違法?過労死リスクは? 残業100時間の実態は?生活&リスク解説

日本のビジネスパーソンの平均残業時間は月約30時間。しかし実態は見えない部分も多く、長時間労動による過労死や残業代の未払いが問題になっています。

今回は月の残業時間が100時間に及ぶ過酷なケースを想定。続けた場合に生活や心身に及ぼす影響について解説します。

残業100時間の実態

一言に月100時間の残業といっても、なかなか想像しにくいもの。ここではあらゆる角度からその実態を探っていきます。

睡眠時間はわずか。1日の自由な時間はほぼなし

単純計算で月100時間の残業時間を導き出してみると、以下の通りになります。

1日残業 5時間 × 20日以上
 = 100時間超

通常勤務日にほぼ毎回のように5時間の残業をこなしていると、あっという間に100時間に達します。ともすれば知らないうちに超えてしまっていることもありそうです。

では、1ヵ月に100時間残業をした場合の1日の生活サイクルはどのようになるのでしょうか。ある男性サラリーマンを一例に挙げ、タイムスケジュールをグラフにしてみました。

【男性・30歳・営業職・週休2日・所定労働時間9:00~18:00(休憩1時間含む)】

一ヶ月残業100時間の人の一日の生活サイクル

1日のうち自分のために使える時間は、出勤までの2時間と昼食の1時間、家に帰って夕食を食べ、お風呂に入って寝るまでの1時間でトータル4時間ほどです。それも生活していくために最低限必要な時間なので、自由時間とは言い切れません。

子どもや家族との団らんの時間は出勤前にわずかに持てるか否かというところでしょう。帰宅してからテレビを観たり読書の時間を持とうものなら、5時間という決して長くない睡眠時間を削るしかありません。こんな平日を過ごしていると、休日も趣味やレジャーでリフレッシュする気分になれず、ぐったりしてしまいそうです。

残業100時間超の企業は全体の約12%

厚生労働省が企業に対し、1ヵ月の残業時間が最長の正社員は何時間だったのか調査を行ったところ、「80時間超~100時間以下」と答えた企業は10.8%、「100時間超」の企業は11.9%でした。

一ヶ月の時間外労働時間がもっとも長かった正規雇用従業員の時間外労働時間の円グラフ

*出典:「過労死等に関する実態把握のための労働・社会面の調査研究事業」-みずほ情報総研株式会社(平成28年度厚生労働省委託)

健康障害を及ぼすリスクが高まるとされる「過労死ライン(※)」は残業時間80時間。そのボーダーを超えている人が2割以上いる厳しい実態が浮き彫りになったのです。暗黙の了解で社員に残業時間を実際より少なく申告させている会社もあり、潜在的な過労死ライン超えはもっと多いことが考えられます。

※過労死ラインは厚生労働省労が過労死の労災認定基準として設けたもの。
*出典:「脳・心臓疾患の労災認定 『過労死』と労災保険」-厚生労働省

100時間の残業が起こる職場の特徴

残業時間が多くなるのにはいくつかの理由がありますが、労働環境も大きな要因のひとつです。以下に、残業時間が100時間になりがちな職場にみられる傾向について挙げてみました。

1人員不足

リストラなどで大幅に人員が減ったまま慢性的な人員不足に陥り、社員の残業時間超過につながっている会社があります。人員不足は働き手世代が減少する今後、さらに深刻化すると予想されています。

2仕事量が多い

1人当たりに割り当てられている仕事量が個人の能力のキャパシティーを超えている場合、自然と残業時間が増えていきます。高収入の代償として大企業にもありがちなケースです。

