NG例も! 上司に言いやすい有給の理由5選
年次有給休暇(以下、有給)の申請をする際に、多くの人が悩むのがその「理由」。特に、たいした理由もなく休みたい時や有給が取りづらい雰囲気の場合、正直に理由を答えて申請していいものか悩みますよね。
この記事では、有給を取得しやすい申請理由と、墓穴を掘りやすい申請理由の注意点についてご紹介いたします。
前提として有給申請に理由は必要ない
有給休暇は労働者に与えられた「休む権利」であり、どんな理由であっても休むことができるため、有給の理由を会社に伝える必要はありません。
※くわしくは→意外と知らない年次有給休暇にまつわる知識のすべて
理由欄は「私用のため」が一般的
有給申請用紙の理由欄に記入しなければならない場合でも、詳しい理由を書く必要はありません。本当の理由を伝えたくないなら未記入でも問題ありませんが、一般的には「私用のため」と書くのが無難です。
忙しい時期は会社が有給日を変更できる
ただし、申請したからといって必ず有給を取得できるとは限りません。会社側には、忙しい時期なら有給の日程の変更を打診できる「時季変更権」があるからです。
部下の有給、上司はどう思う?
「忙しい時期に休まれたら困る」というのは当然ですが、一方で、会社は従業員の有給取得を推奨する責任も負っています。
そんな中、上司は部下の有給取得をどう思っているのでしょうか。「上司の本音」を知っておけば有給が取りやすくなるはず。ぜひ下記の記事を参考にしてください。
いざという時に使える申請理由
いくら有給の申請に理由はいらないとはいっても、実際には、理解のない上司がいたり、忙しくて誰も有給をとっていなかったりと、有給を申請しづらい職場もあるでしょう。
とはいえ、有給を取りたいがために嘘の申告をするのはリスクが生じます。くわしくは、下の「嘘の理由で申請するのは違法?」の章で解説します。
そのような場合、申告書には「私用のため」と記入し、上司に聞かれた時にうまくごまかせるような理由を作るのが安全です。
その時、比較的スムーズに納得してもらえる理由としては以下のようなものがあります。
- 修理工事、点検
- 役所の手続き
- 家族や親戚の用事
- 病院でのお見舞いや検診
- 生活区域での活動
その具体例をポイントとともにご紹介します。
修理工事、点検
一番差し障りがないのが生活設備などの修理工事や点検。
土日は混雑しており平日でないと都合がつかない場合が多いからです。特に工事は、順番に回ってくるため時間が読めないことが多く、結果として一日休む必要が生じます。
エアコン、水道、冷蔵庫、トイレ、鍵の修理工事
一刻も早く修理しないと生活に支障がでるので、平日修理でもおかしくありません。
何か聞かれても「よくわからないけど急に壊れて大変でした。でも直ってよかったです」と言えば話が終わる程度のもの。当日申請にも使える理由です。
マンションの設備点検
設備点検の立会があるような大規模マンションでは、土日は希望者が多く平日の日中にせざるを得ないということもよくあります。
役所の手続き
ローン申請、印鑑証明、育児関連、引っ越し、納税関連など、様々な場面で使える理由です。役所の場所が遠かったり、複数の手続きが必要だったりと、意外と手続きに時間がかかるのもポイントです。
家族や親戚の用事
自分のためではない用事なので、上司の理解も得やすいはずです。
故郷の両親(義両親)がくる
遠方に実家(義実家)がある場合に有効です。数日間滞在することもあるので、まとめて休みたいときにも有効です。
子供を病院につれていく
小さな子供は、予防接種や定期検診、歯医者、耳鼻科など、体調不良以外でも通院する機会がたくさんあります。子の看護休暇は無給とする会社もあるため、有給を使いたいこともあるでしょう。
土日は予約が取りづらいので平日に行くしかない事情を説明すれば上司も納得してくれるはずです。
法事
四十九日、一周忌、三回忌、七回忌…とあらかじめ時期が決まっているため、前もって申請することが可能です。会社にとっても、仕事のペースや人員などの調整がしやすくなるので、渋られる可能性も低くなります。親戚の法事であれば、そこまでくわしく把握していなくても疑われません。
病院でのお見舞いや検診
病院は平日でないと融通が効かない場合も多いので仕方がありません。ただし、自身や家族が病気の場合は、周囲に心配をかけ余計な詮索をされる可能性があります。
友人、親戚のお見舞い
相手の都合を最優先させるべきなので、平日に行くことになっても不自然ではありません。
人間ドックや検診
歯やがんなど定期検診したほうがよいものにすれば余計な心配をかけなくて済みます。また、人間ドックは値段も安く調整しやすい平日にするのがベター。何か聞かれたときのために病院と金額は調べておいたほうが安全です。
生活区域での活動
学校、マンション、町内会などの活動は平日の日中に開催されることもあり、地域によって時期もバラバラです。また日々の生活に密接した集まりなので欠席しづらい事情があります。
PTAの会合
平日の日中に開催されることが多いので、子供がいる上司ならPTAの大変さを理解してくれるはずです。
マンションの管理組合
管理組合の理事は順番で回ってくるところが多く、理事になると理事会に出席しなければなりません。
基本的には土日や平日の夜開催するところが多いのですが、マンションによっては平日の昼というところも。マンションの近所付き合いも大事なので仕方がないことです。
町内会、自治会の地域活動
地方だと町内会の活動が活発な地域も多く、草むしりや清掃、パトロールなどが当番制で回ってきます。役員になると会合などでさらに仕事が増えることに。こちらも近所付き合いを考えると欠席できないでしょう。
休みを取りやすい状況を作るには?
