仕事内容や役割、悩みを紹介 管理職とは
管理職とは、具体的にどこまでの役職を指すのかわからない人も多いのではないでしょうか。
管理職の仕事内容やその役割、抱える悩みなどを紹介します。
管理職とは?会社での定義や役割
管理職と一般社員を比較しながら、管理職の仕事内容や役割について解説します。
管理職とは課長以上の職位を指す
管理職とは、各部署において決裁権を持つ役職であり、一般的には課長以上の職位を指します。
管理職は一般社員と比べて裁量や責任範囲が大きく、自分の受け持つ仕事の他にも、組織運営のための人員配置や、部下の育成なども担います。
ちなみに、管理職として扱われる職位は職種によって異なる場合があります。
<職種ごとの管理職名>
- 介護士:副主任、施設長
- 看護師:看護主任、看護師長、看護部長
- 教員:教頭、校長
管理職の給料・待遇
厚生労働省 の2019年調査によると、管理職(部長級)の月収は男性で約67万円、女性で約61万円です。
管理職は役職手当なども支払われるため、一般社員の月収と比較すると大きく差が開いています。
ただし、管理職は一般的に勤続年数の長い社員が選ばれるため、単に年齢差が影響しているとも考えられます。
管理職は残業代が出ない?
管理職は時間外労働や休日出勤をしても、残業代が出ないことがあります。なぜなら管理職は「管理監督者」として、経営者と一体的な立場にあると見なされる場合があるからです。
その場合「規定の業務時間を超えて活動せざるを得ない職務を持っている」として、労働基準法の一部の規定が適用外になります。
給料や残業代などの、管理職と一般社員の待遇の違いを比較すると、以下のようになります。
ただし、管理職で残業代などが払われないのは、あくまでその実態が労働基準法における「管理監督者」にあてはまる場合のみ。
管理職がただの肩書きだけで、一般社員と仕事内容がさほど変わらないといった場合は、同様に残業代や休日手当が支払われます。
管理職が管理監督者かどうかの判断基準は以下の3項目です。
- 経営者と一体的な立場で仕事をしている
- 職務内容、責任と権限、勤務形態に自由な裁量がある
- 賃金面などで地位にふさわしい待遇がなされている
※出典:
労働基準法における管理監督者の範囲の適正化のために|厚生労働省
令和元年賃金構造基本統計調査 結果の概況|厚生労働省
管理職の役割・仕事内容
管理職の仕事内容は、主に下記の3つに分けることができます。
- 部署やプロジェクトの管理業務
- 社員の育成、マネジメント
- 経営ビジョンの共有
部署やプロジェクトの管理業務
管理職は、部署やプロジェクトの全体的な進捗確認や人員配置、予算配分といった管理業務を担当します。
プロジェクトメンバーの能力や経験を考慮した上で、いかに適切に業務を割り振れるかが大切になります。
社員の育成、マネジメント
管理職はチームの生産性を上げて売上を拡大するために、育成研修やOJT計画など、部下の育成やマネジメントをする必要があります。
また個々の能力を最大限に活かすために、社員それぞれのスキルや素質を把握しておくことが求められます。
社員と普段から積極的にコミュニケーションを図り、部下の興味関心や得手不得手などを知ることで、その社員に合った指導やマネジメントをすることができます。
経営ビジョンの共有
経営者側の立場にあたる管理職は、企業の理念や方針を社員にわかりやすく伝える役割も担っています。
社員一人ひとりが会社の達成したい目標に対して違う方向を向かないようにするためです。
社長などの経営層と普段関わることのない大企業では、身近な立場である管理職を通して、目的意識や一体感をより高めることができます。
コラム:日本の女性管理職は係長でも2割未満
内閣府の調査によると、日本における女性管理職の割合は2018年時点で係長級18.3%、課長級11.2%、部長級6.6%にとどまっています。
政府が女性管理職の増加を推進していますが、欧米・アジア諸国と比べるとまだまだ少ないのが現状です。
