効果的な書き方とポイント 採用事情から考える「MRの職務経歴書」
製薬業界のMR(Medical Representatives:医薬情報担当者)を取り巻く採用状況から、職務経歴書の重要性と効果的な書き方・ポイントを紹介します。
製薬業界の最新動向やMRの採用事情に精通したキャリアアドバイザーからのコメントも掲載中です。
MR向け職務経歴書のテンプレート
転職難易度の高いMRにとって、職務経歴書は転職の「要」
MRは製薬企業の売上を左右する重要な存在ですが、現在の転職市場では求人数に対して応募者数が多い状況が続いているため、転職の難易度が高い傾向があります。
当然、書類選考のハードルも高く、採用担当者は候補者を絞り込むために、自社でも活かせそうな経歴の持ち主かどうか、職務経歴書を厳しくチェックしてスクリーニングしています。しかも、応募者が多いため、一人の職務経歴書のチェックにかけられる時間は限られています。
つまり、MRが書類選考を通過するためには、企業側が知りたい情報が一目でわかりやすく伝わるように、ポイントを押さえて職務経歴書を作り込んでおく必要があるのです。
早速、MRの職務経歴書で押さえるべきポイントを見ていきましょう。
MRの職務経歴書作成のポイント
MRの職務経歴書を作成する上でのポイントは、下記の2点です。
1)成果に至ったプロセスを詳細に伝える
MRの職務経歴書で最も重要なのが、MR活動による「経験・成果」だけではなく「それを実現したプロセス」をしっかりと伝えること。なぜなら、企業が求めているのは再現性のあるスキルを持った人、つまり、取り扱う製剤や領域が変わっても「これまでの経験や成功事例を活かして、自社でも同じように成果を上げてくれる人物」だからです。
もし、職務経歴書に売上や成果といった結果だけしか記載されていなければ、それが環境などの外的要因によるものなのか、それとも応募者の工夫や試行錯誤によって実現できたものなのか、採用担当者は判断することができません。その場合、「よくわからないから不採用」という結果になってしまいます。
そうならないためにも、職務経歴書には〈活動における成功事例〉欄を設け、そもそもどんな課題があり、その課題に対してどんな施策や行動を取ったのか、そしてその結果としてどんな成果が出たのか、成果に至るまでのプロセスを記載しましょう。
プロセスについては、応募先企業でも同様のアプローチで成果をあげられそうだ(=再現性のあるスキルを持っている)と評価してもらえるよう、できるだけ詳細に記載することが必要です。
2)応募企業ごとに志望理由と熱意を伝える
〈活動における成功事例〉に並んで重視されるのが〈志望動機〉の項目です。
応募者数に対して求人数が少ないMRでは、一つの求人に同じような経験・スキルを持つ人が多く集まります。このため、なぜ転職を考えたのか、転職を考えたときになぜその企業を選択したのか、第三者から見て納得度が高い理由がなければ、書類選考でふるい落とされ、面接にたどり着くことができません。志望動機が書かれていないだけで「即不採用」と判断するシビアな企業もあるほどです。
〈志望動機〉を記載するときには、求人票や転職エージェントの情報などから、応募企業ごとに注力領域などの特色や応募ポジションの採用背景などを理解し、自分ならではの志望理由と熱意を盛り込むことが大切です。
コラム:枚数は3~5枚を目安に作り込む
MRの場合は職務経歴書がしっかりと作り込まれているかどうかも選考時に見られています。手間と時間をかけて準備されているなら「自社への志望度も高そうだ」と評価されるからです。
他業界・業種では2~3枚程度が一般的ですが、MRの場合は3~5枚程度が一つの目安。30代前半であれば4枚、経験のある40代前半であれば5枚程度を目指しましょう。
文字数を稼ぐことが目的になってしまい、だらだらと文章を書き連ねるのは本末転倒ですが、枚数が少なすぎると「経験が浅い」「アピールポイントが少ない」といった印象にも繋がるため、枚数も一つの基準にして作成していきましょう。
ここから先は、項目ごとの具体的な書き方・ポイントを解説していきます。
1.〈要約〉の書き方・ポイント
重要度:★★・・・
企業名・担当製品・担当領域を5行前後で簡潔に
