すぐに自分も転職すべき? 連鎖退職で職場のみんなが辞めていく…
退職者が多く、人手不足の状態が続いているという場合、連鎖退職が起こっている可能性があります。
この記事では、連鎖退職の原因や、連鎖退職が起こった場合に転職すべきかどうかの判断基準について解説します。
連鎖退職とは?
まずは連鎖退職の意味や原因について解説します。
連鎖退職とは社員が次々と退職すること
連鎖退職とは、一人の社員が辞めたことをきっかけに、次々と退職者が発生してしまう状況を指します。連鎖退職の末、企業は極度の人手不足に陥ってしまうため、最悪の場合は倒産することもあります。
退職理由はさまざまですが、連鎖退職は若手社員からベテラン社員まで、社歴やポジションにかかわらず起こりえます。
連鎖退職は「ドミノ倒し型」と「蟻の一穴型」に分かれる
青山学院大学経営学部教授の山本寛氏の著書『連鎖退職』(日本経済新聞出版社刊)によると、連鎖退職は中小企業やベンチャーで起こりやすい「ドミノ倒し型」と、大企業で起こりやすい「蟻の一穴型」に分かれるといいます。
「ドミノ倒し型」は、業務量に対してギリギリの従業員数で仕事を回していたことから、退職者が出た後の引き継ぎや人員補充をする余裕がなく、さらに負担が増した社員の不満が噴出して連鎖退職につながるケースです。
「蟻の一穴型」は、退職者が出たことによってその企業が抱えていた業務の慣習や人事制度、コンプライアンスなどにまつわる問題が明るみになり、その問題に対する企業の対応に不満を感じた社員が、会社に見切りをつけて連鎖退職していくケースを指します。
連鎖退職が起こる3つの原因
連鎖退職が起こる原因は、大きく分けて以下の3つです。
影響力を持つ社員が退職した
連鎖退職が起こる原因の1つに、社内に影響力を持つ中堅社員や、評価の高い上司や部下の退職が挙げられます。
人望の厚い社員が退職したことで、残された社員が「あの人が辞めたということは、何か会社に問題があるのではないか?」と不信感を抱いたり「信頼できる人がいなくなって、この会社にいる意味がなくなった」と見切りをつけたりするようになるためです。
経営方針が大きく変わった
経営方針や経営陣が変わることに伴い、会社のあり方が大きく変化したなどの理由から、連鎖退職につながる場合もあります。
この場合は「経営方針に共感して入社した」「前の社長や経営陣の考え方を尊敬していた」という会社への帰属意識が高い社員が連鎖退職する傾向があります。
社内のコミュニケーションが希薄化した
同期や上司、他部署とのコミュニケーションが希薄であることが、連鎖退職のきっかけとなる場合もあります。
社内のコミュニケーション不足が常態化してしまうと、社員同士のつながりができにくい、経営陣が何を考えているのかわからない、会社全体の動きが見えないと感じる社員が増えやすくなります。
その結果、社員が「自分はこの会社にいる必要はないのでは?」「この会社にいてもモチベーションが上がらない」と感じ、退職を決断する可能性があります。
連鎖退職が起こるとどうなる?
連鎖退職が起こった場合、どうなってしまうのでしょうか?社員・会社それぞれへの影響を挙げていきます。
【社員】業務量が増え負担が大きくなる
連鎖退職による社員への影響は、人手不足になって引き継ぎ業務や仕事量が増えることです。
「一人では到底こなせないような膨大な業務量を押し付けられる」「『これ以上退職者が出ると困るので、絶対に辞めないように』と会社からプレッシャーをかけられる」など、残った社員の負担があまりにも大きくなってしまうことも。
結果、負担の増した社員が辞め、さらに負担が増す、という負の連鎖に歯止めがかからなくなることもあります。
【会社】倒産のリスクが高まる
連鎖退職による会社への影響は、倒産のリスクが高まることです。連鎖退職で人手不足になると、一部の事業が遂行不可能になったり、収益が悪化したりするため、最悪の場合は倒産してしまうこともあります。
帝国データバンクの調査によると、2019年度に人手不足が原因で倒産した企業は194社で、前年度比14.8ポイントの増加。2013年の調査開始以降、右肩上がりに推移しています。
業種別で一番多いのは「サービス業」の51件(26.3%)。前年度比で増加率が最も高かったのは卸売業で、233.3ポイントの増加となっています。
※参考:
「人手不足倒産」の動向調査(2019年度)|帝国データバンク
連鎖退職が起きたら転職すべき?
職場で連鎖退職が起こった場合「業務量が増えたり、倒産したりする前に転職した方が良いのでは?」と思うこともあるでしょう。そんな時はどう判断すれば良いのでしょうか?
焦って転職すると後悔することも
連鎖退職が起こったからといって、焦って転職する必要はありません。社内の状況や自分の今後の展望などと照らし合わせつつ、通常の転職と同じように慎重に考えましょう。
連鎖退職が起こったときに転職の検討をした方がいい場合と、しばらくは様子見で構わない場合をしっかり見極めることが大切です。
転職の検討をした方が良い場合
- 仕事量が増えて精神的・肉体的負担が大きい
- 経理担当者や管理職などが何人も退職している
連鎖退職による人手不足によって仕事量が増え、あまりにも精神的・肉体的が大きい場合や、経理担当者や管理職といった会社の経営状態をよく知る立場の社員が何人も退職した場合は、早めに転職に向けて動いてもいいかもしれません。
こうした状況に陥っている場合は、心身の健康に支障が出る可能性や、経営状態が悪く近いうちに倒産する可能性が高いためです。
しばらくは様子見で構わない場合
- 自社でやりたいことがある、目指すポジションがある
- 経営陣が再発防止策を実施するなど、誠実な対応をしている
「自社の◯◯の分野にかかわりたい」「出世して◯◯課の課長になりたい」など、自社で達成したい明確な目標がある場合は、すぐに転職せずにじっくり考えましょう。
退職者が出たことで、やりたかった仕事を任されたり、重要なポジションに就ける可能性もあるためです。
また、連鎖退職が起こったことに対して、経営陣が再発防止策を考えるなど、環境の改善に取り組んでいる場合は、様子見をしてもいいかもしれません。
連鎖退職など会社がピンチに陥った時は、経営陣の本性が見えやすくなるタイミングです。
会社にとっての緊急時に、経営陣に対して「残った社員の負担が大きくなっていないか気にかけてくれている」「誠実な対応をしてくれている」と感じられるのであれば、そのまま働き続けるのも良いでしょう。
まとめ
連鎖退職は、人望の厚い社員が退職したことや、会社が経営不振であると感じたことなどを理由に退職者が続出する状態です。
もし自社で連鎖退職が起こった場合は、焦って転職しようとするのではなく、まずは状況をしっかりと見極めた上で行動しましょう。
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