成功・失敗事例も紹介 【働く人向け】メンター制度とは?
新人育成の一環として多くの企業で導入されているメンター制度。これはどのような制度なのでしょうか。
この記事では、メンター制度の概要やメリット・デメリットを説明し、先輩・後輩それぞれに向けてメンター制度の成功事例・失敗事例を紹介します。
メンター制度とは?
新入社員の相談相手を会社が用意する仕組み
メンター制度とは、新入社員が何でも相談できるように先輩社員がサポートする仕組みです。
新入社員から相談を受ける先輩社員をメンター、相談する後輩社員(新入社員)をメンティーと呼び、先輩と後輩が定期的に面談を行います。
新人が相談しやすいよう、先輩は後輩と違う部署で利害関係のない社員から選ばれるのが一般的です。
企業規模が大きいほどメンター制度を導入している
メンター制度は多くの会社で導入されていますが、企業規模が大きいほどその傾向が高まります。
HR総研が行った調査では、メンター制度(それに準ずる制度・取り組み)を導入している企業の割合は、中小企業(300名以下)では30%ですが、中堅企業(301~1000名)では60%、大企業(1001名以上)では66%と、企業規模が大きくなるほど増えています。
※出典:人材育成「新入社員研修」に関するアンケート調査 結果報告(2020年)|HR総研
企業が導入する目的は社員定着の促進
企業がメンター制度を採用する目的は、主に新入社員・先輩社員の相互の定着を促すことです。
新入社員は、小さな問題でも先輩に相談できる環境があることで、入社後や配属後に生じる悩みを解消でき、離職も防げます。
なおメンター制度は社員定着の促進以外にも、女性の活躍推進やコミュニケーションの活性化などの目的もあります。
コラム:エルダー制度やチューター制度、OJTとの違いは?
メンター制度と似た制度に、エルダー制度やチューター制度、OJTなどがあります。これらの違いは、先輩の役割です。
メンター制度の先輩の役割は、新入社員の相談に乗ること。一方、エルダー制度やチューター制度、OJTの先輩の役割は新入社員を教育することです。
そもそもエルダー制度とチューター制度は、名称は違いますが制度の中身は同じで、先輩社員が新入社員をマンツーマンで教育する仕組みです。OJTも、先輩から実践的な教育を受ける仕組みであるため、新入社員の相談が主であるメンター制度と3つの制度は、先輩の役割が大きく異なってきます。
また、OJTに限っては、マンツーマンで行われない場合がある点も、メンター制度と異なります。
これらの制度は通常、いずれかひとつのみが実施され、同時期に併用されることはありません。
社員から見たメンター制度のメリット・デメリット
メンター制度は、会社側には離職の防止やコミュニケーション活性化などのメリットがありますが、社員にとってはどういうメリットがあるのでしょうか。
ここでは、社員にとってのメンター制度のメリット・デメリットを説明します。
メンター制度のメリット3つ
社員にとってのメンター制度のメリットは、以下の3つです。
後輩は早く仕事に慣れることができる
メンター制度を通して、後輩は早く仕事に慣れることができます。
メンター制度では先輩がマンツーマンで後輩の相談に乗るため、後輩は小さな疑問でも聞くことができます。後輩はわからないことや不安を都度解消できる分、仕事にも早く慣れることができます。
コミュニケーション能力を鍛えられる
メンター制度を通して、先輩も後輩もコミュニケーション能力が鍛えられます。メンター制度は先輩・後輩どちらにとっても相手の立場に立って考える機会になるためです。
例えば、先輩側は面談中、後輩の意見を傾聴した上で、相手が必要としている内容を話します。また後輩側も、仕事上の悩みを解消するために、自分の状況を先輩にわかりやすく説明します。
こういった取り組みがコミュニケーション能力の鍛錬に役立ちます。
先輩側は自分の仕事にも良い影響が出る
先輩はメンター制度を経験することで、新たな気付きを得ることがあり、自分の仕事に良い影響が出ます。
後輩の相談に対してアドバイスをするために「普段の働き方を言語化する」「自分の仕事を振り返る」といったこと行うようになります。こうした経験を通じて、自分の仕事のやり方が見直されます。
メンター制度のデメリット2つ