3付き合い残業をして当たり前の空気がある

自分は仕事を終えていても上司や同僚が残っていると帰りづらく、ずるずると残業してしまうパターンもあるでしょう。

4クライアントに24時間対応しないといけない

例えば、事故や災害に対応する業務や24時間稼働しているコンピュータシステムの管理など、仕事内容によっては必然的に残業時間で対応しないといけない場合が出てきます。

5長時間労働が評価される雰囲気がある

「残業をしている社員はよく仕事をする」と、上司や社長から評価される昔ながらの風潮が残っている会社も、往々にして社員の残業時間が多くなりがちです。

6社員の入れ替わりが激しい

職場の環境が悪かったり労働条件が合わないなどの理由から退職する人が多く社員が定着しない会社は、仕事のできる人に業務が集中し残業が増えてしまいます。

残業100時間が及ぼすリスク

「若いうちは大丈夫」「自分はタフだから」などとごまかしながら長時間労働を続けている人もいるかもしれません。けれどもそれが100時間にもなると、いつしか心身が悲鳴をあげ、取り返しがつかなくなることもあります。

慢性的な身体疲労やうつを発症するケースも

100時間残業は自分でも気が付かない うちに、じわりじわりと心身をむしばんでいきます。

とくに大きな影響を及ぼすのは、長時間残業による睡眠不足。睡眠は1日の疲れを取るために大変重要ですが、残業が続くと睡眠時間にしわ寄せがきてどんどん削られていきます。休日に寝だめしたところで蓄積された睡眠不足をリカバーすることはできず、結果的に慢性的な身体疲労につながってしまうのです。

また、ストレスのかかる状況が長く続くと、うつ病や精神疾患を発症するリスクが高まります。初期症状は自分で認識しにくく、心の変化は周囲もキャッチしにくいため、病院に行くころには重症化しているケースも少なくありません。

最悪の場合、待っているのは過労死と過労自殺

過度な睡眠不足やストレスが蓄積すると、徐々に体調を崩して最悪の場合は死に至ります。交感神経が興奮状態のまま血圧の上昇などを引き起こし、脳血管障害や重篤な心疾患を発症するという事例も多数報告されています。

うつや精神疾患もそのまま放置していると、自ら命を絶つ過労自殺にもつながりかねません。厚生労働省が発表した働く人の過労死や精神疾患の現状をまとめた白書によると、2016年に過労死や過労自殺(未遂含む)で労災認定された人は191人に上っています。

*出典:「平成29年版過労死等防止対策白書」-厚生労働省

過労死や過労自殺を防ぐため、活躍が期待されているのが産業医です。産業医とは労働者の健康管理を行う専門医で、従業員が50名を超える職場は産業医を選任する必要があります。

週40時間を超える労働がひと月当たり100時間を超え、かつ疲労の蓄積が認められるとき、雇用主は該当者本人の申し出があれば産業医などの専門医師による面接指導を行うことが義務となっています。社員のストレスチェックも2年前から義務化されました。

産業医のいない小さな会社に勤めていても、わずかな不調をやりすごしてはいけません。我慢はせず専門医を頼り、早めにSOSを出すようにしましょう。

コラム:100時間分の残業代の満額支払いは期待薄

100時間残業を行い、残業代を満額受け取った場合はいくらになるのでしょうか。仮に20代のサラリーマンの残業代を1時間1500円程度とすると、100時間分の残業代は約15万円。相当な金額になります。

けれども実際は、みなし残業代だけで超過分は支払っていなかったり、「残業を認めない」と言って実際にはサービス残業を強いていたりと、会社にとって都合の良いように扱うケースも少なくありません。また残業代がかさむと労働基準監督署のチェックが厳しくなることから、支払いを嫌がる会社が多いようです。

残業100時間は違法ではないのか

100時間残業を法律の視点から見るとどうなのでしょうか。もしもに備えて知識を身に付けておくことも大事です。

Q:残業100時間は違法?A:違法です。場合によっては裁判も可能ですので、まずは弁護士や労働組合へ相談しましょう。

実態は黙認されることが多い

労働基準法では、1日の労働時間は8時間、1週間40時間と定められています。会社と労働者の間で36協定が締結されていれば、1ヵ月に許される残業時間の上限は45時間 。つまり、いくら繁忙期であっても月100時間の残業を労働者に課すことは、現在のところれっきとした違法行為にあたるわけです(ただし36協定に特別条項を設けた場合は最大年6回まで月45時間を超える残業が許されます)。

