広報の仕事は大変?魅力・資格・転職方法

企業の花形部署と呼ばれる広報は、転職市場でも人気の職種。企業の窓口としてマスコミ対応やプレスリリースなどを行い、企業と社会を結びつける役割を果たします。

この記事では広報の具体的な仕事内容や年収をご紹介します。

広報の仕事は企業活動を世間に知らせること

広報業務の目的は「企業と社会に良好な関係を構築すること」にあります。

企業の認知度向上やブランディングのため、広告物の制作やイベントの企画運営、メディアを通じた情報発信など幅広い業務を担当します。ここでは、広報の業務を社内・社外の仕事に分けてご紹介します。

社外広報の仕事

社外広報の仕事は、主にプレスリリース、取材・トラブル対応、デジタルメディアの運営などがあります。どれも企業の顔として活躍する仕事でやりがいもありますが、同時に重大な責任が伴います。

マスメディアや広告代理店と関わる機会も多く、記事を掲載してもらうためには彼らと良好な関係を築く必要があります。そのため、コミュニケーション力が不可欠です。

(1)プレスリリース

プレスリリースとは、企業がメディアに対して発表するものです。新商品の発売やイベントのお知らせなどのトピックについて、要点をまとめてマスメディアに送付します。

ただし、そのニュースをメディアが必ず取り上げるとは限りません。積極的な情報発信や業界の動向チェック、さらに記者の興味を引く文章を練り、メディアに注目されるよう工夫を重ねます。

(2)取材対応

企業の窓口となり、マスコミの取材依頼を受ける仕事です。取材の可否を判断したのち、必要であれば取材対象者の選定や資料の準備を行います。

取材当日はマスコミに同行し、企業理念やブランディングに沿った情報を発信するため、適切なサポートを行います。取材対応はスピードが命のため、迅速な対応が求められます。

(3)危機管理・トラブル対応

危機管理(リスクマネジメント)やトラブル対応も広報の仕事です。不祥事が起きた場合は、記者会見の準備や報道資料、想定問答集の作成などを行います。迅速な対処によって被害を最小限に食い止め、ブランドイメージの低下をできるだけ防ぐことが大切です。

偽装問題や個人情報の流出事件などが騒がれる現代、危機管理も広報に期待される役割です。

(4)デジタルメディアの運営

広報が企業ウェブサイトやSNSの運営を担当することもあります。

コーポレートサイトや企業SNSの更新によって、積極的な情報発信を行います。メディアリテラシーはもちろん、SNSを活用するためのマーケティング視点や分析力、さらに炎上を防ぐためのリスクマネジメントに関する知識も必要です。

社内広報の仕事

社員に対する情報発信(社内広報)も広報の重要な仕事です。会社の業績や新製品の情報、メディアからの取材報告などを掲載した社内報を発行し、社員間の情報共有を図ります。

これは社内のコミュニケーション活性化につながるだけでなく、企業への帰属意識を高め、社員としての一体感を持たせるためにも有効です。最近はコンプライアンスへの意識を高めるために社内報を活用することもあります。

広報に必要な能力や資格は?

広報業務は人との関わりが多く、個々の仕事には重大な責任が伴います。そのため、採用ではコミュニケーション力と広報業務の経験が重視されます。

資格より実績が重視されるので、「同業界の広報未経験者」より「他業界の広報経験者」が有利になる場合も。広報への転職を目指すなら、「広報に関わる仕事」で実績を積むようにしましょう。

広報に必要なのはコミュニケーション力

広報の仕事では、社内外問わずさまざまな人と接する機会があります。特にメディア関係者と良好な関係を築くことは、自社の記事を掲載してもらうためにも重要です。

また、業界の動向をキャッチするための情報収集力や、企画を実際の行動に移すための実行力も欠かせません。実際、広報担当者の多くはテレビや新聞における自社の扱いを把握し、競合企業の動向をチェックしています。

中にはメディア関係者と直接交流を図り、注目されそうな情報を見極めてマーケティングに生かす広報担当者もいます。柔軟なコミュニケーション力と交渉力が生きる仕事です。

広報に関わる資格「PRプランナー」とは

広報に関わる代表的な資格に「PRプランナー」があります。これは、公益社団法人 日本パブリックリレーションズ協会が実施する検定試験で、広報・PRに携わる人の意識・知識・技能の向上を目的としています。資格には初心者向けから順に「PRプランナー補」「准PRプランナー」「PRプランナー」の3種類があります。

もちろん、PRプランナーの資格を有していなくても広報職に就くことは可能ですが、熱心さをアピールする材料にはなるかもしれません。

未経験から広報に転職するには?

