退職金なしでも将来安心 40代でも間に合う老後資金の作り方

「退職金で老後の備えを」と考える人は多いはず。でも、2018年の厚生労働省の調査によると、30人以上の従業員がいる会社の19.5%で退職金制度がないそうです。退職金がない会社に勤めている人はどうしたら…?

お話を聞いたファイナンシャルプランナーの横山光昭さん。取材はアクリル板越しに行いました。

そんな不安を解消すべく、家計再生コンサルタントとして2万4000件以上の家系相談を受けてきた、ファイナンシャルプランナーの横山光昭さんに、お話を伺いました。

Q.退職金がありません。老後資金の準備、どうしたらいいでしょう?

大丈夫、問題ありません!ただし、貯金だけで老後資金を準備するのは、なかなか難しいと思います。今あるお金を増やすために、投資に取り組むのがおすすめです。

2019年に話題となった「2,000万円問題」がきっかけで、「自分の老後資金は大丈夫だろうか?」と相談に来る方が増えました。

でも、「2,000万円」はあくまでモデルケース。必要なお金は人によって違います。今回、老後資金がどれくらい必要か試算する方法には触れませんが、心配な人は、ファイナンシャルプランナーなどの専門家に相談するといいですよ。

コラム:老後2,000万円問題とは?

「老後2,000万円問題」とは、金融庁の金融審議会「市場ワーキング・グループ」の報告書を発端に話題となった「老後資金の準備」をめぐる問題。

試算の内容は、65歳以上の夫と60歳以上の妻(共に無職)の世帯では、家計に毎月約5.5万円の赤字が生じるため、老後の30年間で約2,000万円が不足するというもの。

Q.40代以降でも準備は間に合いますか?

大丈夫です!たとえば45歳から60歳まで毎月3万円を積み立てれば、貯蓄額は540万円になります。もし65歳まで積み立てを続ければ、720万円が確保できるんです。

毎月3万円を積み立て投資した場合、仮に年率3%で運用できれば、60歳の時には約680万円、65歳の時には約985万円の資産形成が期待できます。同じ条件で毎月5万円を積み立て投資した場合には、60歳で約1,135万円65歳で約1,640万円となります。

積立投資の効果のグラフ。毎月3万円を積み立てて年率3%で運用した場合、15年後には686万円に、20年後には約985万に。運用しない場合は15年度に約540万、20年後に720万円に。

始めるのが遅くても、しっかり積み立て投資を続けながら、長く働けるようにしていけば老後資金を確保できるはずです。

Q.老後資金を準備する具体的な方法は?

上でもご説明したように投資に取り組むのがおすすめです。といっても、投資にはリスクが伴いますから、リスクをできるだけ抑えて堅実にお金を増やすために、投資信託がおすすめです。

投資初心者の方なら、「iDeCoとつみたてNISAを活用したほったらかし投資」をおすすめします。iDeCo・つみたてNISAで運用商品に「投資信託」を選び、長期的に運用していきましょう。

投資信託は1銘柄で分散投資ができます。どの銘柄に投資するかは自分で選ばなくてはいけませんが、1銘柄に含まれる投資対象とその割合は決まっているので、毎月積み立てをしていれば、あとはほったらかしでいいんです。

しかも、通常、投資で得た利益には約20%の税金がかかりますが、iDeCoとつみたてNISAは運用収益が非課税です。少額から始められるので、初心者でも始めやすいと思います。

iDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金)とは

iDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金)とは。20~60歳未満が加入できる。原則60歳以降の受け取り。受け取り方は1)一時金として一括で。2)年金として分割で。3)一時金と年金の併用の3つ

公的年金にプラスして給付を受けられる、私的年金制度の1つ。月々5,000円から自分自身で掛金を積み立て、運用商品(定期預金・保険・投資信託など)で掛金を運用し、原則60歳以降に受け取る仕組み。運用収益は非課税で、所得控除など節税メリットがある。

つみたてNISA(少額投資非課税制度)とは

つみたてNISA(少額投資非課税制度)。資金運用して10万円の利益が出た場合。つみたてNISAなら受け取れるのは10万円。通常の運用だと8万円。つみたてNISAは運用で得た利益は非課税。利益は全額受け取れる。

少額からの長期・積立・分散投資を支援するための非課税制度。年間40万円を上限として、投資信託などから得た利益が、最長20年間、非課税になる。

Q.投資をする場合、おすすめの商品は?