採用担当者が応募書類で真っ先に目を通す〈要約〉の項目。大学卒業後に「どのような企業」の「どのような担当領域(製剤)」を「どのような担当施設」に対してMR活動してきたのかを、5行前後で簡潔に伝えましょう。
キャリア
アドバイザー
大規模施設やマネジメントの経験があれば触れる
大学病院や基幹病院など規模の大きな病院へのアプローチ経験は、要約でも触れておきましょう。それらは開業医などの規模の小さな病院への波及効果を生むため、企業からの評価ポイントの一つになります。また、マネジメント経験は該当者が少なく、企業からも評価を得やすいので、ぜひとも盛り込みたい情報です。
2.〈職務経歴〉の書き方・ポイント
重要度:★★★★・
担当施設・製剤、売上実績をすべて書き出す
〈職務経歴〉はMRの職務経歴書で重要な項目。企業はここに書かれた内容から、自社でも活かせる経験・スキルがありそうかを判断します。
ここでは「担当エリア」と「担当先(施設名)」「担当製品(製剤)」をすべて書き出しましょう。特に担当施設の規模については必ず記載したいポイント。担当施設の規模が大きいほど評価が高くなるため、基幹病院や大学病院での経験はアピール必須です。
また、「売上実績・内容」では直近3~5年の実績を書きましょう。このとき売上金額や達成率、前年比といった情報だけではなく、全社平均もしくは順位(●名中●位など)も記載してください。「売上の目標達成率が100%を割っていないか」がボーダーラインですが、たとえば目標達成率100%以上が社内のごく一部しかいない場合に、達成率だけを記載するのはもったいないため、相対順位などもわかるようにアピールしましょう。
キャリア
アドバイザー
実績が良くない場合も職務経歴書に必ず記載を
営業実績が良くない年度があったとしても、実際の数値をすべて記載してください。
このとき、成績が振るわなかった原因とそれを解消するために取った行動を※で補足して書くのがポイント。実績が良くなかった背景や理由を伝えるだけでなく、成績が落ち込んだときでも「原因を冷静に分析できる」「課題解決に向けて進んでアクションを取れる」ことをアピールできます。
〈記載例〉
- コロナ流行によって訪問禁止施設が増加。前任者が面会NGになった施設にアプローチを実施するなど、打開策を模索した
- A施設で〇〇〇〇(製剤名)の増加に苦戦。ドクターとアポイントが取れなかったため、薬剤部と門前薬局との環境強化を図り、薬局長からドクターに処方提案が実現した
3.〈KOL活動〉の書き方・ポイント
重要度:★★・・・
経験があれば、大規模施設での実績を具体的に書く
MRとしての業務の一つである〈KOL活動〉。重要度はそれほど高くありませんが、KOL(キーオピオニオンリーダ)対応の経験、講演会企画、薬審申請などを経験している場合は、プラスαの評価につながるので詳細に記載しましょう。
ここでも、大学病院や基幹病院、中核病院など、過去に担当したなかで最も大きな施設での実績を書くのが効果的。基本業務である頻回訪問はプラスαの評価が得にくいので、それ以外のエピソードから選ぶようにしてください。
4.〈資格〉の書き方・ポイント
重要度★・・・・
履歴書と同様の記載をすればOK
〈資格〉の有無が合否の判断材料になることはほとんどありません。そのため、ここでは、履歴書の「免許・資格」欄と同様のことを書けばOKです。取得年月と資格名を取得した時系列順に記載しましょう。
5.〈活動における成功事例〉の書き方・ポイント
重要度:★★★★★
「課題→行動施策→成果」のプロセスを詳細に書き出す
MRの職務経歴書で最も重要なのが、この〈活動における成功事例〉です。
書類選考では、これまでの「担当領域」や「担当製剤」などが企業の求める要件にマッチするかどうかを見られているのはいうまでもありませんが、それだけではなく、入社後も(たとえ領域が違っても)前職での経験をもとに成果を出せそうか、課題に直面した際に解決に向けた行動が取れるのかが厳しく見られています。
そのため、この項目では「成果を出すために、どのように考え、どう行動したか」、成果に至るプロセスを詳細に記載し、応募先でも成果を出せるスキル・能力の持ち主であることをアピールしましょう。
