メリット・デメリットも解説 歩合制とは?給与の仕組みは?
求人情報を見ていると、給与欄に歩合制と記載されている求人を見かけることがあります。
歩合制とはどのような制度なのでしょうか? 歩合制の給与の仕組みや、メリット・デメリット、歩合制が多い仕事を解説します。
「歩合制」の意味とは?どんな制度?
給与制度の1つである歩合制の意味や、制度の仕組みを解説します。
歩合制は成果に応じて給与が支払われる制度
歩合制とは、固定の給料にプラスして、売上額や契約件数といった個人の成果に応じて「歩合給」が支払われる制度です。求人票には「インセンティブ」「成果給」「業績給」「出来高制」などと記載されていることもあります。
成果がゼロだと報酬が全く支払われない「完全歩合制」とは異なり、固定給と歩合給がセットで支払われることが特徴です。
歩合制は成果を出せば出すほど収入を増やすことができるため、「結果が給与に直結した方がやる気が出る」という人に向いている制度です。
歩合制と固定給制の違い
会社員の給与制度には、歩合制のほかにも「固定給制」がありますが、それぞれ以下の通りです。
- 固定給制
…一定の時間・期間に対して、あらかじめ決めた給与を支払う制度 - 歩合制
…固定給+仕事の成果に応じた歩合給を支払う制度
固定給制には時給制や日給制、月給制などがあり、一定の時間働けば一定の給与が支払われます。昇給は年に1~2回行われるのが一般的で、成果を出しても給与に反映されるまでに時間がかかったり、年功序列で思うように給与が上がらなかったりします。
一方、歩合制の場合は固定給にプラスして「売上金額の〇%」「契約件数×〇円」など、成果に応じた歩合給が支払われます。
成果を出すことができれば、昇給を待たずに給与が上がります。ただし、固定給が低めに設定されている場合、成果が出なければ全体の給与も大幅に下がってしまいます。
歩合制にも残業代や有給休暇はある?
歩合制の働き方にも残業代や有給休暇はあります。
「1日8時間」「週40時間」など、法定労働時間を超えて労働した場合は残業代が発生します。
「成果主義だから残業代は出ない」というのは誤解です。ただし、企業によっては成果に応じて支払う歩合給の一部が固定残業代として扱われる場合があります。
そのため、歩合制で働く場合は、事前に残業代の制度を確認しておきましょう。
歩合制の社会保険料や税金はどうなる?
歩合制で毎月の給与が一定でない場合も、社会保険料や所得税、住民税は固定給制と同じように算出されます。
歩合制の「社会保険料」の注意点
健康保険や厚生年金保険、介護保険といった社会保険料は、原則として4~6月の給与の総支給額を平均した金額をもとに算出され、その年の9月から翌年の8月までの1年間の社会保険料に反映されます。
例えば、3~5月に納品が集中したため、4~6月の給与だけ飛び抜けて高かったという場合、社会保険料が比較的高めになってしまう可能性があります。
また、その年の9月以降の給与が4~6月の平均より少ない場合は、支給額に対する税の負担が大きくなり、手取り額が少なくなってしまいます。
歩合制の「所得税・住民税」の注意点
住民税は、前年と比べて給与が極端に下がると負担感が大きくなる可能性があります。
住民税の額は前年の所得をもとに決まり、毎月の給与から天引きされます。前年よりも給与が下がると、少ない給与から高額な住民税が天引きされることになります。
一方で所得税の額はその年の所得をもとに決まるため、給与が高い時には所得税も高く、給与が低い時には所得税も低くなります。
コラム:業務委託で見られる「完全歩合制」とは?
