メリット・デメリットを解説 時差出勤で働き方が変わる?
働き方改革のひとつとして「時差出勤」の導入が進んでいます。
時差出勤ができると、働き方はどのように変わるのでしょうか。時差出勤のメリット・デメリットやモデルケースを紹介します。
時差出勤とはどんな制度?
時差出勤とは、具体的にはどのような制度なのでしょうか。
時差出勤は自分に合った勤務時間を選べる制度
時差出勤とは、会社が定めた通常の勤務時間から数時間前後にずらして出勤できる制度。
会社が用意した複数の勤務時間のパターンから、自分の都合の良い時間を選択します。スライド勤務、スライドワークともいわれています。
例えば基本の勤務時間が9時~18時で前後1時間の時差出勤が認められる場合は、1時間早く出勤して8時~17時に勤務したり、1時間遅く出勤して10時~19時に勤務したりすることが可能になります。
出勤時間をずらすことで私生活に合わせた働き方ができ、通勤ラッシュの軽減も期待できるため、働き方改革の施策のひとつとして導入が進んでいます。
東京都では、時差出勤を推進する「時差Biz」というキャンペーンが実施されており、2019年11月現在で1449社・団体が参加しています。
フレックスタイム制やシフト制との違いは?
時差出勤は、勤務パターンが変動する点ではフレックスタイム制やシフト制と似ていますが、時間選択の自由度に違いがあります。
フレックスタイム制と時差出勤の違い
フレックスタイム制と時差出勤の違いは1日の労働時間です。
フレックスタイム制は、始業・終業時間を自由に決めることができるため、月曜日は6時間、火曜日は10時間勤務するといった柔軟な働き方が可能です。
一方で、時差出勤の場合は1日の労働時間は固定されているため、フレックスタイム制と比べると自由度は下がります。
会社が用意した勤務パターンの中から自分の都合の良いものを選択するか、上司が決定するというケースが多いようです。始業・終業時間の事前申請が必要な会社も多く、申請方法も1日単位や1週間単位、1ヶ月単位などまちまちです。
シフト制と時差出勤の違い
シフト制と時差出勤の違いは、基本の勤務時間が決められているかどうかです。
シフト制は長時間営業が目的の勤務制度のため、勤務時間のパターンをそもそも複数設けています。
一方で、時差出勤は従業員の働きやすさや生産性の向上が目的であるため、あくまで基本の勤務時間が決められており、そこから個人の都合に合わせて出勤時間を数時間ずらします。
※フレックスタイム制について詳しくは→フレックスタイム制とは?【図解】
※シフト制について詳しくは→シフト制とはどういう働き方?
コラム:妊娠・育児中は会社に制度がなくても時差出勤できるって本当?
妊娠や育児中は就業規則に記載されていなくても時差出勤が認められる場合があります。
妊娠中に混雑した交通機関を利用すると、流産や早産につながる可能性があります。男女雇用機会均等法では、妊娠中の女性が医師などから混雑を避けて通勤するように指導を受けた場合、時差出勤や勤務時間の短縮といった措置を行うことが会社に義務付けられています。
また育児・介護休業法では、3歳未満の子どもを養育する人に対して短時間勤務制度を設けることを求めています。雇用期間が1年に満たず制度が適用されない場合や、勤務時間を短縮することが難しい場合は、代替措置として時差出勤などの制度を設けることになっています。
まずは就業規則で妊娠中や育児中の措置が定められているか確認し、規定がなければ上司に時差出勤ができないか相談してみましょう。
【体験談】時差出勤のメリット・デメリット
時差出勤にはどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。時差出勤の会社で働く人の体験談を紹介します。
メリットは仕事と私生活を両立しやすいこと
時差出勤のメリットは勤務時間に融通が利き、私生活との両立がしやすくなることです。
以前の勤務時間は9時から18時だったため、役所や銀行に行く必要がある時は有給休暇を使うしかありませんでした。