未経験から広報の仕事を目指すには3つのルートがあります。

  1. 最初から広報担当者/アシスタントを目指す
  2. 別の職種として入社し、広報への配置転換を目指す
  3. PR会社に入社する

広報として働きたい企業が決まっている場合は、(1)、(2)のルートが考えられます。

(1)は一旦他の企業で広報担当・アシスタントとして実務経験を積み、目当ての企業に転職する方法です。他業界であっても広報業務の経験があれば転職に役立ちます。

(2)はまず営業などで就職し、広報への配置転換を目指す方法です。

どちらも広報を目指すルートとしては一般的ですが、どの業界でも広報職の人気は高く激しい競争が予想されます。狭き門であることを覚悟して臨みましょう。

企業広報への就職が難しい場合は、(3)PR会社に就職し広報業務を担当する道もあります。

PR会社とは、プレスリリース作成や取材対応、記者会見の企画運営など企業広報のあらゆる業務を代行・サポートしたり、コンサルティングしたりする会社です。

「商品やサービスを売る」広告代理店とは異なり、「企業と社会がよりよい関係性を築く」ことを目的としています。電通パブリックリレーションズや共同PRなどが代表的な企業です。

コラム:広報、広告、IRの違いって?

広報、広告、IRは混同されがちですが、実際の仕事内容やターゲットは異なります

広報は「企業と社会の良好な関係の構築」を目的に、社会全体を対象とした宣伝活動を行います。

広告は販売促進を目的に、ターゲットを絞った広告活動を行います。

IRは”Investor Relations”の略で、投資家向け広報と訳されます。投資家に向けて経営状況や財務状況、業績動向に関する情報を発信し、企業と投資家との関係性を作る仕事です。

「広報・広告・IRの違い」早見表。広報(PR)は、商品・サービスのターゲット含む社会全般が訴求対象。その情報は客観的で、記事面に掲載される。 広告は、商品・サービスのターゲットが訴求対象。その情報は企業よりで、広告面(CM)に掲載される。 IRは、投資家が訴求対象。その情報は客観的で、事業報告書やコーポレートサイトなどに掲載される。

業界別の仕事内容と平均年収

プレスリリースや取材対応など、広報の基本的な仕事はどの業界でも変わりません。しかし、広報誌の制作やイベント運営など独自の業務が発生する業界もあります。

ここでは広報の中でも人気の業界にスポットを当て、仕事内容や平均年収を紹介します。

【アパレル広報】ブランドの「顔」として重大な責任を負う

年収例

  • ワールド(WORLD):約625万円
  • ファーストリテイリング:約764万円(※広報含む全従業員の平均給与)

華やかなイメージがありますが、メディア関係者やスタイリストとの折衝、顧客管理・分析、媒体管理・リサーチなど地味な仕事が多いのも事実です。

責任が重い分やりがいも大きく、転職市場でも競争率の高い分野です。アパレル広報(プレス)はブランディングや販売促進を目的に、プレス対応、プロモーション、マーケティング、デジタルメディアの運用など幅広い仕事を手がけます。

アパレルはブランドイメージを大切にする企業が多く、ベテランの広報経験者が求められます。

未経験なら販売スタッフからのキャリアアップを考えましょう。プレスアシスタントとして経験を積む方法もありますが、契約社員やアルバイト採用がほとんどです。

また、ファッションセンスや個人のパーソナリティがブランドイメージに合致しているかどうかも重要なポイントです。

【学校広報】未経験から人気

学校広報は学校の宣伝や生徒募集を目的に、説明会・学校見学会の開催や学校パンフレットの作成、学内イベントでの案内役など幅広い業務をこなします。

学校事務などと兼任することも少なくありません。学生やその家族と接する機会が多く、ときには入試や進路相談に乗ることも。学生との触れ合いにやりがいを感じる人も多いようです。