女性管理職が増えない原因の一つは、管理職特有の長時間労働にあります。
出産・育児に際して、男性の育休取得割合は2019年で10.8%と依然として低く、女性はキャリアを中断せざるを得ません。
復帰後も子育てとの両立を優先することで時短勤務や非正規雇用への転換を強いられ、長時間労働を前提とした管理職になることは難しい現状があります。
企業には、女性管理職を増やすためにも復職しやすい職場環境を作ることが求められています。
管理職のメリット・デメリット
管理職に就くことのメリットとデメリットを紹介します。
- メリット1:仕事の裁量が増えてやりがいを感じやすい
- メリット2:給料が上がる
- デメリット1:責任感によるプレッシャーがある
- デメリット2:部下に嫌われやすい
メリット1:仕事の裁量が増えて
やりがいを感じやすい
管理職になると、自分に決定権のある業務が増えるため、仕事にやりがいを感じやすくなります。
任された仕事をこなすだけの受け身の状態から、担当部署のワークフローを効率化する、売上を安定させるための新商品・新サービスの計画を立てるなど、自分自身で会社・チームのためになる仕事ができるようになり、モチベーションのアップも見込めます。
メリット2:給料が上がる
役職が上がるにつれて役職手当の金額が増えるため、給料の増加が見込めます。
業務量は増えますが、その役職にふさわしい待遇として、一般社員の倍以上の月収を得ることができるのです。
デメリット1:責任感によるプレッシャーがある
管理職になると責任の範囲が大きくなるため、失敗への不安を抱きやすくなる傾向があります。
業務の目標を達成できるのか、部下をしっかりと育成できるのかと頭を悩ます時間が増えると、仕事に面白みを感じられなくなってしまいます。
管理職には不安を感じた時に、冷静にその原因を突き止め対処できる能力が求められます。
デメリット2:部下に嫌われやすい
社員を育成する立場である管理職は、指導方法によっては部下のモチベーションを下げ、結果嫌われてしまうこともあります。
しかし、危機管理・品質担保の観点から、ミスの指摘や指導はどうしても必要なこと。
管理職には、普段から適度なコミュニケーションを図るなどして部下が相談しやすい環境を整え、指導を素直に受け止めてもらえるような信頼関係を築く能力が求められます。
管理職に求められる3つのタイプ
ここでは管理職に向いている3つのタイプを紹介します。管理職は企業の運営を担っているため、組織を引っ張っていく能力があると好ましいでしょう。
- 個人作業よりもチームワークを重視できる人
- リーダーシップがある人
- コミュニケーション能力が高い人
個人作業よりもチームワークを重視できる人
メンバーをマネジメントする管理職では、個人で淡々と成果を出すのではなく、チーム全体を成長させることに意欲が湧くタイプが求められています。
組織全体のことを考え、メンバーに指示を出したり進捗を管理したりする仕事柄、ひとりで黙々と作業する方が得意な人よりも、チーム全体でどうやって効率的に成果が出せるのかなど、チームワークを考えられる人のほうが向いているでしょう。
リーダーシップがある人
管理職は複数のメンバーをまとめてチームを成長させる必要があるため、組織を引っ張っていくリーダーシップのある人が向いている職種だといえます。
自分たちがどのような目標に向かって進んでいくべきなのかを的確に伝え、ゴールに対して社員の意識を向かわせることが求められるため、管理職にはメンバーの士気を上げてチームをまとめられるカリスマ性が必要になります。
コミュニケーション能力の高い人
管理職には、自分の考えを整理して適切にまとめ、相手に伝えるコミュニケーション能力が求められます。
どんなに組織を良くしたいという思いがあっても、その考えを言葉にすることができなければ社員に伝わりません。
また、プロジェクトを円滑に進める上でも、管理職は多くの人との信頼関係が大切になってくる立場です。指示を出すだけではなく、メンバーの声に耳を傾け考えを汲む必要があります。
