100人中97人はNG!? ベンチャーに転職していい人・ダメな人
ベンチャー企業に転職して成功するのはどんな人なのでしょう。
これまで11000名以上の転職相談を受け、ベンチャー・スタートアップへの転職支援を専門に行う株式会社キープレイヤーズ代表・高野秀敏さんにお話を聞きました。
100人中97人はベンチャー転職をおすすめできない
高野秀敏さん(以下、高野):いきなり厳しいことを言うようですが、これまで多くの転職相談を受けてきた肌感覚で言うと、ベンチャー転職をおすすめできるのは100人中3人くらい…というのが率直なところです。
損失回避性といって、人はもともと損失や失敗を恐れる傾向があるため、ほとんどの人はベンチャー志向を持っていません。これは日本人に限った話ではなく、海外のエリートも同様にベンチャーよりも政府や大手企業への就職を選ぶ人が多数派なのです。
誰でも新しいことに挑戦するときは不安なもの。転職に不安を感じるのは当然ですし、ベンチャー転職となればなおさらでしょう。それでも挑戦しようという姿勢はすばらしいのですが、もし「ベンチャーに転職して失敗したらどうしよう」と考えているのなら、今すぐ考え直してください。
ベンチャーに転職してうまくいくのは、不安やリスクを感じながらも「成功するためにはどうしたらいいか」という視点で物事を考えることができる人。失敗したときのことを考えて悩んでしまうタイプの人は、残念ながらそもそも適性がありませんし、本当に失敗したときのダメージが大きいのでベンチャー転職はおすすめできません。
ベンチャーで活躍できる人の2つの条件
高野:では、ベンチャーに転職して活躍できる人、つまりベンチャーに転職してもいいのはどんな人かと言えば、大きく次の2つの条件があります。
条件1|結果にコミットする人
長期的な視点で業務に取り組める大企業と違い、ベンチャーは短期間で結果を出していくことが求められます。会社の事業を成長させるために、経営者はもちろん、社員も前のめりになって必死で挑戦していかなければなりません。
そのため、自らオーナーシップをもって仕事を創り出し、とことん結果にコミットすることがベンチャーでは最も求められるのです。
条件2|柔軟性があり、素直な人
ベンチャーは変化のスピードが速く、社員が果たすべき役割も時によって変わります。そのため、自分がやりたい仕事や専門性を持った業務以外はやりたくないという人はベンチャーには向いていません。
分業化が進んでいる大企業とは違い、ベンチャーでは同時に違うタイプの仕事をいくつもこなさなければならないこともあります。そのため、環境や役割の変化に柔軟に対応できる人、前職で学んだことや、それまでの自分のスタイルにこだわらずアンラーン(学び直し)できる素直な人が求められるのです。
あらゆる業務にアグレッシブに挑戦し、仕事を貪欲に楽しめる人がベンチャー向きと言えるでしょう。
起業を考えているならベンチャーはおすすめ
年収が下がってもベンチャーで働く目的があるか
高野:上の2つの特性を持っていることに加えて、なぜベンチャーに転職したいのか、その明確な目的があるかどうかも重要です。
そもそもベンチャー転職では年収が下がるケースが大半です。給料は事業規模によってある程度決まってしまうので、ベンチャーでは高い年収や手厚い福利厚生を用意することが難しいのです。
特に現在、大手企業に勤めている人は、転職市場で評価される実際の価値よりも高い年収をもらっている人が多いと思います。そのため、人によってはベンチャーに転職することで年収がそれまでの半分とか3分の1まで下がってしまうことがあります。
もちろん会社が大きく成長すれば年収や待遇はよくなっていきますが、そうなるまでにはある程度の時間がかかります。自分の力で給料やポジションを掴み取りたいという人はいいですが、年収や待遇を重視する人は転職しないほうがいいかもしれません。
経営者と近い距離で仕事ができるのはメリット
高野:一方、ベンチャーのメリットは若くして圧倒的に幅広い仕事を任されること。そもそも人が少ないので、何でも任されますし、自分の担当分野は自分が責任者として舵取りをしなければなりません。当然、ゼロから仕事を創出することも求められます。そんな環境の中で、会社とともにスピーディに成長できるのはベンチャーならではの魅力です。
また、経営者と近い距離で仕事ができるのも大きなメリットです。大企業では30〜40代からマネジメントをする立場になるのが一般的ですが、ベンチャーは組織規模が小さいため、20代のうちから重要な意思決定に関わることもあります。
事業や会社の戦略、日々の戦術まで、経営者とさまざまな議論ができるのはベンチャーならではのメリットと言えるでしょう。経営者の仕事を間近で見ることができるので、将来起業を考えている人にはおすすめです。
起業したい人だけでなく、実力をつけてフリーランスとして働きたいなど、明確な目的があるのならぜひベンチャーに来ていただきたいです。自分のキャリアを俯瞰して、なぜベンチャーに入りたいのか、どんな目的のためにベンチャーに転職するのか考えてみてください。
ベンチャー転職のベストタイミングは?
