転職で年収アップする人、しない人
転職で年収をアップさせたい…実際にどのくらい上がるの? 年収を上げる転職とは?
人には聞きにくい転職にまつわる年収事情を明らかにします。
年収アップ率の実態
会社員が転職したとき、年収はどのくらいアップするのでしょうか?厚生労働省の調査を元に、アップ率を算出してみました。
4割の人が転職で年収アップ
厚生労働省の調査によると、転職して年収(賃金)が上がった人は全体の40.4%。一方、減った人は36.1%、変わらないと答えた人は22.1%でした。
男女別で見ると、女性のほうが男性よりも「増えた」と回答した人の割合が多くなっています。
※参考→平成27年転職者実態調査の概況|厚生労働省(正社員以外の契約社員、出向、嘱託社員の転職者も含む。)
最多は1~3割増、女性の増加が多い
年収が変化した人の内訳を見てみると、最も多かったのは年収が「1~3割増えた人」。次点が「1~3割減った人」でした。
また、男性より女性の方が3割以上年収アップした人が多いのも特徴です。このデータには正社員以外の契約社員、嘱託社員なども含まれているため、契約社員から正社員になって昇給する人も多いのかもしれません。
※引用→平成27年転職者実態調査の概況|厚生労働省(「不明」は除いて作成。1%未満は四捨五入した数値。)
【年代別】転職後、年収の増減は?
転職による年収の増減リストを表にまとめました。
全体的な傾向としては、「若いほど年収が減る人は少ない」ことが挙げられます。若い世代はもともとの年収が低いため、転職でそれ以上に下がるケースは稀なのでしょう。
また、年収が増えた人の割合がもっとも多いのは25~29歳の47.1%。一方、年収が30%以上増加した人の割合がもっとも多いのは50~54歳です。この年代は管理職などとして転職することも多く、キャリアを認められれば大きく年収を上げられるチャンスがあるようです。
※引用→平成27年転職者実態調査の概況|厚生労働省(「不明」は除いて作成。1%未満は四捨五入した数値。)
年収がアップする人のパターン
それでは、どんなタイプの方が転職で年収をアップさせているのでしょうか?
若手
上の図の通り、若手ほど年収の増加率が高い傾向にあります。年代が上がるごとに増加率は下がっていき、年収を下げる転職をしている人の割合が増えていきます。
年齢が上がると、その時点での年収も高くなっているため、転職市場での需要が高く希少な知識やスキルを持った人でないと、年収を上げる転職は難しくなるようです。
中小企業や下請けで働いている
今度は事業所規模で年収の増減率を比較してみると、従業員数1000人以上の企業では、年収の増加率が7.8ポイントともっとも高くなっています。
※引用→平成27年転職者実態調査の概況|厚生労働省(「不明」は除いて作成)
もともと、企業規模が大きく、元請けに当たる会社の方が平均年収が高い傾向にあるため、転職する際にも年収アップが見込めます。
したがって、中小企業や下請けで働いている方が、より規模の大きな企業に転職する場合、年収アップが期待できるでしょう。
働いている業種の平均年収を下回っている
厚生労働省の「令和元年賃金構造基本統計調査 結果の概況」によると、各世代の産業別平均年収は以下の表のとおりでした。トップ3をオレンジ、ワースト3をグレーにしています。
現在の年収が働いている産業の平均年収を下回っている場合、転職によって年収がアップする可能性が高くなるといえるでしょう。
(年収データ:賃金構造基本統計調査の月収データを12倍して算出、各世代前半と後半の年収データの平均値、千円以下切捨て。)
現在の職場で能力がきちんと評価されていない
取得が難しい資格を保持しているといった仕事のスキル、営業成績をあげているなど会社への貢献度が高いにもかかわらず年収に反映されていない人は、現在の職場で能力がきちんと評価されていない可能性もあります。
資格やスキルなどをいかせる職種に転職することで、年収アップの可能性が高くなるといえるでしょう。
逆にまったく経験のない異職種に転職するのは、リスクが高いことは明らかです。とくに年齢が高くなるほど、転職の際にそれまでの経験値や人脈の豊富さが評価されます。よほどやりたい仕事に覚悟をもって挑む場合意外は、高年齢で未経験の仕事へ転職することはおすすめできません。
転職で年収を上げる方法
では、転職で年収を上げるにはどうすればいいのでしょうか? この章では、厚労省の「平成27年転職者実態調査の概況」の事業所調査の結果から、具体的なアプローチ法を探っていきます。
基本給(ベース)が高い企業を狙う
年収はボーナス額によって左右されますが、業績や社会情勢などによって変動する可能性が高いです。転職する際に受け取れると見込んでいたボーナスが支給されず、結果的に年収がダウンするといったケースもあります。
転職する際は、まず基本給の高さに注目し、その後、ボーナスや各種手当てにも目を向けるようにしましょう。
狙いめの業界は、情報通信、運輸!