コラム:管理職のスキルアップにおすすめな本3選
管理職のスキルアップにおすすめな本を3冊紹介します。
管理職になる前に読んでおくべきものや、よくある管理職の悩みを解説してくれているもの、部下との会話術に特化したものと、用途別にさまざまな本が発売されています。
「無理・無意味から職場を救うマネジメントの基礎理論」著:海老原 嗣生、解説:守島 基博(プレジデント社)
クイズ形式でマネジメントの基礎理論を習得できます。自分が現場にいたらどう対応すればいいのか考えられるため、実際に管理職になって実務を始める前に読んでシミュレーションをするのに役立ちます。
管理職の現場から上がった声を紹介しながら、管理職の課題を解説してくれます。仕事をする上での悩みを網羅的に解説してくれるため、初めて管理職になった際に参考にできる一冊です。
「3分間コーチ ひとりでも部下のいる人のための世界一シンプルなマネジメント術」著:伊藤守(ディスカヴァー・トゥエンティワン)
身近な部下への対応方法として3分間の会話術を解説しています。部下とのコミュニケーションに悩んでいる時に活用できる一冊です。
管理職になるためには?
管理職になるには、入社後に昇進(昇格)で役職を上げていくのが一般的なルートです。
ただし、特定の会社での勤務年数が長く、プロジェクトのリーダーを務めたなどのマネジメント経験があれば、未経験でも転職を機に管理職になれる場合があります。
職位ごとに求められることを
着実にこなすことが大切
管理職になるためには主任、係長などそれぞれの職位で求められている役割を正しく理解して全うすることが大切です。
例えば、入社して間もない一般社員に求められる役割は、仕事を一人である程度こなせるように基本的な業務を覚えることです。そして自分の所属する部門で知識をつけ、実務を担当します。
主任や係長は管理職のサポートとして、部下の育成や細かな仕事の管理が大きな役割となっており、この経験を経て管理・監督者向けの研修や昇格試験を受けながら、実際に仕事を割り振る管理職へと上がっていきます。
未経験から管理職に転職したいとき
未経験から管理職に転職したい場合は、そう考えた背景を志望先にわかりやすく伝えることが大切です。きちんとした裏付けのある志望動機や自己PRを作成しましょう。
志望動機の例文
前職の会社では5年間ほど営業職で勤務し、ここ1~2年はリーダーとして案件の管理・監督を担当していました。
リーダーとして実務に関わるうちに、プロジェクトの進行管理をしたり、メンバーが仕事をスムーズに進めやすいようにタスクを割り振ったりすることにやりがいを感じ、部署などの組織単位でサポートできる立場の管理職に興味を持った次第です。
御社の管理職は、他の部署とも連携して業務を行うとお伺いしたので、よりスケールの大きな仕事ができるのではと考え志望いたしました。
志望動機には、管理職に興味を持ったきっかけを入れるようにしましょう。
また、あわせて管理職になった後もスキルを向上させていきたいという姿勢や、達成したいことなどを伝えて、成長意欲をアピールすると良い印象を与えることができます。
管理職の経験がある場合でも、企業ごとに業務内容が異なることを考慮し、自分が今まで担当していた仕事内容を伝え、それが志望先でも活かせることをしっかりと伝えましょう。
自己PRの例文
私の強みは「コミュニケーション能力」です。
前職では営業として長い間勤務し、何百もの会社と商談を行ってまいりました。
商談では、お客様自身が到達したい目標を明確に言語化できていないことが多々あります。そのような場合は、私の意見ばかりを伝えるのではなく、相手の言葉に傾聴することを意識して、相手が考えていること・求めていることを引き出すようなコミュニケーションを大切にしてきました。
結果、担当になったお客様とは一度だけの案件で終わることなく、何度もお仕事を一緒する機会をいただき、会社の売上に貢献することができました。