具体的には、MR活動における成功事例のプロセスを【課題】→【行動施策】→【成果】という3つのステップに沿って記載していきます。ある程度長くなってもいいので、それぞれの状況はできるだけ詳細に書き出すのがポイント。異なる事例を2~3つ挙げましょう。
ここで取り上げる事例は、以下の2つの観点を参考に検討してください。
【1】処方課題へのアプローチ
1については、自身の経験や強みがバイオやオーファン、オンコロジーなどの「スペシャリティ領域」か、風邪や生活習慣病薬などの「プライマリー領域」かで分かれます。
スペシャリティ領域であれば、
- 症例獲得
- 症例フォロー
- 副作用マネジメント
- 症例の脱落を防ぎ、処方を継続できる体制づくり
…など
などの、症例ベースでの活動経験を記載することが重要です。
症例獲得の例としては、たとえば「こういった症状や検査結果があったら、こんな病気を疑ってください」と、データに基づいた営業活動をフェイス・トゥ・フェイスで実施した…など、具体的なアクションを伝えましょう。
一方で、プライマリー領域の場合は、
- 処方する患者像をどのような手法で明確にしたか
- 自社薬剤が処方をされていない臨床的な課題(ドクターとの接点頻度や関係構築以外)はどこにあり、どのように解決したか
などを記載することが有効です。
ただ、プライマリー領域は製剤の特性上、処方課題に沿った顕著な営業活動が難しいケースもあるでしょう。プライマリー領域の経験者がスペシャリティ領域にチャレンジする場合は、【2】営業課題へのアプローチ事例から、論理性や戦略性が伝わるようなエピソードを記載することが重要になります。
【2】営業課題へのアプローチ
2については、日々の頻回訪問以外での工夫を取り上げましょう。
たとえば、過去の業務経験から
- アプローチが難しいドクターをどのように攻略したか
- 大規模病院から小規模病院やクリニックへ、どのような波及効果を及ぼすことを狙い、そのためにどんなアクションを実行したか
- 担当エリアのエリアマーケティングをどのように行い、目標達成を試みたか
- 講演会に登壇するドクターをどのように選定したか
- MRの業務範囲では解決が難しい事例に対し、他部門をどのように巻き込んで対応したか
という事例が記載できないか、検討してみましょう。
〈活動における成功事例〉を考えるときのコツは?
「成功事例として書くべきエピソードに悩む」という人は、まずはMR活動の一連の流れを細かいフェーズに分けてみるのがおすすめです。
それぞれのフェーズでどのような課題に直面したのか、特に課題を抱えていた点や苦戦していた点がどこだったのか、振り返ってみましょう。
なお、【行動施策】は①〜③などの番号を振って複数記載してもOK。むしろひとつひとつが詳細なほど、企業側は課題解決に向けてどんなアクションを取ったのか、具体的にイメージしやすくなります。
キャリア
アドバイザー
Webプロモーションの工夫や成功体験がトレンド
コロナの影響で非対面でのMR活動が注目されてからは、Webプロモーション時の工夫・成功体験の記載が特に評価される傾向があります。Web講演会やオンラインを活用した面談などを実施した事例があれば、積極的に記載しましょう。
〈行動施策の例〉
- Web講演会の開催決定後には、連絡先の知らないドクターには勤務先病院宛にお知らせを送ることでご参加いただき、接点を作ることができた
- 担当医師の年次が若い場合は、対面での面談だけではなくオンラインツールなどを活用することで、効率化な情報提供を行っている
6.〈MR活動における強み〉の書き方・ポイント
重要度:★★★・・
MRの役割+自身の強みを端的にアピールする
〈MR活動における強み〉は、MRとしてあなたが誇れる強みを簡潔に伝える項目です。職務経歴書における重要度は高くありませんが、取り扱う製剤や領域が変わっても通用する「MRとしての再現性あるスキルを持っている」ことを改めて伝える役割を担っています。
ここでは「“顧客ニーズを踏まえた”営業戦略立案”」や「“様々なソリューションを活用した”イベント企画経験」など、あなたならではの強みを一文で記載しましょう。上記の〈活動における成功事例〉で取り上げた具体的な行動と一貫性を持たせると説得力が出ます。
7.〈自己PR〉の書き方・ポイント
重要度:★★★・・
MRとして大事にしている姿勢やスタンスを伝える
