経験者3人にオンライン取材 派遣社員と正社員どっちが良かった?

派遣社員」と「正社員」、2つの働き方を経験したからこそわかる、それぞれの良さもあるでしょう。

今回、派遣社員の苦悩や正社員との働き方の違いについて、YouTubeなどで情報発信する3名の方に、オンライン取材でお話を聞きました

Case1.けいすけさんの場合

【けいすけさんの仕事年表】■大学時代は授業料の返済で就職活動ができず。■大学卒業後、派遣社員になる。■コロナをきっかけに完全に派遣の仕事がなくなる。■正社員の求人に約80社に応募。ほとんどが書類落ち。■未経験向け転職サイトを利用。面接に進む。■現在は3Dプリンターの会社に正社員として入社、現在に至る

▶YouTubeチャンネル「けいすけ日記

正社員になろうと思ったきっかけ

授業料を払うためバイトに勤しみ、就職活動ができないまま卒業したけいすけさん。当時は一人暮らしの家賃も滞納する状況だったそう。いずれは正社員として就職することを目標に、卒業後は日々の生活費を稼ぐために派遣社員として働きはじめました

そんな中起こった新型コロナウイルス感染症の流行により、派遣の仕事が激減。生活費もギリギリの状態で、給付金を借りながら生活する日々を過ごしました。派遣社員の不安定さを身を以て実感し、正社員で就職しようと今一度思いを強くしました

就職活動について

そこから2019年6月~2021年4月の約2年間、本腰を入れて就職活動を行います。応募総数は約80社その中で面接に進んだのは5社でした

けいすけさん

「書類選考が通らないのが一番の問題でした。ただ途中で、戦う市場を間違えていたことに気づいたんです」

はじめは正社員経験のある人向けの求人サイトを使っていましたが、途中からはハローワークや社会人経験がない人向けのサイトを使用することに。最終的にはブログや副業でのライター経験を買われ、現在はマーケティングの部署でライター兼ディレクターとして働いています。

給料や業務量・残業の変化

派遣社員に比べて、正社員が安定していると言われる所以のひとつに「給与」があります。実際のところどうなのか尋ねると、予想とは異なる返答がありました。

「月給はコロナ前より少し増えたくらいでそこまで変わりません。ただ、保険料や年金を自分で払う必要がなくなったのは良かったことですね」

けいすけさん本人としても、想像よりインパクトは大きくなかった様子。日々のお金の使い方にも、特段大きな変化はないそうです。

また、派遣時代は8~17時勤務でしたが、日当保証があるので15時くらいに上がれる日もあったとのこと。正社員になってからも残業することはないようですが、フルタイムゆえに業務時間は格段に増えたようです

「派遣から正社員に」気持ちの変化

正社員になったことに対して「責任感は芽生えてきました。少なからず、仕事に対するプレッシャーもあります」と語るけいすけさん。

けいすけさん

その一方で、プライベートの時間が減ったことにジレンマもあるとのこと。

「以前は、早く上がれる日や休日はライターの仕事やYouTubeの活動を行っていました。就職した会社も最初は副業OKでしたが、就業規則の変更でそれも難しくなり……」

動画の視聴者の方から、大阪府の労働センターが行う就職支援プログラムを教えてもらい、転職活動にも役立ったと語ります。ライター経験が就職につながったことも含め、情報発信が自分に良い結果を運ぶことを知っているからこそ、正社員になったことによる時間と規則の制約にもどかしさを感じているようです。

正社員になって一番良かったこと

正社員になって一番良かった部分を聞くと、次へのステップアップを視野に入れられる点との返答がありました。

「派遣のままだったら、収入はずっと同じか最悪の場合下がる。単純作業を続けるだけではスキルアップは難しいですよね。

正社員になれば獲得したスキルをもとに、さらなる転職やキャリアアップの可能性も見えてきます。派遣はいつでもできるので、迷っているのであれば、ハローワークや未経験者向けの求人サイト、転職エージェントなど自分にあう手段を使って、正社員として就職するのが良いと思います」