できれば20代で転職したほうがいい
高野:これはベンチャーに限ったことではありませんが、若いほうが転職しやすいのは間違いありません。特に、高い年収を用意できないベンチャーでは若手を歓迎する傾向が強いです。
もちろん30代、40代でもベンチャー転職は可能ですが、求められるスキルセットが高くなります。たとえばベンチャー未経験の30代がベンチャーに転職するとなると、前職でそれなりの結果を出していることが求められるのです。
ですが、分業が進んでいる日系の大手企業などでは、20代のうちにそのような結果を出せる仕事はほとんどありません。
ベンチャーで挑戦したいならできるだけ早いタイミングで、できればポテンシャル採用が可能な20代のうちに転職したほうがいいと思います。
「これができるようになったら…」では遅い
高野:いちばんダメなパターンは「これができるようになってから転職しよう」と考えてしまうこと。その会社で身につけた仕事のやり方は、別の会社では使えないことがほとんどです。「これができるようになったら…」と身につけたものが、転職によってリセットされてしまうと考えてください。
また、前述したように、ベンチャーでは環境や役割の変化に柔軟に対応するため、アンラーン(学び直し)することが求められます。ですが、ひとつの会社で長く働いて、そのやり方に順応しすぎてしまうとアンラーンするのが難しくなってしまいます。
ベンチャーで活躍したいなら、1日でも早く転職して新しい仕事に適応していくことが大切だと思います。
ベンチャーの企業情報はこうして集める
情報を持っている人に話を聞くのが近道
高野:転職するなら、有望なベンチャーに行きたいと考えるのが当然のことでしょう。ただ、ベンチャーの情報はあまり表に出ませんから、ベンチャーについて知りたいなら情報を持っている人に話を聞くしかありません。
本当はベンチャーに出資している投資家に話を聞ければいいのですが、そう簡単なことではありません。現実的なところでは、転職エージェントに話を聞くのがいいと思います。求職者は無料で利用できるので、話を聞くのも無料です。
ただし、転職エージェントも玉石混交ですから、何人かに話を聞いて情報を持っていて信頼できる人を探してみてください。
良い情報を得るには相手にメリットを与えること
高野:その時に意識していただきたいのは、転職エージェントに自分をいかに売り込むかということです。
転職エージェントもビジネスですから、基本的には相手にメリットを与えない限り良い情報は得られません。「タダで得られる有益な情報はない」と考えてください。
たとえば、「転職を考えている優秀な人材を紹介するので、いいサポートをお願いします」と交渉してみるなど、自分が相手にどんなメリットを提供できるかを考えてみることをおすすめします。
ベンチャーについて勉強したり、情報を得たりできる場所はかなり少ないので、私自身もオンラインサロンやYouTubeを通じて、資金調達をした企業のニュースや新規上場会社情報をピックアップしています。ベンチャー転職を考えている人はぜひ押さえてみてください。
取材・文/いしかわゆき(@milkprincess17)
この記事の話を聞いた人
株式会社キープレイヤーズ代表
高野秀敏
1999年に株式会社インテリジェンスへ入社。2005年に株式会社キープレイヤーズを設立。4000名以上の経営者の相談と、11000名以上の個人のキャリアカウンセリングを行う。また、メドレー、クラウドワークスなど過去55社以上の社外役員・アドバイザー・エンジェル投資を国内・シリコンバレー・バングラデシュで実行する。
HP|株式会社キープレーヤーズ
Twitter|@keyplayers