ここまで、スムーズに有給を取れる「理由」をご紹介しましたが、本来は理由を伝えなくても取得できるのが有給です。
とはいえ、負い目を感じることなく有給を取るためには、普段から休みやすい状況を作っておくことも大切。休みを取りやすくするにはどうしたらいいのか、下の記事にまとめました。
安易に使わないほうが良い申請理由
以下は、有給の際のおすすめとしてよく紹介されている理由ですが、何も考えずに嘘で使うと後々自分の首をしめかねない落とし穴が存在します。
- 結婚式
- 病気、病院
- 葬儀・告別式
- パスポート、免許の更新
- 親の介護
- 子供の学校行事
その注意点を失敗談とともに解説します。
結婚式
結婚式を平日にするのは珍しいので事情を聞かれる可能性が高いです。
「遠方のため」とすることもできますが「どこに行くのか?」などと聞かれたり、現地のお土産を買ってこなければならなくなったりとリスクが大きいです。
病気、病院
体調不良を当日欠勤の理由にするのは問題ありませんが、そう何度も使えません。
また事前に申請すると健康面の心配をされて、その後の報告もしなければならない可能性が出てきます。虫歯や肌荒れなど適度な通院理由がいいでしょう。
葬儀・告別式
うっかり何度も使いがちな理由ですが、忌引き休暇や慶弔規定に関係するので誰の葬儀かなど詳細を尋ねられる可能性が高いため要注意です。
パスポート、免許の更新
更新は一度使ってしまうと、数年は使えません。免許は再発行や違反講習という手もありますが、あまり使うと社会人としての信用も落とすことになります。
親の介護
介護は短期で終わらないことのほうが多く、長期間続けていかなければなりません。安易な気持ちで嘘をつくと危険です。
子供の学校行事
入学式、卒業式、運動会、授業参観など子供の行事は親として大事なイベント。日程や年齢が限られているので本当の時にとっておきましょう。
嘘の理由で申請するのは違法?
ところで、嘘の申告が会社にバレたら懲戒処分になるのでしょうか?
原則としては、有給はたとえどんな理由であっても取得できる労働者の権利なので、嘘の理由で休んでも、会社は有給取消や欠勤扱いにすることはできません。(最高裁昭和48年3月2日判決、林野庁白石営林署賃金カット事件)
しかし取得理由で嘘の記載をしたことにより会社に損失を与えてしまった場合、懲戒処分を下すことができるという判例(東京高等昭和55年2月18日判決、古河鉱業足尾製作所懲戒解雇事件)もあるので、まるっきり嘘で申告するのは避けたほうがいいでしょう。
また、就業規則の中に「虚偽報告は懲戒の対象」とする規定がある場合は当然ペナルティを課せられる可能性があります。また、懲戒処分にならなくても会社での信用を落とす事になりかねません。
まとめ
有給は、どんな理由でも取得できる労働者の権利です。
ただし、嘘で申告してしまうと、たとえ法律的に問題なかったとしてもバレた時のリスクが少なからずあるので、なるべく嘘は使わずにうまくごまかすのが最善の策かもしれませんね。
※それでも有給が取れない場合は→取り方・相談先を解説 「有給が取れない」状態の改善方法とは?
コラム:有給取得率は6年連続上昇中
エクスペディア・ジャパンの「有給休暇国際比較調査」(2021年)で有給取得率が16ヶ国中14位となり世界の中でも有給の取りづらい国として知られる日本。
しかし、日本国内だけで見ると有給取得率は6年連続で上昇しているのです。
厚生労働省「就労条件総合調査」(2021年)によると取得率は56.6%と過去10年間の中で最高の水準を記録しています。
※参考:
厚生労働省「令和3年就労条件総合調査の概況」(公表:2021年11月9日、参照:2022年4月13日)
それでもまだ50%台の低い水準ですが、政府は2025年までに取得率70%を目標としています。
有給を取るのに引け目を感じる必要はありません。堂々と申請してしっかり休みましょう。