会社員にとって最大の敵 「上司というストレス」から身を守る方法

退職理由として多くあげられる「職場の人間関係」。中でも「上司問題」は深刻です。

上司から受けるストレスにどう対処すればいいのか、会社員ブロガーのフミコフミオさんに綴っていただきました。

クソ上司退散を神仏に祈っても意味がない

みなさんは上司の言動にストレスを感じたことがあるだろうか。出勤が憂鬱になるほどのダメージを受けたことはあるだろうか。

僕はある。いや、会社員である以上、上司の言動にストレスもダメージも感じたことはないという人などいないだろう。

上司とは、基本的にクソムーブを発する生き物である。理不尽にキレる、ネチネチと嫌味を言う、働かない、失敗を部下になすりつける…そんなさまざまなクソムーブでダメージを与えてくる。会社員にとって最大の敵と言ってもいいだろう

だからといって、「クソな上司よ、去れ」と神社の賽銭箱に奮発して千円札を投入して祈願しても、ストレスを感じる上司は蒸発しない。皆、長年のサラリーマンライフの中でストレスやダメージを受けながらも、それに対処する方法を見つけてサバイブしているのだ。

僕たちはクソ上司にどう対処すべきか。四半世紀に及ぶ会社員生活の中で僕が身につけたクソ上司と対峙するための考え方を伝えたい。

上司の言動にストレスを感じる本当の理由とは?

そもそも、上司の言動からストレスを感じるのはなぜだろうか。それは、ただクソムーブを発するからというだけではない。

僕らが上司にストレスを感じるのは、上司は「経験・実績の豊富な先輩」「人間的にも立派な先輩」だという幻想があるからではないか。もしくは、そうあってほしいという願望があるからと言ってもいい。経験の浅い若手ならなおさらだ。

だからこそ、上司が発するクソムーブに直撃すると、「上司たるもの、こんな誹謗中傷めいた言動を取っていいのか」という衝撃「こんなに叱責される自分はダメな人間だ」という自己否定、そして、立場的に反論できずに強いられる我慢といったさまざまな感情の間でストレスを感じてしまう。ダメージを受けてしまう。

そこで提案したいことがある。侍ジャパンの大谷翔平選手が、メジャーリーガー揃いの米国とのWBC決勝前のミーティングで言った言葉を思い出してもらいたい。

憧れるのをやめましょう

非常に汎用性が高い名言だ。「今日からは上司に憧れるのをやめましょう」とアレンジして胸に秘めておこう。クソ上司と向かい合うときに取るべきスタンスを、これほど端的にかつ明確に言語化したフレーズを僕は他に知らない。

あんな上司に憧れてなどいない」と思うかもしれない。ただ、ここでいう憧れとは「あんなふうになりたい」といった感情のことだけではない。先ほどの、「上司は経験・実績の豊富な先輩、人間的にも立派な先輩」だという幻想も含んでいる。

「憧れるのをやめる」、つまり「上司は立派なもの」という幻想や願望を捨てて「上司とはクソムーブを発する生き物だ」とマインドチェンジするだけでも、ストレスやダメージはだいぶ軽減できるのではないだろうか。

「我慢」「スルー」では解決にならない

そして、もうひとつ忘れてはいけないのは、「憧れていては戦えない」ということだ。「上司は立派なもの」と考えていると、たとえ理不尽なことを言われても「自分の力不足だ」とか「上司の言うことは正しい」と、その状況を受け入れてしまうことにつながる。

考えてみてほしい。課長や部長といった上役の肩書きは人間の価値を表しているわけではなく、会社という組織の中での役割分担に過ぎない。会社という組織を回していくための機能のひとつでしかない。

当然、上司だって間違えるし、部下より人間的、能力的に優れていると決まっているわけでもない。それどころか、「なんでこいつが?」と思うような人が上司の座におさまっていることだって少なくない。

前職で難易度の高い案件に挑んだとき、当時の上司は「責任は俺が取る…失敗は気にするな」と約束してくれた。だが、期待したほどの成果が出ないとわかった瞬間、上司の態度は豹変した。そして社長と一緒になって僕を叱責したあとにこう言ったのだ。

これが俺の責任の取り方だ…

はっきり言ってクソである。僕たちは自分の身を守るために、上司のクソ言動やクソ上司そのものと戦わなければならない。

「我慢すればいい」「スルーすればいい」では解決にならない。目をそらしていてもストレスは蓄積していくからだ。正しく対処しなければ、ストレスは膨らんでダメージとなり、最悪、心も体も壊れてしまう。

僕は若いころ、クソ上司から受けるストレスを解消しようと酒に走ったことがある。だが、まったくストレスは軽減されなかったどころか、深酒をした翌日はさらに注意力が散漫となりミスをしてしまった。その結果、上司に嫌味を言われ、さらに溜まるストレス(ミスは僕が悪いのだが)。そしてまた酒、酒、酒。ストレス解消とは真逆の結果だった。

僕のように強靭な肝臓をもっていればよいが、深酒で体を壊し退職した同僚もいた。泥酔して飲み屋のお姉さんにタッチし、店奥で真夜中なのにサングラスをかけた大柄な男たちに取り囲まれる地獄を見た者もいた。