派遣社員時代には、自動車の部品の検品作業を行う日々を過ごしたけいすけさん。並行して続けていたライター経験が実を結んだからこその言葉でした。

Case2.アモさんの場合

【アモさんの仕事年表】■音楽活動をするために状況。■俳優養成所でエキストラの仕事をしつつ派遣で働く。■30歳目前で地元に戻り、モールセンターの正社員に。■賞与をきっかけに退職し再び派遣に。■学歴年齢不問の営業職に正社員として再就職。■再び給料が原因で退職。現在40歳、派遣として働く。

▶YouTubeチャンネル「アモ【Λmo】闇の派遣社員

正社員になろうと思ったきっかけ

高校時代から行っていた音楽活動をきっかけに上京したアモさん。生活費を稼ぐために始めた派遣の仕事は、時給の高さと給与が全額日払いだったことが決め手でした。

その後30歳を目前に地元に戻り、東京でも仕事経験のあったコールセンターの正社員として就職することを決意。タウンワークで見つけた求人に連絡し、面接後すぐに採用されました。

6年ほど働きましたが、お金や人間関係をきっかけに離職。2年ほどで再び派遣社員に。派遣社員である間も「将来的には正社員」という思いがあったそうです。

次に就職したのは、全く別業界の営業職。大手求人サイトで「学歴年齢不問。未経験OK」の会社を探し、見つけたところでした。

給料面の変化

アモさんが正社員として働いた2社は、どちらも給与面では恵まれませんでした

1社目では賞与が支給されず、上司に相談するといつもはぐらかされ、挙句の果てには「金に執着する前に仕事をしろ」と言われたそうです。

「よくよく振り返ってみると、正社員だったのに時給制だったんですよね。今で言うブラック企業だったのかも…」

アモさん

2社目の正社員で就職した会社は実力次第では稼げる「歩合制」でしたが、現実は厳しいものでした

「入社したときの月給は16万円前後。でも業務に慣れて独り立ちすると、固定給が12万円になってしまうんです。インセンティブで稼ぐしかないので厳しくて」

先輩からもなかなか昇給しない現実を伝えられました。

業務量や責任について

6年間勤めた1社目ではリーダー業務も担当。派遣と正社員の両方を経験したことで見えてきた事実がありました。

「派遣でいる代表的な心境に『楽だから』というのはあるんじゃないですか。正社員に比べて責任がすごく重いわけではないですから」

家族の介護や家事など、派遣という働き方を選ぶには様々な理由があります。しかし、アモさんによると、派遣として働いていた人たちの中には「楽に仕事ができるし、ボーナスなどもいらないのでこのままでいい」という人もいたと言います。

派遣から正社員を目指す人へ

最後に、2度の正社員としての就職と離職を振り返り「正社員としての旨味を味わっていないので、気の利いたことは言えないのですが…」と前置きした上でアモさんは語ります。

アモさん

「派遣から正社員になり、幸せになっている人もいます。もちろん給与が良かったり、ボーナスがもらえたりするのは嬉しいことです。業務が多いとか責任が重いとか、しんどいことがあってもその対価に見合うものがあると思います」

様々な理由があって派遣社員で働く人が多いことを知っているからこそ、派遣として働く理由がない人は正社員を目指せばいいとアモさんは話してくれました。

Case3.ナナモモコさんの場合

【ナナモモコさんの仕事年表】アナウンサーを目指し就職活動を行う。地方のラジオ局で学生パーソナリティとして活躍。そのまま正社員として入社。その年の10月に離職。YouTube活動を本格始動。派遣と二足のわらじ。再度就職を決意し、派遣社員で企業のYou Tube担当に。現在はYou Tube活動をメインに業務委託として働く。