学校広報になるためには、まず学校職員として就職し、そこから広報への配置転換を狙います。

公立学校なら地方公務員試験に、国立大学なら国立大学法人等職員採用試験に合格する必要があります。私立学校も独自に採用試験を設けていますが、非常に人気が高く求人はすぐ埋まってしまいます。こまめな情報収集を心がけましょう。

【ホテル広報】ブランドの認知度向上を担う

年収例

  • 帝国ホテル:583万円
  • ホテルオークラ:611万円(※広報含む全従業員の平均給与)

ホテルのブランドと認知度を向上させ、販売促進につなげることがホテル広報の仕事です。

取材対応や広告制作、情報発信を目的としたイベントの企画・運営を主に行います。企業によってはマーケティングを兼任するところもあります。

メディア関係者と一緒に仕事をすることも多く、冷静な判断力や交渉力が求められます。顧客データを活用するロジカルな思考力も必要です。

ホテルの顔として表に立つ仕事のため、特に経験者が優先して採用される傾向にあります。

新卒なら希望のホテルに就職し配置転換を狙うコースがベストです。未経験からの転職は難しいと考えられますが、マーケティングの知識や、英語・中国語など外国語のスキルがあるとアピールにつながります。

【病院広報】特徴は「広報誌制作」があること

病院広報では広報誌の制作や報道対応、デジタルメディアの運営が主な仕事になります。病院によっては健康教室などのイベント企画も行います。

広報誌制作では医療業界の動向をキャッチし、分かりやすく伝える文章力が問われます。

部署をまたいで仕事を進めることも多く、コミュニケーション力は必須といえます。マーケティングを必要とする仕事が比較的少ないため、未経験でも挑戦しやすい業界です。

ただし、日本の医療システムについて知識があり、病院や地域患者のことを深く理解している人材が求められます。

【スポーツ広報】チームの認知度を高め運営資金を確保する

スポーツチームの広報(フロントスタッフ)は、チームの認知度向上と運営資金の確保を目的にさまざまな業務に従事します。

一見華やかなイメージがありますが、実際はチームに関連する新聞記事のスクラップやプレスリリースの作成、取材対応、デジタルメディアの運営など地道な作業がメインです。

営業や事務と兼任することも多く、チームのサポート役として機能します。チームメンバーと苦楽を共にする、やりがいのある仕事です。

スポーツ広報になるためには、スポーツチームや球団のスタッフになることが前提条件です。

求人はチームが独自に行うため、こまめな情報チェックが欠かせません。契約社員の募集も多いため、「正社員でなくてもチームのために働きたい」という情熱も必要です。

【アニメ・出版・ゲーム広報】業界自体競争率が高く広報は狭き門

年収例

  • 東映アニメーション:746万円
  • KADOKAWA:804万円
  • 任天堂:928万円(※広報含む全従業員の平均給与)

アニメ・漫画・ゲーム業界の広報は根強い人気があり、新卒・中途どちらも狭き門となっています。

広告物の制作管理や代理店との交渉、イベントの企画運営など、作品のプロモーションに関わる広範な業務に従事します。社内外の折衝を担当することも多く、交渉力や決断力、さらに業界知識が求められる仕事です。

転職については同業界で広報経験のある人材が望ましいですが、他業界でも製品広報の経験があれば大きなアドバンテージになるでしょう。

未経験からいきなり広報担当になるのは難しいため、他業界で広報経験を積んでからチャレンジすることをおすすめします。一方、業界知識を持つ人材を重視する企業もあるため、ひとまず別のポジションで入社して配置転換を狙う方法もあります。

まとめ

企業の「顔」として活躍する広報は転職市場でも人気の高い職種です。企業のブランドを担うため仕事には重い責任が伴いますが、その分やりがいもあります。

どの業界でも広報経験を求める傾向が強いため、未経験からの転職は厳しいことを覚悟してください。

PR会社への就職を目指すのも一つの手段といえるでしょう。

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