もう負い目を感じる必要はなし 有給が取りやすくなる4つの準備
忙しくて誰も休まなかったり、上司に理解がなかったりと、「休みづらい」職場は多いもの。でも、会社員として働きながらしっかり有給を取って、趣味のフェスやライブに頻繁に通っている人がいます。
以前は有給取得をためらっていたという会社員の本人さん。堂々と会社を休めるようになったのはなぜでしょう。本人さんが実践する「休むための準備」を教えていただきました。
「有給が取りづらい」というのはただの誤解
有給は労働者の当然の権利。といっても上司や同僚の手前どうにも休みづらい。有給を申請するのに「いい理由」を探してしまう…。
会社員として働きながらしっかり有給を取って、フジロックは皆勤賞、フェスやライブに頻繁に通っていた私も、ずっと「休みづらさ」を感じていた。
就活中に内定先の先輩社員に「フェスで会社を休む?…心象はよくないね」と言われたこともあって、特に新卒から2、3年目くらいまでは有給取得を大いにためらったものだ。週末以外で確実に休ませてくれるGW、お盆、年末年始のありがたさが身に染みた。
しかし、そんな日々から10年以上経って思う。あの悩み、めちゃくちゃ意味なかったわ!
どうしてあんなに遠慮してしまったのだろう。あの頃の自分に「休みづらい雰囲気はただの誤解だから!休みたきゃ休め!」と、肩を揺さぶりながら力強く言ってあげたい。
そして、せめてこの記事を読んでくれる人のために、有給を取りづらいと感じてしまう誤解の正体と、堂々と有給を取るための準備について伝えたいと思う。
【準備1】休む間の仕事のケアは事前にしっかりと
物心ついたときから叱られたくない一心で生きてきた私にとって、有給取得を阻む一番の敵は「休むなんて言ったら会社から何か言われるのでは?」という懸念だった。
しかし結果として、何千日もの社会人生活を送ってこのかた、私は休むこと自体をとがめられたことは一度もなかった。スーツを着る仕事でもオフィスカジュアルが許される仕事でも、はたまた今のリモートワークもそう。業界や勤務体系に関係なくすべてそうだった。
何か注意されたことはあっても、それは休暇で仕事から離れる間のケアや引継ぎ不足、あとは休み明けの気の抜けっぷりなど前後の勤務姿勢についてであって、「休んだこと」を注意された経験は一度もない。そして今もしっかり休みを取っている。
ただし、休む間のケアとして「何かあったときの具体的な対応策」「自分が連絡可能な時間帯」「緊急時に仕事へ戻れるかどうか」は事前共有することをおすすめしたい。
そして休み明けは、リモートワーク下でも元気が伝わるくらいのリフレッシュぶりを示して仕事に復帰しよう。
- 仕事の引き継ぎをしっかりと。休みの間の連絡先などを事前に共有しておく
- 休み明けは元気にリフレッシュぶりを示して復帰するつもりで
【準備2】自分が休むことによる影響を理解する
有給を尻込みしてしまう理由のひとつに、「休んだら周りに迷惑をかけてしまう」という思い込みがある。でも、それは誤解でしかない。
以前は私も会社をナメていた。実際は意外と頑丈だったにもかかわらず。
たとえば同僚の退職が決まったとき、私は「えー! あの人いなくなったら会社回んないよ」と悲鳴をあげたことが何度かあるが、結果としてどの会社も回り続けた。また、急きょ欠勤したチームメンバーの大きな仕事が回ってきて焦ったときも、最終的にはやりとげて今がある。
右も左もわからない新人時代は、「休んだら周りに迷惑をかけてしまう」と自分の有給取得を会社の一大事のように考えた。だが会社にとってルーキーが1日やそこら休んで空く穴など、たかが知れている。
これはルーキーでなくとも同じだ。社員数人の小さな会社であっても、メンバーのひとりが数日休んだからといって潰れることなどまずない。それに、前述したような休暇前の引継ぎができていれば、仕事のフローが淀むこともない。
<遠慮なく休むための準備2>
- 自分一人が休んでも、仕事は淀みなく回ることを知っておく
【準備3】 休む予定はできるだけ早く周囲に伝える