でも、時差出勤が導入されたことで、有給を使わなくても、平日にしかできない用事を済ませられてとても助かっています。
私が通勤に利用している路線は、ピーク時の乗車率が180%を超えるほど混雑しており、出勤するだけで疲れ果てていました。時差出勤が導入されてからは、ラッシュタイムを避けるために始業時間を9時から7時に前倒ししています。満員電車のストレスから解放されて、仕事の効率もアップしました。
私の部署では海外との取引があるため、現地時間に合わせて夜間や早朝に業務が発生することがあります。これまでは残業をして対応していたため、長時間勤務が当たり前になっていました。時差出勤のおかげで、夜間に対応が必要な時は出勤時間を遅らせるといった調整ができるようになりました。
デメリットは時間管理が難しくなること
時差出勤のデメリットは、勤務時間が変動し、時間管理が難しくなることです。
私の部署では毎日の朝礼で業務の進捗状況を報告していましたが、時差出勤では人によって出勤時間が違うため、全員がそろう日中に定例会議を行うことになりました。しかし、他の打ち合わせや会議も日中に集中してしまうため、定例会議の時間を確保することが難しくなってしまいました。
時差出勤で勤務時間を2時間早めていますが、ほかの人が仕事をしている時間に帰るのは気まずくて、通常の終業時間まで残業しています。また、夕方にお客様との打ち合わせが入った場合も、残業をして対応しなければなりません。結果的に労働時間は以前よりも増えてしまいました。
会社に指定された時差出勤により、朝7時に始業する日と9時に始業する日があります。始業時間に合わせて起床時間もずれてしまうため、生活リズムの変化に体がついていきません。
時差出勤のモデルケース
時差出勤が導入されると、働き方や生活はどのように変わるのでしょうか。
通常の勤務時間が9時から18時で完全週休2日制、通勤に片道1時間かかる会社に勤務する人をモデルに、3つのケースを紹介します。
保育園のお迎えのために早めに退社
例えば18時までに保育園へお迎えに行かなければならない場合も、時差出勤で出勤時間を早めれば間に合います。
1日のタイムスケジュールは以下のようになります。
通常勤務の場合は18時に終業するため保育園の送迎に間に合いませんが、勤務時間を1時間30分早めると、帰宅する途中に保育園のお迎えに行くことができます。時差出勤によって、平日にも家事や育児、家族との時間を取れるようになります。
また、時差出勤における休憩時間の取り方は会社によって異なります。このケースのように、通常の勤務時間でも時差出勤でも、休憩時間は変わらず固定されていることもあります。
朝は業務に集中、夕方は趣味を楽しむ
時差出勤によって、平日の夕方に趣味の時間を取ることも可能です。
ジムに通うために、勤務時間を1時間30分早めた場合は以下のような1日になります。
通常勤務の場合は、仕事終わりに予定を入れると帰宅が遅くなってしまうため、趣味を楽しむ時間はなかなか取れません。
しかし、時差出勤で勤務時間を早めると、会社終わりにジムで運動しても、19時過ぎには帰宅することができます。更に、早朝のオフィスは人が少なく、静かな環境で集中して業務に取り組めるというメリットもあります。
また、このケースでは、出勤時間に合わせて休憩時間も前倒しにしています。
遅めの出勤で通院時間を確保
持病の治療のために定期的な通院が必要な人にとっても、時差出勤は好都合です。
平日の日中に病院へ行かなければならない場合、通常勤務の場合は半日休暇を取って通院することになりますが、時差出勤で勤務時間を2時間遅らせると、通院後に出勤することが可能になり、通院だけのために有給休暇を使わずに済みます。
また、このケースでは通常勤務か時差出勤かに関わらず、好きなタイミングで休憩を取っています。
まとめ
時差出勤は、いつもの勤務時間から、数時間ずらして出勤することができる制度です。
平日も柔軟に時間を使えるため、仕事と私生活の両立がしやすいことが大きなメリットです。時間管理の難しさはありますが、制度をうまく活用すれば育児や介護、趣味などの都合に合わせて働くことができるでしょう。