敬語の間違い探し 「お休みをいただいております」はNG?
正しい敬語が使えないと、ビジネスパーソンとしての信用を失ってしまうことさえあります。
「お休みをいただいております」「伺わせていただきます」など、誰もが当たり前のように使っている表現が、実は間違っていることを知っていますか?
この記事では、そんな「実は間違っている」敬語を10個ピックアップしました。何が間違いなのかを理解して、正しい敬語をマスターしましょう。
【間違い1】ご覧になられましたか?
▼正解は
資料はご覧になりましたか?
ワンポイント解説
取引先や上司に、こんなふうに話しかけていませんか?「ご覧になられましたか?」は、二重敬語の典型例。二重敬語とは、同じ種類の敬語を重ねて使うことで、通常は誤りとされています。
〈NG〉
ご覧になられましたか?=ご覧になる(”見る“の尊敬語)+られる(尊敬語)
この他にも尊敬語を重ねた「おっしゃられる(「おっしゃる」+「れる」)」や、謙譲語を重ねた「ご持参する(「持参」+「ご〜する」)」もNGです。
おっしゃられる=おっしゃる(”言う“の尊敬語)+られる(尊敬語)
ご持参する=持参(”持っていく“の謙譲語)+ご〜する(謙譲語)
なお「ご覧になりましたか?」のように、尊敬語「ご覧になる」+丁寧語「ます」と違う種類の敬語を重ねて使うことは二重敬語に当たりません。
「同じ種類の敬語を重ねて使わない」というのが基本ルールです。
【間違い2】 伺わせていただきます。
▼正解は
15時に伺います。
ワンポイント解説
「伺わせていただきます」も間違いやすい二重敬語のひとつです。「伺う」は”行く“の謙譲語。「〜させていただく」も謙譲語です。
〈NG〉
伺わせていただきます=伺う(”行く“の謙譲語)+〜させていただく(謙譲語)
丁寧な言い方をしようとするあまり、二重敬語を使ってしまうケースが多いようです。メールや電話などで、うっかり使ってしまいがちなので注意しましょう。
この場合は「伺います」というのが正解です。謙譲語「伺う」+丁寧語「ます」と違う種類の敬語を重ねて使うのはOKです。
【間違い3】お休みをいただいております。
▼正解は
本日、〇〇は休みを取っております。
ワンポイント解説
取引先からの電話に、ついこのように答えてしまっている人は多いのではないでしょうか。
ですが、休みは取引先からもらうものではなく、自分で取るもの。なので、「いただく」(「もらう」の謙譲語)を使うのは間違いです。
また、お休みの「お」は、一般的には尊敬語または謙譲語とされています。そのため、身内である社内の人の休みに「お」をつけるのは間違いです。
なお、「お休み」を「美化語」(敬語としてではなく、単に言葉づかいを上品にするために「お」「ご」をつけたもの)としてとらえることもできますが、その場合、誤りとは言い切れません。
ですが、美化語という分類が学校教育に登場したのは2007年以降のこと。年配の人は違和感を覚えることが多いので、「お休み」とするのは間違いと覚えておいたほうが無難です。
【間違い4】こちらが資料になります。
▼正解は
こちらが資料でございます。
ワンポイント解説
買い物をしたときなど「お会計は500円になります」という言葉を聞くことがあります。ですが、それは間違いです。
「〜です」というより「〜になります」と言った方が丁寧な言い方のように感じるかもしれませんが、正しい敬語ではありません。
なぜなら「〜になります」というのは、物が変化していく様子を表す表現で、敬語ではないからです。この場合は、「です」の丁寧語「(で)ございます」を使って「資料でございます」と言うのが正解です。
【間違い5】よろしかったでしょうか。
▼正解は
今、お時間いただいてもよろしいですか。
ワンポイント解説
飲食店などで「ご注文は〜でよろしかったでしょうか」という表現を耳にすることが増えました。ですが、これも間違った敬語です。
「よろしかった」は「よろしい」の過去形です。相手に時間を取ってもらえるかどうか確認する姿勢は大切ですが、現時点のことを確認しているのに、過去形である「よろしかった」を使うのは間違いです。
「よろしいですか」と現在形で許可を求めるのが正解なのです。
【間違い6】拝見させていただきました。
▼正解は
企画書、拝見しました。
ワンポイント解説
「〜させていただく」は、「スケジュールを変更させていただきました」など、相手の同意や許可が必要で、そうすることでこちらが恩恵を受ける場合にのみ使える謙譲表現です。
企画書に目を通すのに相手の許可は必要ないので、「見ました」の謙譲語である「拝見しました」を使うのが正解です。
なお、「拝見いたします」という表現もよく耳にしますが、「拝見」は「見る」の謙譲語で、「いたします」は「する」の謙譲語ですから、二重敬語なのでNGです。
【間違い7】上司に申し上げておきます。
▼正解は
上司に申し伝えておきます。
ワンポイント解説
「申し上げる」は「言う」の謙譲語ですから、「上司に申し上げる」は身内である上司に対してへりくだった言い方です。
これでは、社外の人と話しているときに、自分の上司に対して敬語を使っていることになってしまいます。
上司と1対1で話しているのなら、「申し上げます」はOKですが、このように社外の人と話しているシーンではNG。この場合、相手に対する敬語を使うべきで、自分の上司にへりくだった言い方である「申し上げる」を使うのは間違いなのです。
誰に敬意を誰に向けるかで、使う敬語は変わってきます。この場合は、目の前で話している社外の人に対して敬意を向けるべき。
社外の人の前では、「(上司に)言い伝える」の謙譲語である「(上司に)申し伝える」を使うのが正解です。
【間違い8】お客様をお連れしました。
▼正解は
お客様がお見えになりました。
ワンポイント解説
これも敬意を向ける相手を間違った敬語の使い方です。たとえば、会社にいらしたお客様を上司が待つ応接室に案内するような場合に、よくある間違いです。
「(私は)お客様をお連れしました」の主語は話し手です。この場合の「お連れする」は、上司に対して「あなたのところにお連れしました」とへりくだった言い方に当たります。(「連れてくる」に謙譲語の「お~します」をつけて「お連れします」)。
ですが、ここで敬意を払うべき対象はお客様です。ですから、お客様を主語にして「来る」の尊敬語である「(お客様が)お見えになる」を使って上司に報告するのが正解です。
【間違い9】どちらにいたしますか?
▼正解は
どちらになさいますか?
ワンポイント解説
お客様や取引先の人など目上の人に対して、つい「どちらにいたしますか?」と言ってしまうことはありませんか?
「いたします」は「する」の謙譲語で、「する」人が相手に対してへりくだる場面で使うもの。そのため、目上の人に対して「どちらにいたしますか?」と聞くのはNGです。
この場合、「する」の尊敬語「なさる」を使って、「どちらになさいますか?」と敬意を表現するのが正解です。
【間違い10】御社について存じ上げております。
▼正解は
御社について存じております。
ワンポイント解説
「存じ上げる」という表現そのものは間違ったものではありませんが、「御社」に対して使うのは間違いです。
無意識に使っている人も多いと思いますが、「存じ上げる」の「上げる」は持ち上げるべき相手がいるときに使う言葉です。そのため「存じ上げる」を使うのは、その対象が「人」であるときに限られます。会社や物が対象のときは「存じております」が正解です。