「周りが忙しいのに自分だけ休むのは…」と気が引けてしまうのはよくわかる。でも、それは間違った気の使い方だ。「自分だけ休んだら嫌がられる」と思っているなら、それはやはり誤解でしかない。
もし有給を取ることで周囲にストレスを与えるとしたら、それは、休んだ誰かの仕事が突然振られたなど「予定外のことがカレンダーに追加される」ことで引き起こされるものだ。
だから、あらかじめ予定がわかっているなら、有給の申請以外でまずやるべきは、周囲のメンバーへの休みの予定を共有すること。
朝礼やミーティングなどの場で直接伝える他、カレンダーに印を付ける、「6/10~6/12有給予定」などと社内チャットアプリのプロフィールで宣言するなど、できるだけ早く周囲に自分が休む予定を認識してもらえばいい。
さらに、毎年休むタイミングが決まっているのなら、もう入社時の自己紹介から「旅行が好きで、毎年ゴールデンウィークには有給をつなげて長期の海外旅行に出ます」などと話しておくといい。
自分も「7月最終週は木・金休んでフジロックに行くあの人」と社内で認知されてからは、スムーズに休暇を取ることができるようになった。
<遠慮なく休むための準備3>
- 休む予定が決まったら、あらゆる方法を使ってすぐに周囲に知らせる
- 「毎年この時期は休む人」などキャラ付けして認知してもらう
【準備4】転職も視野に入れておく
もしあなたが休みづらい雰囲気が漂っている会社や、上司が部下の休みを嫌がる職場で働いているとしたら、世の中はそんな職場ばかりじゃないと伝えたい。
冒頭で書いたように、内定先の先輩社員に「フェスで会社を休むなんて…」と言われて社会人になった私だけど、実はその年の夏フェスを存分に謳歌している。なぜならそのエピソードも含め、会社への違和感が色々と見過ごせなくなり、たった3ヶ月で退職してしまったからだ。
これは私の雑な就職活動に問題があるので、簡単に会社を辞めることを勧めているわけではない。それでも私にとってこの経験はよい教訓となり、巡り巡って今はとても働きやすい職場で日々仕事をしている。
コミュニティと同じで、会社への違和感が許容できるものでない場合、最初は小さなものでも最終的には見過ごせないほど大きな心理的負担へと膨れ上がっていく。極端な例だけど、自分の時間を大切にしたい人が、仕事第一主義を美徳とする職場で働くのは不幸なことだ。
一事が万事、有給取得に対するとらえ方ひとつとっても例外ではない。働き方に対する会社の考え方に違和感があるのなら、転職を視野に入れるのもひとつの手ではないだろうか。
<遠慮なく休むための準備4>
- 休みも取れない会社なら、転職してしまえばいいと思っておく
▼「それでも休みづらい…」と思う人へ
休みやすい空気を「作っていく」ことも大切
最後にこんな話を紹介したい。
以前の職場で、創業以来初めて男性社員で育休を取得した同僚がいた。まだイクメンという言葉が生まれるかどうかの頃で「男性でも育休が取れるのか」と自分は思ったが、その同僚が休暇の挨拶をしている時、あるメンバーが「えらい!」と称賛した。
当時、結婚すら考えていなかった私にはピンとこなかった。でも、2児の父となった今、男性社員の育休取得を歓迎するムードを作り出したあの一言が、どれだけありがたいものかがよくわかる。事実その職場では、それ以降、男性社員の育休取得はスタンダードなものとなった。
有給をうまく取るTIPSだけでなく、場の空気自体を変えていくこともまた必要なことだ。躊躇するなかで未消化に終わってしまった私の有給たちのためにも、みなさんが迷いなく休暇を謳歌できるような日が来るのを祈っている。
この記事の執筆者
本人
週末になると各地のフェスやイベントに繰り出し、その様子をレポートするインターネットユーザー。現在はフルリモートのサラリーマン兼2児の父としてステイホーム生活を送る。単著エッセイ「こうしておれは父になる(のか)」(イースト・プレス)発売中。
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