しかし、残業時間が多い会社はすでに恒常化していて、1人で環境を改善するのは非常に困難。みなし残業制を取り入れたうえで、実際にはかなりの残業をしないとこなせない仕事量を課している会社や、タイムカードを定時で押すよう強制され、実態が把握されていないことも多いようです。労働者の権利と会社に100時間分の残業代を正当に申請すると、ボーナスの査定や昇給・昇進に響くなど理不尽な結果を招くことも。

公に訴えるとなるとさらにハードルは高く、行動に移せば会社に居づらくなるのも目に見えているため、あきらめてしまうケースが大半です。

残業代未払いや過労死なら裁判も可能

毎月100時間超の残業を課せられているうえに多額の未払い残業代がある、また長時間残業が原因の過労死や過労自殺と認定されるなど、深刻なケースにおいては裁判に持ち込むことも可能です。

最近では、過労自殺をした電通女性社員の遺族が会社を相手に裁判を起こしました。2017年に行われた初公判で同社社長が起訴内容を全面的に認め、電通に罰金50万円が求刑されたことは記憶に新しいでしょう。

このほかにも大きくニュースに取り上げられた判例があります。

<現役店長が提訴した残業代未払い>

当時、店長の時間外勤務や休日出勤が恒常化していた日本マクドナルド。ある店舗で店長を務めていた男性(当時46歳)が2003年~2005年の未払い残業代である約520万円と慰謝料を求め提訴した(残業時間約1700時間)。

労基法では経営者と一体的立場にある管理監督者には残業代を支払わなくてよいとされているため、男性が管理監督者に当たるのかが争点となったが、裁判官は同社に約750万円の支払いを命じた。

<JR西日本社員の過労死>

長時間労働が原因でうつ病を発症したJR西日本の男性社員(当時28歳)が2015年に自殺。遺族は同社に対して約1億9000万円の損害賠償を求めて訴訟を提起。最長の時間外労働が月254時間に及んでいたにもかかわらず、会社は何の措置も講じず安全配慮義務違反は明らかと、同社に約1億円の支払いを求める判決が下された。

過労死事件では高額の賠償額が命じられることもありますが、裁判を起こすのはたいへんなパワーが必要です。たとえ勝訴となっても同じ会社で働き続けることはできなくなるので、覚悟をもって行動を起こさなければなりません。

まずは弁護士や労働組合へ相談してみる

長時間残業を課せられていることに我慢ができなくなったら、ひとまず専門の弁護士や労働組合に相談してみましょう。会社に労働組合がないときは、1人でも加入できる労働組合(ユニオン)を頼ってみてください。労働局・労働基準監督署、地方自治体の労働相談を利用する手もあります。

その際、証拠として一番有効なのが労働時間の記録。タイムカードや会社の入退館記録をコピーするかスマートフォンで写真を撮っておくとよいでしょう。残業時間の記録に特化したアプリ「残業証拠レコーダー」を活用するのもおすすめ。GPS機能を利用して簡単に会社にいた時間を記録できます。

まとめ

2017年12月現在、政府が推し進めている「働き方改革促進法案」が成立すれば、数年後には労働基準法が改正される予定です。労使協定で青天井となっている「通常予見されることができない業務量の大幅な増加に伴う臨時的な場合」にも残業時間に上限が設けられ、年720時間、月100時間(複数月平均80時間)までとなります。

これはあくまで特例のみであり、決して国が長時間残業を容認するわけではありませんが、働き手から多くの批判の声が上がっているのも確かです。

自分を守るのは自分自身。長時間残業にもその意識をもって臨むことが大事なのかもしれません。

更新日:2018年9月27日
(公開日:2018年1月9日)

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