〈自己PR〉の重要度は高くありませんが、経験やスキルなどが同等の応募者と競った場合、どちらに書類選考合格を出すのかを判断する材料になる項目です。
ここでは「顧客ニーズを踏まえた情報提供」「関係者とのリレーション強化」など、MRとして力を入れて取り組んでいることをとおして、自身が大事にしている姿勢やスタンス、考え方、価値観などを伝えましょう。具体的なエピソードをもとに自分の言葉でしっかりと伝えられると高評価です。
〈自己PRのエピソード例〉
- 顧客ニーズを踏まえた情報提供
…日頃から自社製剤に関わらず、他社製剤や最新レビューなどで話題になっている治療法の文献から情報収集し、面談時には医師のニーズを適切に聞き取った上で情報提供している
- 関係者とのリレーション強化
…計画達成には日頃から関係性を作ることが大事だと考えているため、医師だけではなく医療関係者との面会も積極的に行い、リレーション構築に努めている
- 新しいマーケティング手法の模索
…アプローチ機会の少なかった診療科をターゲットに選定するなど、前例に囚われない手法を提案するように努めている
…など
8.〈志望動機〉の書き方・ポイント
重要度:★★★★★
一貫性のある転職理由と応募したポイント+活かせる経験・スキルを伝える
転職難易度の高いMRにとって〈志望動機〉は〈活動における成功事例〉に並んで大事な項目です。この項目で志望度の高さや熱意を伝えることが、ほかの応募者から頭一つ抜けて書類選考を突破するためのポイントになります。
企業側に「だからうちに応募してきたんだな」と思わせるような説得力のある志望動機にするためには、「転職理由」と「応募しようと考えたポイント」に一貫性を持たせることが特に重要です。
そのために、まずは転職を考えたきっかけや理由を深堀りしましょう。「上の役職が詰まっていて、キャリアアップが難しい」といった現職への不満でも構いませんが、実際に記載するときは「若手のうちからチャンスが与えられて、結果を出せば責任あるポジションにつける環境で働きたい」といった前向きな表現に変換してください。
その上で、求人票や企業の採用ページなどを改めて読み込み、その企業ならではの特徴や強みに紐づける形で、応募しようと考えたポイントを伝えましょう。
- 転職を考えたきっかけや理由
…担当製剤数が多くて大変、MRとしての専門性が高められていない気がする
⇔転職理由(前向きな表現)
…担当製剤にじっくり向き合うことができ、特定領域の専門性を高められる企業で働きたい
⇒応募しようと考えたポイント
…貴社は皮膚疾患領域に強みを持ち、限られた製剤数で国内トップクラスのシェアを持つため、自分が目指す働き方・MRとしてのキャリアパスを実現できそうだと感じた」 - 転職を考えたきっかけや理由
…担当製剤の幅が狭い、自社開発のパイプラインに期待できない
⇔転職理由(前向きな表現)
…さまざまな製剤の経験を積める企業に転職したい
⇒応募しようと考えたポイント
…コントタクトMRとして複数のプロジェクトに参加できる環境であるため、自身の知識と経験を広げられると感じた
また、上記に加えて、〈志望動機〉では「開業医から大学病院までの幅広い経験が活かせる」「スペシャリティ領域で培った情報収集力を活かしたい」など、自身の今までの経験がどのように活かせるのかまで記載しましょう。ここで応募先に貢献できる経験・スキルを持っていることを裏付けられれば、企業側は「それならうちでも活躍してくれそうだ」と納得感を持つことができます。
キャリア
アドバイザー
患者・医療貢献を重視する企業の場合、志望動機でもしっかり触れる
企業のなかには、バリバリと成果を上げて営業成績を積むことと同じくらい、医師の先にいる患者や医療業界全体への貢献意欲を持っていることを重要視しているところもあります。このような企業に応募する場合は、その社風に惹かれた理由や自分が患者・医療貢献を重視している理由を具体的なエピソードから示し、企業の風土に自分の考えやスタンスが合致していると印象づけることが大切です。
この記事の担当者
「転職Hacks」編集部
株式会社クイック
株式会社クイックが運営する、転職活動にまつわる情報サイト「転職Hacks」の編集部。履歴書・職務経歴書の書き方や面接対策などのノウハウ記事、キャリアの悩みを解消するインタビュー・コラムを掲載中。