先進国の市場平均指数に連動している「インデックス型投資信託」を選びましょう。まず、投資信託には「インデックス型」と「アクティブ型」の2種類があります。

インデックス型

投資成果が市場平均指数(例:日経平均株価、TOPIX、米国のS&P500など)に連動するように運用されているファンド。

アクティブ型

ファンドマネージャーが投資商品を選び、株価指数等の動きを上回る投資成果を目標とする運用方法。

アクティブ型は株価指数等を上回る投資成果を目指すため、大きく儲けられる可能性はありますが、その分リスクも大きくなります

そして、投資のプロが商品を選び運用をするので、手数料や信託報酬などのコストが比較的高くなります

一方でインデックス型は経済成長に連動した動きになります。

成長性が見込める先進国の指数に連動した商品を選び、時間をかけて運用すると、複利の効果も加わるので、リスクを抑えながらお金を増やすことができます。それに、市場平均指数に自動連動しているので、運用コストが低い商品も多いんです。

インデックスファンドとアクティブファンドの違い。下記運用方針:リスク:保有コスト。【インデックスファンド】ベンチマーク(日経平均株価など)と連動するように運用:相対的に低い:相対的に低い。【アクティブファンド】ベンチマーク(日経平均株価など)を上回る成果が目標:相対的に高め:相対的に髙い

老後に向けて長期間の運用を前提とした積み立て投資をするなら、先進国の市場平均指数に連動する「インデックス型投資信託」のほうが、リスクを抑えてお金を増やすのに適しています

Q.「ここだけは気をつけて」というポイントは?

なけなしのお金で投資をするのは絶対にNGです!「投資は余剰資金で」が大原則1年分の生活資金は現金で持っておきましょう。

リスクが低い商品であっても、元本割れ(金融商品の評価額が購入代金を下回ること)の可能性がゼロではありません。「リーマンショック」「コロナショック」など、予期せぬ要因により株価が急落するケースもあります。

「投資に絶対はありません」と横山さん。

生活資金まで投資に回してしまうと、急な出費で現金が必要になったときに困ってしまいます。借金をするのもバカバカしいですし、株価が値下がりしたタイミングで投資信託を売却することになれば損をしてしまいます。

まとめ:月1万円ずつでも、まず始めてみましょう

毎月少しずつでも、やるのとやらないのとでは大きく違います。老後の安心のためにも、まず月1万円からでもいいので始めてみてはいかがでしょう。最初は少額から始めて、後から積み立て額を増やせばいいと思います。

金融庁のサイトで、月々の積み立て額と想定利回りを入力すると、どのくらいお金が増えていくのかシミュレーションができます。試しにシミュレーションをしてみると、イメージがつきやすいでしょう。

資産運用シミュレーション|金融庁

20代など早い段階から始めれば、その分、長期間運用できるのは事実ですが、10年あれば投資で老後資金のベースを作れるので、40代以降でも遅すぎることはありません。

取材・文/中村英里(@2erire7

この記事の話を聞いた人

横山光昭

家計再生コンサルタント、株式会社マイエフピー代表。お金の使い方そのものを改善する独自の家計再生プログラムで、家計の確実な再生をめざし、これまでの相談件数は2万4,000件を突破。著書は85万部を超える『はじめての人のための3000円投資生活』など150冊、累計351万部となる。

Twitter|@chokin_myfp