期昇給を行った/74.6% |定期昇給を行わなかった/6.4% |定期昇給を延期した/0.6%

※参考:
令和3年賃金引上げ等の実態に関する調査|厚生労働省

なお、定期昇給なし=給与がまったく上がらない、というわけではありません。

定期昇給とは毎年決まった時期に基本給が上がることを意味しており、定期昇給制度がない会社では手当や賞与のほか、基本給が不定期に昇給するところもあります

中小企業は昇給しづらい

中小企業は大手企業と比較すると経営基盤が弱く、社員の給料を上げる余裕がない会社が多いといえます。

2019年の厚生労働省の調査によると、従業員数が少ないほど「定期昇給なし」の企業割合が高くなっており、5,000人以上の企業では8.9%なのに対し、100~299人の企業では16.7%と、2倍近い差が開いています。

ただし、翌年の2020年のデータを見ると、5,000人以上でも「定期昇給なし」の企業が14.7%と増加。昨今の働き方改革などに伴う日本型経営の見直しが行われる中、新型コロナウイルス感染拡大による業績悪化が重なった影響により、定期昇給の制度を見直した企業も少なくないと推測できます。

【従業員数別 定期昇給の有無】(従業員数/2019年/2020年/差): 5,000人以上/8.9%/14.7%/5.8% |1,000~4,999人//8.3%/8.0%/-0.3% |300~999人/15.3%/12.8%/-2.5% |100~299人/16.7%/18.0%/1.3% |計/15.8%/16.1%/0.3%

パートや派遣、契約社員は昇給しづらい

パートや派遣、契約社員は正社員と比べて昇給しづらい傾向があります。厚生労働省による2016年の調査によると、正社員に定期昇給を実施しているのは71.8%、パートに実施しているのは32.3%と大きな開きがあります(※1)。

同じ会社で働いていても、雇用形態によって昇給の有無は異なります

また、派遣で昇給があると答えた人の割合はわずか15.2%(※2)。派遣の場合は契約期間が短いことが多く、採用時の時給から昇給することはほとんどありません。

※1:
平成28年パートタイム労働者総合実態調査|厚生労働省
※2:
平成29年派遣労働者実態調査|厚生労働省

求人や就業規則の記載通りなら違法ではない

就業規則に「昇給なし」の旨が明記されていれば、会社が昇給を行わなくても違法にはなりません。会社に昇給を行う法的な義務はないからです。

ただし、労働基準法では、昇給の有無や昇給を行う時期などについて、就業規則に必ず記載しなければならないと定められています。

記載がない場合、違法の可能性があります。就業規則のほかにも、労働条件通知書や求人票などに明記されている場合もあるので、必ず内容を確認しましょう。

ちなみに、昇給の制度があっても「業績の低下など、やむを得ない事由がある場合は行わない」といった条件が併記されていることもあります。該当する事情があれば、昇給が実施されなくても違法ではありません。

「昇給なし」の理由|そんな会社は辞めるべき?

昇給の有無は会社の業績や慣習、自分自身の成績や評価など、さまざまな要素によって決まります。収入アップを目指すなら「昇給なし」の理由を見極めて、転職を考えるのも選択肢の一つでしょう。

自分だけが「昇給なし」なら原因は自分にあるかも

同期は昇給しているのに自分だけ昇給しなかった場合は、自分の評価がほかの社員と比べて低かったことが理由だと考えられます。

多くの会社では人事評価をもとに、昇給するかどうか、および昇給時の具体的な金額を決めています。

評価が低い理由を上司に確認し、働き方を改善して業績を上げれば、昇給の可能性を高めることができます

昇給の見込みがない場合は転職の検討も

会社に昇給制度がない場合は、昇給のある会社に転職することも選択肢の1つです。そもそも制度自体がなければ、当たり前ですが給料が上がることはありません。

「昇給なし」で働き続けると、長い目で見れば残業代や賞与、退職金の金額にも影響が出てきます。例えば、残業代(時間外手当)は、1時間当たり1.25倍の割増賃金が支払われることになっています。

「昇給なし」で残業し続けた場合と、昇給しながら残業した場合では、基本給だけではなく残業代にも大きな差が開くことになります。

昇給がなく基本給が上がらない代わりに、手当や賞与が多い会社もあります。ただし、手当や賞与は基本給と比べてカットしやすいため、業績悪化などで突然収入が減ってしまう危険性があります。

加えて、退職金も基本給をベースに計算する企業が多いため、基本給が上がらないと退職金の総額もなかなか上がりません。

現在の勤務先に昇給制度がなく転職を考える際には、数年後の収入まで見据えたうえで比較検討するのがよいでしょう。

まとめ

「昇給なし」の会社の割合は約20%と、決して少なくはありません。

最近では年功序列型から成果主義へと賃金制度を変える会社もあり、人事評価が良くない限り、何年勤続していても昇給しないという人は、今後も増える可能性があります。

収入アップを目指すなら、まずは昇給しない原因を探り、業務の改善や転職といった行動に移すのも1つの手です。

(文:転職Hacks編集部)

この記事の監修者

社会保険労務士

三角 達郎

三角社会保険労務士事務所

1972年福岡県生まれ。東京外国語大学卒業。総合電気メーカーにて海外営業、ベンチャー企業にて事業推進を経験後、外資系企業で採用・教育・制度企画・労務などを経験。人事責任者として「働きがいのある企業」(Great Place to Work)に5年連続ランクインさせる。
現在は社会保険労務士として、約20年の人事キャリアで培った経験を活かして、スタートアップ企業や外資系企業の人事課題の達成から労務管理面まで、きめ細やかにサポートを行っている。
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