今回、貴社においてもこのコミュニケーション能力を活かし、未経験ながらも貢献していきたいと思っております。
自己PRでは、これまで培ってきたスキル・経験をアピールすることが大切です。管理職になる場合、経験の豊富さも選ばれる大きな要素の一つとなってくるでしょう。
とりわけリーダーシップやコミュニケーション能力を裏付けるエピソードを伝えられると、より管理職の素質があることをアピールできるでしょう。
コラム:管理職になるために必要な資格
管理職になるためには、関連した資格を持っていることで即戦力をアピールできます。
以下、一般的に持っていると役立つとされる資格を紹介します。
<基本編>
- ビジネスマネージャー検定
- プロジェクトマネジメント資格
マネジメントについての基本的な知識を持っていることを証明する資格。
部下や外部とのコミュニケーション、業務の進行・予算・品質管理する時などに役立ちます。
<プラスアルファとして持っておくと良いもの>
- 税理士資格
- TOEIC
- 日商ビジネス英語
業務を進める上で高いスキルを持っていることを証明できる資格。
正確な予算管理・決算報告や、英語力が必要な業務などに役立ちます。企業にとってビジネスチャンスを広げてくれる人材として重宝されるでしょう。
管理職になりたくないときは?
管理職への昇進を打診されたとき、なりたくない場合はどうすればいいのでしょうか。
以下では、昇進を辞退する際の手順、そのときの心構えを解説します。
昇進を辞退したい場合の流れ
管理職への昇進を辞退したい時は、まずは会社の就業規則を確認しましょう。
就業規則の人事評価・人事異動の項目には、昇進について「昇進の辞退には合理的な理由が必要」と規定している会社も多いはずです。
辞退したい理由が「残業代がつかなくなる」「拘束時間の変化が嫌だ」といった場合だとしても、正直に伝えるのは控え「今の仕事で成果を上げたい」「今の業務形態が自分に合っている」など、前向きな伝え方に転換するようにしましょう。
また「親の介護」「持病」などは正当な理由として承諾されやすいものの、証拠となる書類の提出を求められる場合があるため、嘘での使用は控えましょう。
昇進を辞退する際の心構え
自分のキャリアを考えた上で、管理職への昇進を辞退しても後悔しないかどうか、一度じっくり検討すると良いでしょう。
目先の負担のみで辞退してしまった場合、後から昇進したくなってもなかなか機会が回ってこない可能性があります。
また、辞退によって「向上心がない」と会社からマイナス評価をされ、場合によっては今後その会社で出世できなくなってしまうこともあるでしょう。
【退職の流れ】辞退を拒否されたら…
どうしても管理職になりたくないのに、昇進の辞退を拒否されてしまった場合は、最悪退職を検討するのもひとつの手です。
退職時に行う手続きは、それぞれ以下の通りです。退職後に離職期間ができた場合は、退職後の手続きも必要になります。
もし退職することになった時のために、流れや手続きをチェックしておきましょう。
ただし、昇進を持ちかけられて退職するとなると、どうしても会社側の心証は悪くなってしまいます。
退職交渉の時にしつこく引き止められるなど、スムーズに退職できない可能性もあるため、引き止められた時の対処法もあらかじめチェックしておきましょう。
※詳しい退職の流れはこちら→【完全版】退職時・退職後の手続きガイド
※引き止められた時の対処法について詳しくはこちら→退職を引き止められたとき、穏便にすませるための上手な対処方法
まとめ
管理職とは一般的に課長以上の、仕事の決定権を持っている人のことを指します。管理職は給料ややりがいがアップする一方で、その責任範囲の広さによるプレッシャーが大きくなります。
管理職になると責任や業務量は増えますが、自信がないからとすぐに断ってしまうのではなく、自分に管理職という働き方が合っているか、管理職になったらどのようなことを身に付けられるのかなどを前向きに検討してみましょう。