産業別にみると、転職者がいる事業所の割合が高いのは「情報通信業」の 48.7%でした。次いで「運輸業・郵便業」が 48.5%、「医療・福祉」が 45.3%となりました。
転職者が多いため、人材の流動性が高く、転職しやすい業界と言えます。この業種に転職したからといって必ずしもすべての方の年収アップが見込めるわけではありませんが、参考にしてみてはいかがでしょうか。
即戦力・知識量をアピール
企業が転職者のどんなポイントから採用を決めるのか、その理由を職種別・産業別に見てみましょう。
職種別
管理職や専門・技術職では「経験を活かし即戦力になるから」を選んだ事業所の割合が 64%以上ともっともも高く、次いで「専門知識・能力があるから」が選ばれています。
とくに、1000人以上の事業所では、7割以上の企業で両方が選ばれています。
産業別
転職者の賃金や役職などの処遇を決める際に考慮した要素をみると、「これまでの経験・能力・知識」とする事業所が 7割を超えて最も高く、次いで「年齢」、「免許・資格」となりました。
産業別の最優先度をみると「学術研究,専門・技術サ-ビス業」では「これまでの経験・能力・知識」。「製造業」では「年齢」、「医療・福祉」では「免許・資格」が重視されていました。
また、事業所規模が大きくなるほど「学歴」、「前職の賃金」、「前職の役職」の優先度が高くなっています。
面接では能力アピールの後で年収交渉
客観的なデータがあるわけではありませんが、一般的に年収交渉は面接での前職でのスキルや経験をアピールした後、先方に聞かれてから行うことが多いようです。
その企業にとって自分がどんなメリットになるのか説得した後、前職での年収を提示しつつ希望を伝えましょう。
年収交渉はエージェントに任せる手も
面接で年収交渉をするのはハードルが高い人も多いでしょう。一方、企業も悩んでいるのは同じようで、転職者を採用する際の問題の2番目に多いのが「採用時の賃金水準や処遇の決め方」(39.2%)です。
年収交渉をするのが難しい、自分の経験やスキルをしっかりアピールできる自信がない場合は、転職エージェントに依頼するのも手です。
しかし、エージェントに依頼して高い年収で入社したとしても、会社から求められているような結果が出せず、結果的に年収ダウン、数年後に退職といった厳しい状況になるケースもあるので注意しましょう。
はじめは、年収がダウンしたものの、その後の働きぶりで大幅に年収がアップしたというケースもあります。転職時は、年収を低めに設定し「その後の仕事ぶりを見て年収を調整してください」という交渉の方法もありでしょう。
まとめ
多くの方が転職によって年収をアップさせたいと望んでいます。
そのとき大切なのは年収額だけに惑わされず、自分の能力や経験、仕事に求めること、人生の豊かさや優先度を冷静に把握してから転職活動を始めることです。