社員にとってのメンター制度のデメリットは、以下の2つです。
2人の相性が合わないとうまくいかない
メンター制度は、ペアになる先輩・後輩の相性が良くないとうまくいきません。相性とは、2人の考え方や性格、性別、性格などの組み合わせを指します。
相性が良くない場合は2人の間に強い信頼関係を築くことが難しく、面談をしてもうわべだけの雑談や一方的な指導になってしまうことがあります。
メンターの業務時間が少なくなる
先輩はメンターになると、日頃の業務に加えて面談や人事への報告といったタスクが増えるため、どうしてもメインの業務を行う時間が少なくなります。
メンターの役割を果たしつつ残業を増やさないためには、これまで以上に効率的に仕事を進める、請け負っている業務の量を調整するなどの工夫が必要です。
先輩向け|メンター制度のポイントと体験談
ここでは、先輩社員向けに、メンター制度の成功事例・失敗事例とポイントを紹介します。
過去の事例も参考に、面談を行うときに先輩として気をつけるポイントを押さえましょう。
メンター制度の成功のポイント2つ【事例つき】
メンター制度の成功のポイントは、初回の面談前に後輩への質問を準備したり、上長や同期など周りの力を借りたりすることです。
成功のポイントを以降で詳しく見ていきましょう。
【成功のポイント1】事前の質問準備
初回の面談を行うときは、事前に質問を用意しておくとスムーズにいきます。
以下は面談で使える質問の例です。
〈面談に使える質問例〉
▼具体的な仕事に関する質問
- 普段どんな仕事をしている?
- どうやってタスクを管理している?
- 仕事量は適切だと思う?
▼メンタルに関する質問
- 仕事をしていて辛いことはある?
- 最近のモチベーションはどう?
- 落ち込んだときはどうやって気持ちを回復させている?
▼キャリアに関する質問
- これからどういう力を身に付けたい?
- 今後どんな仕事をやってみたい?
ただし、先輩の役割はあくまで後輩の相談に乗ることですので、2回目以降は後輩から質問を用意してもらいましょう。
メンター
先輩の成功事例
メンター制度が成功したポイントは、後輩の気持ちになって事前に質問を用意しておいたことです。
「初回は後輩も何を話したらいいのかわからないだろう」と考え、初回のアイスブレイクとしていくつか質問を用意して面談に臨みました。
すると、緊張がほぐれた上に、後輩の疑問や不安も引き出せました。
【成功のポイント2】時には周りに頼る
後輩から難しい相談をされたときは、無理に2人だけで解決策を考えないようにしましょう。
後輩になるべく早く仕事や職場になれてもらうためには、周りの力を借りてスムーズに問題に対処することも必要です。
ただし、周りに力を借りる必要がなければ、相談内容は原則口外しないようにして、後輩が安心して相談できるようにすることも大切です。
メンター
先輩の成功事例
メンター制度がうまくいったポイントは、後輩から人間関係に関する難しい相談をされたときに上司や同僚などに頼ったことです。
私だけで解決できないような相談内容は、後輩に許可をとって私の上長に共有するようにしました。
その結果、私の上長が後輩の上長にかけあうことで相談された問題を解決でき、後輩との信頼関係も築けました。
メンター制度の失敗の原因2つ【事例つき】
メンター制度が失敗する先輩側の原因は「面談の振り返りをしないこと」「面談する時間を確保しないこと」です。
ここではメンター制度が失敗した原因を2つ紹介します。
【失敗の原因1】振り返りの怠り
メンター制度の目的に適した面談を行うには、定期的な振り返りを行うことが大切です。振り返りを怠ると、改善すべきことがあってもそのままになってしまいます。
振り返りの機会は、面談を2~3回実施した段階で一度を設けましょう。
面談の内容を振り返るときは、厚生労働省が公表している以下のチェックリストを使うと、改善点を見つけやすくなります。
チェック項目 | チェック欄 |
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※引用:メンター制度導入/ロールモデル普及マニュアル|厚生労働省
メンター
先輩の失敗事例
メンター制度の活用に失敗した原因は、面談そのものの振り返りを怠ったことです。