完全歩合制(フルコミッション)は、会社との雇用契約ではなく、業務委託契約で見られる報酬体系です。フリーランスや個人事業主などが仕事を請け負う際に適用されることがあります。
完全歩合制は歩合制と違って、固定給がありません。成果に応じた報酬のみ支払われるため、成果がまったく出ない場合は報酬が0円になってしまうリスクがあります。
正社員や契約社員、派遣社員など、会社に雇用されて働く場合は最低賃金が決まっているため、完全歩合制は適用されません。
求人サイトには完全歩合制の求人もありますが、業務委託契約になるため、報酬の仕組みに納得した上で応募しましょう。
歩合制のメリット・デメリット/向いている人
歩合制にはどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。
また、歩合制の仕事はどのような人に向いているのでしょうか。
歩合制のメリット…高収入を狙えること
歩合制で働くメリットは、成果次第で収入が増えることです。
固定給制では年功序列が根強く、成果を出しても給与になかなか反映されませんが、歩合制なら成果が直接給与に反映されるため、若くても高収入を目指せます。
また、給与という目に見える形で評価されることで、仕事に対するモチベーションも高く保つことができます。
歩合制のデメリット…収入が不安定なこと
歩合制のデメリットは収入が不安定になりがちなことです。
本人の能力が高くても、思ったような成果を出せなかった時や景気が悪い時にはどうしても給与が下がってしまいます。
また、歩合制のもとではチームワークよりも個人の業績が優先されるため、社内の競争が激しくなり、人間関係がギスギスしてしまう場合もあります。
成果を上げるために長時間労働になりがちなのもデメリットの1つです。
歩合制に向いているのはどんな人?
歩合制に向いているのは、稼ぎたいという意欲が強い人や、周りの人よりも高い能力を持っている自信がある人、チームプレーよりも個人プレーが好きな人です。
自分は歩合制に向いているのか、メリット・デメリットを踏まえて判断しましょう。
【職種別】歩合制が多いのはどんな仕事?
給与制度に歩合制を採用していることが多い職種は、営業職や販売職、タクシーやトラックの運転手、理・美容師などです。
各職種の給与の仕組みや、平均年収を紹介します。
営業職・販売職
営業職や販売職は、売上や契約件数、目標達成率などに応じて歩合給が支払われることが多い職種です。
商品の単価が高い不動産や自動車、契約期間が長期に及ぶ保険などは、契約獲得の難易度が高いため歩合給も高く設定されています。
タクシーやトラックの運転手
タクシー運転手は運賃、トラック運転手は運賃や移動距離、積み下ろしの回数などに応じて歩合給が出る企業が多いようです。拘束時間が長く、夜間の勤務もあるため、体力に自信のある人に向いています。
タクシー運転手の平均年収は361万3,300円。
大型四輪トラックの運転手(営業用大型貨物自動車運転者)は477万3,700円、普通四輪トラックなどの運転手(営業用普通・小型貨物自動車運転者)は437万9,400円です。
※出典:厚生労働省「令和4年賃金構造基本統計調査 職種(小分類)別 きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額」
※平均年収の算出方法は、きまって支給する現金給与額×12+年間賞与その他特別給与額
理・美容師
理・美容師やエステ・ネイルサロンのスタッフも歩合制が多い職種です。施術料や指名料、美容品販売の売上などに応じて歩合給が支払われます。
理・美容師の平均年収は男性368万3,600円、女性312万8,700円です。
※出典:厚生労働省「令和4年賃金構造基本統計調査 職種(小分類)別 きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額」
※平均年収の算出方法は、きまって支給する現金給与額×12+年間賞与その他特別給与額
フリーランスのクリエイター
ライターやアニメーター、フォトグラファーなどのクリエイターは、フリーランスとして完全歩合制の業務委託契約を結ぶことが多い職種です。
制作した記事の本数や、カット数などに応じて報酬が支払われます。
アニメーターの中でも「動画」の平均年収は125万円と極端に低く、労働時間の割に低所得に陥りやすいと問題になっています。
※出典:一般社団法人日本アニメーター・演出協会「平成30年度 文化庁 メディア芸術連携促進事業 研究プロジェクト アニメーター実態調査2019」
まとめ
歩合制とは、売上や契約件数などの成果によって収入が変動する給与制度です。成果を出せば高収入を得られますが、思うような成果を出せないリスクもあります。
歩合制で働く場合は、求人情報に載っているモデル年収だけでなく、固定給の金額や歩合給の算出方法などを入社前に確認した上で判断しましょう。
この記事の執筆者
「転職Hacks」編集部
株式会社クイック
株式会社クイックが運営する、転職活動にまつわる情報サイト「転職Hacks」の編集部。履歴書・職務経歴書の書き方や面接対策などのノウハウ記事、キャリアの悩みを解消するインタビュー・コラムを掲載中。