対処法を誤ると、ストレス回避のはずが懐かしの『クイズダービー』的にいえば「ストレスさらに倍」となってしまうのだ。

「責任は俺が取る」を信じた僕がバカだった

ただし、戦うといっても、無策で上司に立ち向かうのは禁物。『半沢直樹』の痛快さは、やられた上司に倍返しにするところにある。だが実際に半沢直樹の真似をしたら、上司から強烈な100倍返しを喰らうだろう。

僕たちは戦う術を身につけなければいけない。ビジネス書やネットの記事で学ぶのもいい。周りを見回して、立ち回りの上手い先輩の真似をするのもいい。仮に失敗しても自分が大きなダメージを受けない程度に、少しずつ試行錯誤しながら戦う術を身につけていこう

僕もそうやって戦い方を身につけてきた。「これが俺の責任の取り方だ…」と言ったクソ上司に対しても、今の僕ならもっと上手く戦えるだろう。

当時の僕は経験の浅さゆえに、「責任は俺が取るから」という言葉を信じてしまった。リーダーを任された僕は、上司に良い情報も悪い情報もすべて伝えた。何かあったときに「聞いてない」と言われることのないように、リスクマネジメントのつもりだった。

案件は一定の成果も出したが、残念ながら想定外の損失も被った。そして社長に呼び出されて叱責されたとき、僕は自分の信頼が裏切られていたことを知った

結論から言えば、僕が伝えた情報は歪められていた。上司は、想定外の損失はすべて僕の能力とやり方に問題があったためであり、自分が現場に介入したことで最悪の事態を回避し、一定の成果を出すことができたと社長に報告していたのだ。

だが、実際には上司の現場介入はなかったし、上司にはすべてを報告して了承を得ていたことだ。それなのに、上司は責任を免れ、僕は追及された

当時の僕は、上司に「まっとうな行動」を期待していたのだと思う。振り返れば、根拠もなく上司に期待し、上司を信じた自分が悪かった。大谷さん風にいえば「憧れるのをやめましょう」と心に決めたのはその時からだ。

上司のクソムーブから身を守るには

それ以降、僕は自分の身の安全を第一に、クソ上司に対しては、伝える情報の取捨選択をするようになった。すべての情報を伝えるのを止めたのだ。情報を隠すのは基本的にはタブーだがクソ上司は別である。

たとえば、案件が成功したというプラスの情報なら、成功要因のすべてを報告することはせずに自分しか知らない情報を持つように心がけた。

そして、会社の上層部へ報告する際には、上司が役員に報告をした後に「補足ですが」とより具体的かつ細部にわたる情報を伝えるようにした。もちろん、手柄を横取りされないためにだ。上層部はバカではない。より具体的な情報を話している人間の話を聞き、信用する

失敗の報告など、ネガティブな情報についても同様に、上層部の前で上司の知らない情報を開示するようにした。

たとえば、「今回の悪い結果は、○○部長のおっしゃる通りなのですが、要因のひとつとして従来から納品している商品のパッケージの強度問題があります」などと、上司を立てつつ、新しい情報をアドオンする。そうすることで、実際は上司は状況を把握していないこと自分が情報を持つキーマンだという印象を上層部に植え付けることができるのだ。

こうした「手の内を明かさない作戦」を駆使することで、僕は、「手柄は横取りし、責任は押し付けようとする」上司のクソムーブから身を守ってきた

僕が見てきたクソ上司たちの末路

このように上司のクソムーブに対してはきちんと対策を講じることだ。それが自分の身を守るための唯一の方法である。

本来なら、上司から強いストレスを感じるようなパワハラ的な言動や、理不尽な扱いを受けたときは、社内の然るべき部署に相談して対応してもらうのが良い。ただし、そのやり方が通用するのは、一部の大企業だけだろう。

残念ながら、世の中の9割を占める中小企業にはそんな部署や担当者を置く余裕がない。中小企業でモンスター上司が息をしていられるのは、そうした事情によるところが少なからずあると思われる。つまり、世の中の大多数の会社員は、自分の力でクソ上司と戦うほかないのである。

繰り返しになるが、僕らにできることは、クソ上司に負けないように戦う術を身につけることだ。クソ上司なんかで心身を壊してはいけない。そして僕ら自身が、部下や仲間に圧をかけ、ストレスの元凶たるクソ上司になっていないかと顧みながら歩いていくことも大切だ。

結局のところ、評価を得るため、立場を守るためと、上司の理不尽に耐えることは何も生まない。それどころか、最後は自分の身を滅ぼすことにもつながりかねない。時には、クソ上司に本気で思い切りぶつかっていく気概を見せることが自分を守り、自身を成長させることにつながるのだ。

最後にひとつ。僕の経験では部下にストレスを与えるようなクソ上司は、失脚、行方不明、孤独死…悲惨な末路をたどる者が多かった。因果応報としか言いようがない。

ムカつく上司が目の前に現れたら「こいつは自分よりも早く亡くなるのだ。末路は無縁仏だな」と、ほほ笑むくらいの余裕を持ちたい。(所要時間80分)

▼上司に悩まされる人の処世術

この記事の執筆者

フミコフミオ

海辺の町で働く不惑の会社員。普通の人の働き方や飲食業や給食について日々考えている。現在の立場は営業部長。90年代末からWeb日記で恥を綴り続けて20年弱、主戦場は、はてなブログ。

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