私の会社のメンター制度には面談を振り返る機会が設けられておらず、私自身も振り返りの必要性を感じていなかったため、自分なりの方法で面談を進めていました。
すると途中から面談が後輩の相談に乗る場ではなく、OJTのように教育する場になってしまい、本来の先輩の役割を果たせませんでした。
【失敗の原因2】面談時間の不足
後輩との信頼関係を築くためには、面談の時間を十分に設けることが大切です。そのためにはまず初回で面談の頻度や時間を決めておきましょう。
普段の仕事のスケジュールは、あらかじめ後輩との面談時間を確保した上で考えるようにします。
仕事が予想以上に増えた場合は、上長に相談して仕事量を調節してもらいましょう。仕事の調整が難しい場合は、後輩と相談して頻度や時間を減らす、後輩に相談内容の数を絞ってもらうなど工夫が必要です。
メンター
先輩の失敗事例
メンター制度がうまくいかなかった原因は、私が面談の時間を作らなかったことです。
普段の仕事が忙しくて面談の優先度が下がり、面談の時間をあまり確保しませんでした。
その結果、後輩とは面談をしてもうわべだけの話しかできず、信頼関係を築けないままメンター制度が終わってしまいました。
後輩向け|メンター制度の成功・失敗事例
ここでは、後輩社員向けにメンター制度の成功・失敗事例を紹介します。
過去の事例を参考に、面談を行うときに後輩として気をつけるポイントを押さえましょう。
後輩の成功ポイントは「内容整理と結果報告」
先輩との面談を成功させるポイントは「事前に相談内容を整理しておくこと」「相談後の結果を報告すること」です。
面談の前に相談内容を整理しておくと、自分がどこまでわかっていて、どこからわからないのかを明確に先輩に伝えられます。
その結果、自分の状況に合ったアドバイスをもらえたり、同じ目線で一緒に解決策を考えてもらえたりします。
メンティー
後輩の成功ポイント
面談が成功したポイントは、話したい内容を整理してから相談したことです。
面談のときに「〇〇がわかりません」と丸投げはせず、できる限り自分で理解する努力をしてから相談するようにしました。
すると、「相談内容がよく理解できるから、先輩としてアドバイスしやすい」と褒められ、的確なアドバイスをもらえました。
また後日、先輩と話した内容を受けて、自分がどう変化したのかを先輩に報告するとより良いです。
結果報告は自分の思考の整理に役立つ上、先輩にとっても後輩の成長を実感できる機会になるためです。
後輩の失敗原因は「先輩への甘えと感謝の欠如」
メンター制度が失敗する後輩側の原因は、わからないことを自分で理解しようとしないことと、先輩に感謝の気持ちを伝えないことです。
先輩に質問する前に、できる限り自分で答えを見つけようと努力することが大切です。
面談は、仕事を教えてもらうための場ではなく、困ったときに先輩のアドバイスをもらうための場です。相談するときは、自分で考えた結果何がわかったのか、何がわからなくて問題が解決できないのかを先輩に伝えて、意見をもらいましょう。
メンティー
後輩の失敗原因
メンター制度がうまくいかなかった原因は、先輩に答えを教えてもらおうとしたことです。仕事でわからないことがあり、先輩に「〇〇ってどうしたらいいですか」と質問しました。
すると話をするうちに、何も調べずに質問したことが先輩に伝わってしまい、「次からはまずは自分で答えを見つける努力をするように」と指摘されてしまいました。
また、先輩は業務の時間を割いて相談に乗ってくれるため、どんなに先輩と親しくなっても感謝の気持ちは忘れないようにしましょう。
まとめ
メンター制度とは、新入社員が先輩社員とペアを組み、後輩が仕事上の悩みを先輩に相談できる制度です。
メンター制度にはコミュニケーション能力を鍛えられるといったメリットもありますが、ペアの相性が合わないとうまくいかないといったデメリットもあります。
メンター制度は先輩・後輩ともに成長の機会になるので、前向きに取り組みましょう。
この記事の執筆者
「転職Hacks」編集部
株式会社クイック
株式会社クイックが運営する、転職活動にまつわる情報サイト「転職Hacks」の編集部。履歴書・職務経歴書の書き方や面接対策などのノウハウ記事、キャリアの悩みを解消するインタビュー・コラムを掲載中。