▶YouTubeチャンネル「ナナモモコ

過去から現在に至る働き方について

前述のお二人とは異なり、新卒から正社員として働き始めたナナモモコさん。その後アルバイト、派遣社員、契約社員を経験し、現在はフリーランスで働いています。

元々はアナウンサーになることが夢で、学生パーソナリティとして地元のラジオ局でアルバイトを開始し、そのまま正社員として新卒入社しました。

ナナモモコさん

給料面の変化

社会人になりたての当時からYouTubeの活動をしていましたが、本格的に力を入れたいと考え、正社員からアルバイトに。ただアルバイトは、生活するための収入を確保するつなぎという側面が大きかったといいます。

そこから「動画投稿の時間を確保しながら給与面で安定したい」と考え、派遣社員で事務職の仕事を開始。時給は2000円近くで、正社員として働く同級生と比べても、月給換算すると自分のほうが多かったそうです。

「ただ派遣の場合は賞与がないので、年収として考えると低いです。基本的に昇給もないので、いまはよくても30代40代になったらどうかわかりません」

と、長期的な目線で考えたときの懸念点を語りました。

「正社員から派遣に」気持ちの変化

自らの意思で派遣という働き方を選んでいても、正社員の方には理解してもらえないことも多かったと話します。

「『早く正社員になれるといいね』と言われたこともあります。自分はYouTubeをやるための自主的な選択でしたが、なかなか言えず…」

その後、派遣を辞めてYouTube活動に本腰を入れますが、コロナウイルス感染症の流行でステイホームの風潮も強くなり、心身の体調を崩してしまいます。契約社員の仕事は、社会とのつながりを求め、自分のスキルを活かして働けないかと考え応募したものでした。自身のYouTubeチャンネルをポートフォリオにしたところ、選考段階から企業の感触もよかったといいます。

ナナモモコさん

しかし入社後しばらくして、会社と業務内容や今後の方針に折り合いがつかず、一度は辞めることも考えたそう。話し合いの末、現在は同じ会社で業務委託として働いています

フリーランスで働き始めてからは、自己管理が大事だと感じると話すナナモモコさん。悩みながらではありますが、心身ともに今が一番バランスを取れているとのことです。

派遣から正社員を目指す人へ

最後に、派遣から正社員を目指す人に伝えたいことはあるか尋ねてみました。

「自分の心の幸せを一番大事にしてほしい。お金や世間の目にとらわれず、自分の心が満足しているかどうかに耳を傾けて。ただ、やっぱり違うなと思ったら、いつでも辞めたり後戻りしたりしてもいいと思います。どうか無理をせず」

現在進行形で生き方を模索し続けている、ナナモモコさんらしいエールでした。

派遣も正社員も一長一短。自分の状況を踏まえて選択を

派遣社員として働く理由は人それぞれです。今回の取材を通して、正社員による派遣社員への理解のなさによって、憤りや焦りを感じるケースもあることがわかりました。

派遣で働く大きなメリットは時間の融通がきく点です。業務の責任が比較的軽く、心理的にも負担を感じにくいとの意見も。その一方で、スキルアップが難しい点がデメリットと言えそうです。

ただ、正社員のほうが絶対に良いとは言い切れません。月給換算すると派遣のほうが給料が良いケースもあり、賞与や昇給などの恩恵は、長く働き続けることで初めて実感できる部分でしょう。また、会社に問題がある場合は、それを見極めて離職しなければならないこともあります。退職の手続きなどは、派遣先を変えるほど簡単ではありません。

多様化が謳われる現代では、このほかにもさまざまな働き方があります。それぞれの良い点と悪い点を洗い出し、自分の状況を踏まえた上で選択すべきだと感じました。

この記事の執筆者

ライター・編集者

柴田 栞

株式会社クイック

転職Hacks編集部のライター・編集者。履歴書の書き方などの転職に役立つノウハウや、キャリアに関する記事を多数執筆。

同世代の働き方や生き方に「寄り添い、共に悩み、考える」ことをモットーに、読者が「自分らしく」活躍できる仕事や職場を見つけられる助けとなることを目指して活動中。

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